初めての課外授業
ウオーターソードの販売が学校で始まり、速攻鍛冶師ギルドからうちでも販売したいと連絡が来た。どこから情報を得たのやら。シカトしていたら、受付嬢のラパンさんが学校に直接訪れ交渉を迫られた。
ウォーターソードは水属性の素質が無いと使えないのと、かなりの切れ味なので危険性の説明、魔物と野生の動物や無機物以外には使えない事、なまくらでも構わないので、鉄の剣を使って試し切りをし、問題なく使用できるようになるまでは、魔物相手でも使わない。等、いくつかの決め事を守ってもらう様、誓約書を取り交わし、鍛冶師ギルドでの販売が決定した。学校よりも高めの値段設定にした。少しでも変な人が買わないようにと決めた値段だ。
販売が始まり、ウオーターソードは何処でも品薄状態になった。もちろん買い取り価格上昇も狙いのうちだが、純粋に危険だから品薄状態にしているのもある。もう少し様子を見て安全に使っている様であれば便利な装備なので、市場に少しずつ流しても良いと思う。次は風属性の武器とかどうかな?
でも別に商売ばかりしているわけではなく、授業もしっかり出ているよ。今日は遂に、四大精霊の召喚授業だ!
『暴炎のサラマンダー』
見た目は、全身に暴れ狂う炎を纏う精霊。人型で、筋肉質な悪ガキっぽい見た目だが、身長は15㎝ほどで、意外と可愛らしい見た目だった。そして炎を纏った槍を持っていた。
『慈雨のウンディーネ』
慈母の愛に満ちた全ての生き物を慈しむ事を常に考えている精霊。こちらも人型で聖母のような見た目、だがその見た目とは真逆の恐ろしい水の杖を持っている。時には全ての生き物の為に雨を降らせたりするが一度怒ると濁流で全てを流しつくしてしまう反面もある。
『疾風のシルフィード』
全身を常に風で纏っている精霊。風の力を使い常にあちこちを飛び回っているせわしない性格のようだ。聖樹のツタで出来た弓を持っていて、その性能は常人には計り知れず一度狙った獲物は、風を纏った矢がどこまでも追跡し絶対にはずさない。
『硬優のノーム』
強固な守りと優しさを兼ね備えた精霊。性格はおっとりとしているが、こちらも一度怒るとウンディーネと一緒で全てを土で飲み込んでしまう。だが一度仲良くなるとその優しさ故か常に守ろうと努力してくれる。
この4大精霊の勉強だ。四大精霊達はみんな皆、子供のような見た目だった。
先生の話ではまずは呼び出すのが大変で、呼び出した後も機嫌が悪いと帰ってしまう。など気難しいところもあるが仲良くなれば魔力石などで飼いならすことも可能とのこと。魔力石は魔力のある者なら誰でも作れる万能石だ、竈に入れて火を起こしたり、水がめに入れて水を腐らないように魔法をかけたりと何にでも使える。まずはフラウ先生が呼び出した、四大精霊達とコミュニケーションを取るところからだ。魔力石に精霊の好きな属性の魔力を流して食べてもらう。美味しかったら仲良くなれるし、美味しくなかったらどこかに行ってしまう。要は自分が得意な属性の魔法だと美味しくなるし、苦手な属性だと不味く感じるらしい。意外にグルメだ。
皆属性魔法の勉強もしていたので、一応少しはスキルで属性が付いていたが、火や水など冒険者になって必須のスキルを覚えるのに必死で、風や土などはまだ覚えていない。
私はイメージ魔法で四大属性は練習していたが、美味しいかと言われると分からない。試しにサラマンダーに火属性の魔力石をあげてみる。美味しかったみたいで、そばに寄ってきた。もう少しあげてみる。少しづつだが、距離が縮まっていく。そして不思議と熱くない。それを先生に聞くとそれは精霊が気を使ってくれているとの事だった。仲良くなれたのかな?嬉しい。
試しに自分でサラマンダーを呼び出してみた。えらい数のサラマンダーが現れた。皆が皆魔力石をくれと傍に擦り寄ってくる。呼び出しに答えてくれたサラマンダー全てに魔力石をあげた。美味しかったのか、サラマンダー達が大きな火柱をあげた。周りのみんなの注目の的になってしまった。先生には、火柱を上げた原因として、魔力石のあげ過ぎと、注意されてしまった。でも、サラマンダーは喜んでくれたみたい。魔力石全てサラマンダー達にあげきると、サラマンダー達は消えていった。
精霊の授業が終わり、リーサはローナの状況を聞いた。ローナは水属性のスキルの授業を選択し、水属性のスキルを獲得していたので、ウンディーネに魔力石をあげたそうで、一応消えないで傍には居てくれたが、擦り寄ってはこなかったそうだ。まだまだ練習が必要だと言っていた。
授業の最後にフラウ先生が明日から課外授業だから準備するようにと言っていた。
寮に帰って食事の時間、今日はカレーライスだった。異世界転生して思ったが食生活などは日本にいた頃と何も変わらなかった。これも神様が気を使ってくれたのかな~?
