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暴走転生勇者を最強監視者が必殺しちゃいます。〜罪は世界を選ばねえ〜  作者: がお


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【2話】薬の勇者(前編)

時代と世界を変えて、あの必殺復活です。

昼休み。

「正義さん、これ……義理ですからね!」

少し照れた後輩がチョコを差し出す。

「おう、ありがとな」

机の上には、思ったより多い小さな箱。

周囲の男社員が冷やかす。

「モテるじゃないですか、正義先輩」

正義は苦笑い。

けど、どこか達観した目。

――甘いものは、嫌いじゃない。

そこへ、部長が割って入る。


「正義くん♡」

甘ったるい声。

振り返ると、香水の匂い。

部長が、キラキラした包装紙の箱を差し出す。

「これ、特別よ。カカオ72%。ビターな男にぴったりでしょ?」

周囲がざわつく。

「部長まで!?」

正義の頬がわずかに引きつる。

「……ありがとうございます」


午後三時。

オフィスの空気は、コーヒーの匂いで満ちていた。

「まさよしさん、これ入力お願いできます?」

「はいはい、了解」

正義は軽く手を上げ、キーボードを叩く。

その時。

――ピコン。

メールの受信音。指令だ。

場所:リアス王国

罪状:人体実験

対象:薬の勇者

指令:抹殺


正義の指が、一瞬だけ止まる。

周囲のざわめきが、遠くなる。

だが次の瞬間には、何事もなかったようにメールを閉じる。


正義は椅子から立ち上がり、デスクの引き出しから古びた符を取り出す。

紙に描かれた文字が淡く光り、周囲の空気を微かに震わせる。

「――開け、リアスの扉よ」

低く呟くと、オフィスの空気が歪み始め、光と影が混ざり合う渦が床を覆う。

書類やペンが舞い上がり、現実の喧騒が遠ざかる。

次の瞬間、視界が切り替わった。

目の前に広がるのは、穏やかな丘陵と小さな町。



正義は町へと通じる道の森へ足を踏み入れた。

柔らかい木漏れ日が差し込み、風が葉を揺らす。

草木をかき分けると、誰かが小さな薬草を摘んでいる姿が見えた。

女性――年の頃は十七、八か、髪は長く、顔に疲労と不安が混じる。手元のカゴには、わずかに採れた薬草が入っていた。

「……こんなところで何をしてる?」


正義の声に、女性は驚いて立ち止まり、身をかがめる。


「え、えっと……あの……父が……病気で……薬を買うお金がなくて……」


彼女の言葉は途切れ途切れで、息が上がっていた。


「薬の勇者様の薬は……高額で……家計では……手が届かないんです……」

正義は一歩近づき、落ち着いた声で言う。

「……なるほど。父上は重病か」

女性は小さくうなずき、必死に採った薬草を抱きしめた。


正義は黙って少女のそばにしゃがみ、手元の薬草を丁寧に摘む。

「……こうやって摘むと、根まで傷めずに採れる」

指先一つで草をそっと扱い、森の中に散らばった薬草を丁寧に集めていく。

少女は少しずつ笑顔を取り戻し、正義の動きを真似るように手を伸ばす。

