遺跡へ(1)
チェスター王国の依頼も無事にこなし、冒険者ギルドに戻ってきたらチェスター王国の皆さんから拍手で迎えられた。やはり病気を治し、新たな王様の擁立に貢献したことが大きいだろう。そして新生チェスター王国の国民に迎えられ冒険者ギルドに入って行く、中では冒険者からも拍手で迎えられた、気恥ずかしいのですぐに受付嬢に話をしてギルド長の部屋に案内してもらう。
「皆さんありがとう、改めまして、わたしは冒険者ギルド長キャピルって言うんだ宜しくね!それにしても今回は助かったよ」
キャピルはかっぷくの良い女性のギルド長だった、さながら肝っ玉母さんと言ったところか。
「いやいや、私達がもう少し早く依頼を受けていれば、被害ももう少し抑えられたのに申し訳ない」
「いや、こればっかりは運だからね、どうしようもないさ、何せ人数が増えたとはいえ、特Sランクは世界に4人しかいないんだからね。そのうちの3人が、この国に来てくれただけでも感謝するってもんだよ」
「来たって言っても、残念な事に、僕はほとんどやる事が無かったけどね」
「そうね、私もやる事が無かったわ、今回はリーサが一人で頑張っちゃったわね」
「すみません、ランスロットさんヴィヴィアンさん、私が出しゃばったばっかりに・・・」
「良いんだよリーサ、今受けてるクエストは、リーサとランスロットの試練みたいなものなんだから、バンバン出しゃばって、ドンドン身に着けて頂戴」
「この二人は、特Sランクになったばかりだから、先輩が面倒を見てるって事かい?」
「そうですキャピルさん」
「さん付けなんてしなくていいよ、キャピルって呼んでおくれ」
「ではキャピル、特Sランク宛の急ぎの仕事は入っているかい?」
「今は無いね、Sランクでもこなせる護衛依頼が数件入っているくらいだよ」
「そうか、じゃぁ少し時間が浮いたね、リーサ、以前行った遺跡にまた行ってみたいんだけど。どうだろう?」
「ヴィヴィアンさん私は構いませんが、先に古語の勉強をしてから向かうのはどうでしょう?」
「古語は私も結構勉強したんだけど、まだ足りないかな?」
「ヴィヴィアンさんは大丈夫かもしれませんが、ランスロットさんが行くだけ無駄になってしまいます」
「リーサ、僕も古語なら少しは理解できるけどそれでも無理かな?」
「あそこの古語は少し特殊なんです。神々の時代から使われている古語ですから、特別な先生に習ってから行った方が良いと思いますよ」
「その特別な先生と言うのにあてはあるの?」
「大丈夫です、その辺は任せておいてください」
「は~、やっぱり特Sランクの人ともなると、人脈も違うんだね?神々が使いし古語何て私達には一生縁が無いよ」
「キャピルさん、普通は縁が無いのが当たり前なんです、私も偶然縁を持っただけですから」
「そういうものかい?リーサちゃん」
「そうですよ」
さて久しぶりにスターディ様の力を借りますか、それとミネルヴァ様にあの遺跡が安全か聞かなくっちゃ。
「それじゃぁ今回の依頼料を渡してしまおうかね」
「そうね、私達も次の目標が決まったから移動したいし、お願いするわキャピル」
「今回先に決められていた依頼料は、王家を守る為だけのものだったけど、その依頼も完璧にクリアして、更に新たな王から追加の依頼が来た事になっているから依頼料は多いわよ」
「最初の依頼は、納得がいかない部分が結構あるんだけどね」
「まぁヴィヴィアンさんそう言わないで、貰ってちょうだい、各ギルドに治療法を伝えただけでも功績になっているんだから」
「それもリーサの手柄なんだけどね」
「まぁそう言わずに受け取ってちょうだい、白金貨300枚よ(日本円で3億円)これだけあれば暫くはのんびりできるでしょ?」
「それがね~特Sランクになると装備が高くて中々厳しいんですよ」
「そうなんですかヴィヴィアンさん?」
「そうなのよリーサ、それに納得のいく装備も中々無いしね」
「そう言えばパパンに頼んだ剣はどうなったんですか?」
「そう言えばリーサの家に閉じ込められたり、お姉様が王太子妃になられたりでうやむやになっていますね」
「私が閉じ込めちゃったのもダメだけど、パパンたら!!いくら忙しかったからって、受けた依頼はちゃんと作らないと駄目じゃん!!ヴィヴィアンさんごめんなさい。帰ったらパパンにすぐに作らせます」
「良いのよ、流石にあの状況で作るのも無理があっただろうし」
「本当にごめんなさい」
