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効率厨の俺が魔法理論を極めたら、仲間の女が全員170cm超えの戦女神になった  作者: 慈架太子


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3章 共鳴する魂――新たな仲間と「アイテムボックス」の完成

聖域の静寂の中、ギュンターはキャベツ玉ほどもあるクイーンアントの深紅の魔石を膝に置き、両手をかざした。彼の意識は魔石の深層へと潜り込み、その複雑怪奇な魔力構造を紐解いていく。


「……なるほど。この巨大な質量を維持し、群れを統率するための魔力……その根源は『空間』の歪みにありましたか」


ギュンターの瞳に、これまでにない鋭い光が宿った。彼は魔石の中に秘められていた希少な「亜空間魔属適性」を特定し、その術理を自身の魔力回路へと転写していく。物質を既存の世界から切り離し、時間の停滞した別次元へと押し込める理論。それは、魔法体系の最高峰の一つと言えるものだった。


「セーラさん、手を貸してください。非常に高度な概念ですが、あなたなら適応できるはずです」


ギュンターはいつもの丁寧な敬語と共に、セーラの掌に自身の魔力を重ねた。二人の間に、目に見えない空間の震えが走る。セーラの脳内に、無限に広がる真っ白な空白の座標――『アイテムボックス』の構築図が直接書き込まれていった。


「……っ、頭の中に、もう一つの『世界』があるみたいだ。ギュンター、これは……」


「亜空間魔法を応用した、究極の収納術です。マジックバッグのような物理的な制約はありません。あなたの魔力が続く限り、理論上はどれほど巨大なものでも、鮮度を保ったまま保管できます。もちろん、生き物は入れられませんが」


ギュンターは試しに、足元に転がっていた巨大なクイーンアントの残骸に手を触れた。次の瞬間、山のような巨?が音もなく消失し、彼の脳内の座標へと格納される。


「便利ですね。これで、マジックバッグの容量を気にする必要もなくなりました」


セーラもまた、驚きに目を見開きながら、近くに転がっていたアーミーアントの甲殻を次々と自身の亜空間へと吸い込ませていった。抜群のプロポーションを誇る彼女が、何もない空間から巨大な素材を出し入れする姿は、まさに次元を司る戦女神のようだった。


「君という人は……。魔石を一つ解析するたびに、世界の常識を塗り替えてしまうんだね」


セーラは溜息をつき、その洗練された美貌を少しだけ熱っぽく綻ばせた。自分を救い、強くし、そして今や伝説の魔法さえも惜しみなく授けてくれる少年。彼への想いは、もはや「憧れ」という言葉では片付けられないほどに深く、重くなっていた。


「すべては効率のためです。さあ、セーラさん。この『アイテムボックス』があれば、もう街に戻る必要すらありません。この聖域の最奥……誰も見たことのない『真実』を、僕たちで回収しに行きましょう」


ギュンターは自身の剣を鞘に納め、何もない空間から冷えたエールのジョッキを取り出してみせた。亜空間の中では時間は停止している。昨夜の残りの、冷たく泡立つエールがそこにはあった。


「……ふふ、最高だね。どこまでも付いていくよ、ギュンター」


二人は祝杯を上げるようにジョッキを合わせると、一切の荷物を持たない軽やかな足取りで、さらに深く、暗い、未知の領域へと消えていった。




聖域のさらに深部、光さえも拒絶するような重苦しい闇が支配する領域で、ギュンターの『ウォーターサーチ』が不規則な生体反応を捉えた。


「セーラさん、前方に四人。……いえ、生存者は二人のようです」


駆け寄った先には、血に染まった凄惨な光景が広がっていた。重厚な鎧を纏った盾役の男と、折れた長剣を握りしめた剣士の男。二人は仲間を守るようにして倒れていたが、その体温はすでに失われ、魂は冥府へと旅立っていた。


ギュンターは瞬時にマジックバッグから最高級のポーションを取り出し、残された二人の女性――魔法使いと神官に振りかける。外傷はみるみる塞がっていくが、失われた血液と消耗しきった生命力までは戻らない。彼女たちの顔は土気色で、呼吸は今にも止まりそうだった。


