5章 境界の打破――「自在型」の完成と錬金術師の影
「セーラさん、ルナさん、エルナさん! 『スチームバレット』、最大出力で連続投入してください!」
ギュンターの号令が、歪んだ空間に鋭く響き渡りました。
『スチームバレット』は、着弾と同時にその体積を爆発的に膨張させ、元の1700倍以上の質量を一点に叩きつける、極めて殺傷力の高い術式です。物理的な破壊を目的とするこの魔法を、あえて「無」の穴にぶつける――それがギュンターの導き出した解でした。
「了解だよ、ギュンター! 飲み込みきれないほど詰め込んでやるさ!」
抜群のプロポーションを誇るセーラが、黄金の魔力を全身から噴き上げました。続いて170cmを超えるしなやかな長身のルナとエルナが、神々しいまでの美貌に戦士の冷徹さを宿し、魔力砲台を形成します。
「「『スチームバレット』、連射!!」」
三人の手の中から、白熱する弾丸が無数に撃ち出されました。
黒い穴という、存在を消し去る虚無に対し、彼女たちは「圧倒的な質量」という実体を絶え間なく注ぎ込みます。
ズ、ズズゥゥンッ!!
着弾の瞬間、穴の内側で弾丸が1700倍の質量へと膨れ上がります。本来なら何も存在しないはずの虚無の空間が、物理的な圧力によって内側から無理やり押し広げられていきました。
一つ、また一つ。休む間もなく叩き込まれる質量弾。
吸い込んでも吸い込んでも、それを上回る速度で流れ込んでくる「存在の密度」。
さしもの黒い穴も、その処理能力の限界を超え始めたのか、滑らかだった輪郭が激しく波打ち、空間そのものが軋むような異音を立て始めました。
「効果は出ています。……ですが、まだ足りない。穴が質量を処理しきる前に、その内側を飽和させます!」
ギュンターは『バインドバレット』の影の鎖で穴の縁を強引に固定し、膨張する質量をその内側へと閉じ込めました。逃げ場を失った1700倍の圧力が、虚無の内壁を内側から食い破ろうと暴れ回ります。
ルナとエルナは、額に汗を浮かべながらも『魔力吸収』を全開にし、大気から、そして自身の奥底から魔力を絞り出し続けました。セーラの放つ弾丸はもはや光の束となり、黒い穴の奥底を質量で満たしていきます。
「……これでも食らいなさい!」
セーラが叫び、最大の一撃が穴の中心で炸裂しました。
その瞬間、黒い穴の拡張が止まりました。それどころか、内側からの過剰な質量に耐えかねたように、穴の端々から亀裂のような白い光が漏れ出し、空間が悲鳴を上げ始めました。
「……臨界点です。皆さん、衝撃に備えてください!」
ギュンターが警告した直後、漆黒の虚無は「過負荷」によって激しく明滅し、内側から弾け飛びました。
激しい衝撃波の向こう側。
そこには、すべての存在を飲み込もうとしていた穴の「真体」――この異変の核となる存在が、その姿を晒そうとしていました。
「セーラさん、ルナさん、エルナさん! 『スチームバレット』最大出力、連射を維持してください。休ませてはいけません!」
ギュンターの鋭い声が、軋む空間を切り裂きました。
三人の戦女神――抜群のプロポーションを誇るセーラ、そして170cmを超える長身へと進化し、超美人の風格を湛えたルナとエルナ。彼女たちは、自身の掌から放たれる魔力の奔流に、一切の容赦を込めませんでした。
三人が放つ『スチームバレット』は、着弾の瞬間に体積が元の1700倍以上にまで爆発的な質量へと変換される、物理法則を捻じ曲げるような質量攻撃です。それが三つの砲台から、途切れることのない連射として黒い穴に叩き込まれ続けました。
ズォォォンッ! ズォォォンッ!
