セルさんの生まれ故郷に行く
清々しい朝だ。私に悩み事が無かったら、修練場をランニングでもしたいくらい気もちの良い朝だ。悩み事は何だって?前回を読み飛ばしちゃったんですか?龍種の頂点に立つエンシェントドラゴンのアリーナさんが私を神の巫女と崇めて、私の護衛になったんですよ。それだけなら問題ないんですが、今までの護衛は忍者のアヤメさん達でしたから、影から護衛してくれていましたが。アリーナさんは私の横で立っています。この状況をリフレッド先生にどう説明し。どう潜り抜けるかが、私の今の悩みです。誰に説明してるのかって?自分に説明して状況の打破を考えているんですよ。もう学校休んじゃおうかな?駄目だリフレッド先生が心配してお見舞いに来ちゃう、どうしようもないな。
リフレッド先生にも新しい護衛の人って事で納得してもらおう。
「それじゃぁ朝食にしましょうか?龍聖、ローナ、アリーナさん食堂に行こう」
「リーサちゃん後ろの美人さんは誰だい?」
「あっ、おばちゃんおはよう。新しい護衛の人だよ」
「護衛の人って、今までのござるの人はどうしたんだい?」
「何で知ってるの?」
「たまに食堂でご飯食べてたからね」
「アヤメさん何やってたんですか・・・・」
「まぁ護衛の人って言っても、お腹は空くからしょうがないんじゃないかい?」
「まぁそうですね、そんなわけで今日から宜しくお願いします。お金が必要でしたらお支払いしますので」
「リーサちゃんからお金なんか貰えないよ。業務用冷蔵庫がどれだけ助かっているか、買い出しの回数も減ったし。悪くなる食材も減ったしね」
「そう言って貰えると作った甲斐があります」
「じゃぁ朝の定食4人前で構わないかい?」
「アリーナさん普通の人の1人前で足りますか?」
「この状態のときは低燃費なので問題なく」
「それは良かった、おばちゃんのご飯は美味しいですよ」
「リーサちゃん褒めても何も出ないよ、ちょっと大盛にしちゃうけど」
「ありがとうございます。そんなおばちゃんが大好きです」
「さぁ、席に行きましょう」
席に着くとセルさんがダッシュで来て頭を下げた。
「アリーナ様おはようございます」
「ん?お主は龍人族か、では昨日の通信も聞いているな」
「はい、もちろんです。リーサさんが神の巫女であると・・・」
「おおおおおお、セルさんそれは内緒に!!」
「あっ、これは気が利きませんで」
「喋り方も今まで通りでお願いします・・・」
「そ、それは・・・」
「リーサ殿がそう言っておられるのだ、感謝するがよい」
「それでは申し訳ありませんが今まで通りに」
「リーサ?セルさんはどうしたの?」
「どっどうしたんだろうね~?」
「おはようリーサ、ローナ、セル、龍聖ちゃん」
「リフレッド先生・・・」
「おや?そのかたは?」
「あっ私の新しい護衛の方です。前の忍者の方とちがって隠れて護衛が出来ないので。私のすぐそばに居るんです」
「そうなんだ~、私は担任のリフレッドです宜しくお願いします」
「そうか、私はアリーナだ」
「それにしても流石護衛ですね、隙がありません」
「なに、これくらいは普通じゃ」
普通に受け入れられた。良かった~これで問題なく授業に出られる。
「これで普通って事は本気を出したら、もっと凄いんですね?今度一回手合わせをお願いできませんか?」
「せ、先生それは止めておいた方が」
「なんでセル?」
「アリーナ様は龍人でも有名な方で、普通の人では死んでしまいます。いや先生は普通じゃないんですが。それでもやめておいた方が良いかと」
「そうなると、ますますやりたくなるわね。やはり今度一回」
「先生アリーナさんは私の護衛なのでそうゆうのはちょっと・・・」
「そう?残念ね~せっかく強い人と戦えると思ったのに」
「まぁ、人生は長いこれからもっと強い者と戦う事もあろう」
「そうですね、これからまだまだ長いですもんね」
リフレッド先生の戦闘狂にも困ったものだ、だがこれで諦めてくれたようだ。
それにしても、昨日の夕方まではエンディアと仲よくお話ししていたのに、今日のこの緊張感はなんだ?もうエンシェントドラゴンが傍に居るってそれだけで緊張する。パパンが知ったらどう思うんだろう?やっぱり戦いたくなるのかな~。絶対に内緒だな・・・
「リーサさん、いきなりなんですが。リーサさんを龍人族で歓迎したいと言われまして。そのホスト役に私が選ばれたのですが、一緒に街に来ていただけませんか?もちろんアリーナ様もご一緒に」
「え~っと。アリーナさんどうしましょう?」
「良いではないか、歓迎したいと言っておるのだから行く事にしよう。何ならワシが乗せていくぞ」
「それは目立つので、昨日乗って貰ったヘリで行きましょう」
「リーサさん、龍聖ちゃん、それでは今週末の土日に私達の街にいらしてください」
「場所が分からないのでセルさん案内お願いしますね」
「分かりました、操縦席の横に乗れば良いですか?」
「はい、お願いします」