「セーラさん、彼女たちの体を支えてください。……光属性の加護はありませんが、僕なりのやり方で繋ぎ止めます」


ギュンターは跪き、二人の胸元に静かに手をかざした。彼が展開したのは、既存の聖魔法とは全く異なる理論に基づく術式だった。


「『ウォーターヒール』」


それは傷を光で埋める奇跡ではない。対象の体内に流れる血液、リンパ液、細胞間質液――あらゆる「水」に直接魔力を干渉させ、分子レベルで活性化させる禁分に近い技術だ。身体強化『アクセル』や『マッスル』が筋肉を爆発させるように、この術は細胞の自己複製速度を数万倍にまで跳ね上げる。


濁っていた彼女たちの瞳に、急速に生気が戻り始めた。毛細血管が脈打ち、頬に朱が差す。劇的な代謝の向上により、死の淵にあった生命力が力強く燃え上がった。


「……あ、……ぁ……」


先に目を開けたのは、若き魔法使いの少女だった。続いて神官の女性も、信じられないものを見るような表情で上半身を起こす。


「気が付きましたか。無理に動かないでください。細胞を急激に活性化させたので、今はひどい空腹感と倦怠感があるはずです」


ギュンターはいつもの丁寧な敬語で告げると、アイテムボックスから温かいハーブティーと、昨夜の残りのスープを取り出した。湯気が立ち上るボウルを差し出す彼の姿は、この地獄のような深淵において、あまりに非現実的なほど冷静だった。


「助けて……くれたの……? 私たちは、あの『影』に襲われて……」


神官の女性が震える声で問いかける。彼女たちの視線の先には、変わり果てた仲間たちの姿があった。ギュンターは静かに目を伏せ、セーラに視線で合図を送った。


「男の方二人は、僕たちが着いたときにはすでに……。お気の毒ですが、今はあなたたちが生き残ることを考えてください。セーラさん、彼女たちに毛布を。少し落ち着いたら、何に襲われたのか教えていただけますか?」


抜群のプロポーションを誇る戦女神のようなセーラが、優しく二人を抱きかかえる。救われた安堵と、仲間を失った絶望。混沌とする空気の中で、ギュンターは周囲の水分を掌握し、暗闇の中に潜む「何か」を冷徹に探り続けていた。


「……効率的ではありませんね。これほどの腕の冒険者を一瞬で無力化する存在が、この先にいるということです」


少年の独り言は、湿った闇に静かに溶けていった。




「取り敢えず、ここは危険です。一時撤退をしましょう」


ギュンターはいつもの冷静な、それでいて断固とした敬語で告げた。『ウォーターサーチ』が、闇の奥底で蠢く未知の巨大な熱源を捉え続けている。これ以上の深追いは、衰弱した二人を連れての状態では合理的ではない。


彼は静かに横たわる男二人の遺体へと歩み寄り、その凄惨な傷跡を直視しながらも、敬意を込めて掌をかざした。


「失礼します。……あなたたちの仲間は、必ず僕たちが守り抜きますから」


一瞬の沈黙の後、二人の遺体は音もなくギュンターの『アイテムボックス』へと収容された。亜空間の中であれば、時間は停止し、遺体が腐敗することもない。いつか街へ戻り、正式な弔いをするための最善の選択だった。


一行はセーラの迅速な誘導のもと、昨日構築した石造りの拠点へと引き返した。森の深部から安全圏へと戻ると、ギュンターは即座に指先を動かし、浴室の石造りの湯船に清冽な水を満たし、土魔法の分子振動で一気に適温まで沸かせた。


「セーラさん、彼女たちを。……心の傷も深いでしょうが、まずは身体を芯から温める必要があります。清潔な着替えもアイテムボックスから出しておきますから」


「わかったよ、ギュンター。二人とも、さあ、肩を貸すから。ゆっくり浸かっておくれ」


抜群のプロポーションを誇る戦女神のようなセーラが、震える魔法使いと神官の女性を優しく支え、湯気の立ち上る浴室へと誘う。魔力でコーティングされた水のエレメント・マットレスが並ぶ清潔な建屋は、地獄のような深淵から戻った彼女たちにとって、信じられないほどの救いとなった。


