ヘンデルの帰国(2)
馬車の中での家族会議もひと段落して、 大臣に言って馬車の隊列を組み替えてもらう。そしてみんなでドワーフ王国に転移だ、転移で王城の前に馬車をつけると、打ち合わせ通り中から王の御付きの人達が出て来る。御付きの人達は王子を見て、ご立派になられてとか言いながら王の所に連れて行こうとする。その行動に諦めたように、そして心配するようについて行く王子とその一行。そして王の間の前に着くと。
「まずは王子様だけ」
と言われたがそれをパパンが制する。
「家族も全員入れる、俺の家族に親父に何かするような奴はいない」
と言って家臣を下がらせた、そして家族全員で王の間に入る、王の間は医者がせわしなく動いている。パパンが「少しいいか」と聞くと、医者は怒らせたりなどはさせないようにと言ってその場を後にした。パパンは優しくお爺様に話しかける。
「親父悪かったな、少し帰ってくるのが遅かったようだ、だが家族も連れてきたぞ・・・妻のマリアだ、そして娘のリーサにリーネにリーニャだ。見えるか親父?・・・・・・・・リーサどうにかならないのか?」
「エンシェントドラゴンの鱗さえ飲んでくれれば、大丈夫だとは思うけど・・・・私が勧めても飲んでくれなかったんだよね、パパンから進めてみてくれない?」
そしてパパンにエンシェントドラゴンの鱗の粉を渡す、するとパパンは大事そうにそれを受け取ると、そっとお爺様に話しかけた。
「親父・・・・信じられないかもしれないが、これを飲んでくれないか?そうすれば親父のこの症状は改善する。そんな事言われても本当に信じられないと思うが飲んでくれ、飲んでくれたら親父のあともしっかり継ぐから」
「本当か?本当にこれからのドワーフ王国を見守ってくれるのか?」
「あぁ・・・・本当だ、だから飲んでくれ!!」
「ヘンデルがそこまで言うなら毒だとしても飲もう」
「馬鹿!俺が親父に毒なんか飲ます訳が無いだろ、さぁ体を起こすのを手伝うから飲んでくれ」
そういうとパパンはお爺様の体を起こし、近くにあった水差しからコップに水を入れてお爺様に差し出した。お爺様はエンシェントドラゴンの鱗を飲むとみるみる若返って行く、そしてエルフの青年くらいの姿まで若返ると効果は止まった。これでお爺様もあと1000年は生きる事になった、しかもエルフの青年くらいの若さのまま。
「おお、これは凄いなリーサから効果は聞いていたが、こんなに力がみなぎるのか・・・・」
「良かった、リーサこれで親父は死なないな?」
「そうだねパパン、これでお爺様はあと1000年は大丈夫だよ、寿命だけだけど・・・」
「あぁそっかぁ、毒殺や暗殺の事もあるのか?」
「そうだよパパン、でも大丈夫でしょ?パパンが王位を継ぐんでしょ?狙われるのはパパンだよ」
「そっかそっかじゃぁ親父は大丈夫だな、って俺は狙われるのかよ・・・・?」
「だってパパ王位を継ぐってさっき言ってたじゃん、そうしたら狙われるのわパパンだよ、でもパパンはドラゴンの鱗いっぱい飲んでるから大丈夫だね。良かった良かった」
「チョット待て、何かはめられた気がするんだが・・・・」
「何を言っているんだヘンデル、お前が王位を継ぐと自分で言ったんだろ?」
「そりゃそうだけどさ親父、何か腑に落ちない感じがするんだよなぁ」
「パパン、これも神の御意志だよ、きっと・・・・・・・」
「そうじゃそうじゃ、神の御意志じゃ、きっと・・・・・」
「何なんだよ、その(きっと・・・・・)ってのは?」
「そうだそうだ、私用事があったんだ、冒険者ギルドに行かなきゃ」
「そうじゃそうじゃ、ワシも用事があったんだ、冒険者ギルドにリーサの功績を伝える書類を書かねば」
「何で二人ともそんなに息があってるんだ?」
「そそそそそそんなことないよパパン」
「そそそそそそんな事無いぞヘンデル」
「なんか怪しいなぁ?まぁしょうがないか、もう王位を継ぐって言ってしまったしな。これからは国民を大事にしながら生活するさ」
「大事に生活するさっじゃないわよ、私達はどうなるのよ?」
「マリア!」
「お店だって、酒蔵だってどうするのよ?」
「それは、こっちの国に移動するしかないだろう?」
「そうじゃないわよ、なんでそんな大事な事を、私達に相談もなく決めてるのよって言ってるの!!」
「そっそんな事言っても、相談するようなタイミングは無かっただろ」
「それはそうだけど、だけどいきなりあなたが王様になって、私達はどうすればいいのよ」
「マリアは王妃になるしかないなぁ」
「いきなり王妃って何すればいいのよ?」
「ただ座っていてくれればいいぞ」
「そんな事私ができる訳ないでしょ?」
「そうは言ってもなぁ、頼むよマリア一度落ち着いてくれないか?そして二人で今後の事を考えよう」
「だから、隠し事は無しだって言ったでしょう?二人で話すんじゃなくて、家族会議です!!」
「誰か静かに話せる部屋を用意してくれないか?」
パパンがママンの勢いに負けて部屋を用意させてる、このまま離婚とかないよね?