そしてローナやリフレッド先生が疑問に思う中、私は龍人族の歓迎会に呼ばれるのであった。そして週末の朝早くセルさんと待ち合わせした時間だ。場所がチョット遠いらしく早めに出ようとなった。そして待ち合せ場所ではすでにセルさんが待っていた。余程アリーナ様が怖いのか、私の神の巫女が問題なのか、その両方か、とにかくかなり早くから来ていたみたいだ。
「お待たせしました、待ちました?」
「いえいえ、全然大丈夫です」
「それは、待ったって事だよね?」
「いや、全然待ってないです」
「まぁいいか、急いで行きますか?」
きょうは戦闘ヘリだちょっと遠いみたいだし、戦闘ヘリと言っても普通の戦闘ヘリだと2人乗りだが、ソ連開発のハインドDは完全武装した人間が8人乗れる優れものだ。今日は人数も4人だしね、早くて人数も乗れてとなるとこれだろう。
「今日の乗り物はこの前の物より小さいのう?」
「こっちの方が早いのですよ、アリーナ様」
「そうなのか?この前の物も十分早かったが、それ以上のものがあるのか」
「2人乗りでよければもっと早い物もありますけどね」
「なんじゃそれは?一度乗ってみたいのう」
「前に私と龍聖、後ろにアリーナ様なら何とか乗れるかもしれませんが、かなり早いですよ?」
「面白そうじゃないか、今度乗せて見てくれまいか?」
「ハリアーって言うんですが、今度作ってみますか?音に近いスピードが出ますよ。本当は滑走路があればもっと早い乗り物もあるのですが。この世界にはなくて・・・」
「何じゃ?その滑走路と言うのは」
「飛行機が飛ぶための施設ですね、ちなみに飛行機と言うのは。ヘリコプターより早く飛べる魔道具です」
「リーサ殿は何でも作れるのじゃな」
「何でもってわけではありませんが、一応神の巫女らしいので何でも対応します」
「結局何でも対応するのではないか」
「そう言えばそうですね」
「それは良いのですが、そろそろ行きませんか?」
「セルさんごめんなさい、どっちに向かってどれくらい飛ぶの?」
「私が王都に来たときは馬車で5日でした」
「じゃぁ1時間オーバーくらいかな?セルさんはドラゴンになって王都に来なかったの?その方が早いでしょ?」
「そんなことしたら王都がパニックになりますよ」
「そっか、そうだよね、じゃぁ取りあえず行きます」
「北西に向かって下さい」
「はぁい」
「このまま飛んで、町が見えてきたらそこが私の生まれ故郷ドルーガです」
「分かりました。このまま飛べばいいんですね」
そして暫く飛んでいたら大きな街が見えてきた。全体にでかい、何と言っても建物がでかい。ドラゴンがそのまま中に入れるくらいにでかい建物である。やはり、ドラゴンの姿でも生活できるように作っているのか、それともドラゴンの友を呼ぶためにでかいのか?どっちだ?
「セルさん、町の大きさがやたら大きく見えるんですが。ドラゴンのまま生活する為か?それともドラゴンの友達を呼ぶためかどちらですか?」
「ああどっちも正解ですが、更にドラゴン風邪で変身してしまった時に、大きく無いと家が壊れるからですよ」
「ああ、普通のドラゴンと変わらないんですね。龍聖もドラゴン風邪で変身が出来なくなりました」
「そういえば龍聖ちゃんはホーリードラゴンでしたね。ドラゴン風邪にかかったんですか?」
「かかりました。治すのが大変でした・・・」
「ごめんね、ママ」
「いいのいいの、風邪くらい誰でも引くから気にしないで」
「それで、ヘリはどこに降ろせば良いですか?」
「街の入り口に降ろしてください」
「そこでパレードの準備をしているはずなので」
「パレードですか、凄い歓迎ぶりですね?」
「それはもう。アリーナ様が認めた神の巫女ですので、みなが一目会ってみたいとこんな感じに」
「アリーナさん、私の事どんな風に伝えたんですか?」
「それはもう大きな声で『神の巫女が現れた!龍種の皆はこの方を最大限のもてなしで迎えよ』といきなりのお告げだったので、龍人族も他の龍種もびっくりして情報収集に勤めまして。私の学校に居るのがそうかもと言う話になったのです。そうしたら『すぐに街へお連れしろ!街を挙げての歓迎会だと』こんな感じです」
「もう、私逃げられない感じですね」
「はい、今更逃げないで下さい」
「良いではないか。祝ってくれるというのだから、祝われておれば良いのじゃ」
そしてヘリを街の入り口に降ろす。すると中から凄い数の人が出てきた。そしてヘリは囲まれた。これじゃヘリから降りれません。そうすると。
「邪魔じゃ!このままじゃこの魔道具から降りられんではないか」
と大音量で叫ぶアリーナさん、そうすると人々が少しづつ離れていく。ちょっと可哀そうになってきた。折角呼んでくれたのだから今日はサービスしよう。でも龍人族にとって何がサービス何だろう?
「セルさん、皆さんは私が何をすれば感動します?」
「何もしなくても、ただ笑顔で手を振っているだけで満足だと思いますよ?」
「そんなものですか」
「そんなものです」
「そんなものじゃろうな」
「ママ大変だね」
「その横に龍聖もいるのよ?何他人のように言ってるのよ、ママが貴女を一人にすると思って?」
「しないね・・・私も行くのかぁ恥ずかしいなぁ」
そんな会話をしながらパレードの準備が始まった。