第20話『ホーペン島にて』
どうも、お久しぶりです。k本的にコミュ症ボッチで非リアな星野夜です。
あれからおよそ五か月半……パソコンがネットにつながらず苦戦し、その間に小説を執筆してやろうとやる気になるもののオフトゥンに負け続ける日々。冷蔵庫の中の欲物や、光を放つ16:9の四角いパネル、様々なリアルイベントの処理……などなどで執筆に霧がかっていた僕。
トルク「要するに、眠気と食欲、あと録画した番組の閲覧、友達からの遊びの誘いなどの誘惑に負け続けてたわけだな」
星野夜「いやあ、そ、そういうわけじゃなくてさ――」
カイト「もう8月だよ? 冬童話なのに、完全に真夏の炎天下だよ?」
星野夜「ま、まぁ、カイトたちの地域は8月でも氷海まっしぐらだから、良いんじゃないかな? あはは↓」
ということで、第20話始まります。
太陽が昼の時刻を表す角度まで上り詰めていたが、今日は雲が太陽光を減光していた。天候は優れず、今にも雨か雹、もしくは両方が降りだしそうな雲行きをしている。不完全燃焼の黒い煙を溜め込んだような空は時折鳴き声を上げ、威嚇なのか黒雲内部が閃光を放っていた。南西から北西へと伸びる細長い縦状の島、ホーペン島はどこも白い雪化粧に覆われている。左右の幅が二キロほどしかないこの島では、左右に真っ黒な海が荒れ狂うのが観覧できる。どこまでも深い闇を見ているような感覚になる不気味な海だ。最北端の海岸には一隻の作りの良い舟が紐で固定され、波に揺られていた。その中には様々な旅グッズが置かれているが、持ち主はどうやら不在。
持ち主は、腰まで届くほどの長い黒髪を持つ女性。防寒のために獣毛のコートを着込んで、その上からリュックを背負う。リュックからは長くて入りきらなかったのか、二本の棒状のものが飛び出ている。年齢はおそらく二十代ほど。そして、名前はリリアという。
リリアは今、ホーペン島の最南端にある山『イヴァーセン山』を探索中である。その際、ホーペン族の人々に出会い、リリアは村へと歓迎されることとなった。リリア本人は断ってはいたが、『どうしても』とのことで行くことを決めたリリア。村はイヴァーセン山にあり、風を凌ぐために地面を大きく円形に掘り、その中に作られていた。直径二百メートルの村の中には穏やかに暮らすホーペン族およそ数百人。円形の窪んだ土地は冷風を回避し、外気温より八・九度ほど高いため、防寒具を着込む人はあまりいない。
本来の目的とは関係のない村に来て、リリアは何をしようかと悩み、ひとまず村全体を把握することにして、歩き始めた。よそ者のリリアは人目に付く。歩いていく先々でホーペン族に手を振られたり、睨みつけられたりと人ぞれぞれの反応を見れる。その中で、リリアは一人の男の子に目を付けた。
「……やぁ、僕」
「何だよ、子供扱いすんな」
目つきの鋭い男の子は無愛想に言葉を放った。緑色の帽子を目深に被っていて、服装は毛皮のコート。黒い長髪を隠しているが、横髪は輪郭に沿って垂れていた。
「……案内、頼みたいんですが……」
「なんで、俺なんだよ? お人好し劣勢団ならそこらじゅうにいるぜ」
リリアに敵意を見せないホーペン族全般を指して言っている男の子。その目つきは鋭く、そして冷たい。リリアと同じ瞳を持つ。
「だからです。劣勢より優勢を選ぶのは人間の性でしょう?」