その間、ギュンターは調理場に立ち、アースベアの肉を再び取り出した。火は使わない。石の鍋に直接魔力を注ぎ込み、肉の繊維を解きほぐすように熱を通していく。マジックバッグから取り出した新鮮な野菜、塩、胡椒、そして滋養強壮に効く特別なハーブを惜しみなく投入した。


「お待たせしました。まずはこれを食べて、体力を回復してください」


風呂から上がり、借り物の柔らかな服に身を包んだ三人の前に、湯気が立ち上る黄金色のスープが差し出された。アースベアの力強い旨味が凝縮されたスープは、ハーブの香りと相まって、冷え切った彼女たちの内臓に熱を灯していく。


魔法使いの少女は、震える手で木匙を握り、一口啜ると同時に大きな涙をこぼした。


「美味しい……。温かくて……生きてるみたい……」


神官の女性もまた、深い溜息と共にスープを飲み込み、少しずつ頬に赤みが戻っていく。セーラは彼女たちの隣に座り、優しく背中を撫でながら、自身もエールを一口含んでギュンターを見つめた。


「……助かったよ、ギュンター。君の判断がなければ、今頃あの暗闇で全滅していたかもしれない」


「いえ。僕たちの『効率』には、仲間の安全も含まれていますから。さあ、ゆっくり休んでください。詳しいお話は、少し落ち着いてからで構いません」


丁寧な敬語で語る少年の背中越しに、森の夜が更けていく。石造りの拠点は、過酷な聖域において唯一、文明の温もりを保ち続けていた。ギュンターは窓の外の闇を見据え、彼女たちを襲った「影」の正体を暴くための術式を、静かに脳内で組み替え始めていた。





石造りの建屋の中、ギュンターは淀みのない動きで指先を動かした。


彼はまず、セーラの寝室として用意していた建屋のスペースを拡張し、土魔法で二つのベッドフレームを地中から滑らかにせり上がらせた。そこに水魔法を注ぎ込み、表面を魔力の膜で完全に保護した「水のエレメント・マットレス」を形成する。体圧を均等に分散し、体温を奪わずに優しく包み込むその寝具は、極限状態にあった魔法使いと神官の心身を解きほぐすのに最適だった。


さらにギュンターは、アイテムボックスからアースベアの毛皮を贅沢に使った毛布を取り出した。昨日解体したばかりのそれは、魔力で完全に洗浄され、驚くほど柔らかく、そして驚異的な保温性を備えている。


「セーラさん、二人にはこの毛皮の毛布を。アースベアの生命力が宿っていますから、消耗した魔力の回復も早まるはずです」


ギュンターは丁寧に毛布を整えると、疲れ切った表情の魔法使いと神官に、静かだが力強い敬語で語りかけた。


「今日はもう、何も考えずに眠ってください。ここは僕が『ウォーターサーチ』で完全に警戒しています。指一本、魔物の侵入は許しません。……おやすみなさい」


少年の放つ絶対的な安心感に、二人の女性は吸い込まれるようにベッドへと身を沈めた。水のマットレスが彼女たちの輪郭を優しくなぞり、重厚な毛皮が冷え切った体温を急速に奪還していく。


「ギュンター、あとは私に任せて。二人をしっかり見ておくから」


抜群のプロポーションを誇る戦女神のような姿のセーラが、頼もしく頷いた。彼女もまた、この過酷な聖域でこれほどの安らぎを提供できるギュンターの才覚に、深い敬愛を抱いている。


「お願いします、セーラさん。……僕は外で、彼女たちが遭遇した『影』の情報を整理します」


ギュンターは建屋を出ると、夜の静寂が支配する森の入り口に立った。彼は地面に腰を下ろすと、掌を土に当て、意識を『ウォーターサーチ』の極限まで広げる。空気中の湿気、地面を流れる伏流水、そして遠く離れた場所で蠢く魔物たちの体内の「水」。


