第11話『Q.最初にできた同性の友達は?』
翌日の学校は不思議な気持ちでの登校となった。なんせあんなことがあったのだ。会うのも気まずいというもの。向こうの方も、こっちを見るなり目が合うとすぐに逸らす。
「ここは男の俺からアクションを起こすべきか……」
「何一人でブツブツ言ってんだよ!」
「わぁ! ビックリした」
頬杖をして、独り言を言っていた俺に、後ろの席の男子が話しかけて来た。俺は慌てて振り返る。あ、ちなみに俺の席は右からニ番目後方三列目という、なんとも言えぬ微妙な場所にいる。教室の間取りはよくある大学の高低差のある扇型の教室の小さい版だと思ってくれ。
「すまんすまん。僕の名前分かる?」
陽気な表情で流れるように質問してくるクラスメイトA。赤毛の短髪で、虫も殺さないような優しい目付き、顔立ちも綺麗で……なんと言うか、いわゆるイケメンである。しかしだーーその質問マジで困るからやめてくれないか。知らんってストレートにいうとなんか可哀想だしさ、でも分かんないしさ。俺の心の中を読んでいるみんなも分かるしょ? この気持ち。
「ごめん。俺人の名前覚えるの苦手で」
「いよいよ。昨日はクラス分けして担任の先生の話聞いて終わりだったし仕方ないよね」
そう思ってんならあんな質問すんじゃねぇ! なんだこのパリピ感満載なやつは。いかにもクラスの中心にいそうな……元いた世界ではご縁のない奴。
「僕はテュー。テュー・ル・グンだ! 宜しくな」
パリピ少年テューか……。同じ制服を着ているのにどうしてこんなにパリピ感出るのかな? 腰パン気味だから? ネクタイ緩すぎるからかな? あと確実にこれは影響してるな。なんだそのサングラスは。いや、ゴーグルなのか? どっちにしろ派手すぎる。まぁ取り敢えず握手でもしておくか。
「俺はとおる。天草とおるだ! 宜しくなテュー」
「お? 握手か。宜しくなあまとう!」
少し照れくさそうに握手をする俺に、テューは早速あだ名をつけてくれた。にしてもあまとうって……確かに辛いのは苦手だけどね。
「で? さっきから何ブツブツ言ってたんだよ」
テューは椅子の背もたれに勢いよくよし掛かりながら、腕組みポーズで再度俺に聞いてくる。
さて、初めてできた異世界の同性の友達だ。恋愛相談をしてみるのもいいかもしれない。
「実はな……」
俺はこれまでに起きた不可解なユナさんの行動について話し、最後にユナさんへの俺の思いを相談してみた。
「なーるほどな……よし分かった! 俺が探りを入れてやろう」
どうやら真面目に聞いてくれたようだ。
しかし入学してまだ一日しか経っていないのにどうやって探りを入れるのだろうか……友達だってまだそんなに出来ていないだろうに。いや、こういう奴だし、すでにたくさん友達がいたりして?
そんなことを考えていると、朝の出席確認が始まった。まぁ元いた世界と違い、みんなが騎士を目指してこの学校に入ってきたのだからサボる奴などいないだろうが。ーーどうやら全員居るようだ。
そして学校本番。講義は一講義九十分で午前午後二回ずつ計四回の講義を受ける事となる。講義の内容は一限に基本科目類、主に言語学だ。読み書きができなければ上級騎士になった時に困るため、しっかりと学んでいかなければならないらしい。
二限は基本技術学。剣や馬を扱っていく上で、上達をサポートしてくれるのはやはり知識と経験。ここではその知識を磨いていく。剣や馬の種類・見分け方から、正しい持ち方や乗り方、歴史などを学んでいく。
三限は技術観察学。これは剣術や乗馬術を内と外から観察し、それを生徒同士でディスカッションしたり、動きを切り取り絵にして、そこに動きのポイントを書き込んだりして、自分の中の動きのイメージをさらに深めていくための科目だ。
四限はいよいよ実技。武術から剣術、乗馬術まで、様々な技を実際に体を動かしながら学んでいく。この学校のメイン科目だ。
と、ざっとこんな感じだ。毎日同じ科目なのって思った? そもそもそんなに科目がないみたいですね。異世界だからさ。元いた世界の常識は通じないのですよ。超専門学校見たいな? まぁ今日はまだ初日な為、それぞれの科目の説明と、最初の入門を軽くやった程度だったが、それでも専門的なことがたくさん学べることがよく分かった。
そして放課後ーー。
今日の俺にとってはこっちの方が重大なのだ。なんせ、これは俺のラブコメ物語なのだから! え? 聞いてない? コメディーとは聞いてたけどラブコメとは聞いてないって? そりゃそーだよ。言ってないもん。いや、言ってはいるよ。ほら! キーワードのところにラブコメって書いてあるでしょ?
まぁそんなことは今はどっちだっていいのですよ。テューはうまく探り入れてくれたかなぁ。それ、廊下の真ん中堂々と歩くテューみっけ!
「テュー。探りはうまく入れれたのか?」
背後から肩をポンポンと二回叩き、ヒソヒソと声をかける。
テューは天真爛漫な表情で、すぐに答えてくれた。が、まさかそんな探りの入れ方をしていたなんてーーというかそれは探りではない気がした。
とおるA.「この質問でどうボケろと……普通に海音だよ」