リリアも男の子同様に無愛想に呟く。その瞳はずっと男の子の姿を捉えていた。男の子は目も合わせず、座って何か作業をし続けている。ガリガリと削る音が聞こえていた。
「……俺は、敵を手助けするつもりは――」
そこで口を止めた男の子は、少しばかし間を空けてから、
「――いや、ないな。……俺はお前の手助けはしない」
自答のち、きっぱりと断った男の子は立ち上がり、その場から離れていった。リリアは走り去ってく男の子を見届け、それから男の子の座っていた場所を観察した。何やら地面に薄く掘られた跡があり、それは複雑な模様を描いていた。
「……決めた」
一人小さく呟き、リリアは案内役を求めて歩き出した。
その日の夜、リリアはホーペン族民たちの宴に参加することとなった。リリアは賑やかな場所はあまり好まず、最初は断ったのだが、『どうしても』のことで行くことになった。眠たそうに目を細めてやってきたは村の中心。そこでは巨大灯火が燃え滾り、周囲を暖色の光で暖かく照らしつけているため、曇り夜空でも肉眼で外を歩くことができる。その灯火の前では村人たちが宴に向けての準備に勤しんでいた。予定時刻よりも早く足を運んだから、まだ準備が間に合ってないようだ。なので、リリアは近くの木材に座ってその様を観察することに。
半袖の筋肉隆々な男たちはおおよそ、力仕事に駆り出す。一箇所で何か手作業をする女性たちは恐らく料理の仕込み中。巨大灯火の周りを囲む男性は警備役。警備役がいるということは、村民の中には危険分子がいて、そして危険分子が灯火を狙うのは、その灯火が彼らにとって邪魔であるか、その灯火を必要としている、そのどちらかだろう。リリアはずっとそんな事を考えながら、灯火を中心に周囲に屯う人間を観察し続けた。
そんな忙しない集団の中で、リリアは昼頃に出会ったあの男の子を見つける。その子は馬鹿馬鹿しそうに呆れたという表情で灯火を眺めていて、それと同時に周囲に目を見張っていた。ので、先ほどからずっと注視しているリリアの姿にすぐに気づき、ため息を吐いてからリリアの死角へと逃げ去っていった。
近くを通り過ぎようとしている、木材を運ぶ男をリリアは呼び止め、男は気前良く立ち止まってリリアの相手をしてくれた。
「おう、何だ、お嬢さん?」
「この村、治安が悪いのですか?」
「はぁ? ……あー、悪かねぇよ。ちょいと反乱分子がいるが、そんなのごく一部だろうし、この村から出ていく輩がいようものなら即処刑だからなぁ」
「……それ、詳しく」
「処刑のことか? 反乱分子なんかが村を出て敵を引き連れてこれないよう、離村するものを処分する、それがルールなんだよ。普通だろ?」
「まぁ、そうですね。ありがとうございました」
「ちっ、何なんだよ、あの女……。こっち見んなだし……」
緑の帽子を目深に被り、長い黒髪を服に隠す男の子は巨大灯火の照らしきれない範囲の闇の中で一人、家路を歩いていた。ほとんどの村民は宴に向けての準備で灯火前に集まるため、灯火から離れた場所では人けが少ない。もしいるとするなら、それは病人か、『反乱分子』ぐらいだろうか。
暗い路地を通る男の子の前に、一人のコートを着込んだ男性が近づいてきた。男の子はなんら不思議ではないと横切ろうとして、その腕をガッチリと掴まれた!
