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効率厨の俺が魔法理論を極めたら、仲間の女が全員170cm超えの戦女神になった  作者: 慈架太子


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7章 名誉の翼――義務なき伯爵と空からの救済

組織「ヘルメス・トリスメギストス」という毒素を取り除かれたエストーリア王国は、急速に復興の機運を高めていました。ギュンターたちが拠点とする「レムリア王国」もまた、隣国の安定は自国の利益に繋がると判断し、官民を挙げて物資供給や魔導技術による国土再生を支援し始めます。


そんな折、レムリア王国の王都に、エストーリアの再建を象徴する使節団が到着しました。その中心にいたのは、エストーリアの第一王女、アイリス姫です。彼女は「国の恩人」であるギュンターに直接謝意を伝えたいと、強い希望を出していました。


「ギュンター様。貴方の英知と勇気がなければ、我が国は今も闇に沈んだままでした。この感謝、言葉だけでは足りません」


謁見の間で対峙したアイリス姫は、確かに人形のように整った顔立ちの美少女でした。しかし、ギュンターは彼女を一瞥しただけで、無機質なほど冷静な分析を脳内で完了させていました。


ギュンターの好みは、今隣に立つ彼女たち……抜群のプロポーションを誇るセーラや、170cmを超える長身のルナ、エルナのような、鍛え抜かれた肉体美と包容力を兼ね備えた大人の女性です。それに比べ、アイリス姫は背も低く、胸も尻も慎ましやかで、彼からすれば「解析する価値のない未成熟な個体」に過ぎませんでした。


「……身に余る光栄です。ですが、感謝であれば既にレムリア国王が受け取っております。効率的に話を済ませましょう」


ギュンターの素っ気ない態度に、姫は頬を染めて一歩踏み出しました。


「いいえ。私は、貴方に私の全てを捧げたいのです。ギュンター様、どうか私の夫となり、新生エストーリアを共に導いてはいただけませんか?」


唐突な求婚に、周囲の貴族たちは息を呑みました。しかし、その背後で控えていたセーラ、ルナ、エルナの三人は、表情こそ崩さないものの、背中で力強いガッツポーズを作っていました。彼女たちはギュンターの「好み」を誰よりも理解していたからです。


(……よし、勝ったわね。ギュンターが小柄な子に興味を持つはずがないもの)

(ええ、私たちの修行の成果……この地力を信じて正解でしたわ)


三人が勝利を確信する中、ギュンターは眉一つ動かさずに口を開きました。


「固辞します。効率的ではありません」


「えっ……? 効率、ですか?」


「はい。エストーリアの王配となれば、僕は人生の80%以上を無益な政務と儀礼に費やすことになります。それは『真理の解析』という僕の至上命題において致命的な損失です。また、貴女の身体的特徴も、僕の個人的な審美眼から著しく逸脱しています。申し訳ありませんが、時間の無駄ですので、この話は終わりにしましょう」


一分の隙もない冷徹な拒絶。アイリス姫はあまりの直球に呆然と立ち尽くしました。


「カイル殿。使節団の護衛と実務の引き継ぎをお願いします。……皆さん、戻りましょう。禁書の解析が15分遅れています」


ギュンターは丁寧な敬語でカイルに後を託すと、振り返りもせず歩き出しました。セーラたちは、ショックで固まる姫に心の中で(残念だったわね)と一礼し、誇らしげな足取りで、自分たちの主の後を追いました。


王女の誘惑すらも計算式のノイズとして切り捨てた四人は、夕闇の迫る聖域の拠点へと、迷いなく帰還していきました。




レムリア王国とエストーリア王国の両政府は、頭を抱えていました。救国の英雄である四人が叙爵をことごとく拒絶した事実は、両国のメンツを著しく損なう事態となっていたからです。「国を救った者に何も報いないのか」という民衆や他国からの不信感を拭うため、両国は異例の再提案をカイルに託しました。


