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残存ツンドラ旅行記Ⅰ  作者: 星野夜
23/23

第22話『ホーペン島にて完全逃避』

 最近、auショップでiphoneとPCを接続するフラッシュメモリを買いました。

 あははは! これでいつでも小説が投稿できるようになったという訳だ!

 問題は、スペース間隔が同じかどうか、そこだけが不安ですね。

 ってなわけで、初スマートフォンからの投稿! 第22話『ホーペン島』編完結、『ホーペン島にて完全逃避』をどうぞ!

 薄雲が空を張り詰め、夜には天候悪化しそうな天気。太陽が昼を差すその頃、場所はホーペン島、最南端に位置する『イヴァーセン山』を一人の女性が探索していた。腰まで届く漆黒の長髪を風になびかせ、防寒の獣毛コートを着込んでいるその姿は、まさに旅人。その上からリュックを背負っていて、リュックから、武器である太刀が二本、長くて入らずに顔を出していた。彼女の名前はリリア。

 『イヴァーセン山』捜索中のリリアは、一人のホーペン族に出会い、そして村へと歓迎される。特にやることもなかったリリアはとりあえず、村内の周回で状況把握をしていた。そんな時に一人の男の子に目をつける。その子はずっと無言で地面を掘っていた。無愛想で目つきが鋭い、緑色の帽子を目深に被っている男の子。名前は『レミ』。地面に掘っていたのは複雑な模様に見えるが、それは良く見ると村のマップになっていた。リリアはそんな『レミ』を最初こそ、案内役にしようとしていた。

 その日の夜、ホーペン族民から宴に参加して欲しいと言われ、いやいや参加することに。そこで木材を運ぶ大工に、この村の内情を聞く。

「この村から出ていく輩がいようものなら即処刑だからなぁ」

「……それ、詳しく」

「処刑のことか? 反乱分子なんかが村を出て敵を引き連れてこれないよう、離村するものを処分する、それがルールなんだよ。普通だろ?」

 その話を聞いた時点で、リリアは『レミ』を仲間に引き連れて村からの脱出を試みることを決めていた。リリアはこう考える。


 離村するのを禁じるのは、離村すると外部に情報漏えいを促してしまう恐れがある。そして、外部に情報を流せる人間が存在するのを知っているということは自分と同じく旅人が現れたから。その旅人は恐らく、離村=処刑のルールを作ることで村を保持した。そうすることで外部からの敵襲を防いでいるのだと。つまり、ホーペン村に訪れた旅人は必然的に出ることができない。下手に脱出を試みれば処される。そこで、村内全てを把握しきっているだろう『レミ』の力を借りて出ることを考えた。脱出することを考えれる『レミ』は以前旅人だったことは明確。ホーペン村民はそもそも脱出の概念がないだろうから。


 そしてリリアは『レミ』と共に脱出を試みるため、村長に会いにいくことに。村長のミストに出会う。が、その村長が人を食らう、人食主義者であり、『レミ』が餌食になる。ミストの凶暴性に、さすがのリリアも負けを認め、逃げ出すことになった。村民たち全員に追われながら、リリアは負傷中の『レミ』を担いで、暗闇へと走り出すのだった。


 村内中心の広場に置かれた巨大灯火が灯す光は村外周までは届かず、村の外周へと向かうに連れて減光して暗さを増していく。傷に呻く『レミ』を担いでリリアは真顔のまんまで全速逃避していた。暗闇の中、つまずいて倒れそうになったりしながら走るリリアを迫っていく村民たち。

「うぅ、逃げきれない……痛い……」

 一定間隔で揺さぶられ続ける『レミ』の右腕は傷の応急手当で包帯が巻かれているが、出血が酷くて血が滲み出ていた。

「逃げきれない……から、君に頼った」

「え?」

「君なら、この村から出るための裏道も知ってるはず」

「……何でそう思うんだよ?」

「別に」

「分かる、けどよ、無理だって。こっちは南側……ということは断崖絶壁」

 最南端に位置する『イヴァーセン山』にあるホーペン村。南側は断崖絶壁で、その先に続く地面はなし。つまり、このまま直進していけば当然、

「行き止まり」

「そういうこと」

「……そろそろ、疲れた」

「え?」

 ずっと走りっぱなしのリリア。体力を使い切ったようで、少しずつ速度が落ち、最後は立ち止まってしまう。呼吸が乱れ、額から汗が流れ落ちる。ただ無言で無表情だから伝わりづらいだけで、相当な疲労状態だった。もちろん、村民たちは待ってはくれない。遠かったはずの足音が徐々に近づいている。焦る『レミ』はリリアから飛び降り、周囲警戒に入る。