「ありがとうございます……! 一人じゃ、こんなに取れなかった」

正義は軽く手を振るだけで答える。言葉はほとんど必要ない。行動で十分伝わる。

薬草を集め終わると、少女は少し恥ずかしそうに顔を上げた。

「……あの、よかったら……お礼に、うちでお茶でもどうですか?」

小さな声に、森の静けさが優しく反響する。

正義は軽くうなずき、少女の後について小道を歩く。

木漏れ日が二人の影を揺らす中、足取りは自然で、戦場の緊張感は遠くに置かれたかのようだった。

やがて、木造の小さな家が見えてくる。

少女は玄関の扉を開け、静かに正義を招き入れる。

「どうぞ、上がってください。薬草を手伝ってくれたお礼です」


少し傷んだテーブルには

湯気の立つ湯飲みが二つ、木の膳に置かれる。香ばしい茶の香りが、家の中にやわらかく広がる。

正義は椅子に腰を下ろし、静かに湯をすする。

少女は少し離れた場所で、正義の手元を気にしながら、自分も湯を口にする。


「今日は本当に有り難う御座います。薬の勇者の薬、とても高くて……」


少女の声は小さく、どこか諦めを含

む。

正義は静かに目を細める。

「今は、少しでもできることをやる。それが大事だ」

湯気の向こうで少女は頷き、わずかに笑みをこぼす。

小さな家の中で、静かなひとときが流れていく。


湯を飲み終え、正義が言う。

ちょっとお父さんの状態を見せてもらえないかな?」

「はい、父は2階です、こちらにどうぞ」

静かに階段を上がる。木造の踏み板がかすかに軋む音。

扉を開けると、父親が布団に横たわっていた。呼吸は浅く、体に力はない。痩せた顔には疲労が色濃く、病の影がはっきりと浮かんでいる。

「……なるほど、辛そうだな」

少女はそっと父の肩に触れながら、言葉をかける。

「……昔は城の近衛兵で逞しかったんですが、病気になりこんな状態に」


正義は頷き、少しだけ眉をひそめる。声には出さず、ただ目で父親の状態を追う。

呼吸のリズム、体の微かな震え、布団に沈む肩……すべてを視線で確認する。

観察を終えると、正義はゆっくりと階段を降りる。


正義の帰宅時、少女は言葉をかけられず、少し寂しそうに見送る。

外に出ると、柔らかい木漏れ日の下で、正義は深呼吸を一つとった。



森の端、正義は影に身を潜めた。

屋敷までは距離にして二百歩ほど。石造りの塀が周囲を囲み、夜の光にわずかに反射している。塀の上には見張り用の松明が数本、規則正しく灯っていた。

正義は息を殺しながら、塀の隙間から屋敷の内部を観察する。

門は重厚な木製で、金具が複雑に組まれている。門の前には二人の見張りが立ち、動きは単調だが、目を離すと危険を見落とす可能性がある。

屋敷自体は二階建てで、正面の大きな窓から内部の光が漏れていた。

窓の配置を頭に入れ、廊下の位置や部屋の配置を推測する。廊下には家具が置かれ、部屋の入口がいくつか見える。動線を把握することが、侵入や脱出の鍵になる。

そして、正義は目を凝らす。

大広間の一角、窓際に一人、女性が座っていた。長い髪は肩にかかり、顔には疲れと決意が混ざる表情。背筋は真っ直ぐで、動きは慎重だが優雅さも感じられる。光の加減で、目の色や口元の形まで確認できた。