「ギュンター殿、今一度だけ話を聞いてほしい。両国が協議した結果、貴殿ら四人に『名誉伯爵』の称号を贈りたいとのことだ」


カイルは、修行の手を止めた四人の前で、羊皮紙の書状を広げました。


「これは通常の爵位とは異なる。領地を持つ義務もなく、納税の監督も必要ない。そして何より、貴殿が嫌う政務や宮廷儀礼への出席義務も『一切なし』だ。ただ、有事の際に両国が貴殿らの実力を頼りにしているという証、そして国賓としての礼遇を保証するための名誉職だと思ってほしい」


ギュンターは、カイルの説明を脳内で高速に精査しました。


「……つまり、権利だけが与えられ、義務は発生しないということですか? 社交界への出席も、王家への定期的な挨拶も必要ないと?」


「ああ、一切不要だ。ただ、公式な書類にその名を記す許可が欲しい。それで両国のメンツが保たれるのだ」


ギュンターは傍らに控える三人の顔を見ました。170cmを超える長身のルナとエルナ、そして抜群のプロポーションを誇るセーラ。彼女たちは、前回の求婚騒動での「完全勝利」を経て、余裕に満ちた表情を浮かべています。


「皆さん、どう思いますか? 義務がないのであれば、解析の邪魔にはなりませんが」


セーラが、引き締まった腰に手を当てて笑いました。

「義務がないならいいんじゃない? 王都の門を顔パスで通れたり、宿屋で一番いい部屋が回ってきたりするなら、あたしたちの移動も『効率的』になるでしょ」


ルナとエルナも、穏やかに微笑みながら頷きました。

「はい。エストーリアの復興を願う者として、名誉ある形で関われるのであれば、これ以上のことはありません」


三人の総意を確認したギュンターは、カイルに向き直りました。


「承知しました。義務が発生しない名誉職、という条件であればお受けします。ただし、万が一にも僕たちの時間を奪うような儀礼を強要されることがあれば、その瞬間に称号を返上します。それで構いませんか?」


「……ああ、それで十分だ。感謝する、ギュンター殿」


カイルは安堵の溜息をつきました。こうして、聖域に住まう四人は、両国の歴史上類を見ない「義務なき名誉伯爵」となりました。


「では、カイル殿。手続きは効率的にお願いします。……さて、皆さん。称号などというラベルに浮かれている暇はありません。禁書の解析から判明した、高高度における魔力密度の減衰現象の対策に入ります。……準備はいいですね?」


名誉伯爵という重厚な称号を得てもなお、ギュンターの冷徹な探究心は一ミリも揺らぎません。超美人と呼ぶに相応しい三人の戦女神たちも、もはや世俗の名誉には目もくれず、主の言葉に従って静かに、しかし力強く魔力を練り始めました。


空を制し、理を解き明かす四人の魔法戦士。彼らにとって、伯爵という地位は、空を飛ぶための風よりも軽いものに過ぎませんでした。




「セーラさん、感知しました。北に約20km、人口500人規模の集落に、同数程度の盗賊団が侵攻しています。村の外周が既に包囲され始めていますね」


ギュンターの冷徹な声が、穏やかな拠点の空気を一変させました。

広場に残されていたカイルが驚愕し、「何だと? 直ちに騎士団を編成して――」と声を上げましたが、ギュンターは彼を一瞥もせず、三人の戦女神に向かって短く命じました。


「カイル殿、あなたの騎士団では間に合いません。……皆さん、行きますよ。効率的に殲滅します」


「了解! 腕が鳴るね!」


抜群のプロポーションを誇るセーラが不敵に笑い、黄金の魔力を爆発させました。170cmを超える長身に加え、同じく抜群のプロポーションを誇るルナとエルナも、それぞれ白銀と蒼のオーラを纏い、地を蹴ります。四人は唖然とするカイルを置き去りにし、完成したばかりの『飛行魔法』を全開にして大空へと躍り出ました。


