シフォンのお着換え
騎士団長との戦いは熾烈を極めた、流石は騎士団長、先ほどまでは本気を出していなかったらしい。ゴーレムが押され始めている、これは良いデータが取れそうだ。アヤメさんは30体と戦ったんですよって言ったらもっと本気が見れるのかな?
「騎士団長~、騎士団に所属しているアヤメさんは30体のゴーレムと戦って、全てを倒しましたよ~ もっと本気を出してください」
「はっはっはっそうか30体か、それは私も本気を出して戦わねばな」
そう言ったとたん、ゴーレムは袈裟切りにされて土に帰った・・・・やはり本気は出していなかったようだ
「お見事です。でもアヤメさんは30体を倒した後に、40体のゴーレムを要求しようとしましたよ?」
「そうか、中々の腕前だとは思っていたがそこまでとは面白い拾い物をした」
「どうされますか?」
「そうだな、自分より強い相手と戦う機会はこの国では中々ないからな。ゴーレムを40体出してもらおうか?」
「分かりました40体ですね、では40体のゴーレムを練成します。そして騎士団長のデータもしっかりと取らせていただきます」
「はっはっはっ、それは怖いな自分と同じ化け物がこの世に解き放たれるのか?それでも楽しそうではあるな」
「あまり気に留めている様子はありませんが、自信はあるようですね」
「ああ自信はある、それが無ければ騎士団長は務まらんからな」
その言葉を聞き、私は40体でもすぐに破壊されることを悟った。それだけ騎士団長の言葉には力があった。そして最上のデータが取れることにワクワクしていた。40体のゴーレムを練成しそれに今までデータの蓄積を全て載せて。そして騎士団長のデータの取り忘れが無いように魔法をかけた、そして騎士団長とゴーレムの戦いが始まった、いや戦いと言うには余りにも一方的すぎる展開だった。ゴーレムが傍に来るや否や騎士団長は一太刀に切り伏せ、ゴーレムを土に返す、時間にして5分くらいだっただろうか?40体全てのゴーレムが土に帰った、あまりにも圧倒的すぎる展開だった。流石に自分の事を化け物と言うだけのことはある。
「どうでしたか?楽しめていないようなら、今のデータを盛り込んだゴーレムを更に出す事も可能ですが」
「はははは、流石に本気の自分とやり合うには今日は少し疲れた。また今度にしてくれ」
「それはまた、私のゴーレムと戦って下さると思っても構いませんか?」
「構わないぞ、むしろこちらからお願いしたいくらいだ。最近は相手になる騎士が居なくてな、少し寂しかったところだ。しかも相手はゴーレムだから手加減の必要も無いしな」
「分かりました、今日の所は引かせて頂きます。次の戦いを楽しみにしています。しかし困りました、これだけのデータが揃ってしまうと、競技大会での辻斬り会が意味のあるものになるかどうか?」
「それは大丈夫だ、私より強い者など世の中に沢山いるさ」
「本当ですか?でも辻斬り会に参加してくれるかどうかは分からないんですよねぇ」
「それなら賞金を上げてみたらみたらどうだ?」
「確かにそれは可能なんですが・・・・そうすると記念参加の人も多くなりそうで・・・」
「できれば、冷やかしじゃない方が来てくれる方が嬉しいんですが」
「お祭りだから、それは難しいんじゃないか?」
「そうですよねぇ、でも何回かゴーレムの実力を見たら、参加する人は減るかもしれませんね」
「何しろ今日の団長の動きを元に、次の人は戦うわけですから」
「中々に強い者が居たら、騎士団に紹介してくれ」
「それはご自分の目で確かめに来てください。何しろ騎士団長が護衛してくれたら変な奴に絡まれることは無さそうですからね」
「さすがにそれは無理だ、お祭りの間は王様の護衛だ」
「それなら、副団長でも構いませんが・・・」
「ふむ。副団長なら目利きも出来るし良いかも知れんな、よしお祭り期間中は副団長と騎士を数名を護衛に付けよう」
「ありがとうございます。副団長さんも宜しくお願いします」
お祭りまではあっという間に過ぎ、お祭り当日がやってきた、最初に決めていた通り、初日は皆で屋台巡りだ。龍聖も楽しみにしていたのか今朝は早く起きてきた。ローナも起こし、皆と待ち合わせの場所に行く、皆も楽しみにしていたのかもう数人来ていた。カナタさんベルウッドさんエリーゼさんだ、あとはシフォンさんが来ればお祭りに行ける。が、シフォンさんが一向に現れない。しょうがないので私とローナで見に行く事にした、部屋に着くとシフォンさんは着る服を迷っていた。
「シフォンさん、服なんか何でもいいじゃないですか?」
「何言ってるんだ、祭りだぞ何があるか分からないんだぞ、服選びは重要じゃないか?」
そうだろうか?私とローナは首を傾げた、何かあるとしてもお祭りに来た冒険者に絡まれるくらいだと思うが。
「分かりました。それでは私達は先にお祭りに行ってますので、後からご自慢の嗅覚で追いかけてきて下さい」
「分かったすぐ選ぶ。だから一人で置いていくような真似はしないでくれ」
「分かりましたじゃぁこれ何かどうですか?シフォンさんのスタイルの良さが際立ってカッコいいと思いますよ。ねぇローナ?」
「本当にそう思うか?」