「……こんなところで、死ぬわけには、いかねぇんだよ、リリア」

「……」

 担いでた『レミ』が降りて、リリアはそのまま地面にへたり込む。そんなリリアを不安そうに『レミ』は見つめていた。その時、突如『レミ』は何者かに腕を掴まれ、どこかに引きずり込まれた!

「うわぁっ、いったぁっ! やめ、うわ――」


「――むぐぅぐっうぅうっ!」

「しぃーっ! 黙ってろ、殺されたいのか?!」

 何者かに捕まった『レミ』。口を手で塞がれ、男性の声の脅迫で黙り込んだ。真っ暗闇で誰かは認識できない。その男は言った。

「お前とそこの旅人、救ってやる。くそ、あの女を救うのは胸糞悪い。腹部が未だに痛い……」

 男は『レミ』をすぐに解放し、その数十秒後、リリアを引き連れて戻ってきた。

「……何で、お前が、俺らのことを助けるんだ?!」

「しぃーっ! もっと静かに喋ろ! バレるぞ?」

 この男が誰かを『レミ』は知っている。声だけでも判断できた。彼は『レミ』の推測上、村長であるミストの召使。リリアに踏み潰されて気絶させられた男である。男は痛そうに腹部をさすっていたが、当然真っ暗闇で見えることはない。

 召使はリリアと『レミ』を裏路地の人が一人通れるほどの隙間に身を隠させた。

「……なぜ?」

「え?」「は?」

 小言のリリアに、『レミ』と召使がクエスチョンマークを浮かべる。

「なぜ……助けた?」

「あぁ、それか。命の恩人だからな」

「……本当は?」

「はは、バレバレか……。あの化女にウンザリしたから、お前らに加担したくなった。さぁ、俺が案内してやる。行くぜ」

「……」「お、おう、やるじゃんか、召使」

 ズタボロなリリアと『レミ』を引き連れ、召使は裏ルートを辿る。『レミ』も既に把握済みではある道だが、召使のおかげで敵をかわしていける。おかげで、敵と鉢合うことにはならずに、スムーズに反対側である村の最北端へと進んでいった。このまま行けば、脱出は確実だろう。

「しかし、それはフラグということか、くそっ」

 召使は一人悪態を吐く。その視線の先、つまりは村の北側出入り口、リリアが入ってきたその出入り口の前に一人の人間が待ち構えていた。ヨダレを滴らせながら、鋭くなく、ふんわりとした眼光を向けるその女性は明らかに、

「ミスト……か」

「何をしているの、フィード?」

 ミストの目線が召使へと向けられ、フィードと呼ばれた召使は困ったという表情で目線を明後日へ。

「あ、あー、あれだよ……俺はこいつらを――」

「じゅるるる……お腹、空きました」

「お、おい、まさか、ミスト――」

 ミストが動きだした。その体型からは想像もつかない瞬発力で駆け出し、一気に三人目掛けて急接近してくる。『レミ』と召使が二人して後ずさる中、リリアだけが黙って立ち尽くしていた。

「「リリア! 逃げろ!」」

「人食いは――」

「え?」「あぁ?」

 リリアが腰に滞納している刀を引き抜く。闇の中でもその刃は光をしっかりと捉え、輝きを放つ。闇の中、放つその一閃は直後に静寂を作り出した。状況理解のできてない二人と、太刀を振り払って納刀するリリア。

