【執筆途中】善人と凡人
二〇〇二年某日。
紅魔館から噴き出した紅霧は、あっという間に博麗大結界の内側を飲み込んだ。まるで星神ナヌークの息吹が、幻想郷という小さな箱庭に直接注ぎ込まれたかのように。
霧の匂いは、紅色の髪をしたツインテールの女の子みたいな香りがした。異変発生から異変解決に至るまでの間、クチナシの香りが幻想郷を覆い続けていた。
私は博麗神社で昼寝をしていたのだが、あの時起きてさえいればと悔やまれる。紅霧を吸い込んだ私は、壊滅の運命を歩むことになった。
異変発生から一時間後、目を覚ました私は破壊衝動に駆られ、博麗大結界を壊したいと強く思った。しかし私は壊さなかった。その時点では。
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人間の里の住人たちは、次々と家屋を打ち壊し、畑を踏み荒らし、互いに殴り合いを始めた。
「壊せ! 全部壊せ! 古いもんは全部粉々だ!」「もう何も残す必要なんてねえんだよ!」壊滅の運命の執行人となった人間は、怒号と笑い声を上げ、里に火を放った。
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妖怪たちも壊滅に飲まれていた。河童たちは自慢の機械を自ら叩き壊し、鬼たちは山を削り、妖精たちはただ笑いながら花畑を焼き払った。すべてが「壊滅の運命」に染まり、ナヌークの加護を受けた者たちのように、破壊衝動だけを純粋に追い求める存在へと変わっていった。
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何事にも例外はあるもので、魔理沙、アリス、パチュリー、フラン、八雲紫、魅魔、聖白蓮、八意永琳は正気を保っていた。いずれも長時間に渡って結界を展開し続けられるだけの魔力量を保有している。
壊滅の運命による異変を解決できるかは彼らに掛かっている。




