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効率厨の俺が魔法理論を極めたら、仲間の女が全員170cm超えの戦女神になった  作者: 慈架太子


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4章 聖域の浄化――深淵の財宝と三人の女神の求婚

黄金の檻『ホーリープリズン』に閉じ込められ、実体化を余儀なくされた「影」は、三人の戦女神が放つ凄まじい光弾の乱舞に、その存在を激しく削り取られていた。ギュンターは冷静にその中心点を見定め、最後の一撃を放つ。


「『ピュリフィケーションバレット』」


放たれたのは破壊ではなく、究極の「浄化」を司る光の弾丸だ。着弾の瞬間、空洞を埋め尽くしていたどす黒い闇が、洗われた布のように白く反転し、清冽な魔力の霧へと霧散していった。闇が完全に晴れたその中心には、クイーンアントのそれさえ凌駕する、人の頭ほどもある巨大な漆黒の魔石が転がっていた。


「……浄化完了です。これで、この領域の汚染も消えるでしょう」


ギュンターは淡々とその特大魔石を『アイテムボックス』に回収した。戦いを終えたルナとエルナは、かつての仲間を葬った元凶が消え去ったことに、深い安堵と悲しみの混ざった溜息を漏らす。170cmを超えるしなやかな肢体を躍動させ、彼女たちはギュンターの傍らへと歩み寄った。


「ギュンター様、あそこ……奥にまだ何かあります」


ルナが指し示したのは、影が守護していたかのように鎮座していた、巨大な石造りの扉だった。ギュンターが『ウォーターサーチ』で安全を確認し、土魔法で扉の機構を操作して開くと、そこには失われた文明の宝物庫が広がっていた。


「……非効率なほどの量ですね」


二人の美貌を驚愕に染めたのは、床を埋め尽くす数万枚の金貨、そして山のように積まれた宝石と魔石の群れだった。それだけではない。壁際の棚には、時を止めたかのように保存された大量の古文書が並んでいる。


しかし、それらすべてには「影」が放っていたのと同質の、どす黒い呪いの残り香が付着していた。ギュンターは迷わず右手をかざす。


「皆さん、下がっていてください。……一括で清浄化します」


放たれた広域の『ピュリフィケーションバレット』が、宝物庫全体を包み込んだ。瞬時に呪いが剥がれ落ち、金貨は本来の黄金の輝きを、宝石は星のような瞬きを取り戻す。ギュンターはその膨大な財宝と、歴史的に価値があると思われる古文書のすべてを、無尽蔵の容量を誇る『アイテムボックス』へと次々と吸い込ませていった。


「……さて。これで、この聖域での目的はすべて達成されました。ルナさん、エルナさん、そしてセーラさん。一度拠点に戻り、街への凱旋の準備をしましょう」


「……ああ。この収穫を見れば、ギルドどころか国中の人間が腰を抜かすだろうね」


セーラは誇らしげに、そして自分より背の高くなった二人の新米戦女神を少しだけ意識しながら、ギュンターの隣に並んだ。


絶望の深淵は、今やただの静かな石室へと変わっていた。四人は背後に広がる空っぽの宝物庫に一瞥もくれず、黄金の魔力を纏って、光の射す地上へと続く道を駆け上がっていった。



検品場の床を埋め尽くしたアースベアの極上皮、アーミーアントの硬質な甲殻、そして鈍い光を放つ規格外の魔石の山。ギルドマスターをはじめとする熟練の鑑定士たちは、目の前の光景に言葉を失い、ただ震える手で魔力測定器を当て続けていた。


「……信じられん。これほど傷のない素材、それにこのサイズの魔石がこれほど……。一体、深淵で何が起きたというのだ」


ギルドマスターが呆然と呟く中、ギュンターは一歩前へ出た。その表情には、功名心など微塵も感じられない。


「ギルドマスター。まずは査定見積書を出してください。それと、重要なお願いがあります」


ギュンターの丁寧な敬語は、静かな威圧感を持って場を支配した。彼は周囲の職員たちを一度見渡し、声を低める。


「今回の件、僕たちの名前や詳細は一切伏せてください。素材はギルドが独自に調査隊を派遣して回収した、あるいは正体不明の篤志家から買い取ったという扱いにしてください。……目立つのは、僕たちの『効率』を著しく下げます」


