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「ジャスティス……?」

 何を言い出すのだこのギャルは。ジャスティス。正義。流華の脳内に戦隊物のヒーロー達が綺麗に並んでポーズを決めた。

「どういう事さえちゃん?」

 香澄先生は変わらず穏やかな調子で小枝に問う。

「きっかけは読み間違え。それによってもたらされた効果。るー、分からない?」

「え、ごめん全然分かんない。」

「じゃあ質問変えるよ。不幸の手紙、棒の手紙。自分に届いたら怖いのはどっち?」

「そりゃー不幸の……。」

 そこまで言いかけて流華も小枝の言わんとしている事に気付いた。

そうか、ジャスティスなんだこれ。

「棒の手紙。これは勇気ある正義の一手なんだよ。不幸を棒と読み間違える。って事はまずその前に書き間違えた奴がいるわけよね。確かに不幸と棒。崩せば似るし説明がつかないわけでもない。」

「そうね。」

「書き間違えた説が完全に違うとは言わないよ。その可能性もなくはないと思う。けど、あたしは、こいつはもっと明確な意思を持って棒って書いたんじゃないかって思うわけさ。」

「正義の為?」 

「そう、不幸に屈しない為。不幸の手紙を止める為。でも決して勇敢なタイプじゃなかったんだろうねこいつは。きっと自分の手元に不幸の手紙が届いたときは相当絶望したんだろうと思うよ。」

「なんでそんな事わかんのよ?」

「だって、もっと勇猛果敢な正義だったら声高らかに言うはずよ。こんな手紙を自分にこっそり仕込んだのは誰だって。そんでもうこんなくだらない事はやめようって。」

「ふんふん。」

「でもこいつはそれが出来なかった。そこまでの勇気も勇敢さもなかった。でも気付いたのよ。こんな自分でもこの不幸の連鎖を止められるかもしれないって。」

「……まさかそれが。」

「そう、不幸と棒の字が似てるじゃないかって。」

「だからそれを利用して不幸を棒に全部変えたのね。」

「そういう事。不幸が訪れると棒が訪れるじゃ恐怖感が全然違うもの。そんなほんの小さな抵抗。ほんの小さな正義。でもそれを信じて行動に移した結果、想像以上の結果を生む事になった。」

「やった内容自体は大した事じゃないけどね。」

「でも本人からしたらきっと命がけだよ。ルールには背いているからね。間違った書き写しをしてるわけだから。ひょっとしたら死神に対しての保険もあったかもしれないけどね。棒だと誤解して書いちゃっただけなんですって。保身しながらも自分の出来得る限りの有効打。向こう見ずのバカよりかはあたしは割と好感もてるけどね。」

 もちろん真実なんて分からない。本当に単なる書き間違いかもしれないし、もっと違う何かがそこにはあったかもしれない。それでも、小枝の説を信じたいと思った。どんな形にせよ、勇気を持った行動は素敵だと流華も思ったからだ。

「なんだか案外爽やかな話になったわね。さすがさえちゃん。」

「えへへー、なんたってここの出来が違うから。」

 とんとんといつものように指でこめかみをつつく小枝の姿を見て、今日は褒めてもいいかなと流華は少しだけ思った。まあ、褒めないけど。


読了ありがとうございます。

ごねごね都市伝説第二弾。

どんなにちっぽけでも正義は正義。

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