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第15話『Q.前の問題の答えを利用できますか?』

「よーしみんな集まったな!」


 ダグラスさんよりも良いがたいをしているだろうか。灰色の短髪先生が生徒に声を掛ける。

 ここは闘技場(アリーナ)。クラス三十人で使うには余りある大きさだ。端から端まで百メートルはあるだろうか。四階建ての観客席も合わせれば直径二百メートルくらいありそうだ。

 そんな巨大闘技場を貸切で使うのは、俺たちIクラス。ちなみにクラスは三つある。各クラス三十人ずつの計九十名が一期生となっている。

 さて、これから始まるのは生徒がこの学校で最も期待している授業。そう。実技の時間だ。生徒は皆期待の眼差しで先生を見ている。


「これより、実技を始める。私はこの授業を受け持つ元国家騎士副団長のアザルド・デイヴォリッドだ」


 武装姿で剣を体の前の地面に刺し、兜は右脇に挟んで話すデイヴォリッド先生。ざわついていた生徒も、先生が話し出すと同時にすぐに静かになった。流石は国家騎士を目指すものたち。レベルが高い。


「さて、いきなり剣の稽古やら馬に乗れと言われても難しいだろう。そこで、今回は親睦を深めるという目的も兼ねて模擬試合を行ってもらう」


 騒いだりはしていないが、みんなの感情が高ぶっているのを肌で感じた。俺はと言うと、入団試験のことを思い出して肋骨を抑えていた。


「それでは、ここにトーナメント表を貼っておく。模擬試合は三日に分けて行う。ペース配分も考えながら試合を行うように」


 対戦は三組ずつ行われる。トーナメント戦は今日は予選の十五試合。明日が第二予選と準々決勝の十一試合。最終日が準決勝決勝の三試合だ。準々決勝までは一試合十分で、決着がつかなかった場合は有効な攻撃が多かった方の勝ち。準決勝からは決着がつくまでだ。

 ルールは簡単。魔法の使用は禁止。それ以外はなんでもありだ。決着は相手に参ったと言わせるか、気絶させるか。死んでさえいなければ魔法で怪我でもなんでも治せる元副団長がいるからこそできる授業だ。


 迅速な移動後、最初の三組が試合を始める。俺を含めた残りの二十四人は観客席でそれを見守る。

 ちなみに、予選などで用いる"有効な攻撃"の判定は、デイヴォリッド先生が生徒にかける防御魔法に基準値を超えるダメージが入った時にカウントされる。自身がかけた魔法なため、その通知は先生の元へと来るので、先生は一人で審判を行うことができると言うことだ。また最初の一撃は戦況を大きく分ける一撃となりやすい為、ニ倍のポイントが得られる。


「対戦は男女混合なんだな……」


「何言ってんだよあまとお。そんなの当たり前じゃねぇか」


 俺が不思議そうに呟いたその言葉に、隣に座るテューが笑いながら答える。この世界では、特に騎士の世界では敵が男だろうが女だろうが闘わなければならない。その為、男女で分けることはないと言う。流石ファンタジー世界というか何というか。弱肉強食の世界なのですね。

 事実最初の三組のうち、ニ組は男子対女子で女子が勝っていた。もう一組は男子対男子だったので男子が勝ち進んだが……情けないな男子よ。俺も人のこと言えんが。


「さて、次は俺とお前の番だ。お互い勝ち進めると良いな!」


「あ、あぁ。頑張ろうな」


 パッとしない俺の返事に違和感を感じつつ、テューはさっさと下まで降りて行ってしまった。俺もすぐにそれを追いかける。あぁ俺の肋が怯えているぜ。


 俺の対戦相手は身長の低い坊主頭の男子だった。見た感じ百六十センチメートルくらいだろうか。剣は学校側が用意してくれた刃の無いものを使用する。お互い白の試合開始ラインに立ち、一つ礼をし、構える。


 睨み合って十五秒。先生の試合開始の合図とともに坊主頭が飛んでくる。そのままの勢いで右の大振り。俺はそれをかろうじて左に避けた。


「っぶねぇ」


「よく避けたね。地元じゃこれを交わせた人いないんだけどな」


 その地元大丈夫か? 俺のAGI値1だぞ?

 俺は体制をすぐに立て直し、右下に剣を構える。坊主頭は剣を右腰に構える。間を一秒と置くことなく再び坊主頭が飛んでくる。構えから予想していたが、付き攻撃だ。俺が剣を右側に構えていた為、坊主頭くんは左の方を狙ってきた。予想通りだ。俺は肩をひねり、対提言の動きでそれを躱す。


「まさかこれも躱されるとは……なかなかなるな」


「喋ってないでどんどん来いよ!」


 一つ挑発を入れて見た。今回は作戦を持ってきた。俺の体力を生かした長期戦だ! ソースはそう。入団試験の試験管の動きだ。相手が疲れて動きが鈍ったところを一気に叩く! その肋、貰った!


「なら遠慮なく行かせてもらう!」


 坊主頭くんはうまく挑発に乗ってくれた。次々に飛んでくる攻撃は、はたから見れば大したことないのかもしれないが、今の俺にとっては豪速球を避けているように余裕がない。ちょっとでも油断すれば直ぐに攻撃を食らってしまいそうだ。


 試合が開始されてから三分が経っただろうか。丸坊主くんの動きにキレがなくなってきた。


「はぁ……はぁ……何で攻撃が当たらないんだ」


 攻めても攻めても決まらない攻撃に苛立ちを見せ始める坊主頭くん。俺から一旦距離を取る。左で別の試合をしているテューが、すでに試合を終えているのが横目で確認できた。見た感じどうやら勝ったようだ。

 さてーー。


「どうした? もう終わりかな?」


「ちくしょー!!」


 よし、掛かった。最後の挑発。三分間逃げることだけに集中していたおかげで、相手の動きの癖がだいぶ分かってきた。PvPゲームで身につけた俺の観察眼を見よ!

 俺はここに来て、剣の構えを右側から左側に変える。直後勢いよく飛んできて、右の大振り。そう、坊主頭くんの攻撃はいつも右の大振りから始まるのだ。


「よっ、せいっ!!」


 俺から見れば左から飛んでくる横殴りの剣を、左斜め下にしゃがむことでギリギリで躱し、ガラ空きになった脇腹めがけて一発! 腕で剣を振る力と立ち上がる力を合わせた俺の渾身の一撃が坊主頭くんの脇腹を直撃。効果は抜群だ! たまらずダウン。


「試合終了!」


 先生が近寄って来て、俺にそう告げる。その後ヒールの呪文を唱え、意識を失っていた坊主頭くんを起こす。


「痛ったたぁ……やるね君。次の試合も頑張って」


「ありがと。頑張るよ」


 試合を終え、観客席に戻る。どうやら俺たちが最後だったようで、次の試合の準備が直ぐに行われていた。

 ともあれ、こうして俺の入学して初の試合は白星で幕を閉じたのでした。まぁまだ予選なんだけどね。体力的にはまだまだ全然余裕だったし、もう少しくらいしぶとい相手でもいけそうだな。何となく俺の戦闘スタイルが見えて来た気がする!

 ちらっと今の自分のステータスを確認すると、レベルが上がっていることに気づく。

 レベル3か。今回の戦闘で結構経験値稼いだのかもしれないな。


 さてさて、ステータスはどうなっているかな?

とおるA.「いっえーす! ずっと俺のターン!」

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