黒い穴は、かつてないほどの「異物」をその内側に押し込まれ、絶叫に近い空間の歪みを吐き出しました。どれほど吸い込んでも、それを遥かに凌駕する密度の質量が、一秒間に数十発という頻度でその内部を蹂躙します。
「……っ、魔力が足りないなんて言わせないよ!」
セーラが叫びます。彼女たちの魔力は、消費される端からギュンターの構築した『魔力吸収』の術式によって大気中から強引に引き抜かれ、常に「満量」の状態へと充填され続けていました。無限に近い魔力供給が、この非合理的なまでの飽和攻撃を可能にしているのです。
「ギュンター様、穴が……内側から崩壊を始めています!」
ルナの言葉通り、過剰な質量に耐えかねた黒い穴の輪郭が、不規則に脈打ち、亀裂からまばゆい光を漏らし始めました。
「臨界点です。……トドメを。皆さん、属性を切り替えてください」
ギュンターの冷静な指示に従い、三人は即座に術式を上書きしました。放たれるのは、質量という物理的な暴力ではなく、存在の位相そのものを浄化し固定する、究極の聖弾。
「「「『ホーリーバレット』、最大出力、準備!!」」」
三人の手元に、黄金の太陽が現れたかのような、凄まじい密度の光球が形成されました。170cmを超える彼女たちの美しき肢体が、その放光によって黄金色に縁取られ、神々しいまでの戦女神の姿を完成させます。
「……撃て!」
ギュンターの号令と共に、三つの黄金の閃光が、質量でパンパンに膨れ上がった黒い穴の中心へと直撃しました。
物理的な質量による「内圧」と、聖なる光による「浄化」。
二つの相反する理が内部で激突し、黒い穴はもはやその形を保つことができませんでした。
バキィィィィィィィンッ!!
空間そのものが砕け散るような音と共に、虚無の穴は霧散しました。その爆縮の向こう側、漆黒の帳が剥がれた中心に、見たこともないほど透明で巨大な、虹色の魔石が姿を現しました。
「……効率的に、排除できましたね」
ギュンターは土魔法で生成したシールドを解き、静かに歩み出しました。三人の女神たちも、荒い呼吸を整えながら、自分たちが成し遂げた戦果を、その輝く瞳で見つめていました。
黒い穴が崩壊し、霧散した虚無の残滓が漂う中心で、その魔石は異様な圧を放ち続けていました。虹色に輝きながらも、その表面には未だに「無」の名残である、どす黒い負のエネルギーが粘りつくように纏わりついています。
「皆さん、最後の手順です。完全に浄化します」
ギュンターの冷静な指示が飛びます。170cmを超える長身のルナとエルナ、そして抜群のプロポーションを誇るセーラが、一斉に浄化の術式を展開しました。
「「「『ピュリフィケーションバレット』!!」」」
三人の手元から、穢れなき純白の光弾が放たれました。魔力吸収によって絶え間なく最大値に充填され続ける彼女たちの魔力は、一発一発が極めて高い純度を誇っています。
白銀の光が魔石を包み込み、こびり付いていた漆黒の呪詛を焼き切り、消滅させていきます。数分間に及ぶ光の放射の末、ついに空間から不快な震えが消え去りました。
そこには、もはや禍々しさは微塵もありません。
巨大な魔石が、濁りの一切ない極彩色を湛え、周囲の森を穏やかに照らしていました。それは、クイーンアントや影から得た魔石とは一線を画す、極めて巨大で純粋な質量を保っています。
「……浄化、完了ですね」
ギュンターは土魔法の防御障壁を解き、静かに魔石の傍らへ歩み寄りました。
「信じられない……。こんなに綺麗な魔石、見たことがないよ」
セーラが荒い呼吸を整え、額の汗を拭いながら溜息をつきました。170cmを超えるルナとエルナも、神々しいまでの美貌に安堵の色を浮かべ、互いに健闘を称え合うように肩を並べています。
「効率的に、排除と回収ができました」
ギュンターはアイテムボックスを起動し、虹色の巨大な魔石を音もなく収容しました。
「ルナさん、エルナさん。体力は回復していますね? セーラさん、周囲の警戒をお願いします」
