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廟庭の朝香

父親(廟の管理人)が重い病気にかかり、娘が外国から台湾に帰ってきて世話をすることになった。これは彼らが癌の診断を知る前日のことだった。


「起乩」は台湾の道教儀礼「扶乩ふき」を指し、神がかり状態で神意を伝える行為です。神霊が人間の体に乗り移って託宣を下す儀式を指します。

 明け方、空がまだ明るみきらない頃、台南の「福德宮」の境内には薄い霧が立ち込めていた。ひんやりとした空気の中に、線香の煙がゆっくりと立ち上るが、そこにはかすかなタバコの香りが混ざっている。


「拝めばご加護がある、無事でいられるぞ!」


 老いた声が静かな寺社に響き渡る。宮司の李金土は背中を丸め、両手でしっかりと線香を捧げ持ち、口には吸いかけのタバコをくわえ、灰が今にも落ちそうになっている。細めた目で、敬虔な気持ちで線香を香炉にしっかりと立てる様は、ちょうどタバコの吸い殻を口元でしっかりとくわえているのと同じようだ。


 福德宮の一日の始まりは、いつもこの二つの火の点と、一つの祈りの言葉から始まる。こうして何十年も、毎日毎日、たった一人で。


 そして、こんな言葉が続く。


「土地公様、今日も信者の皆が無事でありますよう、どうかお守りください…」言葉が終わらないうちに、彼は激しく咳き込み始め、片手で慌てて口を押さえ、エビのように体を折り曲げるほど咳き込んだ。


 手のひらを広げると、目を刺すような血の筋がべっとりとついていた。彼は眉をひそめ、低くつぶやいた。「ああ、きっと悪いものに当たったんだ…」


「お父さん!」


 澄んだ女の声が背後から響いた。「またタバコ吸ってるでしょ!」李亜嬌は三歩を一歩にまとめて駆け寄り、父親の指の間からタバコをひったくるように奪い、さっと香炉の中で消した。


 海外からわざわざ自分を心配して帰ってきた娘に対して、金土に抗議する気はなかった。「珍しく帰ってきたのに、朝っぱらから神様に失礼じゃないか?」


 亜嬌は腰に手を当て、目を丸くして、いたずらっぽい表情を浮かべた。「はは、線香とタバコ、区別がつかないのはお父さんの方が神様に失礼じゃない?」


「まあ、一本ぐらい…」と言いながら、ポケットの中のタバコ箱に手を伸ばそうとしたが、また激しい咳に襲われた。今度はさらにひどく、背骨まで震わせるほどだった。


 亜嬌は急いで背中を叩いたが、手のひらに触れたのはごつごつとした骨ばかりの感触。彼女の胸は締め付けられるようになった。


 ——いつから、お父さんの背中はこんなに痩せてしまったんだろう?


「咳…本当にやめられん…」金土は息を切らしながら、手を振った。「彼氏に聞いてみたらわかるさ!」 亜嬌は白い目を向け、反射的に彼氏に「Quit it!」と言うたびに…彼が必ずあのアクションスターのミームポーズを取るのを思い浮かべた。


 金土は軽く流そうとしたが、また新たな咳の発作に襲われた。亜嬌は背中を軽く叩いたが、眉の間の皺はますます深くなっていく。


「大丈夫だよ」金土は息を整え、娘の手をぽんと叩いた。「明日また医者に行くから...」亜嬌は何も言わず、ただ静かに支える手に力を込めた。


 朝の光が次第に強まり、香炉から立ち上る煙は、まだ消えやらぬタバコの香りとともに、寺社の軒先から蒼白い空へと流れていった。


 次回に続く《病棟XVIII》

 娘が父親の診察に付き添うが、廃墟となった病院にたどり着く......

台湾出身の医者です。アニメのような小説に夢中になっています。これは最初の物語で、医学、細胞、ファンタジー異世界、そして台湾の宮廟文化が融合したとても興味深い内容です。どうぞお楽しみください!

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