「しかし、これほどの功績を隠し通すなど……。君たちの名は、一晩で国中に知れ渡るほどの内容だぞ」


「それは困ります」


ギュンターは断固として首を振った。隣に立つセーラも、170cmを超えるしなやかな長身へと進化したルナとエルナも、静かに頷く。彼女たちは、ギュンターが与えてくれたこの強さと静穏な日々を、下俗な喧騒で汚されたくはなかった。


「……承知した。これだけの質と量だ。表に出せば均衡が崩れる。君たちの要望通り、この件はギルドの最重要機密として扱い、素材も少しずつ市場に流すことにしよう」


ギルドマスターは苦渋の決断を下し、震える手で査定見積書を書き上げた。提示された金額は、白金貨にして数百枚。一国の軍備を数年分賄えるほどの、天文学的な数字だった。


「見積額に相違ありません。……端数分だけでいいので、今ここで金貨で支払ってください。残りはギルドの口座へ。それと、ルナさんとエルナさんのパーティー登録の抹消と、僕たちのパーティへの編入手続きも。すべて、極秘裏に」


「……わかった。君の言う通りにしよう、ギュンター殿」


数時間後。ギルドの裏口から、四人の男女がひっそりと街の雑踏へと消えていった。


抜群のプロポーションを誇る三人の美女を引き連れた一人の少年。その異様な存在感に、道行く人々は思わず振り返るが、彼らがつい数時間前にギルドの歴史を塗り替え、深淵の生態系を独力で再構築してきた伝説の当事者であるとは、誰も知る由もなかった。


「……効率的ですね。これで、明日からも静かに訓練が続けられます」


「ふふ、君らしいよ、ギュンター。でも、この美貌で目立たないっていうのは、少し難しい注文かもしれないね」


セーラが楽しげに笑い、ルナとエルナも幸せそうに微笑みながら、少年の背中を追う。


街の喧騒は相変わらずだったが、四人の内側には、誰にも侵されない絶対的な力と、莫大な富、そして揺るぎない絆が刻まれていた。



ギルドでの換金を終えた四人は、その足で街の活気あふれる市場へと向かいました。手にしたばかりの見積書の一部を金貨に崩しただけでも、この街の経済を揺るがすほどの資産です。


「効率的に備蓄を増やしましょう。アイテムボックスがあれば鮮度は永劫に保たれますから」


ギュンターは淡々と酒屋の門を叩き、店主が腰を抜かすような注文を口にしました。

「エールを2000樽、それと八百屋にある野菜を種類ごとに在庫の限り。砂糖、山椒、胡椒の香辛料一式、それと卵も数千個単位で買い取ります」


酒屋の親父も八百屋の店主も、最初は冗談だと思って笑い飛ばそうとしましたが、ギュンターがカウンターに並べた本物の金貨の山を見た瞬間、顔色を変えて街中の在庫をかき集めに走りました。数時間後、店裏の倉庫に山積みにされた物資は、人目に付かない速さで四人のアイテムボックスへと吸い込まれていきました。


用事を済ませた四人は、再び『アクセル』を使い、静寂に包まれた森の石造りの拠点へと帰還しました。


夕闇が迫る中、ギュンターは手際よく夕食の準備を始めました。土魔法で熱した石板の上で、アースベアの肉が極上の脂を弾かせ、山椒と胡椒の刺激的な香りが鼻腔をくすぐります。隣の寸胴鍋では、買い込んだばかりの新鮮な野菜とアースベアの端肉が、ハーブと共に濃厚な黄金色のスープへと変わっていきました。


