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子猫のヒゲ  作者: 梨香
19/20

飯ごうで炊いたご飯

 タイトルを見て、私のことを少しでも知っている方は「あれっ??」と思われたのではないでしょうか。


 まぁ、知らない方の方が多いと思いますが、私はアウトドアが大嫌い。友だちとの食事会がバーベキューだと知って、途中で帰った程苦手です。


 言い訳ではありませんが、その時は、前日に熱中症っぽくなり、当日も頭痛信号があったのです。でも年に一度しか会う事がない友だちだったので、無理を押して行ったのです。もう一人ピックアップする為に家まで迎えに行ったら『そんな格好でバーベキューに行くの?』と驚かれ『着替えてきます』とトンズラしました。もちろん、その友だちは他の人にピックアップして貰いました。


 それからは、私をバーベキューに誘うような人は誰一人いなくなりました。ラッキー!


 でも、時々子供の頃に食べた飯ごうで炊いたご飯が無性に食べたくなります。


 そう、私の父は、夏休みになるとのんびりと川上に電車で向かい、河原で飯ごう炊さんをして川遊びさせていたのです。


 今のアウトドアグッズはテレビで見ていると便利だなぁとは思いますが、なんかこんなに色々必要なのなら家で料理したら良いのではと思います。


 その点、父の川遊びはお手軽でした。片手に網のバック1つだけです。中には飯ごう、米、缶詰、水筒だけ。


 父の飯ごうには『小林』と名前が釘かなんかで傷つけてありました。もちろん、私の名字ではありません。


「なんで小林なの?」


 子供だった私は、父が人の飯ごうをとって来たのではと疑いの目を向けたのです。


「これは戦争が終わった時に軍から貰えた物なんだ。戦争に負けて大変だったから、自分のを探す余裕なんか無かった」


 いつものんびりしている父がサッサと自分の飯ごうを探したりできなかったのだろうと、子供だった私は納得しました。


 その河原には何組か川遊びを楽しんでいる人々がいました。その当時でもバーベキューをしたり、色々なご馳走をお弁当に詰めて来ていました。


 父の作るのは飯ごうでご飯を炊くだけ。その時々、家にある『牛肉の大和煮』とか『コンビーフ』の缶詰を炊きたてのご飯の上に乗っけるだけでした。


 川の浅瀬で遊んで腹ペコだったので、その簡単なご飯がとても美味しく思えました。


 実は、子供頃、ひどい偏食だった私は、特に肉は苦手だったので、牛肉の大和煮をあまり家では食べませんでした。変ですよねぇ。やはりアウトドアは良いのかもしれません。


「軍隊で『牛肉の大和煮』の缶詰が出たら、皆んなご馳走だと喜んだもんだぞ」


 毎回、肉を残す私に父はチクリと皮肉を言いましたが、食べろと強制はしませんでした。おかずを食べず、漬物だけで食べるなら、それはそれで勝手にしたらいいって感じでした。


 思い返すと、亡くなった父は、とても変な人だったのかもしれません。


 夏休みの宿題は、いつも父が作ってくれました。スーパーにも一緒に行きました。


 そういえば、大学生になって家から離れて生活するようになり、夏休みに帰省した時に父とスーパーに買い物に行ったのですが、母に「御宅のご主人さんが若い女の子と仲良く買い物をしていた」とご注進があったそうです。


 何故か、近所の人は私の顔を忘れやすいようで、父の葬式にお手伝いに来ていた人に「○○ちゃんは、お父さんのお葬式なのに帰って来ないの?」と面と向かって尋ねられました。「私が○○です」と言うと「大人になったから分からなかった」と驚かれました。


 子供の頃、ガリガリ! 大学生の頃、めちゃ派手! 大人になって太った! この三段変化についていけないのか、私がとっても大人しいから存在感が無いのか? 


 悩ましいところですが、飯ごう炊さんに話を戻します。


 河原には水道がありました。簡単な炊事場になっていたのかもしれません。そこで、持ってきた米を飯ごうの中で洗い、適度な水を入れて、河原に落ちている木の枝を集めて、新聞紙にライターで火を付けて炊くだけです。


「炊けたら、飯ごうをひっくり返すんだ。それが美味しく炊くコツ」


 毎年、夏休みに飯ごうでご飯を炊いているのを見ていたからか、中学でキャンプ(地獄の様な酷い目に遭いました)でうちの班はまともなご飯を食べられました。1日目だけですけどね。


 あっ、もしかしたらこの地獄のキャンプのせいでアウトドアが嫌いになったのかもしれません。キャンプ場にテントを張り、一応、周りに溝もほったりしていたのですが、集中豪雨で夜中に緊急避難になりました。荷物はずぶ濡れ。


 2日目は、夜ろくに寝ないまま飯ごうでご飯を炊き、きゅうりの九ちゃんで食べました。この時、確かキャンプの食事の材料は班で調達だったのです。今なら食中毒とか問題になりそうですね。私の班はヤル気が無いので、1日目はカレー。2日目はゆで卵ときゅうりの九ちゃんでしたので、作るのは楽だったかも。


 朝食の残りのご飯(白飯ときゅうりの九ちゃん)を弁当に詰め、生乾きの体操服のまま登山。


 泥々の重たい毛布を持って家に帰った時「二度とキャンプには行かない!」と決心しました。実際に行っていません。


 近頃はグランピングとか、色々と便利で快適なのもある様ですが、私はそれなら旅館やホテルに泊まった方がより快適だと思っちゃうんです。


 父には山や海や川によく連れて行って貰ったのに、何故だろう? と首を捻り、そう言えば母は常に一緒に行かなかった! と思い出しました。


「日光アレルギーだから」と言っていましたが、きっと子どもと不便なところで食事などしたくなかったのだろうと推察します。私も同感なので。


 アウトドアは嫌いですが、飯ごうで炊いたご飯は時々食べたくなるのです。土鍋で炊いたら、どうなのかしら? やはりアウトドアで炊きたてを食べるから美味しいのかもしれませんね。

 

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