「「はい、ギュンター様!」」
「了解。……さあ、次はどうする、ギュンター」
四人は、虚無が消え去り、再び静寂を取り戻した森の中で、次の行動に向けて態勢を整えました。ギュンターの瞳は、手に入れた新たな魔石の組成を解析しながら、次なる一歩を見据えていました。
「暫く修行します。今の勝利は、あくまで魔力供給の効率と数に頼ったものです。個々の地力を底上げしなければ、この先の不測の事態には対応できません」
ギュンターの言葉に、異を唱える者は誰もいませんでした。虹色の魔石という規格外の戦利品を得た直後でありながら、少年の瞳には慢心など微塵もなく、ただ冷徹な現状分析だけが宿っています。
それから数週間、聖域の拠点は峻烈な修練場へと変貌しました。
ギュンターが課したのは、単なる魔法の行使ではなく、身体能力と魔力操作の「極限の同調」でした。
170cmを超えるしなやかな長身のルナとエルナには、常に『マッスル』と『アクセル』を同時発動させながら、一ミリの誤差も許されない精密な『ダークバレット』の速射を命じました。
「ルナさん、魔力の流路が左足に偏っています。それでは『アクセル』の初動がコンマ数秒遅れる。エルナさん、浄化の術式を編む際に呼吸を止めないでください。酸素供給の低下は脳の演算速度を著しく下げます」
ギュンターは土魔法で生成した観測用の椅子に座り、三人の動きをミリ単位で修正していきます。丁寧な敬語ながら、その指摘は一切の妥協を許しません。
抜群のプロポーションを誇るセーラには、さらに過酷な試練が与えられました。ギュンターが土魔法で生成した数百の浮遊する石球を、魔力刃のみで全て同時に迎撃しつつ、同時に足元から迫る影の触手『バインドバレット』を回避し続けるという、多重処理の極致です。
「……っ、言うのは簡単だけどさ! この石球、速すぎるよ!」
「セーラさんなら可能です。視覚に頼らず、大気中の水分の振動を読んでください」
数日も経つ頃には、彼女たちの変貌は目を見張るものがありました。170cmを超える美しき戦女神たちは、激しい運動によってより引き締まり、その肌からは常に高密度の魔力が溢れ出しています。超美人と呼ぶに相応しい彼女たちの顔立ちは、戦士としての鋭利な美しさを備え、ただ立っているだけで周囲の空間を威圧するほどの存在感を持つに至りました。
特にルナとエルナは、かつて仲間を失った時の「弱さ」を完全に払拭していました。彼女たちは今や、数百のアースベアの群れを一人で蹂躙できるほどの地力を手にしています。
「……皆さん、素晴らしい適応力です。これでようやく、魔法戦士としてのスタートラインに立ちましたね」
夕暮れ時、汗を拭いながら荒い呼吸を整える三人に、ギュンターは珍しく小さな満足の色を見せました。彼はアイテムボックスから、冷えたエールと新鮮な果物を取り出し、テーブルに並べました。
「地力が上がったことで、魔力吸収の変換効率も30%向上しました。今夜はゆっくり休んでください。明日からは、この高まった能力を前提とした、新たな複合戦術の構築に入ります」
三人は、ギュンターの底知れない先見性に溜息をつきながらも、その頼もしい背中を見つめ、静かに、しかし熱い信頼の眼差しを向けました。聖域の夜は更けていきますが、四人の放つ黄金と漆黒のオーラは、暗闇を寄せ付けないほどの輝きを放っていました。
「今日から役割を固定するのをやめます。前衛、後衛という概念は、特定の状況下では非効率な足枷にしかなりません」
ギュンターは拠点の広場に三人を集め、淡々と告げました。これまではセーラが前衛を担い、ルナとエルナが後方から支援するというのが基本形でしたが、地力が飛躍的に向上した今の彼女たちなら、全領域での戦闘が可能であると判断したのです。
「あらゆる状況に対応できる『自在型』。それが皆さんの目指すべき到達点です」