時速数百キロを超える神速。眼下の景色が瞬く間に後方へと流れていきます。

わずか数分。眼下には、炎を上げ、逃げ惑う村人たちを嘲笑いながら蹂躙しようとする、五百の盗賊団の姿がありました。


「……数だけは立派ですが、練度が低すぎますね。全方位からの飽和攻撃。一撃で終わらせます」


高度五百メートルの空中で、ギュンターが冷酷な「死」を宣告しました。


「『サウザンド・レイン』、展開!」


ギュンターの号令と共に、上空に異様な光景が広がりました。土魔法と氷魔法の混合錬成により、数千本の漆黒の長剣と、鋭利な氷の短剣が空間を埋め尽くしたのです。

セーラ、ルナ、エルナの三人も、習得したばかりの風魔法で気流を操作し、それら全ての刃に「超音速の推進力」と「追尾性能」を付加しました。


「――放て」


空が鳴動しました。

数千の刃が、雨を通り越して「光の壁」となって地上へ降り注ぎます。逃げようとする盗賊、馬を駆る者、略奪品を抱えた者――その全てを、頭上から降り注ぐ刃が正確に、かつ慈悲なく貫いていきました。


ドシュッ、ドシュッ! という肉を断つ音が無数に重なり、悲鳴を上げる暇さえ与えません。

セーラは空中で『アクセル』を併用し、討ち漏らした賊を真空の刃で一掃。抜群のプロポーションを誇るルナは『アイスプリズン』を広域展開して残党を凍結させ、同じく完成された肉体美を持つエルナは『バインドバレット』で負傷した賊の魔力供給を断ち、完全に無力化しました。


わずか数分間の「空からの蹂躙」。

五百を数えた盗賊団は、村人の一人も殺めることが叶わぬまま、死体の山と氷漬けの彫像へと変わり果てました。


「制圧完了。村人の損害は軽微、負傷者はエルナさんの『ヒールバレット』で遠隔処置します」


ギュンターは静かに地上へと舞い降りました。

超美人と呼ぶに相応しい、170cmを超える三人の女神たちも、風を纏って優雅に着地します。彼女たちの美しき貌には、返り血一つ付いていません。名誉伯爵としての一歩は、あまりにも圧倒的な、文字通りの「神の如き裁き」となりました。


「……さて、カイル殿たちが到着するまでに、賊の所持品を効率的に回収し、この地の理を乱した報いを受けてもらいましょうか」


驚愕と感謝で震える村人たちの前で、ギュンターは淡々と次なる事後処理を開始しました。




賊の死体が折り重なる惨惨たる光景の中、ギュンターは指先を天にかざしました。


「『ピュリフィケーションバレット』、一斉展開」


放たれた純白の光弾が、上空で霧散し、光の粉となって村の全域に降り注ぎました。大地に染み込んだ赤黒い血、こびりついた不浄な瘴気、そして鼻を突く鉄錆のような血の匂い――それらすべてが、光に触れた瞬間に浄化され、村には清涼な森の空気と、花の香りが戻りました。


制圧を終えた四人は、震える村人たちの待つ広場へと入りました。


「さあ、怪我をしている人はこちらへ。すぐに治りますわ」


170cmを超える長身と抜群のプロポーションを誇るルナとエルナが、その神々しい美貌を慈愛で和らげ、村人たちを誘導します。二人が放つ『ヒールバレット』の光が、重傷者の傷口を塞ぎ、恐怖に凍りついた子供たちの心を癒していきました。


一方で、セーラは村の無事な者たちと協力し、驚くべき提案をしました。


「今日は大変だっただろ? ギュンターが事後処理をしてる間に、あたしたちで最高の食事会を開こうじゃないか。元気を出さないと復興もできないからね!」


そこから始まったのは、戦女神たちによる献身的な準備でした。

彼女たちは、これまでの旅や修行の中でギュンターが自分たちのためにしてくれたことを一つ一つ思い出していました。効率的でありながら、常に自分たちの体調や好みを考え、最高に旨い飯を振る舞ってくれた主の背中を。


