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第19話『Q.親睦は深まりましたか?』

「オラオラオラオラァァア!!」


 闘技場に響き渡る大男くんの荒々しい雄叫び。ティナの様な技術による剣撃の嵐では無いが、コイツの猛攻も力任せの大雨とでも呼べる様なものだった。今の俺には全てを捌ききることはできない。開始二分と四分で一回ずつ有効打を決められてしまった。


「どうした! 防戦一方じゃ無いか。試合前の目は見せかけかぁ?!」


 止む事のない剣の猛追。それでも少しずつコイツの癖が分かってきた。まずは蓮撃の流れ。基本は上から下へ斬り下ろす事が多い。地面に剣を着けたら賺さず横の大振り、もしくは斬り上げ。隙ができるとしたら横の大振りか斬り上げの後だろう。しかし今の体力では剣の速度が速すぎて反応出来ない。自分の間合いに相手を留めたまま剣を躱すとなると、どうしても横の大振りか斬り上げかを見極める必要がある。


「さて、どうしたもんかねぇ」


 剣を避けながらボソボソと呟く俺を見て、余裕ぶっていると感じたのか、大男くんの攻撃数が上がった。


 敵を追い詰める声、剣を捌く音、地面を削る音、砂が巻きあれられる音……音がより一層速度を上げて闘技場に響く。



「ーークッ!!」


 開始六分。またしても一撃食らってしまった。大男くんはニヤッと笑って、再び攻撃に入る。攻撃速度はーーそろそろか。


「もう三撃喰らってる。お前が俺に勝ち越すにはあと5回攻撃を入れなきゃいけない訳だが、この状況でそれができると思うか? 降参したらどぉだ!」


 猛攻の最中に放たれた言葉。俺の精神を削るつもりなのだろう。だがーー。


「生憎、精神力には自信があってね」


 そう言って、俺は上から降ってくる剣を弾き返す。この試合初めての反撃。大男くんは少し動揺している様子だ。まるで、ーーなぜこんなヒョロヒョロ野郎に俺の剣がはじき返された?とでも言いたそうな顔をしている。

 簡単な話さ。さっきペースを上げたせいでバテたんだ。ペースを上げ始めた時点で既に試合は五分を回っていた。普通剣道の試合でも五分が一試合の目安時間だ。それをコイツは、竹刀の何倍も重い剣を持ってひたすら攻め続けた五分に加えて、そこから俺にもう一撃入れるまでの一分間さらにペースを上げて剣を振った。どう考えてもオーバーペースだ。


「先生が言ってただろ? ペース配分を考えろって」


「なにぃ!」


「今からお前を倒す。一撃だ。それでお前は俺に負ける」


 俺は剣を相手に突き刺す様に向けながらそう宣言した。

 ……くぅ〜決まったぁぁぁ! かっこいい決め台詞。一度は言って見たかったんだよね。

 相手は頭に血が上っている様子。これは勝負あったな。テューの試合は既に終わっている様だ。ようやく横目で確認するほどに余裕が出てきた。

 俺がもう一度剣を構えると同時に、大男くんは最後の力を振り絞って突進してきた。試合時間は残り三分。大男くんは、その時間持たせる為にはペースを下げる必要があった。大雨は……ただの雨になった。これなら躱せる。


 剣を躱し続けて数十秒。ついに剣が地面に着いた。ーーココだ!! ーー俺は剣を強く握った。しかし、大男くんの剣は試合開始時と同等か、それ以上に速く振られた。この隙を狙っている事はバレていたのだ。

 しかし、それも俺の筋書き通りだった。


 金属同士が勢い良くぶつかり合い、頭に響く嫌な音が闘技場に大音量で響き渡る。繰り出されたのは横の大振りだった。俺はそれを剣を地面に突き刺す事で受け止める。思わぬ壁にぶつかった剣は、その振動を持ち主の握り手へと伝え、その影響で手の力が緩む。更に剣は反動で腕の進行方向とは逆に軌道を変える。既に体力も限界近い上に、無理して思いっきり振った事で反動は大きく力は残っていない。緩んだ手ではこれを握り続けるのは不可能だった。

 大男くんの剣は後方へと吹き飛んだ。

 俺は剣を抜き、首筋へと突き立てる。勝負ありだ。




 ■■■


「あぁ疲れた。あいつ乱暴なんだよ……」


「お疲れさん。ほんとよくその低ステータスで勝ち上がるよな。あまとう」


 試合を終え、観客席に戻った俺とテューは、試合後のアフタートークを楽しんでいた。テューはまだまだ余裕そうだが、俺はもぅヘトヘトだよ。

 ちなみに、試合が終わった後はお互い仲良く握手をして終わるし、アフタートークで反省会をしている組もいくつか見られた。なんせ今回は親睦を深める為の模擬試合だからね。だからと言って、手を抜いたりはしないのだがーー。

 十分の調整タイムを挟み、次はユナとティナの準々決勝だ。対戦相手は……二人とも男子か。あまり心配はしていないが、準決勝まで四人で勝ち上がって戦いたいな。なんて思ってその試合を眺めていた。



 本当に心配無用だった。なんなんだほんとコイツら。ピンチなんて一瞬も無く終わったぞ。俺なんて終始ピンチだったってのによぉ。何はともあれ、これで四人全員準決勝進出って訳だ。明日の試合が楽しみだぜ。




 ■■■


 あの後、いつもの様に教室で連絡事項を聞き、下校をした。ファンタジーな学校の授業・講義。日常を感じるお昼休みに登下校。宿に帰れば故郷を思い出す安らぎの空間。

 なんと充実しているんだ俺は……んんエクセレント!! あとは彼女がいれば完璧なリア重だな。


「さて、今日も張り切って掃除始めますか!」


 掃除の途中、ダグラスさんとどっちが多くのエリアをいかに早く掃除できるかの勝負をしていたら、エリシアさんに怒られた。でも本気で怒ってるわけではないのは表情を見れば分かる。だって怒ってる時のエリシアさん、とっても楽しそうだからーー。


 掃除を終えたあとはいつものように三人で夕食を食べて、その後就寝。最近は寝る前に魔法の研究を進めているが、未だに謎が多い。それでも分かったこともいつくかあるので、後でおいおい脳内解説していこうと思う。取り敢えず今日は疲れたから寝させてくれ。

 おやすみバタンキュー。

とあるA.深まるのは数人で十分です。(もろ陰キャ発言)

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