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絶望ヒロイン  作者: UFF
第一章
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第一章 三話 『俺の英雄』


良き朝だ。

いつもと変わらない街並みに鳥のさえずりが響き、雲一つない快晴。

見ているだけで少しホッとする。


結局、あの後に眠りに落ちることはなく、暇を持て遊んでいた。

夢みるのは懲り懲りだし。

携帯いじったり、パソコン起こしたり、ラノベ読んだり。

まあ、心のケアみたいなもんだったから割と重要な行動だったかもしれない。

何にせよ、外も明るくなり、家族も起きて来る頃だ。

行動を始めよう。


何て思ってたら、


「うわあああああああああああああ!」


ドタバタ音と共に廊下の方から叫び声が聞こえた。

妹だ。

俺は何となく察した。

悪汗が全身にまとわりつく感覚を覚えた。

まずい。

これはやばい。

俺の英雄を助けなければ。

急いでベットから身を引きずり起こし、廊下に向かって全力で駆けた。


しかし、遅かった。

そこには廊下にぐったりと倒れ込む彼女の姿があった。

見つけたと同時に母親も駆けつけ、介抱を始める。

俺はその光景を見て唖然としていた。


「何故だ…」


悪夢は俺の心を貪るだけでは飽き足らず、妹まで苦しめるのか。

おぞましい量の疑問が俺の頭の中で投射される。

何故だーー何故だーー何故だーー何故だーー何故だーー何故だーー

俺らが一体何したってんだ…


「あんたも手伝いなさいよ!」


はっ、と自分の世界から醒めた。

母親の怒号だ。


「あの子あんなにあんたのこと心配して、あんたのこと看病してくれたんだよ⁈

うが昨日何見てああなったのか知らないけど、とりあえず目の前に恩人が倒れてんだから助けようとしなさいよ!」


ごもっともだ。

まずは現実に向き合え。


泣きそうになりながらも、俺はとりあえず目の前の英雄を助けるべく奔走した。


***************************************


俺の英雄は帰らぬ人となった。


英雄が永遠に眠っている横で俯いている俺は既に涙を枯らしつつ、自己嫌悪や恨み言を繰り返していた。


やるせないーー


許せないーー


憎いーー


悲しいーー


何故ーー


俺の中では色んな感情が憎悪の塊となっていた。

自分に対して、悪夢に対してーー

俺のキャパシティ能力を軽々と超える憎悪が心の中に溢れている。


「ーーーー」


何でよりによって彼女なんだ。

殺すなら俺を殺せ。

妹を殺すくらいなら、俺を八つ裂きにして煮込んでから貼り付けにしてもらったほうが断然良い。

これは良いとかのレベルの話ではない。

比にならないといった方が正しいだろう。


「妹と俺じゃ…釣りあわねぇよ…」


嗚咽気味に微かな掠れた声が漏れた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


妹こと、土屋悠と出会ったのは、この俺、土屋恒星が3歳の時だった。

鮮明には覚えてはいないが、初の兄弟が出来て嬉しかったことはぼんやりと覚えている。

しかも、彼女は色々な分野において俺を凌駕していた。

勉強然り、部活然り、ルックス然り、人間性然り。

正直、上げたらキリがない。

もちろん、嫉妬したことはあった。

でも、それ以上に彼女は無垢で、優しさを持ち合わせていた。

俺が落ち込んでいることを察して、慰められた時は妬いてる自分が馬鹿馬鹿しくなったもんだ。


しかも、こんなに駄目な兄貴だ。


俺は中学で学校に行くのが面倒になり、引きこもりになり、ネトゲや、創作に打ち込んだ。

何一つ長続きもせず、才能もなかったから余計にムシャクシャした。

当然、勉強何て出来ず、とんだバカ高校に合格するのが精一杯だった。

それでも気持ちを切り替えたつもりだった。

高校では風当たりに負けず三年間、しっかり勉強した。

つもりだった。

でも、受験で失敗した。

悔しかった。

『努力は裏切らない』なんて糞食らえ。

事の後はしばらく、俺は自暴自棄になった。

鬱寸前まで行った。


結局、助けてくれたのは妹だった。

彼女に対して暴言も吐いた、悪態もついた。

でも、大事な自分の時間を割いてまで俺のことをケアしてくれた。


一回だけ、聞いたことがあった。


「何でここまでしてくれるんだ?」


どんな返事が返ってくるのか、不安になりつつボソッとこぼした。

でも、そんな心配は杞憂だった。


「だって私たち家族でしょー?

お互いが支え合うのは当然じゃない?」


ニッコリと、満面の笑みで言い放った。


愚問でした、すいませんと、心の中で呟き、

号泣した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


どんな理由があろうと、彼女を愚弄することだけは絶対に許さない。

許してはいけない。

絶対に、だ。


「あああああああああああああああああああああ!」


病院全体に響き渡る声と共に、誓った。


復讐を。


今は亡き、英雄のために。





こんなにシリアスにするつもりなかった。

ごめんよ。

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