「さあ、出来上がりました。冷えたエールもどうぞ」


石のテーブルを囲み、四人は冷えたエールをジョッキに注ぎました。170cmを超えるしなやかな長身へと進化したルナとエルナは、アースベアのステーキを頬張り、そのあまりの旨さに頬を染めています。


食事が一段落し、エールで程よく酔いが回った頃。ギュンターは静かに問いかけました。


「さて、お二人とも。お仲間の供養も済み、魔力も安定しました。これからどうされるのですか? 街へ戻り、新しいパーティーを探すのであれば、紹介状も書けますが」


丁寧な敬語で問われたルナとエルナは、顔を見合わせ、それから意を決したように背筋を伸ばしました。昨日の少女のような幼さは消え、洗練された超美人の瞳には、揺るぎない覚悟が宿っています。


「……ギュンター様。私たち、話し合ったんです」

「はい。命を救われ、これほどの力を授かった今、別の場所へ行くなんて考えられません」


二人は一歩前に出ると、同時に深く頭を下げ、驚くべき言葉を口にしました。


「「ギュンターさんのお嫁さんにしてください!」」


「ぶふぉっ……!!」


ジョッキを傾けていたギュンターとセーラが、同時にエールを豪快に吹き出しました。冷静沈着なギュンターが、顔を真っ赤にして咳き込み、拭うのも忘れて目を丸くしています。隣のセーラも、抜群のプロポーションを震わせながら、エールまみれになったテーブルを指さして絶句していました。


「……っ、な、何を言っているんですか!? 論理的におかしいでしょう!」


「おかしくありません! 私はギュンター様を愛しています!」

「私だって、一生お仕えして支えたいと思っています!」


神々しいまでの美貌を誇る二人の女神候補による、まさかの求婚。その真っ直ぐな視線に、理論と効率の権化であるギュンターも、初めて言葉を失いました。


「……ちょっと待ちなさいよ! 順番っていうのが……あ、あたしだって、まだそこまで……!」


セーラが焦り、普段の凛々しさをかなぐり捨てて身を乗り出します。聖域の静かな夜は、かつてないほどの喧騒と、赤らんだ顔の若者たちの熱気に包まれました。ギュンターの平和な研究生活は、どうやら別の意味で多難な局面を迎えようとしていました。



「僕はまだ20歳です。結婚なんて考えられません」


ギュンターは、エールで濡れた口元を土魔法で生成した布で拭いながら、断固として、しかし丁寧な敬語で告げました。あまりに突飛な申し出に、彼の精緻な理論回路が一瞬ショートしかけていましたが、即座に「効率的ではない」という結論を導き出したのです。


「そもそも、お二人はおいくつなんですか?」


不躾ながらも核心を突く問いに、ルナとエルナは頬を赤らめながらも、170cmを超えるしなやかな背筋を伸ばして答えました。


「私は19歳です、ギュンター様」

「私は21歳です。……年齢は、愛の障害にはならないと思います」


二人の超美人の真っ直ぐな視線に、ギュンターは溜息をつきました。


「……結婚はともかく。この先、聖域の深淵にはさらに危ないことも多いです。それでも、僕たちのパーティーに入りますか? 戦力として、そして仲間としてなら歓迎します」


「「はい! 喜んで!」」


二人の即答に、場は一旦収まったかに見えました。しかし、その夜。石造りの拠点が静寂に包まれた頃、事件は起きました。


ギュンターが自身の寝室で古文書の解析を進めていると、音もなく石の扉が開きました。そこに立っていたのは、月光を浴びて神々しいまでに輝く、抜群のプロポーションを誇るセーラでした。彼女は薄手の寝衣を纏い、いつになく真剣な、それでいてひどく焦ったような表情でベッドの端に腰を下ろしました。


