着物が好き!
夏の暑い盛りに、涼やかな絽の着物を着こなしている女性を見ると、後ろを付いて行きたくなります。絽が透けて、白い麻の長襦袢が見えるのは、とてもセクシーですね。
でも、私は夏場は着物は着ないことに決めています。あんな風に涼しい顔をして歩く根性がないからです。
「着たら以外と涼しいわよ」などと言われますが、ノースリーブで歩いても、汗が吹き出す大阪では無理です。
せいぜい単の着物を五月、九月になら着ても良いかな? と思う私は、お洒落さんにはなれませんね。お洒落には我慢が必要なのです。
「なら冬は着物だと暖かいのだろう?」それは、確かに足元やお腹のへんは暖かいですよ。でも、袖口や襟元は風が吹き込みます。
しかし、冬にはショールやコートなど可愛いアイテムも沢山あります。ただし、ここでもお洒落には我慢が必要なのです。
背中にくった襟ぐりにショールを掛けたいですが、それはお洒落的にはNG! ふんわりと優雅に肩にかけたら、風は相変わらず背中と首に吹き付けるのです。人が居ない場所でなら、我慢しないで掛けちゃいますね。
後は、袖口のカバー。コートで袖口からの風の吹き込みはかなり防げます。そして、以外と長手袋が暖かくて重宝します。シックな茶色や黒の長手袋があると、コート無しでも大丈夫なぐらい暖かいです。
雨の日には、雨コートもありますが、基本は着ないですね。よほど、着物でないと駄目なお茶会でもなければ、着るのは避けた方が良いと思います。
お茶を真面目に習っている友だちは、雨の日用に化繊の着物を買いました。なんと、洗濯機で丸洗いできるそうです。これなら、雨の日のお稽古にも着物で来られるでしょうが、わざわざ買うのもねぇ。良い品はけっこう値段も張るそうです。できたら、家の箪笥に眠っている着物で、やりくりしたいですね。
落語や歌舞伎には、着物姿で来るお客様も多いです。私もたまには着ていきます。気楽な紬か大島です。羽織を着て、帯は半幅を簡単に締めて行きます。
柔らか物と呼ばれる小紋や訪問着は、お茶を止めてから、ほとんど着ませんね。お茶には、何故だかは知りませんが、柔らか物しか駄目だというルールがあります。きっと、昔は紬や大島は普段着だったのでしょう。
着物は、着る前の準備が大変です。それを楽しいと思う心の余裕が無いと、着物を着られません。
先ずは、着物を選んだら、それに締める帯をあわせます。
そして、長襦袢も着物に合わせて選びます。私の着物だと長襦袢もサイズはぴったりのがありますが、母のや、祖母のだと、丈を詰めたりしなくてはいけません。ざっくりとでも縫わないと、袖口から長襦袢が出てきてしまいます。
この長襦袢! 訪問着などの格が高いのは、白やクリーム色や、ほんのりピンクですが、小紋や紬などのお洒落着の長襦袢、とっても可愛いのが多いいのです。
真っ赤な絞りや、黄色いヒヨコ、三角のパステル柄、グリーンの縞模様、雪の結晶、桜の花びら……袖口からチラリと見える長襦袢の柄、素敵なのを着ている人はセンスが良いなと惚れ惚れしちゃいます。
そして、長襦袢には半襟をつけなくてはいけません。普通は白の無地ですが、折角のお洒落着には刺繍や染めの半襟を選びたいですね。季節感あふれる桜や紅葉や雪などの刺繍半襟が売ってあるのを見ると、ついつい買ってしまいます。
お洒落の上級者には、半襟の素敵なのを付けている方がいます。この前、クルミ割り人形のバレエを見に行った時は、半襟に小さなリースの刺繍がありました。やられた! って感じですよね。
帯締めや帯揚げでも、着物の印象はガラリと変わります。高いので買いませんが、着物の雑誌を図書館で借りて研究します。あれこれ組み合わせを変えて、コーディネートするのは、着物を楽しむ醍醐味です。
こうして、着物を着てお出かけするのは、楽しいのですが……なかなかできないのは、後片付けが面倒だからです。
帰宅して、何本もの紐を解き、着物から解放されたらホッ。やはり、着物は楽に着付けても、ジャージとは違います。
そして、畳の上には、着物、帯、長襦袢、下着、帯揚げ、帯締め、あらゆる紐がこんもりと小山になっています。
下着や補整に使ったタオルや腰紐は、汗が滲んでいるのでネットに入れて洗濯機に! 長襦袢、着物は衣紋掛けに掛けて、半日風を通します。帯もハンガーに掛けて、風を通します。後の小物を片付けて、やっと落ち着きますが……何時までも、衣紋掛けに掛けておいてはいけないのです。
「今日は天気が悪いから、明日たたもう」などと一日のばしにしてはいけません。何時も、着るときは浮き浮きするのですが、この後片付けが嫌なのです。洗濯した下着や腰ひもにアイロンを当てたり、長襦袢の半襟を外してクリーニングに出したり、そして着物を畳み、箪笥にしまわないといけません。
誰か、この片付けをしてくれるなら、着物をもっと着るのになぁと溜め息をつきたくなります。でも、やはり着物は好きです!




