第3章:血に飢えた魚
混沌はまだすべてを永遠の闇で覆い、創造神アイテールは姿を現していない。
オリバーの巨大な蛇の体は、膨大なエネルギーの渦の中心に巻きついている。その渦は直径数千キロに及び、混沌の中に巨大な卵のようだ。周囲の混沌エネルギーを狂ったように吸い込んでいる。形のないエネルギーは渦の圧縮で徐々に液体に凝縮し、まるで混沌の海のようだ。
オリバーは深淵のような口を開け、貪欲にそのエネルギーを飲み込む。体も魂も驚くべき速さで変化している。
「攻撃力:1 → 3 → 7 → 15……」
データパネルで数字がどんどん跳ね上がるのを見て、オリバーの心は喜びに満ちる。
強くなる感覚、めっちゃ最高!
体に力がみなぎり、まるで体の隅々が歓声を上げ、跳びはねているみたいだ。
もちろん、攻撃力だけじゃない――防御力、魂力、混沌力、その他のステータスもぐんぐん上がってる!
オリバー・スターク
種族:神
神格ランク:1
属性:
・防御:20
・攻撃:15
・混沌力:25
・魂力:50
…
オリバー・スターク
種族:神
神格ランク:2
属性:
・防御:50
・攻撃:45
・混沌力:60
・魂力:100
レベル2に到達?
オリバーの心はさらに高揚する。体が天地を揺るがす変化を遂げているのがはっきりわかる。
しかも、その変身はまだ続いている!
ステータスが上がるにつれ、オリバーの体はさらに膨張する。
かつて5キロだった体は、今や800キロ――実に160倍の成長! 蛇の姿は混沌を細長い川のように伸びている。
鱗には複雑なルーンが浮かび、一つ一つが混沌エネルギーを宿しているようだ。どんなに荒々しい混沌の流れも、彼に傷一つつけられない。
「昔の俺が子蛇だったなら、今は成長期に入ったってこと?」
オリバーが力の増大に浸っていると、突然、体に激しい震えが走る。血統の奥底からの共鳴、まるで古代の力が目覚めようとしているかのようだ。
「なんだ……これ?」 オリバーは眉をひそめ、体の変化を感じ取る。
頭に一つのルーンが閃く。複雑で神秘的だ。次々とルーンが現れ、まるで何かのメッセージを伝えようとしている。
「このルーン……スキル?」 オリバーの心が動く。即座にその意味を理解する。これは新しい能力だ。
目を閉じ、意識を体に沈める。血統のエネルギーがルーンと共鳴しているのを感じる。
スキル1:隠蔽
最初のルーンの意味が頭に浮かぶ。思うだけで、体と魂のオーラが瞬時に混沌と溶け合い、静かで痕跡を残さない。姿が徐々に消え、虚空に消えたかのようになる。
他の神でも彼の存在を感知するのは難しいだろう。
スキル2:毒!
2つ目のルーンの意味に、オリバーはさらに興奮する。そりゃ、蛇なんだから毒がなくちゃ!
牙が鋭くなり、深黒の毒がその中に醸成される。それは原初の毒で、肉体だけでなく魂も腐食できる。
「俺の毒牙にかまれたら、神だってこの致命的なダメージには耐えられないぜ!」 オリバーは独りごちる。
どれだけ時間が経ったかわからないが、オリバーは成長の速度が鈍ってきたのを感じる。
一旦止まるしかない。この時点で、データパネルは最初と比べると天地がひっくり返るような変化を遂げている!
オリバー・スターク
種族:神
神格ランク:2
属性:
・防御:100
・攻撃:150
・混沌力:100
・魂力:300
スキル:捕食、隠蔽、毒
「魂力が物理的な攻撃力の2倍だって!」 オリバーはワクワクする。魂が体から離れ、混沌の中で独立して存在できるのを感じる。思うだけで、巨大な蛇の魂の幻影が空中に現れ、気高く、古代の、混沌のオーラを放つ。
オリバーは尾を振る。瞬時に混沌 motiを投げ、恐ろしい力を解き放つ。尾は破壊の鞭のように虚空を切り裂き、轟音を響かせる。静かだった混沌が彼の行動で震える。
「隠蔽!」 オリバーはスキルを発動。体と魂のオーラが瞬時に混沌に溶け込む。彼は混沌の狩人となり、いつでも致命的な一撃を繰り出せる。
明らかに、オリバーは今、ものすごい進歩を遂げた。アレックスや他の連中はどうしてるかな、と考える。
論理的に言えば、オリバーの急成長は混沌を捕食する能力のおかげ。あいつらの進歩は俺に追いつけないはず!
今また会ったら、絶対にきついお仕置きをしてやる――いや、アレックスなら殺しちゃってもいい!
オリバーがパワーアップの喜びに浸っていると、突然、心が動く。遠くから強力な神のオーラが近づいてくるのを感じる。そのオーラには敵意が混じり、彼に迫ってくる。
「なんだ……これ?」
名前:血に飢えた魚
種族:神
神格ランク:1
属性:
・防御:10
・攻撃:20
・混沌力:10
・魂力:5
スキル:不明
所持品:不明
目の前に長いデータの列が現れる。
このデータの出どころは、他でもない「混沌時代の書」だ!