「それにしてもローナ自分の部屋使わないよねぇ。まぁ私も寂しいから一緒の部屋で嬉しいんだけど。」
「もうリーサの部屋に戻ってくるのが当たり前になっちゃった。」
「だねぇ。私も二人で居るのが当たり前な感じだもん。」
「そろそろお風呂の時間だね。お風呂行く?」
「うん。クラス毎に時間で分かれてるから、Sクラスが混む事は無くてほんと、Sクラス様々だねぇ。」
お風呂に行ったらエルフの『ベルウッド』と『エリーゼ』人間の『カナタ』がいた。エルフの二人は、空気抵抗を極限まで減らしたかのように、ツルンペタンとしていた。カナタは凄かった。
出るところは出て、ウエスト周りは鍛え抜かれてキュッっとしていた。私達はまだ小さいので、これからに期待だ。
「ベルウッドさんとエリーゼさんは、精霊の力を借りる今日の授業は簡単でしたか?」
「そうでもないわよ~。スキルの森の恩恵を使うわけじゃないから、大変だったわ。」
「そうね~。仲良くなるのは問題ないけど、森の恩恵を使わずに呼び出すのが大変ね。」
「そうですかぁ。エルフのお二人が大変ってことは、私達はもっと努力しないと駄目ですね。」
「カナタさんはどうでしたか?」
「私は散々だった。先生に呼び出してもらった。精霊に魔力石をあげようとしても食べても貰えなかった。」
「それは大変でしたねぇ。私は教室内で火柱上げて怒られちゃいました。」
「それはサラマンダーがとっても嬉しかっただけよ。気にしなくて大丈夫。」
「そうよ。火柱が上がったのは、むしろ成功よ。」
「そうなんですか?」
「「そうよ。」」
「私はウンディーネに魔力石をあげても、食べてくれただけで無反応でした。」
「それはまだ警戒していたんでしょうね。」
「そうね。警戒していたのね。次はきっと大丈夫よ。」
「エルフのお二人にそう言って貰えると自信が湧きます。」
「魔力石を食べて貰えなかった私はどうすれば良いのだろう?」
「それは属性が違う精霊に魔力石をあげたんじゃない?」
「そうかもね~。魔力石自体を食べないって事は滅多にないから、ウンディーネに火の魔力石をあげたのかもよ。」
「ああ。。。それはやってしまったかも・・・。精霊の区別が良くわからなくて、適当にあげたので・・・。」
「原因は多分それね。」
「そうね。それ以外ないわね。」
「次は気を付けねば。」
「そろそろのぼせそうなので、私とローナはお風呂あがりますね。」
「そうね。私達もそろそろ上がるわ。」
「そうね。私も熱くなってきたわ。」
「それじゃぁ。私もあがるかな。こんな広い風呂に一人は中々に寂しいものがある。」
「じゃぁ皆一緒にあがりますか?」
「そうだね。」
「そういえば、シフォンさん来ませんでしたね?」
「彼女は一人で入るのが好きみたいで、時間ずらしてるのよ。」
「そうね。広いお風呂を独り占めが好きみたい。」
「そうなんですかぁ。さてローナの着替えもすんだし部屋に戻ります。」
「「おやすみなさい。」」
「「「おやすみなさい。」」」
それから部屋に戻り、課外授業の準備をしてローナと2人で少し明日の授業について話してから一緒のベッドで寝ました。
翌日食堂に行くとシフォンさんが居ました。
「「おはようございますシフォンさん。」」
「あぁ、おはよう。」
「シフォンさんとお風呂で会うことが無いのですが、いつも一人で入ってるんですか?」
「そうだね~。あの広い風呂に一人で入るのは止められないね~。」
「そうなんですかぁ。私達はあの広いお風呂に一人で入るのは、何となく怖くて無理です。」
「ハハハ。お子様だな~。」
「まだお子様なんです!!」
「そう言えばそうだったな」
「もう!!そうだ今日の課外授業は王都の外に行くんですよね?」
「そうだな。王都の外にある『惑わしの森』だな」
「惑わしの森って名前が嫌ですよねぇ?」
「いや、実際に中に入って出てこれなくなる人が後を絶たないそうだぞ」
「何でそんな危ない場所で課外授業やるんですかね?」
「冒険者見習いだからだろ?」
「うぅ、行きたくない」
「ローナ私が付いてるから大丈夫」
「うん・・・」
