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第25話『Q.自分に二つ名つけるなら?』

「どっちが勝つと思う?」


 試合が始まる直前、俺はユナにそう問うた。ちなみに俺の予想はティナだ。対戦してみて、俺はテューに一撃入れることができたが、ユナには何も出来ずに敗北した。そのユナに勝ったティナだ。二つ名を持っている事といい、ティナの強さは明白だ。でもなんだろう……テューにはいつも違和感を覚える。俺の時も、今回もそうだ。何か、得体の知れない何か……。そのせいだろうか。いつもおちゃらけているように見えるし、いつも余裕そうにも見える。

 真剣に俺が考えていると、ユナが小さな声で答えた。


「多分……いえ、ほぼ確実にテューが勝つわ」


 冗談だろ? と言いかけたが、ユナの今まさに試合を始めようとしている二人を見る真剣な目を見て、言い止まった。テューが勝つ。つまり、あのティナがほぼ確実に負けると言うことだ。俺には想像がつかなかった。

 しかし、それは試合開始をしてすぐに理解することとなる。


「試合――」


 それは開始の合図が始まった途端。テューの表情が一瞬だけ、だが確実に変貌する。その表情を例えるなら……ホラー映画に出てくるピエロ。全てをあざ笑うかのような、皆が手のひらで踊らされているような……そんな予感をさせる仮面が、テューに張り付いていた。


「――開始!!」


「「「――っ!!」」」


 闘技場内が静まり返る。

 試合開始と同時に、ティナはテューとの間合いを一気に詰めて、得意の剣撃で試合開始三秒と経たないうちに五振りもするという、このトーナメント戦では最速で剣を振るった。

 ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! 五つの金属と金属のぶつかり、擦れ合う音の後――――ティナは倒れた。

 それは、あまりにも一瞬の出来事で、誰もが視線を奪われ、言葉を失った。動揺を隠せずにいた。先生と、 生徒では唯一、ユナを除いて。

 試合終了の合図が聞こえてくる。


「流石ね……」


 小さく声を漏らすユナ。それを聞いて我に帰る俺。慌ててユナに問い詰めた。


「な、何がどうなったんだ?」


「みんな知らないものね。あいつの正体」


 正体? 何の事だ? もしかしてアイツ、悪の組織の幹部だったりするのか? まさか! 魔族の手先?

 意味深なユナの言葉に、さらに頭がこんがらがる。間も無く、ユナが真実を教えてくれた。


「アイツにも二つ名があるのよ。細作の参謀テュー。それが彼の二つ名よ」


「何で参謀なんだ?」


 二つ名とは、その人物の素性や特徴が元となることが多く、例えばティナであれば、嵐のような剣撃で敵を圧倒する姿から『テンペスト』と言う二つ名がついた。おそらくテューの、参謀にも何か意味はあるのだろうが……俺にはあまりよく分からなかった。家が参謀の家系? そんな家系ねぇよ。

 一つ答えを聞くと疑問がまた一つと増えていく。エンドレスだ。エイトだ。もうこれで一万五千五百三十ニ回目ですか。やめろ。トラウマが蘇るではないか。


「元々は細作の策士と呼ばれていたわ。でも……これ以上は本人に許可を貰わないと言えないかしら」


 冷たい瞳でテューを見ながらそう話すユナ。

 策士? 参謀? つまりは作戦を立てる人って事か。まぁ確かに頭のキレはいいよなアイツ。しかしそんなすごい二つ名持ってるのに何でみんなあんなに驚いているんだ? 二つ名持ち同士ならそこまで驚く事なかろうに……それと、本人に許可を取らないと話せない話って、一体……。

 俺が顎に指を当てて考え込んでいると、ヒールを終えた先生が下まで降りてくるように指示を出した。


「この話は後でね。さ、行きましょ」


 俺は先に立ち上がり歩き始めるユナの背中を慌てて追いかけ、階段を下りるのだった――。




■■■


 ――下校前の教室。

 あれからいつもの様に授業を終え、下校前の連絡事項に聞いた後、俺たちは四人で別教室に集まって時間潰しをしていた。突如降り出した雨で帰るに帰れなくなってしまったのだ。まぁ大体こういうのはすぐに晴れるものだから焦って帰らず止むのを待とうという訳だ。


「こういう雨何っていうんだっけ?……あ、通る雨!」


「わあ素敵。あなたと同じ名前ではないですか」


 俺の渾身の一撃に、テューは驚くことしかできないようだ。流石は俺。


「通りよ。時雨ともいうわ」


「あまとうは自己主張が激しいねぇ」


「ぐぬぬ……」


 自慢げな顔押していると、ユナが冷静に突っ込みを入れてきた。俺のハートに三百ダメージ。しかし俺はやられない。続いてテューの茶化しという名の追い討ち。俺のハートに五百ダメージ。だが、まだ行ける……。それを爆笑するティナ。俺の心は砕け散った。もうダメだ。穴があったら入るたい。


「今度のるはわざとです」


「何言ってるの?」


「こっちの話です」


 ティナの問いかけに力なく答える俺。

 調子に乗って墓穴を掘ったのは事実だが、この雨はすぐに止むから少し待とうと提案したのは俺だった。無駄に雑学を持つ俺の知識は、こういう時にたまに役に立つ。強く冷たい風が吹いている日、入道雲がある時なんかはよく通り雨が降るものなんだよ。

 早く止まないかなぁと、ぼーっと窓の外を眺める俺たち四人。

 と、俺は気になっていたことを思い出す。


「なぁ、テューとティナの二つ名っていつからあるんだ?」


「おいあまとう。何故それを知っている」


 いつもより真剣に、しかし博士口調で応答するテュー。ティナは何かに納得するように浅い笑みをこぼしていた。


「私は二年前の剣舞祭の時からかな。……ていうか、やっぱりテューも二つ名持ちだったかぁ……通りでめっちゃ強い訳だね」


 両手頬杖で俺の質問に答えるティナ。剣舞祭というのが気になるな。いつかのライトソードさんもその大会の三位の人なのだろうか……。


「二年前からか……じゃあ結構有名なんだね」


「あまとうは本当に何も知らないんだねぇ。あのステータスといい、それでクラス四位とは……逸材だねぇ」


 俺がふむふむと言った風に頷いていると、テューもまた頬杖しながら、いつもの調子でテューが冷やかしてきた。いちいちムカつく奴だ。

 そういえばユナはずっと黙ったままだなぁ。まぁその前に……。


「そう言うお前はご立派な二つ名持ってる割にはあんま有名じゃないみたいだけど?」


「まぁ、僕は……ね?」


 そう言って視線を飛ばした先は、やはりユナだった。ユナはニコッと笑うだけ。模擬試合の時の言い方と言い、今のやりとりと言い、どうやら知っているのはユナだけのようだ。


「分かったよ。友達に秘密ごとは無しだもんな」


 仕方ないと言う風に頬杖をやめ体を起こすテュー。止むどころか激しさを一層増す雨音の中、テューは自分の過去について語り出した。

とおるA「あばらのとおる」

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