「カレーうどんに花かつを」
原点に戻ろう。と思い書きました。
読み飛ばす?
第一部 ディナーが始まって終わってしまった。
ちょっと前の事。料理ぐらいできないとね。彼女は言った。
彼女は、料理シミュレーションアプリを楽しんでいました。
レシピは適当。いつもの女の味なのでおいしいかどうかは、知りません。
一生懸命に考えて仮想料理を楽しみましたが、なかなかイイネが増えないので、レシピ本を買ってきて試してみました。
初めのうちは、レシピに自分なりにアレンジを加えていましたが、イイネは一向に上がらない。
彼女は自分には料理の才能が無いのでは、と思いました。それでも工夫を諦めず、盛り付けやトッピングなどでおいしく見えるように考え続けました。
品数は増え、さながらフルコース料理のようになりましたが彼女は気が付きます。
課金しすぎだ。
食べれないのに。
今度は料理アプリに本のレシピそのままを入れてみました。
イイネがどんどん増えていく。
自分が関与しないところでの好結果に彼女は虚しくなりました。
料理ってこんなもの?
彼女はアプリをアンインストールしました。
第一部完
第二部 髪を切ったら出来る女になりました。
そうだ、美容院に行こう。彼女は転職サイトを見て思いました。
アプリにも飽きたし、気分転換に美容師さんとお話して、スッキリして理想の女になる。それに、この長い髪がそろそろ鬱陶しい。
自分はきっとこれを求めていたんだと女は思いました。
美容師さんとの会話がとても楽しく、世界が広がったような気がしました。もう少し、もう少し話ししてたい。
失敗した。
話をしたいがためだけに、髪の調整を頼み続けた結果、短くなりすぎた。
これでは陸上選手か女子プロレスラーみたいだ。
髪が減り、寂しくなったので、女は猫を飼うことにしました。もふもふは正義です。
狐いろの茶トラ柄の猫。
猫の餌代も意外と馬鹿になりません。
節約の為、彼女は自炊の割合を増やすことにしました。
女は猫にカラシと名前をつけた。カレシの話を振られたときの為の予防線。
髪を切ったため、視界が良くなった。
その為か職場でよく気がつくね。と言われた。
ちょっと、嬉しい。
失恋かと、聞かれた。
職場のおばちゃんは容赦が無い。
ヤツの出番だ。
家でカラシが待ってると。彼女は応えた。
勝手に聞き間違えてね。
働いて、自炊して、寝てを繰り返す。
とても規則正しく健全な生活。
そして、たまに、猫。
自炊のおかげで料理も上達してる。
大丈夫。ちゃんとやれてる素敵ライフ!
第二部完
第三部 忙しい現代人に贈る罠。
仕事もできるし料理も出来る。おしゃれだって負けてない。はず…
髪の長さは別として。
彼氏は…今の自分ならすぐ出来る。たぶん。…カラシがいるから、良しとする。
彼女は デキる女になったような感じがする。
でも、何か…
占いでも行ってみよう
ここね。と思ったが、違ってた。
「寂しい貴方の心に隙間を作ります」
看板にはそう書かれていた。
説教された。全部否定された。来るんじゃなかった。彼女は泣いた。
まるで、吸い寄せられるようにしてたどり着いた。
「魔法の雑貨店」
心温まる製氷機
一つになれる割りばし
心開く電子レンジ
お腹が空くどんぶり
3袋セットのレトルトカレー
冷凍うどん5食分
疲れた。今日はご飯も簡単に済まそう。
彼女はアルミの袋の切り口で指をちょっと切ってしまった。そして思わず指を口にした。ネイルが舌に当たって変な味がする。
てきとうな女が作るものは決まってる。適当に作ったのがそれだった。
テーブルの上には、カレーうどん。
そして彼女は 花かつを をそっと添える。
誰もが好きなカレーの香りと、かつお節の和のかおり。胃袋が期待してる。
彼女はテーブルの上のお茶を何気なく飲んだ。つもりだった。
これは、めんつゆだ。
扉の向こうで猫がわらう。
この味、この香り。これでもいい。
いつもの食事。それなりだけど、美味しい。
おわり