メイド1
「さあ、じゃあ後は家族の許可が下りるかどうか........」
いきなりメイドを一人雇おうと言うのだ。自分一人では決められない。それにたまに締め切り前の母が「家政婦を雇おうかしら........」なんて独り言をこぼしてたくらいだ。雇うにしても見ず知らずの女、それも俺と同い年くらいの女の子だ。絶対怪しまれる。
「さて、問題は父と妹だな。」
母は斉藤恵子、漫画家だ。メイド服の女の子を雇うとなれば拒むどころか喜んで許可するだろう。しかしふつうのサラリーマンである父、そして妹は一般常識を持ったまともな部類に属する人間、エリアを見てどう思うだろう......
「2人の説得は後から考えるとしてとりあえず、母さんに聞くか」
こうして俺とエリアは母の作業部屋に向かった。
ーーーーーーーーーーーーー
母の作業部屋は地下にあり、いつも締め切りまえになるそこに籠る。
そして「1枚、2枚.........1枚たりなぁーい」とまるでどこぞの怪談のように現実逃避か知らないが出来上がってもいない原稿を数えたり、「グフッ.....グフフフフ..............」と言ったあと、すすり泣く声が聞こえたりする。俺たち兄妹は小さい頃これのせいで眠れぬ夜を過ごしたこともあった。
ノックした後一応入ると確認し、許可を得た。入るとそこにはやはり締め切り前で時間がないのか黙々と漫画を仕上げる母の姿があった。
「母さん、一つ相談があるんだが..............」
「なによ、また小遣い前借り?それなら後にして!今忙しいの!」
本当に忙しいのだろう。一向にこちらを見ず答える。
「母さんうちで家政婦、いやメイド雇わない?この子なんだけど」
「メイド」と言う言葉に反応したのだろう。母はすぐさまこちらに振り向いた。
母はエリアを見ると幻覚をみたのかと一度俺の方を見る。
そしてもう一度エリアを見ると
「tシャツ美少女きたーーーーーーー」
血は争えないようだ。
「え?なにこの美少女は?あんたよくこんな可愛い子見つけてきたわね。オッケーオッケーメイドさんでしょ?名前なんていうの?」
怒涛の質問ラッシュに俺とエリアがたじろぐ。
「エリアです!よろしくお願いします!」
エリアはハッとした後お辞儀をする。
「それでエリアここに住み込みで働きたいらしいん..........「いいよ^ - ^」
「食..............「作ってくれるんだしいいよ^ - ^」
「s「いいよ^ - ^」
もうなにを頼んでもいけそうだ。
「2人も私が説得します。エリアちゃんは心配しなくていいから」
お母様最強!
「何か訳ありみたいだしずっとここにいていいからね。でも家事はちゃんとしなさいよーーー」
母は色々察してくれたのだろう。事情も聞かず暖かくエリアを迎えようとしている。こういう時は本当にいい母だなと思う。
「ちなみに..............なんだけど、メイド服..............着るよね?」
いや唯メイドさんが欲しかっただけかもしれない。本当血は争えないな。
「今からわた..............この家のメイドなのだし、とりあえず一緒にお風呂入りましょ!それから一緒に寝ましょ!原稿?いいのいいの明日やるから!」
そういって母は戸惑うエリアをひきつれお風呂の方に向かっていった。
「.........寝るか」
ポツリと置いていかれた俺だったが色々あった疲れか久々に深い眠りについたのだった。