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暴走転生勇者を最強監視者が必殺しちゃいます。〜罪は世界を選ばねえ〜  作者: がお


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【1話】ユグドラシルの勇者

また思い付きで書いてしまいました。

最後まで読んでくれたら嬉しいです。

城の大広間。

豪華な食卓の上には、まだ温かい料理が並んでいたが、そこに笑い声や談笑の気配はもうなかった。

勇者パーティは無残にも倒れ、血で染まった床に体を横たえている。最後の希望――勇者だけが、かろうじて呻き声を漏らす。

「くっ…くそっ…まだ、俺は……」

その言葉も途切れ、瀕死の身体が震えた。

そして、誰も気付かぬまま、食卓の端に黒い影が静かに立っていた。

シルエットは霧のように輪郭をぼかし、誰なのか、何者なのか――それはまだ見えない。

次の瞬間、影は動く。静かに、しかし確実に――

勇者の前に立ちはだかるその姿は、まるで死神のように、大地の音を吸い込んだかのように重く、冷たかった。




時は現代、東京…


コピー機の横でため息をつく中年係長、中村 正義(まさよし)

30代後半、眼鏡の奥にうっすら疲れた目。

書類の山を前に、午前の会議の疲れもあってか、彼の存在感はオフィスの空気に溶け込む昼行灯のようだった。

「またこの書類か…」

机に置かれた紙の束をぼんやり眺め、ペンを手に取る。



「まさよしさん、ちょっといいかしら?」

背後から響く柔らかい声に、正義は顔を上げる。

机の向こうに立つ部長は、女性的な仕草と軽やかな語尾で、中性的な雰囲気を漂わせている。

「ねぇ守くん、これまだ終わってないのっ? まったく、しっかりしてほしいわっ」

指先で書類の山を軽く指す。

「え、えぇ…すみません、ちょっと整理していて…」

正義は肩をすくめ、いつもの素振りで答える。

「も〜、まさよしさんったら、言い訳はダメよ。さぁ、気合い入れてやりなさ〜い!」


正義が書類に向かい、淡々と入力作業を続けていると、パソコンの受信音が軽く鳴った。

画面を見ると、見覚えのない差出人から一通のメールが届いていた。

件名はただ一言

「指令」

本文を開くと、そこには淡々とした文字で告げられていた。


指令:暴走転生勇者の抹殺。

場所:ユグドラシル世界

成功をもって任務完了とする。


正義は一瞬、手元のマウスを握りしめる。

日常の情景が、ほんのわずかに色を変えた瞬間だった。

内心では、淡々と書類を片付ける「係長」の顔の奥に、冷徹な監視者の本性が顔を覗かせる。

「……また、か」


夜も更け、オフィスはすでに静まり返っていた。

書類を片付け、パソコンの電源を落とす正義。

昼行灯の顔はすでに消え、呪文の符を取り出す。

「――開け、ユグドラシルの扉よ」

低く呟くと、部屋の空気が微かに歪み、周囲の影が踊り出す。

瞬間、光と闇が入り混じる渦に包まれ、正義の身体は静かに浮かんだ。

目を開けると、そこはユグドラシル世界――

勇者が暴走した痕跡が残る村だった。

焼け落ちた家屋、壊れた荷車、そして焦げた大地。

静まり返った空気に、かすかに残る人々の悲鳴の余韻が漂っている。

正義は深呼吸一つ。

昼間の事務作業の顔は完全に消え、監視者としての目が、荒廃した村を見据えた。


焼け落ちた家屋の間を歩く正義。

焦げた木材、ひっくり返った荷車、散乱する生活道具――すべてが暴走した勇者の痕跡を語っていた。

風に舞う灰が頬をかすめ、静まり返った村に冷たい空気が漂う。

「……無差別か」

正義は低く呟き、周囲を警戒しながら村を歩く。

地面に残る足跡や傷跡、焼けた壁に残る爪痕から、勇者が暴走した様子を瞬時に読み取る。

