クラスメイトのこれから
ドワーフ王国での一件も片付き、昼過ぎとはいえ冒険者育成学校へ戻って来たリーサ。午後の授業は無いはずなので食堂に顔を出してみた、するとSクラスのみんなが食事をしていた。リーサも昼食を取っていなかったので皆の所に向かった。
「みんな~、一昨日ぶり~」
「おぉ噂のお姫様がやってきたね」
「シフォンさん何ですか、その噂のお姫様ってのは?」
「いやね、今ちょうど『リーサってばお姫様だったんだねぇ』って話をしていたんだよ」
「あぁ、そう言う事ですか、成り行きじょうお姫様ですけど、本人はそう思っていませんので対応は今まで通りでお願いします」
「そう言うだろうと思ってましたわ」
「私も思ってましたわ」
「ベルウッドさんにエリーゼさんには分かられてましたか」
「ベルウッドとエリーゼだけじゃないですよ、僕らもみんなわかってましたよ」
「ナムサンさんもって言うか、みんなですか?」
「そりゃそうさ、今までのリーサを見ていたら、いきなり『今日から私の事は姫様と呼ぶように』とか想像できないだろ?」
「シフォンさんの言う通りですね」
「何よりローナが絶対にそうならないって言い張ってたからな」
「流石ローナ、伊達に付き合いが長くないね!」
「そりゃそうでしょ、生まれた時からほとんど一緒にいるんだから」
「だよね~親同士、仲が良かったもんね~」
「でも、うちのパパが『なんで俺に言ってくれなかったんだ』ってチョット拗ねてるわ」
「あぁ、ごめんね~、でもうちのママンも知らなかったくらいだから勘弁してあげて」
「マリアさんも知らなかったんだ?」
「そうなんだよ、パパンはバレなければ死ぬまで話す気はなかったみたいだよ」
「そこ迄なんだ?王族になるってそんなに嫌な事なのかね?」
「そうみたいだよ・・・・パパンは王国の民を導いていく自信が無かったみたい」
「Sランク冒険者になったらバレそうだけどね」
「バレそうになったから鍛冶師になったみたいだよ」
「そっか~ヘンデルさんも色々大変だね」
「ほらほら二人しか分からない話をしてないで、リーサも食堂に来たんだから、食事にするんだろ?みんなが食べ終わる前に食事を貰ってきなよ」
「そうだった、私もお腹空いてたんだった、シフォンさんありがとう。危うく友だちがいない場所で寂しくお昼食べる事になる所だった」
「流石にそんな事はしないよリーサ、ちゃんと食べ終わるまでみんなで待っててあげるから、食事を取っておいで」
「ありがとうカナタさん、行ってきます」
「はい、行ってらっしゃい」
「おっばっちゃ~ん、今日のお勧めは何?」
「姫様のお口に合うか分かりませんが、カツカレーと中華丼です」
「やめてよおばちゃん、私はリーサ!自分の国にいないときはただのリーサだよ、それにおばちゃんの料理はめちゃくちゃ美味しいよ。だから今まで通りリーサって呼んで!」
「そうかい?リーサちゃんがそう言うならそうしようかね、じゃぁリーサちゃん今日は何にする?」
「カツカレー下さい!」
「あいよ!チョット待っておくれね・・・・・はいお待ちどうさまカツカレーだよ」
「ありがとう、おばちゃんこれからも仲良くしてね」
「勿論だよ」
「ありがとう、じゃぁいただきます」
「あいよ、育ち盛りなんだから残すんじゃないよ」
「は~い」
みんなの所に戻るとみんな食事は終わっていた、だけど約束通り待っていてくれたなんて優しい仲間だ。
「お待たせ、すぐ食べちゃうね、カレーは飲み物だから」
「いやいや飲み物じゃないから・・・ゆっくり食べなさい」
「は~い」
カナタさんにたしなめられてしまった
「リーサは食べながらで良いから聞いてくれるかい?」
「良いけどどうしたのシフォンさん、そんなに真面目な顔して」
「私だって真面目な顔位するさ、まぁそんな事は良いんだ、話は私らの今後についてだ」
「どういう事?」
「リーサが特Sランクになったから指名依頼は断れなくなっただろ?勿論それ相応の理由や違約金を払えば別だけどさ」
「そうだね・・・・」
「そうなると、リーサがいない間は私達も下手に依頼を受けれないって事なんだよ。やっぱり私達だけじゃまだまだ戦力不足だからね」
「みんなに渡してある武器を使えば、そうそう戦力不足にはならないと思うけどね」
「それは最初から準備していたらな・・・・だけど急に襲われた時はどうするんだよ?」
「今のみんななら、ドラゴンの恩恵でどうとでもなると思うよ?」
「そりゃうちらだけならな、例えば護衛対象がいたらどうするんだよ?」
「護衛対象の馬車や荷物をミニ収納ボックスにしまって、護衛対象は96式装輪装甲車に乗ってもらって移動すれば問題ないでしょ?何ならみんなの96式装輪装甲車の内装を豪華に変更するけど?」
「そうだね・・・・・問題ないね・・・・・何だい何だい、何か難しく考えてたのがバカみたいじゃないか?」
「まぁもっと裏技を使うなら、転移で移動するって手もあるしね?あっ、でもこれは一度行ったところじゃないと使えないか・・・・もしくはローナに護衛対象の意識を除いてもらうとかかな?」
「そう言われるとリーサがいなくても何とかなりそうだな?」
「あと気を付けるのはいちゃもんを付けてくる貴族くらいですか?」
「そうだな、でもその辺はこれからの授業でリフレッド先生に習えばいいだろ?って言うかリーサもそのつもりだろ?」