「――自己破壊を招く。……さて、帰りましょうか」

 いつもの冷静さを取り戻したリリアは、ただ無表情でその場を立ち去り、村の外へと足を進める。『レミ』もすぐに気を取り戻して追いかけようとし、足を引っ掛けて転んだ。

「ぐがっ! っつー、いってぇ……うおわぁあ?! ミストォ?!」

 足にひっかかったのはミスト……の遺体。左肩から右腹部にかけて一筋の切断痕があり、鮮血が服を通して赤く滲み出ている。死体になってなお、『レミ』に恐怖心を刻み付けるミストは、ふんわりした笑顔を振りまいていた。

「共食いは破滅を迎える。人肉を食らうと人は自律神経に異常をきたす。結果、筋肉の硬直、コントロール異常、精神異常を起こす……。良く今まであんなに俊敏に動けたものです」

 リリアは小声でブツブツと呟きながら、振り返らずにただただ去っていく。そのあとを『レミ』が焦って追いかけていった。

 一人、取り残された召使ことフィードは、改めて死体になったミストを確認した。そしてすぐに気づく。切断されたはずのミストの服は割かれることなく、そのままだということに。

「……確かに出血しているのに……いや、そもそもミストには切傷がない。じゃあ、これはミストの血液じゃない?」


「これからどこ行くんだよ、リリア?!」

 リリアは振り返ると『レミ』の元へ。そして『レミ』の頭を軽く叩いた。

「いて……あれ? あっ! お、俺の、帽子……どっかに落としちまったやつ」

「……私は旅を続ける、それじゃあ」

 リリアは帽子を『レミ』に被せてから立ち上がると、そのまま北へと向かうために足を進めた。

「ま、待って!」

「役目は終わり。ついてくる必要は――」

 がしっ。

「……」

「俺には居場所がないんだよ。リリア、俺を旅に同行させてくれ!」

 『レミ』はリリアの左手を掴んで離さない。

「レミ」

「え?!」

「名前」

 目深に被った帽子で『レミ』は笑顔を隠す。

「始めて、名前を呼んでくれた……。けど、それは俺の名前、じゃねぇよ」

「……興味ありません」

「酷い! 泣くよ、ほんとに! ……俺は、レミリア」

「らしくない」

「まぁ、だよなー」

「じゃあ『レミ』でも良いのでは?」

「良くねぇけど、良い!」

「……で?」

「へ?」

「ついてくの? ついてかないの?」

 立ち上がり呆れたと手を振ってから歩みだすリリアの冷たく暖かいその言葉に、レミは瞳を輝かせ、

「ついてく!」

 そう叫んだ。


「俺はあの女を助けて正解だったのかどうか……」


「――五十八、五十九、六十、六十い――っ?!」

 太刀一本で村民に抗うリリア。レミの意思を尊重し、真刀ではなくて納刀状態で六十人を負傷させた。六十一人目をなぎ倒す、その瞬間、リリアは何者かに頬を蹴り飛ばされる。かなりの衝撃に吹き飛ぶリリアは民家の窓を突き破り、机の上に落下して机を破損させた。その家は村長家、ミストの家。そこにはリリアによって気絶させられていた召使フィードがいた。衝撃音で呻きながら起きるフィードの目に映ったのは、

「……痛い……」

 右頬を赤く腫れ上がらせ、仰向けに無表情のままボーッと天井を見つめるリリアの姿。突き破った窓の外からは怒り狂う民衆たちの姿。

(ははっ! ざまぁみやがれ。何があったか知らないが、これであいつも――?!)

 その時、フィードは目にした。窓の外にふらつきながら歩み寄ってくるミストの姿。猛獣のようにヨダレを垂らしながらゆっくりとゆっくりと近づいてくるが、ちょうど死角で二人の姿は見えていない。

(……ミスト……あのバケモノめ……)

 フィードは逃げるために立ち上がる。死角に身を隠していた。

「……食欲旺盛なことで……」

「あれは人間なんかと一緒にしないほうがいい、旅人」

「人肉は一体どんな味がするのか……」

「不味そうだな」

「そうね」

 召使は無言で寝そべったままのリリアを見つめる。リリアはずっと天井を無表情で眺めるだけで、恐怖も感じているようには見えない。このまま動かなければ民衆たちやミスト本人に見つかって八つ裂きにされるのは目に見えているはず。しかし、リリアは動かない。

