導く光
目的地まで3時間近く。
いつも聞く曲を流して、のんびりと走ってゆく。
2時間走ったところで一度だけ休憩を取る。
小腹がすいたので、たこ焼きを買って席についた。熱々のたこ焼きに息を吹きかけて食べようとした時、設置されているテレビから速報が流れた。
「今日、午前11時14分東京都○△区にて、コンビニに入った男が店員を刃物でさし、お金を奪って逃走しました。なおコンビニの店員、中川みのるさんは緊急搬送されましたが、出血多量で死亡が確認されました。犯人と思われる男の顔を監視カメラにて確認中。近辺の住民は外をでる際に十分注意してください。」
「死ななくてもいい人がなんで死ぬんだろう…」
芙美はそう呟いて、心の中で手を合わした。
たこ焼きを食べて、トイレに行き用をすませて車に戻った。
そこから目的地の宿までははやかった。
チェックインをして部屋に案内されると、ベランダから海がすぐ目の前にみえる。
どの部屋も平屋の家作りになっていて独立している。そしてベランダから直ぐに浜辺にでることが出来るリゾート風のホテルだった。
「では、夕食は1時間後ですので、それまでゆっくりおくつろぎ下さい」
芙美はベランダに設置してあったハンモックに腰をかけて寝転んだ。
目を閉じると、そのままゆっくりと深い眠りへ落ちてゆく。
どれくらいたっただろう。
目を開けると、すっかり日が沈み辺りは静寂に包まれていた。
「夕食の時間…!!」
芙美は慌てて身体を起こすと、優しい光が辺り一面を照らし出していた。
あまりの美しさに目を奪われた。
これが、円香が見たいと言っていた。
「月の階段…」
漆黒の海に月の光が反射して、それが月へと続く階段のようになっている。
よく見ると海の浜辺に沢山の人がいた。
芙美は靴も履かず、素足のまま浜辺へと出た。