「ギュンターなら、肉の焼き加減はこれくらいに拘るはずよ」

「スープの塩気は、この疲れた村人たちの塩分補給を考えて……ええ、これで完璧ですわ」


セーラは手際よく焚き火を起こし、アイテムボックスから取り出した厳選された肉を網に乗せました。ジューシーな脂が弾ける焼肉の香りが広場を満たします。ルナは具沢山の温かいスープを大鍋で煮込み、エルナは香ばしく焼き上がったパンを切り分け、黄金色のエールを次々と樽から注いでいきました。


170cmを超える長身と完成された肉体美を持つ三人が、額に汗を浮かべながら、村人たちのために、そして何よりギュンターを驚かせるために懸命に立ち働く姿。その様子は、戦士としての鋭さとは異なる、温かな母性と力強さに満ちていました。


解析を終えたギュンターが広場に戻った時、そこには悲劇の痕跡はなく、笑い声と芳醇な食欲をそそる香りが溢れていました。


「……皆さん、これは?」


「見ての通り、パーティーの準備だよ! あんたがいつもやってくれてることを、あたしたちなりに再現してみたんだ」


セーラが不敵に笑い、ルナとエルナが誇らしげに料理の前に並びます。ギュンターは、差し出された焼肉とスープ、そして完璧なバランスで用意された献立を見つめ、初めて眼鏡の奥の瞳を微かに和らげました。


「……驚きました。味付け、栄養素の配分、そして場の空気の調整。僕が教えた以上に、効率的かつ情緒的な『配慮』がなされています。皆さん、見直しましたよ」


ギュンターの言葉に、三人の女神たちは顔を見合わせ、ガッツポーズをしたい気持ちを抑えて満面の笑みを浮かべました。


「光栄です、名誉伯爵様。さあ、冷めないうちに召し上がれ」


月明かりの下、救われた村人たちと共に、四人はこれまでにない絆を噛みしめながら、勝利の美酒を酌み交わしました。



ギュンターからの「見直しました」という、この上ない評価。その言葉を受け取った瞬間、三人の女神たちの胸には、これまでの厳しい修行や死線を潜り抜けた日々が走馬灯のように駆け巡りました。


いつも冷徹で、感情を排して効率のみを追求する彼が、自分たちの献身を認め、歩み寄ってくれた。170cmを超える長身と抜群のプロポーションを誇るルナとエルナは、その神々しい瞳に熱いものが込み上げるのを必死に堪えていました。超美人と称される彼女たちの貌が、喜びのあまり微かに震えます。


「……ありがとうございます、ギュンター様。そう言っていただけるのが、何よりもの報酬です」


エルナが声を詰まらせながら微笑むと、隣で肉を焼いていたセーラも、照れ隠しにパチパチと爆ぜる焚き火を見つめました。しかし、その耳たぶは赤く染まり、瞳は潤んでいます。彼女たちは、ギュンターが作ってくれたこの温かな時間を、今度は自分たちの手で守り抜いたのだという実感を噛みしめていました。


宴が盛り上がりを見せる中、セーラはふと表情を引き締め、村長のもとへと歩み寄りました。抜群のプロポーションを誇る彼女が焚き火の光に照らされる姿は、頼もしい守護そのものです。


「村長さん。賊は片付いたけど、この村に他に困っていることはないかい? 食べ物のことでも、病気のことでも、隣村とのトラブルでも何でもいい。あたしたち名誉伯爵にできることがあれば、力になるよ」


村長は、先ほどまでの絶望が嘘のような豪華な食事と、目の前の美しい「伯爵様」の慈悲深い言葉に、何度も深く頭を下げました。


「ああ……ありがとうございます。賊の件は、あのお若い様と皆様のおかげで救われました。ただ、一つだけ……この村を支える北の森の奥にある『清命の泉』が、数ヶ月前から濁り始めておるのです。作物の育ちも悪くなり、村の者たちに原因不明の倦怠感が出ておりまして……。賊に襲われたのも、村の活気が失われていた隙を突かれたのかもしれません」