(……あの四人のパーティーを、物理的な外傷を抑えつつ生命力だけを削り取った攻撃。あれは単なる暴力ではありません。おそらく、精神干渉か、あるいは魔力そのものを捕食するタイプの……)


ギュンターの瞳に、知的な冷徹さと、仲間を傷つけられたことへの静かな怒りが宿る。彼はアイテムボックスから、クイーンアントから得た巨大な魔石を一つ取り出した。


「効率的ではありませんね。……あのような悲劇を繰り返すことは。僕たちが、この聖域の生態系を上書きしてしまいましょう」


少年の呟きは、夜霧の中に静かに溶けていった。翌朝、彼がどのような「対策魔法」を完成させているのか。石造りの拠点は、深い闇の中で青白い魔光を放ち続けていた。



聖域の朝は、石造りのかまどから立ち上がる香ばしい匂いで始まりました。ギュンターは土魔法を精密に制御し、滑らかな石板の調理台を形成します。その上で、アースベアの厳選された薄切り肉と新鮮な野菜を、魔力の微細な振動による熱で手際よく炒め合わせました。


「おはようございます、セーラさん。……お二人も、少しは動けるようになりましたか?」


カリッとトーストしたパンに、肉汁溢れる炒め物をたっぷりと挟み、温かいハーブティーを添えて差し出します。遅れて起きてきた魔法使いの少女と神官の女性は、昨日の土気色の顔が嘘のように生気を取り戻していました。


「……ありがとうございます。私は魔導師のルナ。こちらは神官のエルナです。命を救っていただいたこと、一生忘れません」


ルナと名乗った少女が、涙を堪えながら深く頭を下げました。ギュンターはいつもの丁寧な敬語を崩さず、静かに頷きました。


「お気になさらず。……それから、お仲間である男性二人のご遺体は、僕のアイテムボックスで大切に預かっています。街に戻るまで、時を止めた状態で保管しますので安心してください。……さて、食事をしながら聞いてください。昨夜の分析結果です」


ギュンターはハーブティーを一口含み、冷徹なまでの冷静さで事実を告げました。


「あなたたちを襲ったのは、物理干渉をほぼ無効化する『高位の闇属性』の魔物です。……正直に申し上げます。今のままの僕たちでは、勝率は極めて低いです」


その言葉に、エルナが震える声で補足しました。

「……そうです。私たちのあらゆる攻撃が通り抜け、逆に触れられるだけで魔力と生命力を吸い取られました。まるで、実体のない『夜』そのものに襲われているようでした……」


ギュンターの瞳に知的な探求心が宿ります。彼は二人の言葉を瞬時にデータ化し、脳内の魔法構築図と照らし合わせました。


「なるほど。実体がない、あるいは位相がズレているということですね。……ルナさん、エルナさん。お二人の魔法を見せていただけませんか? 闇を打ち払うヒントは、あなたたちの術理の中にあるかもしれません」


ルナが杖を構え、震える手で『火球ファイアボール』を放ちます。エルナは静かに祈りを捧げ、柔らかな光の障壁を展開しました。ギュンターは『ウォーターサーチ』を全開にし、彼女たちが練り上げる魔力の波長、指向性、そして属性の純度を分子レベルで観察し始めました。


「……見えました。ルナさんの火魔法には『熱』の指向性が、エルナさんの加護には『拒絶』の波長があります。これに僕の土属性の『固定』と、水属性の『流動』を掛け合わせれば……」


ギュンターの手の中で、クイーンアントの巨大な魔石が青白く輝き始めます。


「効率的ではありませんね、今のまま挑むのは。……僕が今から、その『闇』を物理的に固定し、切り裂くための複合魔法を構築します。セーラさん、お二人のサポートをお願いします。……勝機は、僕たちが作り出します」


少年の宣言に、絶望に沈んでいたルナとエルナの瞳に、初めて微かな希望の光が宿りました。戦女神のような美しさを湛えたセーラが、頼もしくその肩を抱きます。未踏の聖域に潜む「影」を狩るための、四人の反撃が始まろうとしていました。