ギュンターは右手をかざし、土魔法と氷魔法を極限まで圧縮・硬化させました。地面からせり上がるように、あるいは大気中の水分が凍結するように、漆黒の剛土と硬質な永久氷壁で構成された武器群が次々と形作られていきます。
重厚な圧を放つ大剣、一撃で城門をも砕く大槌、鋭利な切っ先を持つランス、多角的な攻撃を可能にするハルバード、流麗な曲線を描くグレイブ、そして至近距離での刺突に特化した短剣。
「これらの武器を状況に応じて即座に生成、あるいはスイッチして戦ってください。魔力で構成された武器ですから、重さは皆さんの魔力次第で自在に変えられます」
170cmを超える長身へと進化したルナとエルナは、最初は戸惑いながらも、その神々しい肢体を躍動させ、武器を手に取りました。ルナが氷のハルバードを振り回して敵を薙ぎ払い、その直後に氷魔法を解除、即座に土の大槌を生成して叩き潰す。エルナはランスで突進しつつ、懐に入られれば短剣へとスイッチし、神速の刺突を繰り出す。
「……すごいよ、ギュンター。武器を使い分けるだけで、こんなに戦いの幅が広がるなんてね」
抜群のプロポーションを誇るセーラは、大剣を豪快に振り抜きつつ、空中でそれをグレイブへと変形させ、広範囲の敵を制圧してみせました。彼女たちの超美人と呼ぶに相応しい貌には、戦士としての凄みが加わり、その動きはまるで冷徹な芸術のように洗練されていきます。
ギュンターは冷静な瞳で、彼女たちの武器スイッチの速度を計測していました。
「ルナさん、大槌から短剣への切り替えに0.5秒のラグがあります。土の粒子を霧散させるのと同時に氷の核を形成してください。エルナさん、ランスの突進力に『アクセル』を乗せれば、その貫通力はさらに倍増します」
丁寧な敬語での指摘に、三人は汗を流しながらも食らいつきました。
前衛で剣を振るっていた者が、一瞬で後方に跳んで『ホーリーバレット』を放ち、魔法使いだった者が重戦士となって敵を粉砕する。この「自在型」の陣形に、もはや死角はありませんでした。
「……素晴らしい適応力です。これで皆さんは、個としての完成度を高めつつ、集団としての爆発力も手に入れました」
夕刻、修行を終えた三人は、自分の身長ほどもある巨大な土の武器を消滅させ、荒い呼吸を整えました。170cmを超える彼女たちの肉体は、連日の鍛錬によって、よりしなやかで力強い美しさを湛えています。
「さて、次は実戦形式のテストを行います。僕が生成した土人形を相手に、武器のスイッチ効率を極めてもらいます。……準備はいいですか?」
ギュンターの言葉に、三人の女神たちは鋭い眼光で頷きました。彼女たちは今、誰かの後ろを守る存在から、全てを自ら切り開く最強の魔法戦士へと、完全に脱皮したのです。
「仕上げです。武器を手に持つだけでなく、空間そのものを武装させてください」
ギュンターの声が響くと同時に、広場の空気が一変しました。これまでの「武器を切り替えて戦う」という段階を超え、ギュンターが三人に提示したのは、周囲の空間を無数の刃で埋め尽くす飽和攻撃の術式でした。
170cmを超える長身へと進化したルナとエルナ、そして抜群のプロポーションを誇るセーラ。三人が一斉に魔力を解放すると、彼女たちの上空に異様な光景が広がりました。
土魔法によって精製された漆黒の剛土の長剣、そして氷魔法によって結晶化された硬質な永久氷壁の短剣。それらが数百、数千という数で空中に発生し、鋭利な切っ先を全て地上へと向けたのです。
「『サウザンド・レイン』。……放て!」
ギュンターの号令と共に、空間を埋め尽くしていた刃が、文字通り「雨」となって降り注ぎました。
シュパパパパッ!! と空気を切り裂く猛烈な風切り音が重なり、轟音となって大地を叩きます。ギュンターが演習用に用意した頑強な土人形たちは、回避する間もなく、頭上から降り注ぐ無数の長剣と短剣によって串刺しにされ、瞬時にして粉砕されていきました。
「……すごい。自分が動かなくても、戦場そのものを支配しているみたいだ」