「ローナ、町に居た頃は元気だったけど、最近元気ないね?寂しい?お母さん達に手紙でも出す?」
「ん、そうする」
「じゃぁ、課外授業終わったら出しに行こう」
「そうだね」
「さて、私は学食のメニューを無限収納に入れて行かねば」
「それ、便利だな」
「あとは学食のおばちゃんに調味料を分けて貰って、こんなもんかな?」
「食料は現地調達が基本だけど、調味料は無いからなぁ」
「ですよねぇ。最低限は持って行かないと」
「さて、そろそろ時間だし教室に行くか?」
「「はい」」
教室に行くと皆揃っていた。フラウ先生と付き添いの先生が何名か待っていた。
「遅いですよ!!団体行動は時間厳守です。守って下さいね」
「「「すみませんでした」」」
「では、皆揃ったので課外授業の説明をします。今日から1週間王都の外にある、惑わしの森で野営をします。野営するからと言っても、はじめてですから魔物の討伐はおこないません。純粋に皆で食料の調達と調理、夜の見張りを交代でします」
「それでは出発します。皆さん準備は良いですね?」
「先生テントとかはどうするんですか?」
「収納ボックス持ちの先生が持ってくれていますが、冒険者になったら自分たちで運ぶんですよ?」
「はい。分かりました」
「では、出発します」
王都の出入り口での検問にて、学校の生徒と教師で惑わしの森に1週間野営の実地について説明し、王都の外に出た。惑わしの森までは歩いて3時間くらいかかった。盗賊やモンスターなどが現れる事も無く、順調に野営地に着いた。
「それでは皆でテントを張って、3人組が2グループと4人組1グループに分かれて、今日の晩御飯になる動物や木の実と乾いた木を集めてください」
「まず人間族の3人、龍神族と獣人族の3人、エルフとドワーフの4人で分かれて森に入って下さい。あまり奥まで行かないようにして下さいね。あと笛の音が聞こえたら戻ってくるように」
「じゃぁ行きますか。ベルウッドさんとエリーゼさんはエルフだから・・・お肉は食べれますか?」
「そうね~。そんなに好んで食べないってだけで、食べれないわけじゃないわよ」
「確かに木の実や穀物が多いけど、お肉も食べるわよ」
「良かった。木の実を探すのは結構大変そうなので、ちょっと心配でした」
「あら、獲物を探すのも大変じゃない?」
「そうねぇ。見つけても倒すのも大変だしねぇ」
「私のイメージ魔法に探査ってのがありまして、これを使えば獲物はすぐに見つかります」
「「便利ね~」」
「じゃぁ探しますね。『探査』ん~と、ここから南東の方角に300メートル行ったところにイノシシか小型の熊がいます」
「じゃぁまずは南東へ300メートルね」
「そうね、イノシシだと良いわね」
「そうですね熊は体力があるから倒すのが大変そうです」
暫く森をかき分けて入っていく。
「いました!イノシシですね。どうしますか?」
「私たちが弓で倒すわ」
「そうね、今回は私達が倒すわ」
「分かりました。弓の実力拝見です」
「「見てなさい」」
二人は同じタイミングで弓を引き絞り、そして同じタイミングで放ち、二人の矢は見事イノシシの眉間に刺さりイノシシが倒れました。
「血抜きは任してください」
風魔法でイノシシを逆さに浮かして、首のあたりに風刀で切れ目を入れてしばらく待ちます。
「血の匂いで魔物が来ると困るので、血が垂れた地面は焼いていきましょう。そして最後は無限収納に入れて完了です」
「「便利ね、収納ボックス」」
「はい、便利です」
もう、いちいち無限収納です。って説明が面倒です。収納ボックスで良いです。
「帰りに、木の実やキノコなんかも探しましょう」
「そうね。キノコの見分け方なら、私達に任してちょうだい」
「木の実の探し方も得意よ」
そう言って二人は帰りの山道で、かごにいっぱいのキノコと、木の実を見つけていました。
「これで今日明日分の食料は、足りそうですね」
「フラウ先生、只今戻りました」
先生達に、イノシシの解体の方法を教えて貰い、ベルウッドさんにキノコの見分け方を教わり、エリーゼさんには木の実のなる木の種類を習いながら、他の皆を待つのだった。