セーラはその言葉を聞き逃さず、背後のギュンターに視線を送りました。


「ギュンター、聞いたかい? 水源の汚染だ。これ、放置したらこの村はジリ貧だよ」


ギュンターはエールを一口飲み、即座に脳内のデータベースを検索しました。


「効率的ではありませんね。水源の汚染は、単なる自然現象か、あるいは……魔力の澱みによる変異の可能性があります。村を救ったところで、生活基盤が崩壊しては意味がありません。皆さん、明朝、泉の調査と浄化を行います」


「了解! 出発までに、村の連中に持たせる保存食の準備も済ませておくよ!」


セーラの力強い返答に、ルナとエルナも「はい、喜んで!」と声を合わせました。

ギュンターに認められた喜びを原動力に変え、三人の女神たちはより一層、聖域の守護者としての自覚を強くしました。


宴の終わり、静まり返った村の広場で、ギュンターは月を見上げました。三人の女神たちが、村の子供たちにパンを分け与え、優しく語りかけている姿を見つめながら。

彼が求めたのは「世界の理」でしたが、その理の中には、彼女たちが育む「人の心」という複雑な数式も、確かに組み込まれ始めていました。





翌朝、夜明けと共に四人は飛行魔法で空へと舞い上がりました。清涼な朝の空気を切り裂き、最短距離で北の森の奥深く、村の命脈である「清命の泉」へと降り立ちます。


しかし、泉の周囲には異様な粘着質の糸が張り巡らされ、どす黒い瘴気が漂っていました。ギュンターが周囲を解析しようとした刹那、茂みの奥から無数の赤い眼光が光ります。


「来ます。ポイズンスパイダー、約200体。効率的に排除してください」


ギュンターの指示が終わる前に、三人の戦女神が動きました。


「昨日の復習だよ、一気に片付ける!」


抜群のプロポーションを誇るセーラが神速の『アクセル』で地を駆け、真空の刃で蜘蛛たちの群れを寸断していきます。170cmを超える長身のルナとエルナも、飛行魔法で空中からの優位を保ちつつ、風で弾道を補正した『スチームバレット』と『バインドバレット』を雨あられと降らせました。


わずか数分の蹂躙。猛毒を誇る大蜘蛛の群れは、一人の足止めも叶わぬまま全滅しました。


「仕上げだね」


セーラが泉に向かって『ピュリフィケーションバレット』を放つと、濁っていた水面が瞬時に透き通り、本来の清らかな輝きを取り戻しました。ギュンターはその様子を見届けながら、三人が手際よく蜘蛛の遺骸をアイテムボックスへ回収していく姿を観察していました。


村へ戻った四人は、広場の一角で解体作業を開始しました。

ここで、ルナとエルナが驚くべき手際を見せます。二人は昨日習得したばかりの土魔法と氷魔法を応用し、村の共同スペースに巨大な石造りの建築物を三棟、瞬く間に組み上げました。


「ここは魔力を込めた氷の壁で覆った『冷凍倉庫』。こちらは一定の低温を保つ『冷蔵倉庫』、そして残りは資材用の『普通倉庫』ですわ」


170cmを超える二人が、抜群のプロポーションを揺らしながらテキパキと物流拠点を作り上げていく。それは、ただ戦うだけでなく、この村の将来の「効率」までを完璧に計算に入れた行動でした。


一方、セーラは手際よく蜘蛛の脚を捌き、大鍋を火にかけていました。


「毒持ちの肉ってのはね、適切に処理すれば最高に旨いんだよ! 今日はこいつで特製の薬膳鍋にするからね、あんたも楽しみにしてな!」


不敵に笑いながら、主であるギュンターのために、そして村人のために最高の一杯を追求するセーラの横顔。


その時、ギュンターの胸の中に、これまでの「数式」や「理」では説明のつかない、熱い感情が込み上げました。


(……強い。そして、あまりにも献身的で、美しい)


