表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
片想いの、その先へ  作者: 合澤知里
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/19

11.プレゼント

 翌週の土曜日、私は秀君と約束したデパートへと向かっていた。家を出る時に、何だかやけにお母さんが楽しそうにしていたのと、何故かお父さんが不機嫌そうにしていたのが気になったけれど、秀君との待ち合わせと言う重大な出来事がすぐそこまで迫っているので、そんな些細な事はすぐに記憶の端へと追いやった。


 最寄り駅で電車を降りて、待ち合わせているデパートの前に辿り着く。まだ五分前だけど、秀君は……居た!

 ボーダーシャツにネイビーのジャケット、白のスラックス姿の秀君は、本当にモデルみたいで格好良い。通りすがりの人達も、ちらちらと秀君に視線を送っている。

 うう、何だか声を掛けづらいなぁ……。今日の私は白のトップスに青の膝丈スカート。頑張って女の子らしくしてみたけれども、あんな素敵なイケメン君と待ち合わせているのが、私で何だか申し訳なくなってくる。


「優ちゃん!」


 躊躇していたら、秀君の方が私を見付けて声を掛けてくれた。笑顔で駆け寄って来てくれる秀君に、顔が赤くなってしまう。


「ご、ごめんね。待たせちゃったかな?」

「ううん、今来た所だよ。今日は来てくれてありがとう」

「ううん、私の方こそ、今日は宜しくね」


 秀君と連れ立ってデパートの中に入る。

 や、やっぱり無言だと緊張する。何か話題話題……。


「き、今日はデパートで、何か買いたい物でもあるの?」

「ああ、もうすぐ妹が誕生日なんだ。プレゼントを買いたいんだけど、良かったら、優ちゃんのアドバイスが欲しいなって思って」


 そうなんだ。そう言えば、香奈ちゃんが秀君の妹さんの話をしていたっけ。秀君って、妹さん思いで優しいんだな。


「私で良かったら、喜んで」

 そう言ってから、はたと気付いた。


「でも、本当に私で良いの? 香奈ちゃんの方が、妹さんの事を知っているみたいだし、適任だったんじゃないかな?」

「香奈ちゃん?」

 秀君は目を丸くした。


「うん、天宮香奈ちゃん。この前、偶に秀君達と会っているって聞いたの。私の友達なんだ」

「え!? あ、そうだったんだ!?」


 驚いたように大声を上げ、次いで視線をあちこちに彷徨わせる秀君。そんなに吃驚したのかな?


「え……っと、その、この前リズニーランドに行った時に、優ちゃんの好みと、愛の……妹の好みが合いそうだなって思ったから」

「そうなんだ。じゃあ、今日は私の好みの物を勧めれば良い、って事なのかな?」

「うん。その方向でお願いするよ」

 秀君の言葉に、私は笑顔で頷く。


 プレゼントはやっぱり相手の事を考えて、少しでも好みに合う物をあげたいけれど、私は秀君の妹さんの事を知らない。だけど、私の好みをアドバイスすれば良いなら、少し気が楽だ。

 秀君の妹さんと好みが合うと言う偶然に、ラッキーだな、と私はちょっぴり浮かれてしまった。


 ***


 まさか、優ちゃんと香奈ちゃんが友達だったなんて……!


 混んでいるエレベーターを避け、エスカレーターで上の階へと移動しながら、思わぬ事実に、俺は内心で動揺していた。


 確かにプレゼント選びなら、愛と面識がある香奈ちゃんの方が、アドバイザーとしては適任だと俺も思う。だけど、あくまでもそれは優ちゃんとのデートの口実なのだ。何とか優ちゃんの方が適任だという理由を咄嗟に捻り出した俺、偉い!

 それにしても、誠君と言い香奈ちゃんと言い、俺よりも優ちゃんの事を知っているし親しいしで羨まし過ぎる。そして世間って、本当に狭い……。


「妹さんには、何をあげるかもう決めているの?」

「ううん。小物とか雑貨の類にしようかなとは思っているんだけどね」

「そうなんだ。良い物があると良いね」


 にこりと笑う優ちゃんに、思わず顔が綻ぶ。

 夢にまで見た優ちゃんと買い物デート! ああ、俺は今、幸せだ!!


 目的の階に着き、色々な商品を優ちゃんと見て回る。派手過ぎず実用的、だけどちゃんと可愛さも持ち合わせている、そんな商品が優ちゃんの好みのようだ。口から出まかせだったけれども、本当に優ちゃんと妹の好みが似ているようで、親近感が湧く。少しずつだけど、また優ちゃんを知る事が出来て、凄く有意義で、楽しい時間だった。


「妹さんに、気に入ってもらえると良いね」


 優ちゃんが一目惚れしたと言うポーチを、愛への誕生日プレゼントにする事にした。コンパクトだけれど色々収納しやすそうで、可愛い上に手触りも良い。きっと愛も気に入ると思った。


「優ちゃん、今日は付き合ってくれてありがとう」

「どういたしまして」

「あちこち見て回ったから、流石にちょっと疲れたね。そこのカフェで休憩して行こうか」


 今日の目的は既に達してしまったけれども、まだ優ちゃんと一緒にいたい。話したい。優ちゃんをもっと見ていたい。


 平静を装いつつも恐る恐る誘ってみたら、優ちゃんは大きな目を一瞬だけ丸くした後、間髪入れずに満面の笑みを見せながら頷いてくれた。一気にテンションが上がって、思わず小さくガッツポーズをしてしまったけれど、気付かれていなかっただろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