「……ギュンター。あたしも、黙っていられなくなった」


「セーラさん? こんな夜更けにどうしたんですか」


ギュンターが怪訝な顔を向けると、セーラは彼の両手を力強く握りしめ、顔を近づけました。


「あたしも、君に求婚する! あの二人には負けられない。君の隣に一番長くいるのは、あたしなんだから!」


戦女神のような凛々しさをかなぐり捨てたセーラの告白に、ギュンターは今日二度目の絶句を味わいました。


「……セーラさんまで。……失礼ですが、セーラさんはおいくつなんですか?」


「……24歳だよ。年上が嫌いなんて、言わせないからね」


ギュンターは天を仰ぎました。20歳の自分に対し、19歳、21歳、そして24歳の美女三人。理論と効率で世界を解き明かそうとしていた少年の日常は、聖域の魔物よりも恐ろしく、抗いがたい情熱の渦に飲み込まれようとしていました。


「……セーラさん。とりあえず、自分の部屋に戻ってください。これでは解析の効率が著しく落ちます」


「嫌だ! 答えをくれるまで、ここを動かないよ!」


石造りの寝室は、外の冷気とは対照的な熱気に包まれていました。ギュンターの平和な夜は、どうやらまだ当分訪れそうにありません。




月光が石造りの寝室に差し込み、薄衣を纏ったセーラの艶やかな肌を青白く照らしていた。抜群のプロポーションを惜しげもなく投げ出し、詰め寄る彼女の瞳には、かつてないほどの必死さが宿っている。


「ギュンター、お願い。結婚が重いって言うなら……せめて愛人か恋人にしてくれよ!」


戦女神と謳われた彼女が、プライドをかなぐり捨てて縋り付く。ルナとエルナという、自分に比肩する美貌と力を得た若きライバルの出現が、彼女の余裕を完全に奪い去っていた。しかし、対峙するギュンターの瞳は、深淵の湖のように静まり返ったままだ。


「そのつもりもありません。僕は今、魔法の真理と世界の理を解明することに全資源を投入しています。色恋に割くリソースは非効率の極みです」


「嘘だ! ギュンター、お前前に行ってたじゃないか! 『僕だって男だ、欲情もする』って! あの時、あたしの体を見て、確かにそう言っただろ!?」


セーラは彼の肩を掴み、激しく揺さぶった。あの日、浴室の前で彼が見せた、少年らしい動揺と赤らんだ顔。あれこそが彼の本心だと信じて疑わなかった。だが、ギュンターはゆっくりと彼女の手を外すと、いつもの丁寧すぎる敬語で、残酷なまでの正論を紡ぎ出した。


「ええ、言いました。生物学的な反応として、視覚情報が脳の性衝動を司る部位を刺激し、一時的な興奮状態に陥った事実は認めます。ですが、それは空腹時に胃が鳴るのと同じ、単なる生理現象に過ぎません。僕の『意志』にとって、それはどうでもいいことなんです」


「どうでもいい……!? あたしとの、あの空気も、全部かよ!」


「はい。現象を認識することと、それを人生の選択に組み込むことは別問題です。僕は、自分の本能に振り回されるほど愚かではありません。セーラさん、あなたの価値は僕の隣で最高の魔法戦士として在ることであって、僕の性欲の処理口になることではないはずです」


淡々と、事務的に告げられた言葉に、セーラは衝撃で言葉を失った。欲情していることを認めながら、それを「ノイズ」として切り捨てる。20歳の少年が持つにはあまりに歪で、圧倒的な自己制御。


「……君は、人間じゃないのかい?」


「人間ですよ。ただ、目的意識が他の方より少しだけ明確なだけです」


ギュンターは机の上の古文書に視線を戻した。


「夜更かしは肌のコンディションを下げ、明日の戦闘効率を著しく低下させます。セーラさん、自分の部屋へ戻ってください。それと……ルナさんとエルナさんにも伝えておいてください。僕にそのようなアプローチをしても、時間の無駄だと」


扉の向こう、聞き耳を立てていたであろう二人の気配が、小さく震えたのがわかった。セーラは拳を握りしめ、屈辱と、それでも消えない恋心に顔を歪ませながら、部屋を飛び出していった。


