第12話『Q.探りを入れるってどうやるの?』
「おう! 聞いてきたぞー! 本人に直接な!」
「……は?」
いや待て、聞いた? 本人に直接? えっと……何を? 訳がわからん。取り敢えず聞いてみよう。俺は肩を組み、コソコソっと廊下の端っこに寄りながらテューに聞いてみる。
「聞いたって……何を聞いたんだよ」
「あぁ、それはな、とおるのとこどー思ってるんだ?って聞いたんだよ」
テューはやたらイケボで再現してくれた。しかも最高のキメ顔で。歯がキランって音立てて光ってた気がしたぞ。マジでなんなんだこいつ。グッ! じゃねぇよ。
「そ、そうか……。それで? なんて言ってたんだ?」
「あー、えっとだなぁ……」
なんだよもったいぶりやがって……まさか、やっぱ言いにくい感じなのか! 俺のこと嫌いになっちまったのか!
「ちきしょう。なぜこんなことに」
思わず声が漏れてしまった。しかし、テューから帰ってきた言葉はそれほど悪いものではなかった。
「あー違うんだ。覗きのことは、まぁ許さないでもないらしい。だからお前の事嫌ってるとかそんなことはないみたいだぞ」
なんだその微妙に許してくれるのか微妙な回答は。でもまぁ、嫌われてないのなら良かった。でも、それなら何故目を逸らされたんだろう? 俺が気まずそうにしてたからかな。なら次会った時は堂々としてないとな!
俺が安心してちょっと緩んだ表情をしていると、テューが悪巧みをした子供のような顔をして聞いてきた。
「それよりお前、人助けしたことないか? そーだなぁ、王都に来てからとか」
「え? そんな大層な事ではないけど、まぁあるにはあるぞ」
何だこいつは唐突に。そんな人助けなんて誰だってしたことあるだろうに。
組んでいた肩を解き、玄関へと歩き出す。するとテューは俺の前に出て来て、後ろ歩きになりながら話を続けた。
「それってどんな事したんだ?」
「不良に絡まれてる女の子が居たんだ。だから不良を追い払ったんだよ」
「ふぅーん」
何だか意味深なふーんだな。それにこの話し始めてからずっとコイツニヤニヤしてやがる。一体なんだというんだ。
今度は手を後ろで組んで、ヒザ神歩きをするテュー。
「でもさ、不良から女の子助けるなんて凄いじゃん! 全然大したことあるよ」
「いや〜それが追い払い方がカッコ悪くてさ、もーちょい男らしく戦って追い払えたら良かったんだけどね。アッハハ」
まぁ確かに俺的には頑張ったけど、ここはファンタジー世界。あれくらいこの学校に通う人達にとっては朝飯前だろう。
目を線にして頭を掻きながら話す俺と、変な歩き方をやめて横を歩くテュー。玄関まで来て、まだ慣れないが、靴を履き替えない。そのまま校門へ。
「家どっち?」
「僕はこっちだよ。とおるは?」
「俺もこっちだよ」
「方向一緒じゃん! どっから通ってんの?」
「俺は鍛冶屋の近くのピースって言うーー」
たわいもない会話をしながらの下校。夢にまで見た友達との下校。俺はみんなが普通にした事のあるような事もした事がなかったから、何だかこの世界に来て良かったなぁと、改めて思っていた。
まぁ元いた世界に帰るつもりだけどね。
宿に帰ってからは仕事。
昨日から始めたのでこれからやり方をしっかり覚えて役に立たねば!
俺はやる気に満ち溢れながら、エリシアさんに掃除の場所とやり方を教わるのだったーー。
とおるA.「盗聴すりゃあ良いんだよ」