「良いんだってば、リーサのパパも王位を継承するのに忙しくて、それどころじゃなかったんだろうし」
「それはそうなんですが・・・・」
「リーサさんて王族なんですか?」
「内緒ですよキャピルさん」
「はい、分かりました、今までの失礼の数々平にご容赦を」
「あぁ、そんなに畏まらないで下さい、私はただの冒険者ですから」
「ただのって言っても特Sランクですけどね・・・・」
「まぁそれはそうなんですが・・・・はっははは」
もう笑ってごまかしちゃえ
「リーサ?笑ってもごまかせないからね?」
「ヴィヴィアンさん酷い、人が何とかこの場を納めようとしているのに」
「だって全然ごまかせてないんだもの」
まぁそんなこんなで、白金貨300枚を貰ってギルドを後にした。報酬は皆で均等に割った、今後も誰かが得意な分野で活躍することもあるだろうからだ。その時に揉めないように、パーティを組んでいる間は報酬は均等に割る事になった。そして今後の予定としては、ミネルヴァ様に遺跡の安全性も聞かなきゃいけないし。パパンにヴィヴィアンさんの剣も作ってもらわないといけないし。スターディ様に勉強も教えてもらわなくちゃいけないし、やる事はいっぱいだ、
ドワーフ王国の王都、フォンテーンに帰ってきて、まずはパパンを叱る所からだ何と言ってもヴィヴィアンさんの装備を作っていなかったんだからね。
「ただいま~、パパンいる?」
「お帰りリーサ、リーサもヴィヴィアンもランスロットも病気にかからなかったかい?」
「ご心配おかけしましたお姉様、皆無事ですわ」
「そうだよママン、その辺はしっかりと防いでいたから、ところでママン。パパンは?」
「この時間は聖剣のところじゃないかな?」
「そっかぁ、じゃぁ邪魔できないね」
「そうね何と言っても、国の為にやっいる事だからね。どうしたのパパに何か用があるの?」
「あのさ、前にパパン、ヴィヴィアンさんに剣を作る依頼を受けてたでしょ?あれを忘れてるんじゃないかなぁって思ってね・・・・」
「あぁ、あったわねそんな事も、でもパパの事だからもうできてると思うけど」
「えっ?そうなの?私はてっきり忘れているものだと思ってた」
「あのねリーサ、パパの名誉の為にも言っておくけど、パパは受けた依頼は必ず完遂するのよ」
「そうだったんだ~、普段のパパンからは想像できなかった・・・・しかも最近では跡目の事でゴタゴタしてたし」
「そ・れ・で・も・パパはやる時はやる人なのよ。覚えておきなさいリーサ」
「は~い覚えておきます」
「お姉様もリーサもごめんなさい、私が変な依頼をしたせいで・・・」
「良いのよ良いのよ、鍛冶師に剣を作って下さいなんて普通の事なんだから」
「そうなんですが、それでも何かリーサに誤解をうまさせたみたいで、悪いなぁ・・・っと」
「大丈夫ですよヴィヴィアンさん、今回の件で私はパパンの認識を改める事ができました。それだけでも良い収穫です」
そこへパパンが、聖剣アリサとの会話を終えて戻って来た。
「パパンお疲れ様、アリサは元気にしてた?」
「おぉ、あの聖剣はいつも元気だぞ。リーサは元気だったか?」
「うん、元気だったよ、ところでパパン、前にヴィヴィアンさんに頼まれた剣の事覚えてる?」
「おぉ、そう言えばそんな事もあったなぁ、すっかり忘れておったよ」
「えっ?じゃぁまだ出来てない?」
「あぁ、出来ていないぞ、何と言っても王位継承の件で忙しかったからな、それがどうした?」
「ママン?パパンは何を完遂する男だって?」
「パパの馬鹿!!もう口きいてあげない!」
「な?何でだ?ママ?ワシが何かしたのか?」
「何もしなかったから怒ってるの!!」
「なんだそりゃ?リーサ、ママは何で怒ってるんだ?」
「ママンは、パパンが、ヴィヴィアンさんの剣をもう作り終わってるって豪語しちゃったの「パパは受けた仕事は完遂する人よ」って、だから後輩のヴィヴィアンさんに恥ずかしくて怒ってるの!!」
「あぁ、そう言う事か、それなら問題ない剣はほぼ出来上がっている。あとはヴィヴィアンさんに合わせて調整するだけだからな。ちょうどいいヴィヴィアンさんもいるし今から調整するか?」
「あら?そうだったの?やっぱりパパはやる時はやる男ね、信じていたわよ」
「ママ?今の今まで口きかないって言ってたのは誰だ?」
「もう!男が細かい事を言わないの!」
「まぁ良いかヴィヴィアンさんどうだい?時間はあるかな?」
「はい、勿論大丈夫です。宜しくお願いします」
