冬のある日
今までの短編の中で最長です。暇な方など、読んで下されば幸いです。
今日は久しぶりに雪が降った。この前、たくさん降ったからあとはどんどん積もるだけだと思っていたのに空は私の予想に反して暖かな日の光を地面に注いでいた。だから今年も去年に続いて暖冬かなって、ホワイトクリスマスは無理かも諦め始めていたところだったのに。今年の冬は本当、訳が分からない。
そんなことを思いながら私は昇降口で人を待っていた。つい数時間前までは人がたくさん出入していたのに今はそれもほとんど見うけられない。それもそうだろう。今は夕方の6時だからほとんどの生徒はもう帰ってしまっている。残ってるとしたら部活に入ってる生徒ぐらいだろうか。
『はぁー‥‥』
私は外気のせいで冷たくなってしまった手に息吹きかける。まだ暖かいからと家に手袋やマフラーを置いてきてしまったことが悔やまれる。せめて手袋だけでも持ってくればよかったと小さく呟いた。
『‥‥お前、なんでまだ学校にいるんだ?』
『ぎゃっぁ!』
私の呟きが終わってすぐ頭上から声が降ってきた。
私は人が近付いて来たことに全く気付かなかったので過剰に驚いてしまった。
だいぶ私の声が大きかったようで話しかけてきた相手は片耳を塞いでいる。
『何だよ「ぎゃっぁ!」って。人を化けもんみたいに。』
『な、何だ、誠人かぁ。脅かさないでよ。』私は正体が分かったところでホッと胸を撫で下ろす。それほどびっくりしたのだ。‥‥やっぱり暗い学校ほど怖いものはない。
『何だじゃねぇよ。お前、無部だろ?なんでこんな時間にこんなとこに居んだよ。』
私は誠人の言葉にさっき程ではないがドキリとしてしまった。別にやましいことが有ったりする訳では無いが、今はまださっきの余韻でドキドキいってる心臓が煩かった。だからそれが治まるまで待って欲しかったのに。
私はしょうがないので誤魔化すために口を開いた。
『‥‥提出期限ギリギリの課題を出かしてたの。これで良い?』
ドキドキを誤魔化すため、つい口調がきつめになってしまった。
『そんな機嫌悪くしなくて良いだろ?』
やばい。いつもの私の癖だ。自分に分が悪いと直ぐに口調がきつめになる。けど、直ぐに元にも戻せなくて眉間に軽く皺が寄ってしまう。誠人は軽く溜め息を吐いた。
『‥‥可愛くねぇなぁ。』ズキリ
ちょっと胸の奥の方が締め付けられた。
‥‥本当は誠人を待ってたのに。
そう思ってちょっと悲しくなる。今日は誠人の誕生日で、私はいつもいつも憎まれ口しか叩けないから誠人にちょっとしたプレゼントでも用意して、今までのこと謝って、それで少しぐらい、自分の気持ちに素直になってみようかなって思ってたのに。
結局は空回りで。
『‥‥どうせ‥‥』
気付いた時にはもう口言葉となって溢れ落ちてしまっていた。
『あ?』
誠人が怪訝そうにこちらを見る。
『どうせ私は可愛く無いよ!そんなことあんたにいちいち言われなくても分かってるからほっといて。』
私はそれだけ言ってその場を後にしようと立ち上がった。
『えっ‥‥ちょっ、おまっ、待てよっ。』
そんな私に驚いて、一拍遅れて誠人が追おうとし、こちらに手を伸ばした。
それに気付いた私は伸ばされた手を払おうとして‥‥ベシャっ
転んだ。伸ばされた手を払ったと思ったのに叩いたような感触はなく勢い余った私は顔面から転んでしまったのだ。
私は顔をあげることが出来ず、誠人の手は行き場がなくなったように宙に浮いている。
『‥‥あー、だっ大丈夫か?』
少しの間私達の間に落ちた沈黙を先に破ったのは誠人だった。心配そうな声が上から降ってくる。
『‥‥うーっ。』
私は転んだときに擦り剥いたらしい鼻や手足の痛みとそれに少しだけ上回る転んでしまった恥ずかしさに唸った。
どうしてこうも馬鹿な事しか出来ないのだろう。
『‥‥ほら、立てるか?』今度は誠人から言葉と一緒に手が差し出された。
私はさっきまでの自分の態度を思い出して、その手を取るのを一瞬ためらったが足に力があまり入らずふらついてしまいそうなので仕方なく誠人の親切に甘える事にした。
『ったくお前ってドジだなぁ。』
『‥‥どうせ私なんか。』私はやっぱり可愛くないことしか言えないらしい。また私の口からはそんな言葉しか出てこない。
『‥‥』
私は下を向いた。互いに無言になる。
さっきまで軽く喧嘩をしていた為、気まずい。しかも沈黙が重い気がする。
暫く続いた沈黙の中、誠人が小さく息をはきだしたのが分かる。
『‥‥あー‥‥その何だ。‥‥悪かったよ。可愛くないとか言って。』
息をはきだした後に誠人が謝ってきた。
私はうつ向きながら誠人の話しを聞いていた。
『‥‥あれは、何てゆーかその‥‥』
『‥‥いいよもう。』
私はそれ以上聞きたくなくて誠人の話しに割り込んだ。‥‥言い訳なんかを誠人の口から聞きたくなくて。『何だよ、もういいって、話はまだ終わってねぇよっ!』
『いいもんはいいのっ!私、帰る。』
私は誠人に背中を向けて歩きだした。それを引き留め様と誠人が腕を掴んだ。
『放してよ!私は帰るの。』
『まだ俺の話は終わってないって。』
私は力任せに誠人のてを振り払った。
『私にはないって言ってるじゃない。放っておいてよ!』
半分涙目になりながらそう言った。
(どうせ私なんか、誠人に嫌われてるに決まってる。)
そう思うと目から涙がはらはらと落ちて止まらなくなってしまった。
『ちょっ、どうしたんだよ!どっか痛むのか?』
私はいつの間にか立ち止まっていて、追い付いた誠人は泣いている私を見て慌てた。それに私は首を横に振るだけで。
『‥‥何だよ。何でもないなら早く泣き止めよ。』
誠人は呟くようにそう言ったから私は飽きれられたと思ってさらに涙が溢れそうになった、けど‥‥
『‥‥お前が泣き止まなきゃ‥‥告白も何も出来ねーじゃねぇか。』
その誠人が言った一言で涙が止まった。
『‥‥え?』
私は訳が分からない。
告白?誠人が?誰に?
涙が止まった私の頭の中はそんな疑問がグルグルと渦巻いている。そんな私に気付いたのか気付いてないのか良く分からないが誠人がまた口を開いた。
誠人の話の後で私が天国に行くか地獄に落ちるのかは私次第だ。少しでも素直になれる様に私なりに努力出来たらきっと未来は素敵なものになるよね?
去年の今頃に書き始めた小説でちょとずつ書き進めていたらいつのまにか1年たってしまいました。終わり方も微妙ですが、これ以上書き進めたらますます変になりそうだったので切っちゃいました。文句やらなんやらあったら遠慮なく言って下されば嬉しいです。ではまたよろしくお願いします。