「……逃げないのか?」

「逃げれるなら、逃げてる」

「逃げれない、のか」

 ミストの蹴りを食らったリリアは、すでに動く気力がなく、めんどそうにため息を吐く。

「……さて、一緒に食されますか?」

「断る」

「でしょうね。では、逃げますか」

「は? お前は動けないんじゃないのか?」

「そこに一人、動ける人間がいる」

「……俺はお前を助けないぞ?」

「では、一緒に食されますか」

「話がつかめないぞ」

「動けずとも声は出る、ってことです」

 フィードは顔をしかめる。リリアはミストを呼び、フィードと道連れを考えている。どうしてもこの場から逃げ出したいフィードは、

「……察した。仕方ない……分かったよ、救ってやる、くそ」

「どうも」

 渋々リリアを救う。動けないリリアを背負ってフィードは死角から出口へ。そのまま巨大灯火の明かりの届かない暗闇へと逃げていった。

「今のが最後だ。次は助けはしない」

「……どうも」

 壁に寄りかかり座るリリアは闇夜を見上げ、小声で礼をした。フィードはそのまま帰ろうとして、

「……なぜ旅を続ける?」

 リリアへと尋ねる。フィードはリリアに少し興味が湧いていた。

「では、なぜこの村に籠ってる? 元は旅人、だったのでしょう?」

「……俺がなぜ旅人だと?」

 リリア、ノーコメント。

「……旅人なんて危険でやっていられない。それならば、住処を作ってそこに移住する、それこそが――」

「安全、とは思えませんね、とても。……人肉主義の村なんて病死しますよ?」

「は? いや、ちょっと待て。どういう意味だ?」

 フィードは病死に引っかかり、リリアに問いかける。リリアはため息を吐いて、めんどくさそうに話しだした。

「……共食いは自己を滅ぼす。人が人を食べれば、最後は死に至る。あの食欲旺盛な村長さんも近いうちに死ぬことでしょう」

「……旅人、お前なら、あのバケモノに、勝てるか?」

 その言葉は愚問だと分かってはいるフィード。それでも、ほんの少しの期待にかけてみたかったらしい。フィードはミストをどうにかして殺したかった。あの化物と生活していたら、こちらがやられてしまうと考え、いち早く対策したかったからだ。それがこの期だと感じていた。だが、リリアの答えは当然、

「そのバケモノから逃げてきたばかりの私に吐くセリフではありませんね」

 勝てない――

「――いえ、勝てます」

 意外な答えだった。先程までやられっぱなしだった人の吐くセリフではない。何を根拠にしているかは不明だったが、旅人リリアには自信が満ち溢れている――ように見えない無表情で棒読みな声だったが、フィードはそのリリアにすがることにした。


「――結果的に勝ってくれたからいいものを……問題は、ミストが死んでな――」

 ガシッ。

「うおぁあっ?! ミ、ミストォ?!」

「お腹が、空きました……ガブッ」


「……約束は、果たしました」

 無言で歩き続けていたリリアは突然、そう呟き、後ろをついているレミがとぼけ顔になる。

「は? 何かしたか?」

「……死者は出してません。殺して良いなら苦戦はしなかった」

「あ……な、なるほど。手加減してたからってことか」

 呆れ顔のレミと共に、リリアは悠然と北の大地へ。停船させてた船に乗り、目指すは北の島。静かな船出にやかましい声を鳴らす一人の子供を引き連れて……。

 小説やらイラストやら音楽やら妄想やらで大変な日常をお過ごしのそこの学生さん。決して僕のことではない、そう僕のことではない! 確かに妄想はするけど僕じゃない!←それをなぜ自己報告するのさ、夜さん?

 とにかくハチャメチャ無謀な日々をお過ごしのそこの諸君! ……特に言うことはないけど……現実逃避って素晴らしいよねwww(みんなみんな、妄想世界に引きずり込んでやるぅぅ←っと、そんな楽しい小説が書けるようになりたいなぁーって思っただけ)

 次回は第23話! 分裂してしまった『カイト、ミーナ』と『ルマ、トルク』の話に戻ります!

 さぁて、妄想を始めようかw

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