彼の目は、日常の昼行灯の顔ではなく、世界を監視する冷徹な視線だ。

瓦礫の間に、かすかに声が聞こえた。

小さく震える声――泣き声とも言えぬ声が、正義の耳に届く。

「……こっちにいるの?」

声の方へ向かうと、倒れた家屋の陰に、小さな少女が身を隠していた。

髪は乱れ、衣服は泥と灰にまみれている。両親の姿はどこにもない。

その瞳には、まだ消えぬ恐怖と深い悲しみが宿っていた。

少女は正義を見上げ、かすかに唇を震わせる。

「……だ、誰……?」

正義は膝をかがめ、少し距離を取りながら声を落とす。

「大丈夫かい、おじさんは冒険者だけど村どうしちゃったのかな?」

その一言に、少女の震えがわずかに和らぐ。

「勇者様が村に来たんだけど、突然魔法とか剣で村をこんなにしちゃったの」


少女は震える手で、荒れた村の小さな祠に向かった。

屋根は半壊し、壁も煤にまみれているが、どこか清らかな気配が漂っていた。

「お願い…勇者様に、私の家族を…」

少女はそう呟くと、両親の形見の髪飾りをそっとお供えの台に置いた。

小さな布袋の中には、わずかなお金も添えられている。

「これで…どうか…助けてください」

祠は、村人の伝承によれば、どんな願いも叶えてくれるという。

少女の小さな手から零れる涙が、焦げた土に落ち、静かに祠に吸い込まれていく。

正義はその背後から静かに見守る。

世界を監視する冷徹な視線が、少女の願いを見逃さない。

正義は低く呟き、少女の小さな願いを心に刻む。



荒廃した村での数日、正義は少女とともに静かな時間を過ごした。

瓦礫の片付け、簡単な食事の用意、壊れた家屋の補修――ほんのわずかでも平穏を取り戻すための行動だった。

「……正義さん、あのね」

少女は小さな手で灰まみれの家屋を掃きながら話しかける。

「私、お父さんみたいに強くなりたいの。勇者様に、ちゃんと立ち向かえるくらいに」

少女は少しずつ笑顔を見せるようになり、正義もまた、笑顔を少女に返した。


しかし、正義が村の外を巡回しているほんの短い間に、再び勇者パーティが現れた。


「…ふふ、まだ生き残りがいるな。面白そうだな」

勇者の声は冷たく、楽しげな狂気が混じっていた。

少女は後ずさり、祠を背に震える。

「や、やめて…お願い……」

勇者はにやりと笑い、剣を振りかざす

暴走の痕跡は前回よりも凄まじく、村は一瞬で全滅。


「お前たちみんな、滅びる運命さ。泣いても無駄だ」

少女は涙をこぼしながら、必死に手を合わせる。

「お願い…正義さん…来て……」

だが、正義が村の外を巡回している間に、勇者は容赦なく村を蹂躙する。

少女の悲鳴も、瓦礫の下に埋もれてしまったかのように消えた。

正義が戻ったときには、勇者パーティはすでに城へと戻っていた。

荒れ果てた村には、静寂だけが残る。

正義は少女の祠に向かった。

かつて少女が置いた、母親の髪飾りと少量の金を、静かに手に取る。

その手は揺れず、心の中で少女の願いを確かに受け止める。

「…分かった、必ず…」

荒廃した村の空気の中で、正義の決意が静かに燃え上がった。


月明かりが城の石壁を淡く照らす。正義は静かに夜風に乗って城の窓際に降り立った。影のように輪郭をぼかし、誰にも気づかれることなく、窓から内部を覗き込む。

城内では灯火が揺れ、勇者とそのパーティが談笑する影が見えた。しかし、正義の目はすぐに冷徹な光を帯びる。暴走の痕跡を知る者として、危険な動きを瞬時に察知する。

「……警戒は薄いな」

低く呟くと、次の瞬間、正義の身体は一瞬で窓を越え、城内の床に降り立った。

目立たぬように足を滑らせ、厨房の方向へ歩く。壁沿いの影に溶け込み、給仕に混ざるための制服を手に取る。まるで日常の一部のように動きながらも、その視線は常に城全体を走査していた。

