第1話 偶然の産物
本編に入る前の話です。
良ければ読んでいって下さい。
カーンッ!カーンッ!カーンッ!カーンッ!
授業の終わりの鐘が鳴る。
「あー、終わった終わった。」
「おい、ジャック!帰りにゲーセンでも行こうぜ!」
「そうだな、マイク。サーシャも呼んでもいいか?」
「あぁ、いいぜ!もう1人女がいればいいんだけどなっ!」
「確かにな!ハッハッハッ!」
そんな会話をしている生徒の横を通って、自分の研究室に向かって歩く人物がいた。
「はー、まったくガキどもと来たら遊び、女と気楽でいいもんだ。こっちは金が無いって言うのに…」
丸眼鏡をした少し頭の頂点が薄くなっている痩せこけた教授が愚痴を吐く。
「アルカド教授!」
「トウドウ教授、なにかね?」
すると、他の専門分野の教授が話しかけてきた。
その教授は見た目がダンディーなイケおじで生徒に好かれ、自分より年下なのに研究においても成果を出していてアルカド教授にとって憎い存在だった。
「今日の終わりに教授や准教授で飲みに行くんですが、アルカド教授もいかがですか?行くなら、皆で何処…」
「すまないが、私は行かない。」
「え、しかし…」
「悪いが研究をしたいからな、失礼。」
その場から逃げるように急いで研究室に向かう。
他に話しかけられない様に人気の少ない廊下を通り研究室に着くと、漆黒のドアを開けて中に入った。
はぁー
深いため息を吐く。
やれやれ、成果が出てる奴はこっちの気も知らないでいい気になりやがって。
プルルルルルッ、プルルルルルッ・・・・・・
スマホから電話が部屋中に鳴り響く。
誰だこんな時に…
鳴り響く電話に出た。
「アルカドですが誰ですか?」
(おい!金をそろそろ返して貰おうか。)
…
その声を聞いた途端、顔が青ざめた。
今の声はギャンブルに手を出し金を借りた闇金の男で間違いない。
借りる時にあの独特な低い声色一瞬たりとも忘れた事はない。
(おい!聞いてるのか?)
「は、はいぃ〜。後1ヶ月待ってもらえないでしょうか?」
(は?何寝言言ってんだ?)
「しかし、あんな莫大なお金払えないですよ〜。」
(知るかっ!こっちには契約書もあるんだ。だがな、俺もすぐに返せとは言わない。期限は1週間だ!)
「い、1週間ですか!?」
(そうだ。1週間だけ待ってやる。1週間後に取りに行くからそれまでに用意しとくんだな。言っとくが、逃げるんじゃねぇーぞ!もし、逃げても地獄の果てまで追いかけるからな!わかったなっ!)
プツッ
電話が切れた。
酒を飲み泥酔していい気になりギャンブルに行った挙げ句、負けたせいで金が底をつき借りた金の利息があんな無茶苦茶な割合なんて見ずに契約したせいで今では50万借りた利息を含めて1000万まで膨れ上がっていた。
はぁ、どうしたらいいんだ…
この額を返すにはどうにかして研究を完成させるしかない。
そうすれば、世界中から注目を浴びて金もたんまり貰えるはずだ。
そう思い、研究に没頭した。
その研究はアルカド教授がトップに君臨して助教授はおらず生徒が数人いるだけだった。
その生徒達も単位が取りやすいからいるだけの存在で研究テーマを馬鹿にしていた。
アルカド教授の研究テーマはタイムスリップだ。
子供の頃にある映画でタイムスリップをしているのを見て影響され今までそれだけの為に人生を賭けてやってきた。
実際、今までタイムスリップを成功させた人類はいなかった。
或いは、タイムスリップしたが誰にも言ってないか、言ったが相手にされなかったのどれかだ。
そして、タイムスリップを成功させれば歴史に自分の名を刻む事ができる。
それを夢見て研究してきたが失敗ばかりだ。
その日は、明日の準備をするだけで終わった。
次の日、朝から天気が曇っていていつ雨が降ってもおかしくない空だった。
悪くない天気だ。
午後からの天気予報では雷雨だ。
