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9.恋バナ

 翌日の月曜日、私は香奈ちゃんの家にお邪魔していた。香奈ちゃんの家は、オートロック付きの高級マンションの最上階の角部屋だ。とても広くて常に綺麗で、お邪魔する度に、本当に素敵なお家だと感心してしまう。


「で? 昨日はどうだったの?」


 香奈ちゃんの部屋で二人になると、学校でも訊かれた事を、再度尋ねられた。

 まあ、学校じゃ話しにくいから、放課後にお土産を渡しにお邪魔する時に説明するって、あたふたしながら言ったのは私なんだけれども。


「あ、あのねっ! お姉ちゃんの彼氏の従弟さんが、私が気になっている人だったの!!」

「え、そうなの!?」

 半ば興奮しながら告げると、香奈ちゃんは目を丸くした。


「そう! 最上秀君って言うんだって! ジュエル以外で会うの初めてだったから、凄く緊張したけど、落ち着いていて、大人っぽくって、フレンドリーに接してくれて、やっぱり凄く良い人だった!!」

 リズニーランドでの秀君を思い出しながら、勢い良く説明する。


「それでねっ、今日の記念にって、キーホルダーを貰っちゃって! その後、好きな人はいるのかって、訊かれちゃったんだけれども、こ、これって、どういう意味なのかな……っ」


 あんなに真剣な、意味深な様子で尋ねられたら、気になって気になって。あちこち歩き回って疲れていたにもかかわらず、昨夜は良く眠れなかった。ちょっと気になる憧れのイケメン君、というくらいの存在だった筈の秀君は、今はもう私の中で、凄く大きな存在になってしまいつつある。

 だから香奈ちゃんに相談したかったのだけれども、気付くと香奈ちゃんは、珍しく呆然とした表情をしていた。


「……えっちょっと待ってちょっと待って」

 私を制止した香奈ちゃんは、何かを考え込むようにしてから口を開いた。


「……優が気になっている人って、最上秀君って言うの?」

「うん、そうだよ」

「それって、最上グループの御曹司の、最上秀君?」

「へ?」


 私は目をぱちくりさせた。

 最上グループ……って、あの有名な日本を代表する企業の、最上グループの事だよね? その御曹司? 秀君が!?


「いやいやまさか! 単なる同姓同名の別人じゃ……」

 私の返事は尻すぼみになった。


 だって、秀君からは何も聞いていない。だから、まさかとは思うけれど、否定も肯定も出来ない。


「じゃあ訊くけど、優の言う秀君って、髪はサラサラの茶髪で、背が高くて、ちょっとクールなイケメンって感じなんだよね?」

「う、うん。そうだけど……」

「その秀君の従兄……唯さんの彼氏さんの名前は?」

「さ、西条誠さん」

「じゃあ間違いなさそうね。その誠さんって、WESTの御曹司の西条誠さんでしょう?」

「ええっ!? そうなの!?」


 WESTって、あの大手アパレルメーカーの!? そんなの、お姉ちゃんから一言も聞いていないよ!?

 すっかりテンパってしまった私を尻目に、香奈ちゃんは感心したように頷いていた。


「ふーん、あの秀君と誠さんがねー。流石、二人共見る目有るわね。と言うか、世間って狭いわ本当」

「か……香奈ちゃん、最上グループの御曹司と、WESTの御曹司と知り合いなの……?」

「うん。親同士が仲良いし。WESTの社長夫人には、いつも良くしてもらっているし」

「そ、そうなんだ……」


 あっけらかんと答える香奈ちゃんに、私はもう、乾いた笑みを漏らすしかなかった。

 流石は天宮財閥のお嬢様だ。本当に顔が広い。


「親に連れられて、偶に西条家と最上家と顔を合わせるんだけれども、大体いつもあいちゃん……あ、秀君の妹さんね。と一緒に、WESTの社長夫人である咲さんに可愛がってもらっているのよ。服をコーディネートしてもらったりとか、格安で譲ってもらったりとか。咲さんは娘が欲しかったらしいんだけれども、子供は誠さん一人だから、その分私達を構いたいんだって。だから女子トークばかりで、秀君とも誠さんともあまり話した事はないけれども、二人共良い人だと思うよ。特に秀君は、浮いた噂一つ聞いた事ないから、優に好きな人がいるのか、って訊いたって事は、もしかしたら優の事、本気なのかもね?」

「え……ええっ!? ええええええーっ!?」


 香奈ちゃんの発言に、私はすっかりパニックになってしまった。

 どうしよう。何だか情報量が多過ぎて、もう頭が付いていかない。


「どうするの? 秀君と付き合うの?」

 ニヤニヤと笑いながら、尋ねてくる香奈ちゃん。


「い、いやでも、まだ告白された訳じゃないし」

「じゃあ告白されたら付き合うの?」

「そ、そんなの分からないよ!」

「いっその事、優から告白してしまえば? 秀君の事、好きなんでしょ?」

「そ、そんな事出来る訳ないじゃない!」

「あら、好きって所は否定しないんだ?」

「あ……あぁうぅ……」


 耳まで真っ赤になっているであろう私を、揶揄ってくる香奈ちゃん。昔から口で香奈ちゃんに勝てた事はないのだから、揶揄い甲斐があるとか言って、私で遊ばないで欲しい。


 散々揶揄われた後、香奈ちゃんから解放された私は、真っ直ぐに家に帰って、お姉ちゃんに誠さんの事を問い質した。


「そうよ。誠さんは、WESTの後を継ぐ予定なんだって。あれ? 言っていなかったっけ?」


 お姉ちゃん、私そんなの一言も聞いていない!!

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