厨房の中では、他の給仕たちが忙しそうに鍋をかき混ぜ、皿を運ぶ。正義は違和感なくその流れに溶け込み、自然に仕事を始める。鍋を持ち上げる手つきは柔らかく、給仕としての顔を完璧に演じながらも、頭の中では次の動きを冷徹に計算していた。


厨房から給仕として出て、食卓に皿を運ぶ正義。

しかし、目に入ったのは――勇者の姿はなく、残るのはパーティだけだった。

「おかわりはいかがでしょうか」

魔道士が無邪気に笑い、皿をこちらに差し出す。

その瞬間、正義の動きは光よりも速かった。

気配も音もなく、正義は魔道士の喉元に短剣を突き刺す。

「……!」

魔道士の驚きの声がわずかに空気を震わせるが、次の瞬間には息絶えていた。

他のパーティも一瞬にして戦慄に凍る。

しかし正義は表情一つ変えず、冷徹な視線のまま、次の一撃で一人、また一人と瞬殺していく。

叫び声も悲鳴も、ほんの一瞬で消え去った。

食卓に残るのは静寂だけ。

正義の目には、勇者がいない今、残る者たちの恐怖と死だけが映る。

「……予定通りだな」

低く呟き、正義は次の動きへと視線を向ける。



その時、不意に扉が開く、食卓に足を踏み入れた勇者の目に飛び込んできたのは――

無惨に倒れた仲間たちの姿。血に染まった床、静まり返った空間。

「……な、何だ……これ……?」

普段は冷徹な笑みを絶やさない勇者の声が、わずかに震えた。

床に散らばる仲間たちの無残な姿を、勇者は目を見開いて見下ろした。息を呑むだけで、言葉は出なかった。


その瞳には、信じられない光景を前にした驚きと困惑が映る。

倒れた魔道士、剣士、僧侶――

全員が瞬く間に命を失い、食卓には静寂しか残っていなかった。

勇者は思わず立ち止まり、足元を見つめる。

「……嘘だろ……一体、何が……?」

血の匂いと静寂が、勇者の心を重く締め付ける。

そして、異様な静けさの中で、給仕姿の正義が食卓の端に立っていることに気づく。

表情一つ変えず、短剣を握りしめ、冷たい視線を勇者に向ける――まるで世界の秩序そのものを支配するかのように。

「……お前……」

勇者の声が、ようやく震えを帯びる。

「どうして……どうしてこんなことに……」

正義の瞳は動かず、ただ勇者を見据える。

目の前の光景、そして背後に迫る監視者――

暴走勇者にとって、これは逃れられぬ現実の序章に過ぎなかった。


勇者は剣を握りしめ、全力で踏み込んだ。

「くっ……お前の仕業か!」

怒涛の斬撃と魔法が、食卓を飛び越え、空気を切り裂く。炎が巻き、剣光が床を焼く。

しかし正義は微動だにせず、表情も変えない。

魔法の炎は指先で弾かれるように散り、剣の一閃は空を切るだけ。

一瞬、勇者は目を見開いた。

「……な、何だ……!?」

正義の動きはゆったりとしているように見えて、実際には一切の無駄がない。

その冷たい視線だけで、勇者の攻撃はことごとく封じられ、まるで世界の秩序そのものに押さえ込まれているかのようだった。

勇者はさらに全力を振り絞る。

「くらえっ、全力の魔法――!」

轟音とともに、魔法陣が床に描かれ、光が渦巻く。

だが、正義は短く息を吐くだけで、魔法は一瞬で流れ去り、灰のように消える。

「……そんなものか」

呟く声は冷たく、空気を震わせるだけ。

勇者は全身に力を込め、剣を何度も振るう。

一瞬でも油断すれば勝機があると思ったのか、渾身の連撃を叩き込む。

しかし、正義の短剣は常に勇者の死角にあり、微動だにせず攻撃をかわす。

その一瞬の隙もなく、全てを見通す視線に、勇者の力はまるで通用しなかった。

「……嘘だ……こんな……!」

必死の叫びが響く。

全力を尽くしても、監視者には歯が立たない――

勇者は、初めて心の奥底から恐怖を感じた。


全力で攻撃を仕掛けたはずなのに――

気づけば、喉元に冷たい短剣が突きつけられていた。