「嘘ついてどうするんですか?」
「よし!じゃぁそれに決めた!!着替えるからちょっと待っていてくれ・・・着替え終わったぞじゃぁ行こう」
「はい良かったです、あのまま日が暮れるんじゃないかと思いました」
「さすがにそれは無いだろう?」
「そんな勢いで迷ってましたよ」
「そうか?どうもなぁ、皆で出かけるとかなると服選びに困ってしまってな・・・」
「別に普段の服装で良いと思いますが」
「それじゃナンパされた時に恥ずかしいだろ」
「え?シフォンさんてハリーさんと付き合ってるんじゃないんですか?」
「え?なんで?そんな風に見えてたのか?」
「「はい」」
「私達は付き合ってないぞ」
「そうだったんですかぁ、それにしてもナンパされるつもりでいたんですね」
「それはそうだろう、祭りだぞ、何があるか分からないじゃないか?」
「5歳児連れてる時点で、それは無いと思いますよ」
「そうかなぁ」
「さぁ、皆が待ってます急ぎましょう」
それから皆に事情を説明して、シフォンさんは謝っていた。やはりお子様連れの人たちをナンパする変態さんは居なかった。そして皆で屋台を巡って色々な物を食べた、この為に朝ごはんは食べてこなかったのだ、おばちゃんごめんなさい、でもそのかいあって色々な物が食べれた。クレープみたいのや、串焼きとかとにかく食べまくった、その中でカナタさんが装備が見たいというので防具屋に立ち寄った。一応私とローナが見て変なものが置いてないかだけ確認したが。呪われた装備とかは無かったが、私とローナで作った装備の方が全然ましだった。カナタさんには、後日常時回復50%の防具をプレゼントすることを話してその店を後にした。そして明日から辻斬り会をする場所の確認だけして、その日はお開きになった、後は祭り最終日の闘技大会の決勝戦で戦う人たちの戦い方をトレースするだけである。
翌日、辻斬り大会と称してゴーレムに勝てば金貨5枚が手に入りますよと宣伝して。挑戦者は銅貨5枚を参加料に挑戦者を募集した。そして色んな人の戦い方をトレースして行った、だが誰もゴーレムに勝てた人はいない。しかも騎士団が居るのでいちゃもんを付けてくる輩もいない。しかも傷を負った人はローナが無償で回復しているので参加者は絶えない、そこに長剣を携えた一人の若者が現れた。この人は纏っている空気が違う、これは金貨を持って行かれるなと思いながらもトレースするのを忘れないようにする。まず受付で名前を書いて貰い順番を待ってもらう、そして副団長と話をして騎士団への勧誘も勧めて置く、副団長もこいつは強いと言っているので多分間違いはないだろう。名前を『マイエス』と書いていた。
マイエスの順番が来た、チョットいじってゴーレムに細工してみた、普段より強くしているのだ『破壊不能属性』を付けてみた、まぁそれでも勝ちそうなんだが。マイエスが長剣を構えるとゴーレムが飛び掛かった、この前の騎士団長のスピードだ、それでもマイエスは気に留める様子もなく長剣を一振りするとゴーレムを切り伏せた。そしてゴーレムは土に帰っていった、トレースしても一撃で倒されたので剣術魔法の幅は増えにくかったが、一撃の見切りはちゃんと覚えることが出来た。そして騎士団への勧誘も忘れなかった。
結局この日はマイエス以外はゴーレムを倒す人は現れなかった。翌日もその翌日も現れなかった、そして4日目の朝に現れた人物は変わっていた。武器と言うよりは木こりが使う斧を装備していた。受付に書かれた名前は『アレス』そのアレスは身なりも普通の木こりの様であった、記念参加かなと思うようないでたちだった、だがアレスはゴーレムの攻撃をかわしつつ、1撃1撃と攻撃を当てていき何とかゴーレムを倒した。私達はアレスに戦士なのかと聞くと、普通の木こりだと言われて唖然とする。いくら山で野生動物に遭遇する危険があるにせよ、普通の木こりが倒せるはずのない域までゴーレムは育っていたのだ。副団長は鍛えれば騎士になれると踏んで、さっきから勧誘しているがどうも芳しくない、木こりが気に入っていると言って騎士になる気はないと言っているのだ。だが副団長はあきらめない、いくら平和な国と言っても騎士になれるような人材は確保しておきたいのだ。結局アレスと副団長が折れ期間限定で騎士になることになった、それで騎士が面白かったら続けるらしい。
さぁあと二日、ゴーレムを倒せる剣士は現れるのか?結局剣士も戦士も現れなかった記念参加と一発を夢見た人達が集まるだけで、金貨5枚では参加する気にもならなかったのか、強者は現れなかった最初から100万円分の金貨10枚にしておけば良かったかも知れない。結局ゴーレムに勝ったのは2名のみだったので、銅貨がいっぱい集まり儲かってしまった。強い人は大会の賞金が白金貨らしいので、そっちに重きを置いているのかもしれない。
白金貨は10枚1000万円の価値がある、流石にそっちには強者が現れるだろう。トーナメント票を貰って、名前を確認しトレースの準備をしていくのだった。実はこの時まで私は知らなかったのだが予選会もやっていたらしい考えてみれば当たり前なのだが・・・・来年は予選会のトレースもすることにしよう。