セーラが驚嘆の声を漏らします。彼女の頭上では、放たれた直後に次々と新しい剣が魔力によって再生成され、絶え間ない死の雨を降らせ続けています。170cmを超えるルナとエルナも、その神々しい美貌を集中力で研ぎ澄ませ、指先の微細な動きだけで、落下する剣の軌道を自在にコントロールしていました。
「ルナさん、短剣の落下速度に『重力付与』は不要です。純粋な自由落下の速度を『アクセル』の術式で加速させてください。エルナさん、長剣が着弾した直後に土魔法を解除し、その破片を『バインドバレット』の核に変換。……効率的に、敵の逃げ場を奪うのです」
ギュンターの冷徹な、しかし確実な指導が飛びます。
三人は、自分たちの背丈を遥かに超える上空から降り注ぐ剣の豪雨の中で、優雅に、かつ苛烈に舞いました。長剣は大質量による圧砕を、短剣は隙間を縫う精密な刺突を。状況に応じて空中で武器の材質や形状を変化させ、着弾の瞬間にはさらにその威力を増大させる。
「……これで、数の暴力さえも僕たちの前では無意味になりましたね」
広場を埋め尽くしていたゴーレム軍団が、わずか数分で完全に消滅しました。後に残ったのは、無数の剣が突き刺さり、クレーターのように抉れた大地と、静かに残滓を霧散させていく三人の戦女神の姿だけでした。
超美人と呼ぶに相応しい彼女たちの貌には、汗が光り、高揚感と確かな自信が宿っています。自在型として、近接、遠距離、そして広域制圧までもを手中に収めた彼女たちは、もはや一国の軍隊に匹敵する武力を手に入れたと言っても過言ではありませんでした。
「修行はこれで一旦終了です。地力、武器のスイッチ、そして広域制圧。……皆さん、本当によく適応しました」
ギュンターは満足げに頷き、アイテムボックスから冷えたハーブティーを取り出しました。
「明日は一日休息を設けます。その間に、僕は古文書の解読をさらに進め、次なる『本番』への準備を整えておきます。……お疲れ様でした」
三人は、ギュンターの労いの言葉に安堵の表情を浮かべ、互いに健闘を称え合いながら、夕闇に包まれ始めた拠点へと戻っていきました。その背中は、聖域の闇をものともしない、圧倒的な強者の輝きを放っていました。
修行の最終段階、心地よい疲労感が広場を包もうとしたその時、ギュンターの『ウォーターサーチ』が異常な波紋を検知しました。大気中の水分が、恐怖に震えるように激しく攪乱されています。
「……皆さん、中断です。極めて強大、かつ不遜な魔力が接近しています」
ギュンターの声は、氷のように冷たく響きました。直後、遥か上空の雲が渦を巻き、そこから無数の銀光が降り注ぎました。それは、ギュンターたちが今しがた訓練で披露した『サウザンド・レイン』と酷似した、しかしより硬質で殺意に満ちた「鋼の剣」の豪雨でした。
「っ、真似事のつもりかい!? 調子に乗るんじゃないよ!」
抜群のプロポーションを誇るセーラが、鋭い眼光で空を睨み据えました。彼女は瞬時に土魔法と氷魔法を同時展開し、自身の周囲に漆黒の剛土の長剣と、透過度の高い氷の短剣を数千本規模で錬成しました。
「迎撃します! 行くよ!」
セーラの操作により、地上から逆巻く波のように剣の雨が昇っていきました。
空中で激突する鋼と土、そして氷。金属音と破壊音が重なり合い、火花と氷屑が四散する。セーラは170cmを超えるしなやかな肢体を躍動させ、上空から降る一本一歩の軌道を読み切り、自らの剣を正確にぶつけて全てを叩き落としていきました。
数分間に及ぶ「剣の雨」の相殺が終わると、周囲には粉砕された剣の残骸が山を成していました。静寂が戻った広場の中央、森の影から一人の人物がゆっくりと姿を現しました。
白銀の縁取りがなされた豪奢なコートを纏い、周囲に数本の長剣を滞空させたその人物は、不敵な笑みを浮かべて四人を見据えていました。
「……ほう。私の『鋼の葬列』を、土と氷の紛い物で全て叩き落とすとは。聖域に住まう野良犬にしては、なかなかに骨のある連中だ」