「そうですよ、そんな事でもしないと6歳児は騙されちゃいますよ。まぁ騙されたら相手を始末しますけど
・・・」
「リーサは本気か冗談か分からないときがあって怖いな・・・・」
「何言ってるんですかシフォンさん、本気ですよ!特SランクやSランクに喧嘩を売ってくるような馬鹿は、いなくなった方が世の中の為ですよ。みんなも本当はSランクなんですからガンガンやっちゃいましょうよ」
「そうだなぁ・・・・うちらもSランクなのを公表した方が良いのかな?」
「そうですよ、それで喧嘩売ってくる奴は、潰してお金を巻き上げれば良いんですよ」
「そうだな!みんなそうするか?」
「お金を巻き上げるのは変な噂が立ちそうだな」
「大丈夫ですよセルさん、1回ギルドを通せば問題ないですよ、ギルドに話をして違約金としてお金を巻き上げてから、今後同じことが無いようにと言って潰しちゃえばいいんですよ。もしくは理由なんて後付けでも良いくらいです、Sランクはそれくらいの信用があるんですから」
「リーサさん、そうは言ってもまだ僕らは11歳だからね?」
「何回も言うようですけど大丈夫です、元々世界に6人しかいなかったくらいSランクは狭き門だったんですよ?だからギルドも問題が起きないように、私達がSランクに上がったのも秘匿してくれたんですから。私達からSランクになった事を公表してくださいってお願いすれば、多少の反対はあったとしても断りはしないでしょう。何と言ってもSランクが今までの倍以上になるんですから」
「良し!そうと決まれば話は早い、早速リフレッド先生に相談だな」
「そうですね!シフォンさん」
そうして半ば強引に話を決めたリーサとシフォンは仲間を引き連れて職員室に向かうのだった
「リフレッドせんせ~い」
「あら、どうしたのみんな揃って」
「私達Sランクになった事を公表しようと思って、その相談に来ました」
「シフォンさん、それは別に構わないけど今までより大変になるわよ?」
「大丈夫です、その辺も含めて、Sランクのリフレッド先生に教えていただければと思っています」
「私は良いけど、他のみんなも納得しているの?」
「僕らもシフォン達に後れを取るのは嫌なので、リフレッド先生に教えていただければ幸いです」
「まぁ、みんながそれでいいのなら構わないけどね、でもそれだとこれからの授業の内容を1から考え直さないと駄目ね・・・・ふぅ。まぁ良いわ!!みんながやる気になってくれたのは私も嬉しいし、これからビシビシ行きますからね、ふっふっふ」
リフレッド先生の目の奥で何かが煌めいている、Sランク公表はまだ早すぎたか?でももうリフレッド先生に言ってしまったしなぁ、先生もやる気十分だしもう無理か・・・・・それから冒険者ギルドに行きモルドギルド長に何度も『本当に公表していいのか?本当に本当にか?』と確認を取られ『それで構いません』と言って大々的に公表してもらう事にした。
そして私はもうSランクじゃ無くなっていたので、世界にはSランクは5人だったのが、いきなり9人の子供が増えて14人になった。この噂はあっという間に広がって各地から依頼が来る事になった、私はというと自分のお金で、Sランクになったクラスメイトに雇われたことにして、依頼中だから他の依頼は出来ませんという事にして他の依頼をすべて断った。そしてクラスメイトの護衛とリフレッド先生による貴族のあしらい方を学ぶ事にした。クラスメイトも9人でパーティを組んでいるので全員一緒じゃないと依頼を受けないことにしているし、Sランクとしては新人という事もあり、依頼料は安く9人雇ってもそんなに高くはなかった、そしてリフレッド先生も私が依頼料を出してクラスメイトの護衛として依頼に参加している。クラスメイトを騙そうとしていた依頼主は護衛が二人も付いていることで騙すことも出来ず、無理やり騙そうとしたり、毒殺しようとした者などもいたが、そんな物は私達には効かなかった。
そしてリフレッド先生のスパルタ教育のおかげもあって、私達はメキメキと上達していった、その間に潰した貴族の数も計り知れないが、中にはまともな依頼もあったりしてちゃんとした依頼もこなしていったのだった。潰した貴族の数の事もあって私達に逆らおうとしたり、騙そうとするバカ者どもはかなり減った、それはそうだ一般には知られていないが、ドラゴンの恩恵で毒殺や暗殺が効かない集団に喧嘩を売ってくる馬鹿者は鳴りを潜めたのだ。そして私達が持っている便利道具を使ってまともな依頼をした方が効率が良い事も周知されたのだった。まぁ未だに少数だがその便利道具を狙ってくる悪党はいるのだが、もうそんな輩のあしらい方は覚えたので問題もない。これで卒業してもソロでSランクをやっていく事は問題なくなった、そこまで成長したのだ、
まぁみんなはずっとパーティを組んでいこうと約束しているみたいなので、ソロになる事は無いようだが、問題は私だSランクの依頼のこなし方は分かったが特Sランクの依頼は王族からの依頼が主だ。これはリフレッド先生でも経験が薄い事だったのであまり勉強できなかった、みんなはこれから卒業まで、リフレッド先生についてもらいながら安全に依頼をこなしていけるが、私はそうもいかない何とかしなければ・・・・・・