ルナの火魔法とエルナの聖なる祈り。ギュンターはその魔力波長を数分間凝視しただけで、自身の脳内にある魔道書へと完全に書き換えてしまった。


「……なるほど。『熱』の励起と、『浄化』の周波数。これらをバレットの術式に組み込めば、実体のない闇さえも物理的に焼き切ることが可能です」


ギュンターはクイーンアントの巨大な魔石を媒介にし、瞬く間に新系統の魔法を構築した。彼はいつもの丁寧な敬語と共に、まずはパートナーであるセーラに、その指先を通じて膨大な術式データを転送した。


「セーラさん、受け取ってください。……闇を討つための、新しい『弾丸』です」


セーラの全身を、これまでの水や土とは異なる、黄金色の輝きが包み込む。彼女の洗練された美貌が、聖なる魔力によって神々しく照らされた。


「……すごい。身体の内側から、温かくて鋭い力が溢れてくるよ、ギュンター」


ギュンターは一つずつ、その性能を解説し始めた。


「まずは『ファイアバレット』。これは火の熱量を一点に凝縮し、爆発的な破壊力を持たせました。次に光属性の『ホーリーバレット』。これは闇の位相を強制的に書き換え、実体化させます。さらに、傷を癒やす『ヒールバレット』と、毒や呪いを霧散させる『ピュリフィケーションバレット』。これらは遠距離から仲間を支援するための術です」


ルナとエルナは、目の前で繰り広げられる神速の魔法開発に、開いた口が塞がらない。一晩で、いや数分で、自分たちが一生をかけて研鑽するはずの属性を「バレット」という極めて効率的な形に最適化してしまったのだ。


「そして、とどめはこれです。……『ホーリーバインド』と『ホーリープリズン』」


ギュンターが虚空に指を走らせると、光の鎖と檻が瞬時に形成され、周囲の闇を物理的に固定した。


「これで、実体のない影も逃げることはできません。物理的な攻撃が通る状態にまで、僕たちが強制的に『固定』します。……セーラさん、準備はいいですか?」


「ああ。これだけの武器を預けてくれたんだ。……あいつらに、仲間を傷つけた代償をたっぷり払わせてやるよ」


抜群のプロポーションをしなやかに躍動させ、セーラは黄金の光を帯びた水刃を構えた。彼女の瞳には、ギュンターへの揺るぎない信頼と、最強の魔法戦士としての自覚が宿っている。


「ルナさん、エルナさん。あなたたちは後ろで僕たちの背中を支えてください。……効率的に、かつ確実に。僕たちが、その『闇』を消し去ります」


ギュンターは長剣を抜き放ち、その刀身に聖なる魔力を纏わせた。20歳の少年らしい純粋な決意と、規格外の魔導師としての冷徹な計算。それらが混ざり合った独特の覇気が、聖域の冷えた空気を震わせる。


四人は朝日を背に、再びあの絶望の闇が待つ深淵へと歩み出した。昨日の敗北を上書きするための、圧倒的な反撃の幕が上がろうとしていた。



朝の静寂が支配する拠点の広場で、ギュンターはルナとエルナに向き合いました。昨日までの彼女たちは、ただ「影」に怯える犠牲者でしたが、今のギュンターの瞳には、共に深淵を歩む「駒」としての、そして「仲間」としての期待が宿っています。


「ルナさん、エルナさん。今のあなたたちの魔力効率は、あまりに低すぎます。まずは、僕とセーラさんが使っている『基礎』を共有します」


ギュンターは二人の肩に手を置き、まずは水属性と土属性の術理、そして何より重要な「魔力操作」と「魔力吸収」の核を直接その意識へと転写しました。二人が困惑する間もなく、大気中から濁流のような魔素が彼女たちの体内に流れ込み、枯渇しかけていた魔力回路が、純度の高い輝きを取り戻していきます。