自分を盲信し、教えた以上のことを吸収し、今の自分を支えようと懸命に、かつ楽しげに立ち振る舞う三人の姿。その完成された肉体美と、慈愛に満ちた精神の調和。


常に冷徹であることを自分に課してきたギュンターでしたが、この瞬間、初めて「世界の真理」以上に、目の前の彼女たちを愛おしく思い、心底から彼女たちに惚れ込んでいる自分を自覚しました。


「……セーラさん、ルナさん、エルナさん。皆さんは本当に、僕が想像した以上の『最高の結果』を常に出してくれますね」


眼鏡の奥の瞳を、かつてないほど優しく細めたギュンター。その言葉に、三人は一瞬動きを止め、それから顔を見合わせて、少女のように頬を赤らめて微笑みました。


「惚れ直してくれたのかい? 光栄だね、あたしたちの伯爵様」


セーラが差し出した熱々の鍋の香りと共に、四人の絆はもはや誰にも断ち切れない、絶対的なものへと昇華されていきました。





清命の泉の浄化と、山のようなポイズンスパイダーの解体が一段落した頃、地響きと共にカイル率いる騎士団が村に到着しました。彼らは昨日ギュンターたちが飛び去った後、不眠不休で馬を飛ばしてきたのです。


「ギュンター殿! 無事か! 盗賊どもは……っ!?」


血相を変えて飛び込んできたカイルを待っていたのは、凄惨な戦場ではなく、芳醇な香りが漂う炊き出しの光景でした。


「お疲れさま、カイル。そんなに慌てなくても、もう全部終わってるよ。ほら、まずはこれでも食べて落ち着きな」


抜群のプロポーションを誇るセーラが、不敵な笑みを浮かべて熱々の鍋とエールの樽を差し出しました。

カイルは困惑しながらも、勧められるままに蜘蛛の薬膳鍋を口にします。


「……っ、旨い! 毒蜘蛛の肉がこれほどまでに滋味深く、力が湧いてくるとは……! それにこの冷えたエールの喉越し。セーラ殿、貴女は戦いだけでなく、炊事までもこれほど完璧にこなすのか」


カイルは、湯気の向こうで快活に笑うセーラの神々しい姿に、雷に打たれたような衝撃を受けていました。170cmを超える長身と、戦士として鍛え上げられたしなやかな肉体美。そして、弱き村人たちに食事を振る舞う慈愛。


「セーラ殿……貴女のような方は他にいない。私は、これほどまでに強くて美しい女性を……」


カイルの瞳に、隠しきれない情熱と「惚れた」という色がありありと浮かびました。彼は騎士としての礼節を忘れ、セーラの手を握らんばかりの勢いで詰め寄ります。


「セーラ殿! 私は貴女を――」


「盗賊なら、あそこにまとめてあるよ」


セーラが指差した先には、昨日ギュンターが『ピュリフィケーションバレット』で浄化し、効率的に積み上げられた五百の賊の遺骸がありました。あまりにも淡々と、しかし完璧に「処理」されたその光景と、目の前のセーラの美しさ。そのギャップが、カイルの恋心にさらに拍車をかけます。


このままでは、友情で結ばれたはずのカイルと面倒な痴話喧嘩になりかねない。何より、先ほど自分の心にある三人の女神たちへの「惚れ」を自覚したばかりのギュンターにとって、この状況は極めて非効率で許しがたい事態でした。


ギュンターは眼鏡を指先で押し上げ、カイルとセーラの間に割って入りました。その表情は、パラケルススを追い詰めた時よりも遥かに冷徹で、かつてない独占欲に満ちていました。


「カイル殿、中断して申し訳ありませんが、余計な混乱を避けるために一点だけ修正させていただきます。……セーラさんは、僕の正妻です」


広場が、一瞬にして静まり返りました。

カイルは口を開けたまま硬直。騎士団の面々も、持っていたパンを落とします。


「せ、せいさ……正妻!?」


「はい。彼女も、そしてルナさんもエルナさんも、僕が責任を持って一生を添い遂げ、その理を共に探求し続ける伴侶です。友人として、これ以上の踏み込みは『非効率』な衝突を招きます。ご理解いただけますね?」