「うわぁっ! 何だよっ、おm、うwえっ!」
そのまま男は男の子を無理やり倒し、持ち上げられて連れ去ろうとする。大人のパワーにはとても敵わず、必死に暴れ続けるが、意味はなく、闇の中へと二人して消えた。のをリリアは家の陰から覗き見ていた。
「……」
リリアは前へと歩き、誘拐現場のその場で座り込み、何かを手に取る。それは男の子の緑色の帽子だった。 『キャスケット帽』と呼ばれる、クラウン(帽子の部分)に大きさを取って前部に小さなツバを付けたもので、普通は女性用のもの。頭頂部が膨らんでいて、男の子のロン毛を隠すのにはちょうど良い大きさではある。それをリリア本人が被り、その格好のまんまで誘拐犯の逃走方向へと歩き出した。左腰に一本の刀を吊り下げて。
「いたっ! もっと優しく接しろよな、パレス!」
連れ去られた男の子は、どこかの家内の部屋の中に叩きつけられるように下ろされた。尻部を痛そうに男の子は摩る。その目の前には、パレスと呼ばれた誘拐犯の男性と、その男性と同じくらいの身長の男性が。
「どーせ、お前来ねぇだろ? 無理やり連れてこねぇ限りな」
パレスはそう言って笑う。
「けっ、これだからお前ら嫌いなんだよ!」
「僕はこの人のように酷い扱いはしないよ、レミくん」
もうひとりの男性は爽やかな笑顔でそう言った。連れてこられた男の子、『レミ』はキッと鋭く男を睨みつける。
「レミって言うな、殺すぞ」
普段より低い声で『レミ』は言い、男はオーバーリアクションでわざとらしく驚き挑発する。そんな男を無視して、
「で? 何がしたいんだよ?」
『レミ』は二人へと尋ねる。
「今日の昼、旅人が一人来ただろ? あいつ、使えると思ってな――」
パレスは怪しい笑みを浮かべながら、『レミ』はあぐらをかいて、無愛想に目線を逸らし、頬を膨らましながら話を聞いていた。
「――というわけだ」
「あの女を利用して、出るのか?」
疑心暗鬼の表情で『レミ』は聞き入っていた。
「あぁ、まずはあの女をどう誘拐するか、ですね」
パレスの隣の男は物騒なことを笑顔で呟く。
「誘拐って……依頼すれば――」
「それは無理な話ですね。……死んで」
その声は三人の誰でもなく、三人は一瞬だけ思考が停止して動きが止まる。その瞬間、窓の外から一人の人間が飛び出した! その手には刃。二人の男性の背後からの登場に、対等に位置する『レミ』が一番早くに反応し、駆け出す! 腰に隠していたナイフで敵の刃を押さえ込む『レミ』。太刀とナイフ、体格差と刃のサイズ違いで、圧倒的に不利。
「うぐぐっ、お前……旅人の……」
「こんばんは、少年。誘拐されるのは私、じゃなく君だよ」
敵はリリア。リリアは太刀を綺麗に滑らせ、『レミ』のナイフを受け流すと、瞬間的に納刀し、無防備な『レミ』のナイフを蹴りで弾き飛ばすと、そのまま『レミ』の小さな体を持ち上げ窓へと駆け出した!
「うわぁっ、ななな、何、何だよぉっ?!」
パレスは立ち上がって、『レミ』を誘拐したリリアを追おうと立ち上がる。その時には窓の外へと逃げられ、追おうにも外が暗くて見失ってしまった。そして軽く舌打ちをする。
暗闇の道の中を『レミ』を担ぐリリアはまっすぐと走り去っていく。
「何で、いつも俺は担がれるんだよぉぉぉっ!!!」
『レミ』の身長のなさによる憎悪の旋律が響いて闇に消えた。
「おろせ! おろせって!」
一定リズムで上下する振動に声を震わせながら、担がれる『レミ』は大声で訴えかける。無言で走り続けてたリリアは足を止める。場所は路地裏の光の届かず肉眼では真っ暗な通路。
「……さて、聞きますが――」
下ろさずに、
「――君は外部の人間、ですね?」
リリアが肩の上で暴れる『レミ』を抑えながら尋ね、聞いた『レミ』が動きを止める。
「どうして、それを?!」
「……私の離村の共犯者になってもらいます」
リリアは『レミ』の疑問を無視して、話を続ける。
「結構は今夜すぐに。君も離村は望みですよね?」
返す言葉もなく頷く『レミ』。ようやく落ち着いた『レミ』をリリアは下ろし、地面に立たせる。辺りは闇が包み込み、お互いの位置はおおよそでしか把握できない。リリアは帯刀してた刀を引き抜く。鉄の擦れるその音で『レミ』は察してビクついた。