「……く、くそ……! まさか……たった一人で……」

勇者の声は震え、体が思うように動かない。

「た、頼む……命だけは……! 俺は……俺はもう……悪くなんか……ない……!」

頭の中に、転生前の記憶がよみがえる。

いじめられ、虐げられた日々――でも、今は力を手に入れた。

「チートの力……あったから……調子に乗って……みんな……巻き込んで……」

恐怖で喉が詰まりそうになりながらも、勇者は必死に言葉を続ける。

「……でも、わ、わかった……! 俺は……これからは……魔王討伐に……全力を……! だから……命だけ……た、頼む……!」

短剣の重みが喉元にずっしりと伝わり、全身の震えが止まらない。

全力を尽くして暴れてきた自分が、こうもあっさり制圧される現実――

初めて心の底から、恐怖と後悔が押し寄せる。



だが、正義の短剣は一瞬も揺らがない。

その冷たい視線に、勇者の希望はまるで届かない。

正義は一言言う。

「……罪は、世界を選ばねえ」


そう言うと、勇者の喉元にただ、ひんやりとした短剣の感触だけが奥深く差し込まれる。


勇者の瞳が驚愕と恐怖に揺れ、最後の叫びも虚しく途切れる。

鮮血が静かに流れ、静寂だけが食卓に残った。

すべてが終わった後、正義は短剣を引き抜き、冷徹な視線を前方に戻す。

世界を監視する存在――監視者としての姿だけがそこにあった。


正義は静かに夜風に乗り、ユグドラシル世界の混乱を後にした。

次の瞬間、目の前に現れたのは、見慣れた街並みとは微妙に異なる、空間の歪みを感じさせる通りだった。

灯りは柔らかく、店の看板は現実の文字とも、魔法文字ともつかない、淡い光を放つ。

「……ここか」

低く呟き、正義は足を踏み入れる。

店の扉を押すと、そこは完全に異空間。

壁も床も天井も、どこか浮遊するように揺らぎ、並べられた棚には、様々な世界から集められた品々が無秩序に並ぶ。

金貨、宝石、魔法の結晶、見たこともない食材や道具――世界ごとに異なる規格が、ここでは一つの価値基準で揃えられている。

店主の姿は一切見えず、代わりに空間の奥から、淡い声だけが響く。

「いらっしゃい、監視者様。どの世界の品を換金なさいますか?」

正義は手元の袋を静かに開き、渡す。


ユグドラシル世界で回収した髪飾りと僅かな硬貨――

「……全部、ここで価値を確認する」

歪んだ空間から手だけが出て指先で品物をなぞる。

数瞬で、正義は換金額と必要な変換先を計算する。

「三千円になります」

正義はフッと笑う。

「……これで十分か」

正義は店を出る。



なるほど、次のシーンは現代での日常に戻るギャップね。では文章化するとこんな感じになるよ。

翌朝。

東京のオフィスビル。窓の外には穏やかな朝日が差し込み、日常の喧騒が始まろうとしていた。

正義はいつもの昼行灯の顔に戻り、デスクに向かって書類を整理していた。

頭の中の冷徹な監視者としての顔は影を潜め、目の前の現実は、会議資料と入力作業だけが広がる日常だった。

「まさよしさん、昨日の報告書、まだですか?」

上司が、眉をひそめながらデスクに書類を置く。

「え、えぇ…すみません、ちょっと整理していて…」

正義はいつもの肩すくめの素振りで答える。

「もう…まったく、しっかりしてほしいわよ!」

軽く叱られながらも、日常のやり取りに戻っていく。

心の奥で、昨夜の世界の出来事が静かに消えていくのを感じながら、正義は淡々と仕事に没頭した。

窓の外では、平和な朝の光がオフィスを包む。

世界の監視者としての任務は一時の休息を迎え、日常という舞台が再び動き出した。





















もう、感のいい読者はお気づきだとは思いますが、はい、あれです(笑)あれの転生バージョンです。

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