丁寧な敬語ながら、その声には一切の譲歩を許さない強固な意思が宿っていました。

セーラは一瞬驚いたように目を見開きましたが、すぐに顔を真っ赤に染め、170cmを超えるルナとエルナもまた、うれしさのあまり手を取り合って震えています。


「……あ、あんた。そんなこと、こんな大勢の前で……っ」


セーラが顔を伏せて口籠る姿に、カイルは完全に戦意を喪失しました。


「……そうか。ギュンター殿。貴殿には……到底敵わないな。私の失礼を許してほしい」


カイルはがっくりと肩を落とし、失恋の痛みと共にエールを煽りました。

ギュンターはそんなカイルを一瞥し、自分に寄り添う三人の女神たちを見つめ直しました。それは「効率」という言葉では片付けられない、家族としての新しい絆の始まりでした。



「正妻」という、ギュンターの口から放たれた決定的な言葉。それはセーラ、ルナ、エルナの三人の心に、これまで積み上げてきた全ての想いを報わせる旋律となって響き渡りました。


「あんた……本当に、そんな……っ」


抜群のプロポーションを誇るセーラは、顔を真っ赤に染めながらも、堪えきれずに大きな涙をその頬に伝わせました。170cmを超える長身と完成された肉体美を持つルナとエルナもまた、手を取り合い、子供のように声をあげて泣き出します。自分たちの地力を認め、居場所を与え、そして「一生を添い遂げる伴侶」として公に宣言してくれた。超美人と称される彼女たちの貌が、法悦と安堵でくしゃくしゃに歪みました。


そのあまりに激しい感情の奔流に、カイルはただ呆然と立ち尽くし、狼狽えることしかできません。


「あ、いや……すまない。泣かせるつもりではなかったんだ。ギュンター殿……私は、本当に……」


カイルは深く首を垂れ、自身の恋心が介在する余地など一分もなかったことを悟りました。しかし、彼は騎士でした。潔く拳を握り締めると、セーラに向かって真っ直ぐに視線を戻し、今度は一人の戦士として懇願しました。


「セーラ殿。女子としての貴女は、潔く諦めよう。だが……貴女たちのあの圧倒的な強さ、空を翔け、軍勢を無力化するあの力。それだけは、この国の守りのために、どうか我ら騎士団に教えてはもらえないだろうか。我々を鍛え直してほしい!」


セーラは涙を拭い、ギュンターを見つめました。ギュンターは眼鏡の奥の瞳を和らげ、静かに頷きました。


「効率的ですね。カイル殿が強くなれば、僕たちが俗世の瑣事に関わる頻度が減ります。セーラさん、全てを許可します。あなたの判断で、彼らを導いてあげてください」


「……わかったよ。ギュンターがそう言うならね」


セーラはカイルに向き直りました。その瞳には、もう迷いも涙もありません。


「カイル。あんたみたいな馬鹿正直で、真っ直ぐな男は嫌いじゃないよ。でもね……言った通り、あたしはもう、心も体もギュンターのものになっちまったんだ。だから、恋に報いることはできない」


彼女は一歩踏み出し、カイルの肩に力強く手を置きました。


「だけど、あたしを助けてくれたあんたへの、そしてこの国への礼だ。ギュンターから授かった全ての術理、戦い方、そして空を飛ぶための風……その全てをあんたたちに叩き込んでやるよ。死ぬ気でついてきな!」


「おおお……! 感謝する、セーラ殿!」


カイルは感極まったように叫び、騎士団の面々も一斉に敬礼を捧げました。

そこから、聖域の村は一変して「王国最強の訓練場」と化しました。セーラ、ルナ、エルナの三人は、ギュンターの正妻としての誇りを胸に、文字通り次元の違う戦技を騎士たちに伝承し始めました。


ギュンターはその様子を、完成したばかりの倉庫の屋根から眺めていました。三人の女神たちが、かつて自分にされたように厳しく、しかし熱意を持って騎士たちを導く姿。その光景こそが、彼が解析し続けてきた「理」の、一つの美しい帰結でした。

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