静寂が戻った寝室で、ギュンターは一人、微かに乱れた呼吸を整えるために『ウォーターヒール』を自身にかけた。


「……非効率ですね。感情という変数は」


彼の手元にある古文書には、かつてこの聖域を支配していた王の、愛と破滅の物語が記されていた。ギュンターはそれを冷徹に読み解き、次なる目的地――「感情」さえもエネルギーとして変換する、失われた古代遺跡の座標を特定し始めていた。



聖域の朝は、石造りの竈から立ち上がる香ばしい匂いと共に訪れました。ギュンターは土魔法で生成した清潔なエプロンを纏い、淀みのない動きで調理を進めていました。


石板の上では、アースベアの厳選された赤身肉が小気味よい音を立てて炒められ、シャキシャキとした野菜と混ざり合って、ハーブと塩胡椒の芳醇な香りを放っています。さらに、昨日大量に買い込んだ卵を使い、絶妙な火加減で表面を焼き固め、黄身だけをトロリと残した半熟の目玉焼きを添えました。


「おはようございます。朝食ができましたよ」


ギュンターの声は、昨夜の痴話喧嘩など露ほども記憶にないかのように、透き通って冷静でした。


ダイニングテーブルについた三人の女性たちは、一様に視線を泳がせていました。抜群のプロポーションを誇るセーラは、昨夜の「夜這い」を拒絶された羞恥からか、心なしか頬を強張らせています。一方、長身の超美人へと進化したルナとエルナも、聞き耳を立てていたことがバレているのではないかと、おずおずと椅子に腰を下ろしました。


「……おはよう、ギュンター。美味しそうだね」


セーラが絞り出すように言いました。しかし、ギュンターは彼女の乱れた寝起きの表情にさえ一瞥もくれず、丁寧に淹れたハーブティーをカップに注いでいきました。


「ええ。アースベアの肉は細胞の修復効率が極めて高いですから。しっかり食べてください。……それから」


ギュンターはトーストしたパンに肉野菜炒めを挟み込みながら、事務的な口調で続けました。


「昨夜、皆さんがお休みになっている間に、あの『影』から回収した特大魔石と古文書の解析がすべて完了しました。闇属性の本質、そしてそれを上回る『虚無』の術理についてです。食事のあと、広場でその成果を披露します」


三人は顔を見合わせました。自分たちが恋の鞘当てに現を抜かしていた数時間の間に、この少年は人類が数百年かけても到達できなかった深淵の謎を解き明かしてしまったのです。


「……ギュンター様。あの、昨日の話は……」


エルナが勇気を出して切り出そうとしましたが、ギュンターはぴしゃりと、しかし丁寧な敬語で遮りました。


「エルナさん。食事中の私語は消化効率を下げます。今は栄養を摂取することだけに集中してください。感情的な対話は、ミッションの完遂後に必要であれば枠を設けます。今は……非効率です」


その徹底した冷徹さに、三人は言葉を失い、黙々とサンドイッチを口に運びました。アースベアの肉は驚くほど旨く、半熟卵のコクが絶妙に絡み合います。しかし、その贅沢な味さえも、ギュンターという「理」の前に跪かざるを得ないような、奇妙な静寂が場を支配していました。


食後、広場に出た四人の前で、ギュンターは右手をかざしました。


「闇は光で払うもの。ですが、真の闇とは光の欠如ではなく、存在の否定です。……見せてあげましょう。僕たちが手に入れた、世界を書き換える力を」


ギュンターの指先から、黒よりも深い、星さえ吸い込むような「虚無」の魔力が渦を巻き始めました。三人の女神たちは、その圧倒的な力の奔流に、ただ息を呑むことしかできませんでした。



「披露します。闇属性の極致を術式化した三種の弾丸です」


拠点の広場。ギュンターは三人の戦女神たちを前に、一切の迷いがない動きで右手をかざしました。彼の指先には、朝の柔らかな光を吸い込み、周囲の空間さえも歪めるような「真の黒」が凝縮されています。