その男が放つ魔力は、これまでに遭遇したどの魔物とも異なり、高度に洗練された「文明」の香りがしました。ギュンターは一歩前へ出、丁寧な敬語ながらも、その瞳には一切の容赦を失わせた冷徹な光を宿して問いかけます。
「効率的ではない挨拶ですね。……どなたですか。僕たちの修行を邪魔した無礼への回答を求めます」
男はククッ、と喉を鳴らして笑い、滞空させていた剣を自身の背後へと整列させました。
「失敬。あまりに良質な魔力の共鳴が聞こえたものでね、つい試させてもらった。私の名はパラケルスス。真理を追い求め、物質の流転を司る者……人からは『錬金術師』と呼ばれている」
170cmを超える長身のルナとエルナは、その名に聞き覚えがあるのか、微かに表情を強張らせました。伝説に語られる、禁忌の術を操る放浪の賢者。
「錬金術師、ですか。……物質の再構成を得意とするなら、僕たちの土魔法や氷魔法との相性は最悪でしょうね」
ギュンターは右手に漆黒の『ダークバレット』を、左手には静かに回転する氷の短剣を生成しました。
「目的は何ですか。対話で済まないのなら、今ここであなたの『物質』を、僕たちの『無』で上書きして差し上げますが」
聖域の広場は、かつてない緊張感に包まれました。最強の魔法戦士へと進化した三人の女神と、謎多き錬金術師。理と理がぶつかり合う、新たな戦いの幕が上がろうとしていました。
「錬金術師、か。随分と余裕たっぷりだね」
セーラの声が、静寂を切り裂きました。その瞬間、彼女の全身から黄金の魔力が爆発的に噴き上がります。ギュンターの徹底した指導により、地力と魔力制御を極限まで高めた彼女にとって、もはや『アクセル』は単なる加速術式ではなく、時を止めるに等しい「神速」の領域へと達していました。
パラケルススが不敵な笑みを深め、背後に浮かぶ鋼の剣を操ろうとした、その刹那。
「――遅いよ」
視界からセーラの姿が消えました。
錬金術師としての高度な空間認識能力をもってしても、その軌跡を捉えることは不可能です。抜群のプロポーションをしなやかに躍動させたセーラは、パラケルススの懐へと一瞬で潜り込みました。
その手には、氷魔法によって結晶化された、剃刀よりも鋭利な「氷の長刀」が握られています。
ドシュッ、と。
肉を断ち、骨を砕く鈍い音が一度だけ響きました。
「な……が、はっ……!?」
パラケルススの驚愕が声になるより早く、彼の右腕が肩口から鮮血と共に宙を舞いました。錬金術を編むための大事な指先、銀の装飾が施された右腕が、呆気なく切り離されたのです。
「ぐ、あああああああッ!!」
のけ反るパラケルスス。しかしセーラは追撃の手を緩めません。切り落とした右腕が地面に落ちる前に、空中でその手首を掴み取りました。
「返してほしければ、もっとマシな挨拶を持ってくるんだね。……消えな!」
セーラが放った回し蹴りが、パラケルススの腹部を正確に捉えました。衝撃波と共に吹き飛ぶ錬金術師。彼は空中で辛うじて姿勢を制御し、左手で錬成陣を強引に起動させると、残された鋼の剣を爆発させて視界を遮る煙幕を張りました。
「……おのれ、野良犬風情が……ッ! この屈辱、必ずや……!!」
煙の向こう側から呪詛のような叫びが聞こえ、次の瞬間には彼の魔力反応は聖域の彼方へと高速で遠ざかっていきました。深追いをするまでもなく、彼は文字通り「命からがら」逃げ出したのです。
静寂が戻った広場で、セーラは氷の長刀を消滅させ、奪い取った「錬金術師の右腕」を無造作にギュンターの前へ放り投げました。
「……仕留め損なった。ごめん、ギュンター。でも、こいつは持ち帰れたよ」
「いえ、十分です。セーラさん、素晴らしい『アクセル』でした。……効率的に、彼の『技術の核』を手に入れられましたね」
ギュンターは土魔法で生成したピンセットを使い、血に濡れた右腕を検分しました。170cmを超える長身のルナとエルナも、セーラの神速に目を丸くしながら、その「戦利品」を覗き込みます。
