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「おっじゃましまーす!」

 バーンと開いた扉は勢いよく横にスライドし、一瞬保健室の中の様子が見えたかと思えば勢いあまり再び扉が遮るように元の位置に戻ってきた。

「あんたねえ。毎回それやらなくてもいいんだから。」

「え、だってその為に横に滑るシステムにしてるんじゃないの?」

「誰にメリットがあるのよそんなシステム。」

「あたし。」

「どんな?」

「おもろい。」

「聞いた私が愚かだったわ。」

 そして改めて流華が扉をノーマルに開く。部屋の中から恵みの風が二人に流れ込んでくる。とても涼しく、心地よい。それに合わせてなんだかいい香りも流れてきている事に気付く。

「あ、かすみんの匂いだ。」

 先に小枝が口を開く。何度も鼻腔を通っているのにいつも新鮮さで色気に溢れ、記憶にこびりついたかと思えば泳いで隅に行ってしまう、でも決して忘れさせない圧倒的な存在感を持ち合わせる香り。

「あら、暑くなって逃げ込んで来たのかしら。」

 微笑みを湛える香澄先生はゼウスですら頬を赤らめかねない魅力に満ち溢れている。どうやったらこんな表情が出来るのか、というよりもともとの顔の造形の問題か。香澄先生を見ていると神の不公平さに文句を言う気持ちよりも、こんな素晴らしい人間を形づくった事に感謝してしまいそうだ。

「いやーもう何を太陽さんはあんなに焦ってるんだか。もう勘弁してって感じ。」

「確かにまいっちゃうわね。もう全部脱ぎ去りたい気分になっちゃうわよね。」

「先生、刺激が強すぎて学校の男子が全滅してしまうのでやめてください。」

「あらあら、そんなに?」

「いやかすみん、マジでそれぐらいの威力あるから。己の力量を見誤らないで。」

「そう、残念。」

「いやーでもクーラーさまさまだね。文明の利器には自然も成す術なしだね。」

「さて、それならもう始めちゃっても大丈夫よね。」

 その言葉でようやく本来の活動へとシフトする。二人はここに涼みに来ただけではない。流華はもちろん、小枝にとってもここに来るという事はそれを待っているが故だ。

「オーケー、かすみん。何でもきなよ。」

 小枝の挑戦的な姿勢にくっと香澄先生の口角が少し上がった。受けて立つわよといわんばかりの表情だ。

「そうねー。じゃあ今日はこれにしましょうかね。」

「なになに?」

「棒の手紙。」


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