「まずは『ダークバレット』。これは光で焼くのではなく、対象の存在そのものを闇の彼方へと返し、霧散させる弾丸です。防護魔法や障壁ごと、対象を『無』へと還します。次に『シャドウバレット』。こちらは対象を影の次元へと引き摺り込み、現実世界から隔離・無効化します。そして最後が『バインドバレット』。対象自身の影を触媒にし、内側から逃げ場のない拘束を強いる弾丸です」


ギュンターは澱みのない動作で三人に歩み寄り、その指先を通じて膨大な術式データを転送しました。


「授けました。……いいですか、使いどころはよく考えてください。これらは物理法則の外側に干渉する魔法です。不用意に放てば、自分自身をも危うくします」


170cmを超える長身へと進化したルナとエルナは、その身に宿った禍々しくも静謐な魔力に震えました。セーラもまた、自身の掌に渦巻く漆黒の魔力を見つめ、ギュンターの底知れぬ才覚に改めて戦慄を覚えます。昨夜の甘い空気は、この圧倒的な「力」の提示によって、プロの魔法戦士としての緊張感へと上書きされていきました。


「……すごいよ、ギュンター。これなら、あの『影』のような存在さえ、手駒のように扱えるね」


セーラが感嘆の声を漏らすと、ギュンターは無表情なまま頷きました。


「効率的に敵を排除、あるいは無力化するための道具に過ぎません。ルナさん、エルナさん、魔力操作の精度を上げてください。暴走させれば、自分自身の影に飲み込まれることになりますよ」


「「……はい、ギュンター様!」」


二人は神々しい美貌を引き締め、即座に魔力制御の訓練を開始しました。抜群のプロポーションを躍動させ、黄金の光と漆黒の影を交互に放つ彼女たちの姿は、もはや聖域の守護者そのものでした。


ギュンターはその様子を冷徹な計算機のような瞳で見つめながら、アイテムボックスから古文書の続きを取り出しました。


「……さて。影の力を手中に収めた今、ようやくこの先に進めるようになります。皆さん、準備ができ次第出発します」


少年の指示に、三人は私情を封じ込め、鋭い眼光で応えました。四人の魔法戦士は、新たに授かった影の力を纏い、さらなる深淵へとその足跡を刻む準備を整えました。



「暫く修行します。僕たちは、まだまだ弱い」


ギュンターのその言葉は、決して謙遜ではありませんでした。深淵の「影」を退け、新たな闇の術式を手に入れたとはいえ、この聖域が隠し持つ真の底流を思えば、今の力はまだ生存圏を広げたに過ぎない。効率を至上とする彼にとって、盤石な基礎のない進軍は許容できないリスクでした。


それから数日間、拠点の広場では激しい練武が繰り返されました。170cmを超える長身へと進化したルナとエルナは、授かった『マッスル』と『アクセル』を極限まで回し、黄金の魔力と漆黒の影を織り交ぜた独自の戦技を磨き上げます。セーラもまた、己の限界を上書きするように、より鋭く、より重い魔力刃の構築に没頭していました。


しかし、その修行の最中。ギュンターの『ウォーターサーチ』が、空気中の微細な振動を捉えました。


「……セーラさん、解りましたか?」


ギュンターの声は、風に溶けるほど静かでしたが、その中には鋭利な刃のような緊張が宿っていました。彼は動かず、ただ掌を地面に向け、地中の水分を通じてその「波紋」を追っています。


「ああ。……不気味だね。殺気じゃない。でも、明らかにこの聖域の『理』から外れた何かが動いている」


抜群のプロポーションを誇るセーラは、即座に魔力刃を生成し、背中合わせに構えました。彼女の索敵能力もまた、ギュンターとの修行を経て、常人の域を遥かに凌駕するレベルに達していたのです。