息を整えながら、正義は暗闇の中で情報を整理する。

「……構造は把握。ターゲットも確認済み」

短く呟くと、影の中で静かに身を低くし、森の闇へと消えていった。


次の日の朝

ふと、昨日の少女が気になり、再度少女の家に向かう正義。


家の前に立つ。扉を押すと、少女が現れた。

昨日とは明らかに違う、自然な笑顔。

だが、どこか計算された印象もある。

正義は息を整え、静かに視線を巡らせる。

整理された薬草、整った小物、落ち着いた空気。

「……昨日と、違うな」

影のように家の中を見渡し、正義はそっと一歩踏み出す。


「どうした?」

正義が尋ねると、少女は少し嬉しそうに答える。

「今日、街で薬の勇者様が薬の被験体の募集をしてたんです。給金も出て……そのお金で、父の薬も買えるんです」

正義は小さく頷き、彼女の手元に目をやる。

「なるほど、よかったな」

正義は少女の話を聞き終え、しばらく黙って考える。

胸の奥に、嫌な予感がざわつく。

「……気をつけろ」

正義の声は低く、静かだ。

「何かあったら、すぐ逃げろ。無理に頑張る必要はない」

少女は小さく笑顔でうなずいた。



夜、静まり返った小さな家の扉がノックされる。

少女が顔を上げると、外には薬の勇者――あの女性が立っていた。

「……こんばんは。今日は、薬の被験体の件でお伺いしました」

落ち着いた声、しかし夜の空気に不自然な重みがある。

少女は一瞬、戸惑いを見せる。

「え、はい……」

勇者は微笑むが、その笑顔は昨日の森の少女のものとは違い、計算された冷静さを帯びていた。

少女の手元の薬草や家の中をちらりと視線で確認する。

「準備はできていますか?」

声の端に、微かな期待と圧が混じる。

少女は小さく頷き、勇者はそのまま家に上がり込む。

窓の外の月光が、二人を静かに照らしていた。

勇者は落ち着いた声で言った。


「まずはお父様の様子を確認しましょう。こちらの薬を差し上げます」


少女が戸惑う間もなく、勇者は掌をかざし、魔法で薬を精製する。

透明な液体が淡く光り、湯気のように立ち上る。

「これを……」

少女が震える手で父に差し出すと、父は一口含んだ。

その瞬間、異様な声が室内に響く。

呼吸が荒く、体が異常に痙攣し始める。

父の皮膚が変色し、筋肉や骨格が歪む。

顔はもはや人のものではなく、獣のような形相に変わっていく。

少女は恐怖で声も出せず、勇者は静かに観察する。

「……順調ですね」

夜の静寂の中、父の変貌の気配が家全体に重く広がる。

窓の外の月光が、その異形を淡く照らしていた。



なるほど、まさ。じゃあここは勇者が少女にも薬を飲ませ、両方に影響を及ぼしたあと、静かに消えるシーンだね。

短めで緊張感と不可解さを残す文章にすると、こんな感じになるよ:

父の体が異形へと変貌する様子を、少女は固まって見つめていた。

勇者は少女に向き直り、静かに言う。

「次はあなたです」

小さな掌に、再び魔法で精製された薬が光を帯びて現れる。

それを無理矢理、少女に飲ませる。

瞬間、温かさと甘さが広がる感覚が走る。

「いやー!」

しかしその直後、体に微かな違和感が芽生え、鼓動が速まる。

勇者は微笑み、ゆっくりと後退する。

「これで準備は整いました」

そう言い残すと、勇者は風のように、家の中から消えた。

静まり返った家には、異変に苦しむ父と、微かに身体の変化を感じる少女だけが残される。


正義は少女の家に向かう。

胸の奥には、朝の嫌な予感がざわついている。

扉を開けると、家の中には異様な空気。

父の姿――かつての穏やかな面影はなく、筋肉と骨格が歪み、獣のような形相に変貌していた。

「……くっ……父さん……!」

少女は震え、影に隠れる。

正義はすぐに構える。

化け物化した父は咆哮し、床を叩くように跳びかかってくる。


化け物化した父は咆哮し、床を叩くように跳びかかってくる。

正義は剣を構え、瞬時に踏み込み受け止める。

一撃、二撃と剣が交わり、父の攻撃を封じつつ正義は冷静に間合いを取る。

「グオワ……!」

父の咆哮が響く。だが正義は符と剣の連携で攻撃を抑え、最終的に一閃。

化け物化した父は床に崩れ落ち、動かなくなる。

少女は床に座り込み、目をうつろに開けるだけだ。

薬の影響で意識を保つのがやっとの様子。

正義はすぐに彼女に駆け寄る。

「……大丈夫か? 無理はするな」

少女はかすかに頷き、声にならない呻きだけを漏らす。

静まり返った家の中、戦いの痕が残る床に、二人だけが立ち尽くしていた。


正義が少女のそばに駆け寄ると、彼女はかすかに口を開いた。

「……正義さん……わたしも……同じ薬を……飲んでしまったんです……」

意識が朦朧としている中、少女の声には覚悟が滲む。

「だから……お願いです……わたしも……殺してください……」

正義は眉をひそめ、言葉を失う。

少女はさらに微かに体を起こし、震える手で小さな箱を差し出す。

「それと……薬の勇者様を……誰か冒険者に倒してほしいんです……」

声はかろうじて聞き取れる程度。

箱の中には、かつて少女の父が近衛兵だった頃に使っていた剣と甲冑が収められていた。

「報酬に……これを……」

正義はしばし黙って箱を見つめる。

その瞳には、少女の決意と、迫りくる危機の両方が映っていた。


正義は少女の言葉を聞き、表情を変えずに静かに頷く。

「……約束は守る」

少女はかすかに微笑もうとするが、その瞳にはもう力はない。

正義は迷わず剣を抜き、彼女の胸に向ける。

光が淡く揺れ、静寂の中に短い一閃。

少女は安らかな表情のまま、静かに息を引き取った。

正義はその場に立ち尽くし、箱に収められた剣と甲冑を見下ろす。

「……あとは、薬の勇者だ」

静かな決意が、その声に宿る。






















今回は話を2部構成にしました。やっぱり1話に納めると、読者も読んでて疲れるでしょうから。

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