なんかママンのテンションが上がったり下がったり大変だったが、ヴィヴィアンさんの剣は最終調整だけであとは仕上がっていたみたいだ。
「ヴィヴィアンさん重さや長さはどうだい?注文通りに仕上がっているかい?ワシとしては握りの部分を調整すれば完成じゃと思っておるんだが。どうじゃ?」
「いえ、このままで充分です。私の思っていた通りの物が出来上がりました」
「そうかそうか、それならば良かった」
「それでお会計はいかほどに・・・・・?」
「いらんいらん、嫁さんの知り合いから金は取れんさ。それにワシの鍛冶師としての最後の仕事にふさわしい物を作らせてもらった。逆に感謝しとるよ」
「いえいえ、これだけの物を作っていただいて、無料だなんて悪いです。しっかりとお支払いしますので言って下さい」
「分からんお嬢さんだな、金はいらん」
「でも、だって・・・・」
「わかった、じゃぁ暫くの間リーサの面倒を見てやってくれ。まだまだ子供で心配だからな」
「分かりました、そう言う事でしたらお引き受けします」
そうして、ヴィヴィアンさんは無事に剣を手に入れて大喜びだった。それから私はミネルヴァ様と話すために、ヴィヴィアンさん達を残し、子供部屋に向かった。そしてタイミングの良い事にリーネとリーニャはお昼寝中だった。だが起こすと面倒なので小声で話しかける。
(ユースティティア様、ミネルヴァ様起きてらっしゃいますか?)
『起きているが、小声で話してもリーネとリーニャが起きる可能性があるから、念話で構わないぞ』
『わかりました、まずはお二人に魔力の譲渡をします』
『おぉ、それは嬉しいな、何と言ってもリーサの魔力は特別旨いからな』
『そう言ってもらえると嬉しいですユースティティア様。ちょっと魔力サービスしときますね』
『わっ私も美味しいと思っているぞリーサ!!』
『わかりました、ミネルヴァ様にもサービスしときます』
『そっそうか良かった』
『そんなに私の魔力って美味しいんですかね~?』
『それはもう凄くおいしいぞ、一流のフレンチを出されたとしても、リーサの魔力には敵わないな』
『神様もフレンチなんか食べるんですか?』
『たまに下界に下りて、食事をしたりするんだよ』
『そうなんですね~。あ、そうそう今日はお二人に用があったんでした』
『どうした魔族でも復活したか?』
『いやいや、そんな大それた事では無いのですが。以前魔眼の古語が書かれた遺跡があったじゃないですか。あそこに書いてある古語って全部安全な物なのかなぁ~って思いまして。お二人に聞きに来ました』
『あぁ、なんだそんな事か、基本的に安全な物が多いぞ、ただ一つ破滅の呪文があるけどな』
『何ですか?そのヤバそうな呪文は・・・』
『この世界が無くなる呪文だが、最後まで読まなければ問題ない』
『いやいやいや、問題だらけじゃないですか、もし分からないで最後まで読んじゃったらどうするんですか?』
『だから大丈夫だって声に出して読まないと効果は無いし途中で嫌になるほど『本当にこの先を読みますか?』って確認されるから、しかも『本当にこの先を読みますか』を読むと最初からやり直しだし、心配だったら破壊しちゃえばいいじゃないか』
『良いんですか?そんなことして』
『かまわないよ、どうせ読める人なんてもうほとんど残っていないんだから』
『それに、この世界を破壊できるなんてものは、無くなった方が良いのさ』
『お二人がそうおっしゃるなら、破壊してきます』
『それ以外にはヤバイものはありませんよね?』
『無いないあとは問題無い物ばかりさ』
『だから安心して行っておいで』
『わかりました、もう少し古語の勉強をしてから出かけます』
『誰に教わるんだい?』
『スターディ様に教わろうかと』
『あぁ彼なら間違いないね』
『おっと二人ともそろそろ起きそうだ、話はここまでかな?』
『まぁ気を付けて行っておいで』
『えっ?破滅の呪文以外は問題ないんですよね?』
『あぁ、そうだけど、スターディが興味本位で読まないか心配なだけさ。おっと時間だそれじゃぁね』
『あぁ、最後にそんな不安になるような事を言って終わりにしないで下さいよ』
「ふぁあ、ねぇねだ、おはよう」
「はい、おはようリーネ」
「おぎゃぁおぎゃぁ」
「あぁリーニャはおっぱいかな?ママンのところに行かないと、リーネ一緒にママンのところに行こう?」
「うん、ねぇねと行く」
そんな事で一抹の不安を残したまま、リーサはみんなの元へ戻るのでした。