雷が落ちれば可能性としては五分五分といった所か。
落ちなければ失敗は免れない。
今日こそは必ず成功させるからな。
そんな思いを心に秘めながら朝から大学に出勤する。
研究室から準備をしていた機械を持ち、校用車のミニバンに乗せる。
ミニバンで大学から離れた山の上にある秘密の実験所にやってきた。
そこには建物の上に巨大な避雷針があって実験所の天井の避雷針の周りには透明な電気が通らない素材を使っていて空の状況がわかる様になっている。
その真下には避雷針に雷が落ちた時に流れるケーブルに繋がった大きな機械が置かれていた。
そこに持ってきた最後のパーツ、人一人が入れるぐらいの銀の枠を設置する。
銀は一番電気を通しやすい金属だったので採用した。
これで雷を使ったタイムスリップ製造機の完成だ。
その装置は、雷が避雷針に落ちると、ケーブルを伝って電気が流れ循環装置から枠に行き、また循環装置に行き枠に行くという電力供給装置だ。
それを使い、同じ場所で膨大な電力を循環させ電磁場を作り、時空を歪ませてタイムスリップが出来るワープゾーンが発生するという訳だ。
しかし、これは単に予想であり、ワープゾーンが仮に出来たとしてもタイムスリップが出来るかは分からない。
ただ、雷の電力と速度が家庭電気に比べ100万倍にもなる為、使っている素材や細かい装置を作るのに大変だった。
あとは、タイムスリップが出来ると信じるだけだ。
そして、雷が落ちるのを待った。
やがて、ザーッと雨が降りゴロゴロゴロッと雷が鳴った。
よしよし、来たぞ。
さぁ、雷よ落ちろっ!
アルカド教授は天に向かって両手を上げて叫んだ。
その瞬間っ!
辺りが一瞬真っ白に光って目が開けられないぐらい眩しくなった。そして、同時にゴロゴロゴロゴロッと凄い音で耳がやられそうだ。
ウィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと機械が動き出した。
目を開けると、一際目立った場所があった。
そう、準備した銀で出来た枠だ。
近づいてみると、ジーッと音がする。
その枠には、異様な空気が漂いモヤモヤっとした黒い液体みたいな宇宙を感じさせる。
言葉では表せない光景だった。
まさに時空へのゲートだ。
つ、遂にやったぞ!
このゲートの名前は前から決めていたabilityにしよう。
これで私を馬鹿にしてきた奴らを見返せる。
と思っていたら、音がジッジジッジッジジジッっと鳴りabilityが消え掛かっていた。
これはまずいっ!
急いで原因を探すと、循環装置とabilityの繋がっているケーブルが電圧に耐え切れず断線し掛かっていた。
くっ…無理だ。
あの断線し掛かっている所から放電していて近づくのも危ない。
触ろうもんならまる焦げになるに違いない。
ここで私のの夢は潰えるのか…
そう思った時、abilityから急に反応があった。
得体の知らない人型のモンスターが今にも消え掛かっているabilityを通ってやって来たのだ。
宇宙人…!?
「@#/&?&_#/&/#,?!?」
宇宙人らしき生物が私に向かって話しかけているが言葉が分からない。
何を言ってるんだ!?
それにお前は宇宙人なのか?
こちらの言葉が通じてるのかも分からないが質問をする。
「#/&/#/_&_&&?」
断線し掛かっている所を指差して何かを話しているみたいだがよく分からない。
その生物は途端に断線し掛かっているケーブルに向かって指から何かを発射した。
発射した物がケーブルに当たり、断線し掛かっている所に巻き付き強化されたかのように放電していた所が直り、abilityもいつでも出入り出来るようになった。
すると、その生物の腕が伸びて頭を掴まれた。
その瞬間、脳に電気が走った。
頭が震えて次第に白目を剥いて口から泡を吹く。
そして、気絶した。
…
続