第18話『Q.最近友達とどうですか?』
気持ちのいい光がカーテンの隙間から差し込む。朝だ。カーテンを開け、扉を開ければ綺麗な空気が部屋に入ってくる。
「何て爽やかな朝なんだ」
流石ファンタジー世界。ラノベの主人公達が元の世界に帰りたがらない理由がわかるよ。
俺は鼻歌を歌いながら、いつものように朝のあれこれを始めた。
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「よっす!」
「おうぅあまとうおはよう!」
今日は校門でテューと出くわしての学校スタートだ。教室に行くと、既にユナとティナが机で楽しそうに会話をしていた。
ユナ達二人は席が真逆の左前あたりにあるため、よっ! っと手振りだけして、俺たちは自分の席に座る。
多分俺の人生を覗き見している皆さんは、一限二限の基礎学みたいなのを永遠と語られても面白く無いと思うから、それは定期的に閑話として語っていこうかなと思う。
ってなわけで午前の授業はすっ飛ばして――。
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「なんか一日でこのメンバー構成が定着しちゃったな」
「そうね。ウチはこのメンバー面白いから大歓迎だけどね」
お弁当を広げながら呟く俺の言葉に、相槌を打ってくれたのはティナ。テューも"面白い"と言う部分にすごく共感している様子。ユナはひたすら首縦にコクコク振っていた。なんかめんこい。
ふと俺は、最近ずっと気になっていることがあるんだったと思い出す。
「そう言えばさ、みんなは何でこの学校に通うことにしたの?あんなに強いんなら騎士になっちゃえばいいじゃん」
一瞬三人が黙り込む。と言うか、俺の質問がアホすぎて誰も反応できなかったようだ。一瞬間を置いて、テューが笑いながら答えてくれた。
「何故って、そりゃあまだまだ実力が足りて無いからに決まってるしょ。面白いこと言うなぁ」
「ウチだって"テンペスト"なんて呼ばれてるけど、騎士団に入るなんてまだまだ先の話よ」
ティナ曰く、騎士団に入るためには今の実力の十倍は必要になるらしい。入団試験もまだ受けたことがないんだとか。
そりゃあ俺が受かる訳もありませんよね。国家騎士への道はどうやら相当険しいらしい。
俺が一人で納得して頷いていると、ユナが心配そうにこっちを見て――。
「とおる大丈夫? もしかして昨日の試合で頭を打って……」
「「「アホになった?」」」
「やぁかましぃわ! 元からこの頭じゃい! ってかハモるな!」
何だこいつら。打ち合わせでもしてたのか?ユナのセリフに合わせてみんなでアホ言いやがる。全く、どいつもこいつも俺の優秀さをわからんとは……まだまだよの。
「あ、その卵焼きもーらいぃ」
「したっけ俺はその肉を貰おうか」
そんなくだらない会話をしているとあっという間にお昼の時間は終わり、例のごとく三限目はすっ飛ばし――。
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「それでは昨日の続きから行っていく」
今日もゴッツイ元副団長様による実技の時間がきました。第二予選はテューが二組目で、俺は三組目か。昨日と同じく三組ずつ行うから、今回もテューの試合は見ることができなさそうだな。
試合の流れはどの組みも同じだった。テューはやはり俺より先に試合を終えており、俺は相手がバテるまで攻撃を躱し続け、動きが鈍ったところを一撃で仕留めた。ユナも試合の展開は昨日とほとんど変わらず圧倒していた。
そして迎えた準々決勝。今日は昨日と違い、試合数が少ない為、試合と試合の間の時間が長い。アリーナ外に出なければ何をしても良いと言われているが、恐らくこういった時間で個人の調整力などを見ているのだろう。幸い俺は部活動でこう言うのに離れている。しっかり調整させてもらうさ。
さてさて、次の俺の相手はゴリッゴリの大男。思わず怯んで一歩後ずさってしまいそうなくらい迫力のある相手だ。本当にコイツ俺とタメかそれ以下なのか?
時間が迫り、印の位置まで移動して剣を構える。今回も左でテューの試合が行われるようだ。ここまで一度もテューの戦っている姿を見られていない。俺がもっと早く試合を終わらせられたら少しは見られるのだが。まぁそんな余裕があるわけもなく。と言うか、よくここまで勝ち上がったと褒めて欲しいくらいだ。
「何だ? ずいぶん弱気な表情見せるじゃねぇか」
「ご心配なく。……それでも俺は、負ける気は無いんで」
俺の魔物も睨み殺すような冷たい目つきを見て、一度は余裕を見せた相手も気を引き締め直す。
フーっと深めの息を吐き、精神統一。試合開始直前……相手の呼吸の音まで聞こえそうな静けさだーー。
「試合、開始!!」
これに勝てばテューとの勝負。俺は気合を入れて、準々決勝を始めた――。
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「くっ……」
流しきれない……避けきれない……。
試合開始から四分が過ぎた。俺は相手の乱暴な攻撃を受けきれず、二度ほど有効打を入れられていた。
とあるA.扱いが雑になって来ました。なんだか雑巾感……。