「お部屋の用意が整いました」
「分かった、案内してくれるか?マリアもリーサも行くぞ」
「分かったわよ、ちゃんと今後の話をしてよね!?」
「あぁ、するからついて来てくれ」
「こちらのお部屋をお使いください、お飲み物などご用意いたしますか?」
「あぁ、頼むキツイ酒を大量に!」
「はっ、はい、お酒ですね」
「そうだ、飲まないとお互いやってられないからな」
「分かってるじゃない、お嬢さんキツイお酒をいっぱい持ってきてちょうだい」
「パパンもママンもこれから大事な話をするのにお酒って・・・・」
「リーサ、いいか?パパもママも飲んで腹を割って話すんだ、邪魔はするなよ?」
「あなた何言ってるのよ、リーサも家族なんだから話に参加する権利はあるわよ!!」
「そうか、そうだな、じゃぁリーサお前も飲め一緒に腹を割って話そう!!」
「そうねそれが良いわ、リーサあなたも飲みなさい」
うぅヤバイ、話が変な方向に進んでる、神様助けて・・・・・
「お酒をお持ちしました」
「酒の銘柄は?」
「神殺しです・・・・・」
「良い名前じゃないか、まずはリーサが飲め、今回はお前も親父も何か企んでいただろ。分かっているんだからな!」
神殺しってどんな酒よ、今までドラゴンキラーとか、グリフォンキラーとかってお酒は聞いた事あったけど。神を殺しちゃ駄目でしょ?しかも何かバレてるし
「さぁリーサ最初は少しでいいから飲んでみろ?」
「うぅ、分かったよ~ゴクゴク・・・・・あれ?美味しいい?」
「そりゃそうだ、高いし良い酒だからな、ここが王城だからこんな酒があるんだ」
「ねぇ、私にも早くちょうだい、一回飲んでみたかったのよ」
「分かった分かった、今注ぐから待ってろ、ほら飲んでみろ」
「く~~~、これは美味い、こんなにうまい酒は初めてだわ!パパが王様になるとこれが飲み放題なの?」
「飲み放題は無理だが、マリアが飲みたいなら増産させるぞ?」
「パパ!王様になろう、いや、なって下さい・・・・そして私に毎日美味しいお酒を飲ませて下さい」
「分かった分かった、これで解決で良いな?」
「えっ?ママンそれでいいの?さっきまであんなに怒ってたのに・・・・」
「リーサ、人生には時には怒って、相手の持ってるカードを出させることも必要なのよ」
「いや・・・・今のママは確実に神殺しにやられただけだよね?」
「リーサ、それ以上言うな、今の流れでパパたちの離婚のリスクは無くなったんだから」
「あっ、やっぱり危なかったんだ?」
「結構な危険度だったな、でも、もう大丈夫だから心配するな」
「そうなの?」
「ほら見て見なさい、ママがもう一人で飲んでるだろ?あれは酔っぱらった時のママの癖だ。あのまま朝まで飲み続けるぞ、そして次の日には上機嫌だ」
「そうなんだ?でもさっきのお酒は本当に強いお酒なの?私初めて美味しく飲めたお酒なんだけど・・・・」
「美味いけどかなり強い酒だぞ、リーサは平気なのか?」
「うん、全然平気美味しかった~ってかんじかな?」
「そっかぁ、流石ママの娘だな基本的に酒には強かったんだなぁ・・・・・」
「パパン何で最後の方小声なの?」
「いや・・・・別にぃ~、って言うかなぁ、あのママが一杯で酔っぱらった酒だぞ、それをリーサも飲んだんだぞ?何で平気なんだって事だよ!」
「何でだろうね~それも神の御意志かな?」
「何でもかんでも、神の御意志でごまかすんじゃねぇよ、まったく」
「そうだパパン、今ドワーフ王国は危機に瀕しているのです」
「なんだ?今度はどんなごまかしだ?」
「今度はごまかしじゃなくて本当の話だってば」
「じゃぁさっきまでのは、やっぱりごまかしだったのか!!」
「いや、それどころじゃないんだってば、王国はここ数年、赤ちゃんの出生率が下がってるんだって。原因を探って何とかしないとドワーフ王国は滅亡しちゃうよ」
「何!?そんな事になっているのか!?親父は何をやっていたんだ!!」
「王位を継ぐのを嫌がって、脱走していたパパンのセリフじゃないね・・・・」
「すまん・・・それもそうだな、だが事は一刻の猶予も無いな、急ぎ王位を継ぎ原因を究明せねば」
「そうしてくれると助かる、私も神様から依頼を受けて、原因を探らなきゃいけないから。困ってたんだよねぇ。取りあえずサイフォン様の恩恵で今年の子供は大丈夫だろうけど、原因は分からないと困るしね」
「そうか、毎年誕生祭を設けて、リーサにサイフォン様の恩恵を授けてもらえばいいんじゃないか!!」
「だ~か~ら~、それじゃ根本的解決にならないでしょ?」
「じゃぁ、どうすればいいんだ?」
「例えば、出生率が一番下がっている地域を探すとか。その地域と他の地域の差は何かとか?そんな事を調べれば良いんじゃない?」
「良い案だな、早速それを採用しよう。まだ王ではないけど、王子が言えばそれくらい動いてくれるだろ」
「何でそんなに自信なさげなのよ?」
「そりゃ、今迄逃げ回ってた子がいきなり帰ってきたからって、すぐに言う事を聞くドワーフは少ないだろうさ」
そんなパパンの不安は全然心配なかったらしい。お爺様は情報操作をし、王子は国を守るために武者修行の旅に出ている事になっていた・・・・・・・更にはSランクの冒険者になった事も国民に伝え、今は伝説の武器を探しに旅をしていると・・・・まったく困ったものだ