「……っ、体が熱い……。魔力が勝手に、溢れてくる……!」


ルナが驚愕に目を見開くのを確認し、ギュンターは休む間もなく次の段階へ進みました。身体強化『アクセル』と『マッスル』。そして、先ほど構築したばかりの『ホーリーバレット』を筆頭とする聖弾シリーズ、さらには亜空間に荷を収める『アイテムボックス』まで、一気にその魂へと刻み込んだのです。


「セーラさん。彼女たちの習熟を確認してください。……実戦で迷えば、それは死に直結します」


「了解だよ、ギュンター。二人とも、覚悟しておくれ!」


抜群のプロポーションを誇るセーラが、黄金の光を纏った水刃を構え、模擬戦を開始しました。ルナとエルナは最初こそ戸惑っていましたが、ギュンターから授けられた『アクセル』が発動した瞬間、その動きは人間の域を超えました。


ルナは自身の『火球』を『ファイアバレット』へと最適化し、音速に近い速度で標的を射抜きます。エルナは『ホーリーバインド』を放ち、セーラの動きを光の鎖で制約しながら、同時に『ヒールバレット』でルナの疲労を瞬時に癒やしました。


「……信じられない。私、こんなに速く、強く……」


エルナが自身の掌を見つめ、震える声で呟きます。わずか数時間の訓練で、彼女たちは一介の冒険者から、歴史に名を残すレベルの魔法戦士へと変貌を遂げていました。セーラは手加減なしの組み手の中で、二人の成長を確信し、満足げにギュンターを振り返りました。


「完璧だね、ギュンター。二人とも筋がいい。これなら、あの『影』に遅れを取ることはないよ」


ギュンターは無表情ながらも、丁寧な敬語で頷きました。


「効率的に仕上がりましたね。……ルナさん、エルナさん。お仲間の仇を討ちに行きましょう。今のあなたたちなら、その権利があります」


その言葉に、ルナとエルナの瞳には、もはや恐怖ではなく、静かな決意とギュンターへの絶対的な忠誠が宿っていました。四人は黄金の魔力を全身から放ちながら、再び「影」が潜む深淵の闇へと足を踏み入れました。聖域の生態系が、今まさに塗り替えられようとしていました。




聖域に落ちる夜の帳は深く、しかし石造りの拠点内は魔石の柔らかな光と、肉を焼く香ばしい匂いに満ちていた。極限の訓練と魔力吸収の覚醒を経たセーラ、ルナ、エルナの三人は、驚くべき食欲を見せた。ギュンターが石板で焼き上げたアースベアのステーキを、一人あたり3kgという規格外の量で平らげていく。


「効率的なエネルギー摂取ですね。それだけ細胞が魔力を求めている証拠です」


ギュンターは淡々と答え、食後のハーブティーを淹れた。その後、三人に温かい風呂を勧め、十分な休息を取らせた。深夜、静まり返った拠点の中で、ギュンターはセーラと向き合い、明日の作戦を最終確認した。


「セーラさん。これまでの僕らは、魔法といえども本質的には『物理攻撃』でした。ですが、明日の敵にそれは通用しません。質量を持たない影には、概念的な『固定』が必要です。ですから明日は、授けた『ホーリーバレット』、『ホーリーバインド』、『ホーリープリズン』を軸に戦ってください。位相を強制的に書き換える、それが唯一の勝機です」


「……分かっているよ。あいつらには、仲間を奪われた借りを返さなきゃいけないからね」


抜群のプロポーションを誇るセーラは、鋭い眼光で闇を見据えていた。


翌朝。朝食の準備を終え、土魔法で精製した滑らかな質感のカトラリーを並べていたギュンターは、寝室から出てきたルナとエルナを見て、危うく手にしていた石のさじを落としそうになった。


「……えっ?」


そこには、昨日までの「少女」の面影を脱ぎ捨てた、二人の美しき戦女神が立っていた。魔力吸収による細胞活性化の恩恵か、ルナもエルナも背が伸び、170cmを超えるしなやかな長身へと進化していた。豊潤に膨らんだ胸元、引き締まったウエスト、そして力強くも美しい曲線を描くヒップライン。すらりと伸びた足は、まるで大理石の彫刻のように完璧だった。元々美形だった二人の顔立ちは、透き通るような肌と共に超美人の域へと到達し、神々しい魔力を放っている。


