告白は止められて
『今日の課題分かんねー』
『助けろ!』
スマホが、二回続けて鳴る。
LINEが来た時に鳴るようにしてるのは、達也だけだ。私は、バッとスマホに飛び付いた。
『いいよ』
『どの科目?』
返信を打ち、ドキドキしながら待つ。
『全部』
達也から来た返信に、私は苦笑した。全部って……
『分かった』
『どれから?』
ピコン、ピコン
シーンとした部屋に、通知の音が響く。
『地理』
それを見た私は、すぐに地理の教科書とノートを取ってきた。
『じゃあ、最初からね』
そう打つと、達也からスタンプが返ってきた。猫が土下座してる、かわいいやつ。達也、こんなの持ってたんだ。新しく買ったのかな?
『よろしく』
『任せて!』
ここは、私のアピールポイントだ。ヘマは出来ない。
『まずね、問1だけど』
『おう』
問1は簡単な問題だ。中学校で習うような5大陸、3大洋。そして、世界各国の海や海流についてだ。
『まず、5大陸は分かるよね?』
『分からん』
マジで!?
達也からの返信に、私は驚愕した。そんなんでよく高校に入れたね……。奇跡?まあ、もし奇跡なら感謝すべきかもしれないけどさ……。
『しょうがないなぁ。5大陸はね……』
私と達也のLINEは、深夜まで続いた。
「愛実、見たよ~?」
朝。寝不足のままリビングに向かうと、お姉ちゃんがちょっかいをかけてきた。
「何が?」
「えーっとね、達也って子とLINEしてたでしょー。それも、夜遅くまで。眠そうにしながら、頑張ってたじゃない。健気ねー。あの子のこと、好きなんでしょ」
眠気が一瞬で吹っ飛んだ。
「ちょっ!お姉ちゃん、何で……」
親友にも、誰にも言ってない私のトップシークレットが!
「バレバレじゃない。1人だけ通知ONにして、ロックまでかけて」
そうだ。達也とのLINEは、厳重にロックをかけてたはず。なのに、何で……
「あんたのロックなんて、番号と顔認証でしょ?番号は大体誕生日だし、私たち姉妹なんだから顔もOKよ」
ていねいに、ロックの破りかたを教えてくれる。でも、そんなのは私の耳に入ってこなかった。
見られた。見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた。
そんな思いが、頭の中を埋め尽くす。
「でも、履歴見たんだけどさー、あんた、ヘタレよね」
お姉ちゃんの言葉がグサッとくる。
「告白すれば?」
「無理だよ……」
達也は、頭の出来はまあ……アレだけど、運動神経もルックスもいい。何より優しいし。だから、モテる。
それに、そんな勇気は出ない。
「大丈夫!セッティングしといたから」
「セッティング?」
「こ・れ♪」
お姉ちゃんが、ポケットからスマホを取り出す。それは……私の!
「見せて!」
お姉ちゃんからスマホを引ったくる。ええと、LINE、LINE……。
『達也。今日の朝8時に、体育館裏に来て』
ちょっ!
そのセリフを見て、私は固まった。体育館裏への呼び出しなんて、完全に告白じゃない!どうしよ……。達也、絶対来ちゃうよ!
「お、お、お姉ちゃんっ!」
「なに?ほら、早く行かないと8時に間に合わないわよ」
「うぅ……」
こうなったら。
これはチャンスだ。こうなったら、告白してやる!
私は、決意を胸に家を飛び出した。
「たっ、達也!」
体育館裏。予想通り、達也はいた。
「愛実!どうした?こんな朝早くに」
「あ、あのね……」
どくどくとうるさい鼓動を整える。荒い息が収まるのを待つ。
そんな時間が、永遠に思えた。
「達也、あのね……」
すうっと息を吸う。フラれるなんて、承知の上。こうなった上は、言うしかない!
「あのね、私、ずっと、達也の事が……」
好き、って言おうとしたら。
「ちょっと待って」
達也に口を塞がれた。
「そういうことは、俺から言わせてくんない?」
「え……」
それから達也が言ったことに私がどう返事したかは……言うまでもない。