この特別な書のおかげで、オリバーは他の神やモンスターのパネルを見ることができる。
ただ、スキルや所持品の欄は「不明」と表示され、データが不完全だ。
これは相手の強さやオリバーの強さ、いろんな要因に関係してるのかも。
それでも、基本属性が見れるだけでも、めっちゃ貴重な能力だ!
まるでビデオゲームみたいな感じがする。
でも今、オリバーは気を抜けない。強力な魂の感知で、もっと多くのモンスターが感知範囲に入ってきたことをすぐに見つける!
数千キロ先に、恐ろしい血に飢えた魚が現れ始める。奴らはオリバーをロックオンして、急速に近づいてくる!
その姿はピラニアみたいで、体は信じられないほどデカい。直径は少なくとも数百キロ。オリバーより小さいけど、数はめっちゃ多い――数十、ひょっとしたら百匹以上。
「この世界、マジで安全じゃないな。無限の混沌には、俺やアレックスみたいな神がゴロゴロいる」
オリバーは静かに思う。
この混沌の世界はほんとに果てしない。神の数だって、想像以上に多いのかも。
でなきゃ、今、百匹以上と遭遇するわけない。
もちろん、この神たちは群れで行動するタイプっぽい。だからこんなに大勢で現れたんだ。
そう考えると、オリバーや他の連中は神って呼ばれてるけど、混沌の世界じゃ、後の地球の普通の生き物くらいありふれてるってこと。
そして、創造神アイテールが宇宙を創ったとき、こんな神々の大半が死に絶えた。生き残った存在は、後に生まれた弱い生命に比べると圧倒的に強かったから、神として崇められたんだ。
オリバーは歴史の真相に気づいた気がする。
そして、神同士が別に仲良くしてるわけじゃないってことも。
ジャングルの動物が互いに食い合うように、この百匹のピラニアみたいな神はオリバーの匂いを嗅ぎつけて、食おうとしてる。
アレックスがクラスメイトを食ったみたいに、このピラニアもオリバーを食えば強くなれるんだろう。
弱肉強食。
それが混沌の世界!
でも、オリバーが不思議に思うのは、すべての神が互いを食って強くなれるなら、なんで俺のスキルリストに「捕食」スキルがあるんだ? 何か特別な秘密がまだ見つかってないのか?
で、今、こんなモンスターが突っ込んでくるのを見て、オリバーは全然怖くない!
混沌時代の書で、こいつらのステータスをもうチェック済み。
ただのレベル1のザコモンスター!
俺のステータスはどれも、ほぼ10倍以上だ!
この血に飢えた魚はオリバーを食おうとしてるけど、逆にオリバーがこいつらを食ってやれる!
奴らの体には大量の混沌エネルギーが詰まってる。直接食う方が、混沌からちまちまエネルギーを吸うよりずっと速い!
オリバーの巨大な体は、混沌の中をゆっくり滑る。まるで周囲の闇と一体化してるみたいだ。鱗は薄暗い光の下でかすかに輝き、動く惑星か、移り変わる山脈のよう。
血に飢えた魚の群れが近づいてくる。目には貪欲と狂気が宿り、まるでオリバーを豪華なごちそうと決めたみたいだ。
オリバーは冷静に、体を軽く丸め、突然、血に飢えた魚に向かって口を開く!
ガオッ!
けたたましい咆哮と共に、毒の奔流が噴き出す!
オリバーの体は恐ろしくデカいから、噴き出す毒は彼のサイズに比べると小さく見えるかもしれないけど、混沌の中じゃ、川のような恐ろしい流れだ!
この毒は瞬時に血に飢えた魚の群れを飲み込む!
最初、魚たちは軽蔑の表情を浮かべる。オリバーが噴いた毒を、なんか水系の攻撃だと思ったみたい。
魚だぞ、水を怖がるわけないだろ?
尾を振って、毒の中をさらに速く泳ぎ、オリバーに迫る。牙は不気味な冷たさで輝き、まるで今すぐ彼の肉を切り裂きたがってる!
でも、次の瞬間、魚たちは甲高い悲鳴を上げ、毒の中で激しくのたうち、たまらない苦痛に悶える!
すぐに、群れは完全に生命の兆候を失い、消化・吸収しやすい肉の塊に変わる!
最後、混沌に残ったのは、オリバーの巨大な体と、周囲に浮かぶ血に飢えた魚の残骸だけ。
オリバーはゆっくり口を閉じ、蛇の目に驚きの色がちらつく。「こんな簡単に勝っちゃった? 俺の毒スキル、こんなに強いんだ?」
勝利があまりにも簡単で、自分でもビックリだ。
最初はこいつらとガチンコバトルするつもりだったのに、フルパワーで一撃したら、一瞬で全滅させちゃった?
10倍以上のステータス差で、戦闘力の差がこんなにデカいのか?
でも、このピラニア、結構バカだったな。俺の強さがわからず、それでも狩ろうとしたなんて?
いや、オリバーはすぐに気づく。ピラニア神がバカすぎたんじゃなくて、混沌時代の書みたいなものがなかったからだろ。
この書のおかげで、俺はピラニアのステータスが俺の10倍弱いって簡単にわかったんだ!
それに、オリバーは人間の魂を持ってて、成熟した知性がある。
混沌で新しく生まれた神の多くは、無知で、純粋に本能で動く、ほんとの動物みたいなもんだ。
そう考えると、さっきのことは別に不思議じゃない。