「おはよう、ギュンター様。……なんだか、体がすごく軽いの」


ルナが艶やかな声で微笑む。セーラはその二人を見て、静かに、しかし確実に焦りを感じ始めていた。自分の「特権」であった美しさと強さの均衡が、この一晩で劇的に塗り替えられようとしている。


「……効率的に、適応しましたね。素晴らしいです。では、行きましょう」


ギュンターはあえてその変貌を冷静に受け流し、全員に『アクセル』の発動を命じた。


「全員『アクセル』。影の居所へ移動します。……遅れないでください」


四人の魔法戦士は、黄金の残像を残して森を駆け抜けた。かつて死闘を演じたアースベアの領域さえも、今の彼女たちにとっては瞬き一つの通過点に過ぎない。やがて、光さえも飲み込まれる絶望の深淵――「影」の潜む大空洞に到着した。ギュンターはサーチを全開にし、闇の中に潜む実体なき死神を捉える。


「来ます。……聖弾ホーリーバレット、装填!」


ギュンターの号令と共に、四人の手の中から、闇を切り裂く黄金の輝きが解き放たれようとしていた。




深淵の最奥、光を拒絶する漆黒の空洞。そこに、音もなく「影」が染み出してきた。実体を持たず、不定形にうごめくその姿は、かつてルナとエルナの仲間を無慈悲に屠った死神そのものだった。


影が触手のような闇を伸ばし、先頭を駆ける四人に襲いかかる。以前の彼女たちなら、その一撃に触れただけで魔力と生命力を根こそぎ奪われ、絶望の淵に沈んでいたはずだ。しかし、今の四人は昨日までの彼女たちではない。


「……無駄ですよ」


ギュンターが冷徹に呟く。影の触手が四人の体に絡みつくが、奪われた端から『魔力吸収』の術式が大気中の魔素を強引に変換し、瞬時に体内へと流し込む。どれほど吸い上げられようと、彼女たちの魔力は一瞬で最大値へと回帰し、枯渇することなどあり得ない。


自身の「食糧」であるはずの人間が、無限の魔力の泉へと変貌している。その事実に、感情を持たぬはずの影が一瞬、戸惑うように動きを止めた。


「見切りました。……『ホーリーバインド』!」


ギュンターはその隙を見逃さなかった。彼の手から放たれた黄金の光鎖が、実体のない闇の深層へと食い込み、逃げ場を完全に封じる。物理干渉を無効化する影の位相を、ギュンターの聖なる魔力が無理やりこの世界の理へと繋ぎ止めた。


「皆さん、今です! 『ホーリーバレット』を撃ってください!」


ギュンターの鋭い号令が空洞に響き渡る。


「……よくも、みんなを! 『ホーリーバレット』!」

「聖なる裁きを! 『ホーリーバレット』!」


170cmを超えるしなやかな長身へと進化したルナとエルナが、その洗練された美貌に怒りを宿し、黄金の弾丸を連射した。続いてセーラも、抜群のプロポーションをしなやかに躍動させ、誰よりも鋭い光の弾丸を放つ。


「君たちの終わりだよ。……逃がさない!」


四方八方から降り注ぐ聖弾。闇の位相を書き換え、存在そのものを浄化するその光は、影にとって猛毒以外の何物でもなかった。黄金の閃光が爆発するたびに、影は苦悶の叫びなき絶叫を上げ、その漆黒の体躯がボロボロと崩れ落ちていく。


ギュンターは冷静にその光景を見据えつつ、自身も剣を突き出した。


「効率的に、終わらせましょう。……『ホーリープリズン』」


影の周囲を黄金の檻が囲み、逃走の路を完全に断つ。もはやそこにあるのは、狩られるのを待つだけの哀れな残滓だった。ルナとエルナの放つ光は、仲間を失った悲しみを乗り越え、新たなる力への自信に満ち溢れていた。


絶望の深淵は、今、四人の放つ圧倒的な黄金の輝きによって、真昼のような明るさに塗り替えられようとしていた。




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