「これ、ただの腕じゃないわ……。皮膚の下に、細かい回路のようなものが埋め込まれてる」
ルナが鋭い観察眼で指摘します。エルナもまた、その腕から漂う異質な魔力に眉をひそめました。
「浄化しても消えない、物質への執着を感じます。ギュンター様、これは……」
「ええ。生身の腕を機械的に、あるいは錬金術的に改造した『義手』、あるいは『外部演算ユニット』のようですね。彼の術式の秘密がここに詰まっているはずです」
ギュンターの瞳は、逃げた敵への怒りよりも、目の前の新たな「解析対象」への好奇心で静かに、そして冷徹に光っていました。
「さあ、皆さん。この右腕を徹底的に解体、解析します。錬金術の術理を取り込めれば、僕たちの魔法戦術はさらに上の階梯へと進めるでしょう」
四人は、逃げた錬金術師の脅威を過小評価することなく、しかし確実に手に入れた「収穫」を最大化すべく、再び拠点へと戻っていきました。
拠点の一画、ギュンターが土魔法で精密に組み上げた工房は、今や青白い魔力結界に包まれていた。その中心で、彼はパラケルススの切り落とされた右腕を空中に固定し、何十もの解析式を走らせている。
「……やはり単なる肉体ではない。神経系が極細の銀糸に置換されている。組織的な背景を感じますね。効率的に情報を抜き出します」
ギュンターが冷徹な眼光で深淵の理に潜る一方で、戦いの熱を帯びた三人の女性たちは、石造りの大浴場へと向かった。
広々とした浴槽には、ギュンターが水魔法で水分子を直接操作し、摩擦と振動によって急速に熱を加え、適温まで沸き上げた湯がたっぷりと注がれている。石の床に衣類を脱ぎ捨て、三人の戦女神たちは湯船に身を沈めた。
抜群のプロポーションを誇るセーラ、そして170cmを超える長身へと進化したルナとエルナ。湯気に濡れた彼女たちの肢体は、連日の修練によって彫刻のように引き締まり、神々しいまでの美貌を際立たせている。
「ふぅ……。生き返るね。……で、本題なんだけどさ」
セーラが長い髪をかき上げ、向かい合って座る二人に鋭い視線を向けた。
「ルナ、エルナ。あんたたち、あのパラケルススって奴の名を聞いた時、明らかに顔色が変わっただろ? あいつ、一体何者なんだい?」
ルナとエルナは顔を見合わせ、重い沈黙のあと、エルナが静かに口を開いた。
「……パラケルスス。彼は、私たちが以前いた国で『禁忌の錬金術師』として恐れられていた存在です。国家予算を私物化し、人間を素材にした実験を繰り返していた組織の一員だという噂がありました」
「組織……? あの野郎、一匹狼じゃないのか」
セーラが眉をひそめる。
「はい。その組織は、この世界のあらゆる物質を支配することを目論んでいると言われています。パラケルススはその中でも、金属錬成と空間干渉の第一人者。まさか、この聖域にまで手を伸ばしているなんて……」
ルナが震える肩を抱くようにして続けた。
「あの右腕も、きっと彼自身が実験台になった成果です。あの一撃で追い払えましたが、組織が動いているとなれば、次は一人では来ないかもしれません」
「なるほどね……。面倒な連中に目をつけられたもんだ」
セーラは湯船の縁を強く握りしめた。彼女たちの地力は上がったが、相手が歴史の裏側で糸を引く巨大組織となれば、これまでの「魔物狩り」とは次元の違う戦いになる。
「でも、心配しな。あたしたちにはギュンターがいる。あいつなら、あの腕から敵の弱点でも本拠地の場所でも、全部効率的に引きずり出してくれるさ」
「……そうですね。ギュンター様なら、きっと」
三人は、拠点の奥で一人解析を続ける少年に想いを馳せた。
窓の外、聖域の闇は深く静まり返っているが、湯気の中で交わされた言葉は、次なる戦いがより大規模で苛烈なものになることを予感させていた。
「さあ、明日に備えてしっかり温まっておこう。あたしたちが弱気じゃ、あいつの足手まといになっちまうからね」
セーラの言葉に、二人の女神は力強く頷いた。