「ルナさん、エルナさんはどうですか?」


ギュンターは、視線を外さずに背後の二人に問いかけました。


「……はい。東の方向、森の深部から。魔力の流れが、そこだけ不自然に『消えて』います。まるで、巨大な空白が移動しているような……」


ルナが杖を構え、その美貌を険しくさせます。


「私の浄化魔法にも反応があります。邪悪というよりは……ひどく冷たい、無機質な拒絶を感じます。ギュンター様、あれは生き物なのでしょうか」


エルナの指先が、無意識に『ホーリーバインド』の印を結びました。


ギュンターは目を閉じ、脳内の地図にその空白の軌跡を書き込みました。それは「影」のように魔力を奪うものではなく、そこにあるはずの魔力さえも「無」へと変換し続ける、圧倒的な捕食者の気配。


「……効率的ではありませんね。修行の成果を試すには、少しばかり早すぎる相手かもしれません」


ギュンターは立ち上がり、右手に『ダークバレット』の術式を充填しました。少年の瞳は、未知の脅威を前にしてもなお、冷徹な計算機のように静まり返っています。


「皆さん、実戦です。習得した影の魔法、出し惜しみはしないでください。……来ます」


四人の視線の先、森の巨木が音もなく左右に倒れ、空間そのものが歪むような、異様な「無」が姿を現そうとしていました。



森の巨木が、へし折れる音すら立てずに「消えた」。

現れたのは、生き物と呼ぶにはあまりに無機質な、空間にぽっかりと開いた「黒い穴」だった。それは意志があるかのようにゆっくりと浮遊し、触れるものすべて、大気も、土も、光さえも飲み込み、その存在をこの世から抹消していく。


「……効率的ではありませんね。あれそのものが、世界の欠落だ」


ギュンターは冷徹に観察し、即座に右手を突き出した。


「『バインドバレット』!」


放たれた影の鎖が黒い穴へと絡みつく。実体のない影の魔力は飲み込まれることなく穴の縁に留まったが、同時に「捕縛」という概念も成立しなかった。鎖は虚空を掴むように虚しく空を切り、固定すべき中心が存在しないことを示している。


「無意味ですか。……では、性質を合わせます。『ダークバレット』」


ギュンターが放ったのは、対象を無へと帰す断罪の弾丸。黒い穴という「無」に対し、さらに「無」をぶつけるという、究極の相克。

弾丸と穴が衝突した瞬間、轟音も衝撃波も発生しなかった。ただ、二つの異なる「虚無」が互いの領域を侵食しようとして停滞し、空間がひどく歪んで軋む。


「……干渉できない、というよりは、互いの理が矛盾して相殺されているようです」


ギュンターは冷静に分析を続ける。背後では、セーラが魔力刃を構え、ルナとエルナがそれぞれの術式を充填して待機していた。


「ギュンター! あたしたちの魔法も効かないのかい? あの穴、どんどん大きくなってるよ!」


セーラの言葉通り、黒い穴は周囲の物質を吸い込むほどにその輪郭を広げ、四人の足元まで「消滅」の波が迫っていた。


「セーラさん、待ってください。物理的な破壊も、概念的な消滅も通用しないなら、試すべきは『中身』の充填です。ルナさん、エルナさん、魔力操作を最大に。あの穴が飲み込みきれないほどの『存在の密度』をぶつけます」


ギュンターはアイテムボックスから、先ほど回収したばかりの大量の魔石を取り出し、空中に浮かせた。


「あの穴が『欠落』なら、過剰なまでの『充足』で埋め立てます。僕が影の魔法で穴を固定している間に、ありったけの魔力を注ぎ込んでください」


「わかったわ、ギュンター様!」

「私たちの魔力、全部持っていってください!」


170cmを超える美しき戦女神たちが、その神々しい肢体を躍動させ、黄金の魔力を爆発させる。

ギュンターは再び『バインドバレット』を展開し、穴の縁を固定して拡張を阻止した。無と無がぶつかり合い、火花ならぬ空間の火花が散る。


「……さあ、飽和させてみせましょう」


少年の瞳が、漆黒の穴の奥底を見据えた。四人の連携による、理の外側への挑戦が始まった。





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