「逃げたら、分かりますよね?」
棒読みの声で脅しをかける。
「へへっ……シャレになんねぇよ。別に逃げないし、むしろ、お前を逃がしてやるよ。だから、俺に加担しろ」
リリアは暗闇の中、珍しくニヤつく。しかし、真っ暗でその表情は誰にも確認できない。引き抜いていた脅しのための真刀を鞘に収める。
「……というか、お前一人でも脱出ぐらい容易だろ? 俺になぜ加担してくれる? 何が目的だよ、お前?」
暗くて分からないだろうが、訝しげな表情をして『レミ』は聞いている。一般では長い時間の沈黙のち、
「……いや、別に」
と、一言だけ呟いた。その間、およそ一分。五回ほど『レミ』が聞いてたかの確認をしてたようだが、その間、リリアはずっと思考中で何も耳に入ってない。結局、答えが答えになってないリリアの答えに、『レミ』は呆れたとため息を吐く。
「あのさぁ――」
「――君は……離村してどうするつもり? また旅でもするわけ?」
「何で旅してたことを知って……?」
先ほどから意表ばかり突かれていて、『レミ』はリリアの着眼点に半ば尊敬していた。真っ暗闇で分からないが、『レミ』は目を輝かせていた。リリアが聞こえないほど小さくため息を吐き、それから数秒の間を開けて答える。
「……離村する、考えが思いつくからですよ」
「……はぁ?」
まだリリアの言葉が理解できず、呆れる『レミ』。リリアが馬鹿ではないのは分かっている。リリアが今日一日だけで自分のことを見透かせるほどの着眼点と推理力を持っていると、そう思って心中ではワクワクしていた。リリアの次の言葉を待ちわびるが、
「・・・・・・」
「・・・・・・?」
「・・・・・・」
「・・・・・・?」
暗闇の中、冷たい静寂が二人の間を通り過ぎる。もはや自分一人しかいないのでは? そんな静かで不気味な時間が経ち、
「……おい、何か言えよ」
『レミ』が耐えれずに静寂を破る。
「さて? 何を言えば?」
「俺が旅人だったってなぜ分かったかを――」
「それはさっき言いま――」
「それじゃ分からねぇから、一から説明しろって言ってんだよ!」
多少お怒り気味な『レミ』に、リリアは疲れ顔になり、数秒間を開けて再び口を開いた。
「……分かりやすく一言にしたつもりでしたが……。そうですね、では……なぜ、ここの村民は離村を考えるのですか?」
「はぁ? それは、離村だけで処罰される、頭のおかしい集団から抜けたいからだろ」
「おかしいとは……思わない?」
「はぁ? 当たり前だろ。離村イコール処罰の時点で、あいつらの頭の中崩壊して……」
言葉を止めた『レミ』。リリアは暗闇の中、一瞬だけ口角を上げた。
「……気づいたようですね。最初からホーペン族生まれの人々が、離村を考えつくわけがありません」
察した『レミ』に、リリアは答え合わせのように語る。
「何もない不毛なこの地、離村したところで意味はありません。外の世界に同種がいるとも思えないでしょうね。その中で、離村の考えを思いつくには外部の関与が必要です」
「つまりは旅人。外部から侵入してきた旅人を見れば、外の世界に同種がいることを教えれるし、離村の考えも当然――」
「出てくるでしょうね」
「だけど、それだと離村のルールが良く分からない。処罰になる理由がないんじゃ?」
「ホーペン族村長に会えば分かるでしょうね」
「村長? なぜそtうわぁb?!」
疑問符を浮かべる『レミ』を気にせず、リリアは問答無用の夜襲からの担ぎに入り、再び歩き出す。
「うぉおいっ?! またかよ?! どこ行くんだよ?! 何で俺はいつも担がれ役なんだよぉ?!」
「村長に会いに行きましょう」
「その前におろせぇ!!!」
このあと結局、下ろされず。暴れる『レミ』を担ぎながら、リリアは颯爽と闇の中を歩く。目指すは村長家。
トルク「俺らの出番ねぇじゃねぇか!」
星野夜「ま、まぁ、主役は遅れてやってくるもんじゃない? ね? ねぇ?!」
カイト「それで……次の投稿はいつ?」
星野夜「早くても一か月後♪」
カイト・トルク「はぁ……」
星野夜「自宅のパソコンがネットに繋がってないから、そこは許してよ! 今投稿してるのは他人のパソコンなんだし……。というか、塾のパソコンwww」
カイト・トルク「はぁ……」




