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第24話

 内藤昌豊率いる小荷駄隊が持って来た馬と軍装を受け取る武田の別動隊。そこで……。


真田昌輝「内藤様。申し訳御座いません。」

内藤昌豊「如何致した?」

真田昌輝「……あの。これ私の物ではありませんが……。」

山県昌景「おい内藤!俺のも違うぞ!」

真田信綱「私のもであります。」

馬場信春「其方が間違えるとは珍しい。他人ごとにせず戒めと捉える事にする。」

内藤昌豊「1つ宜しいでしょうか?」

山県昌景「どうした?」

内藤昌豊「今、皆が気にしている物なのだが。これら全てを持って行くよう指示を出したのは……。」


 高坂昌信。


山県昌景「本当かそれは?」

内藤昌豊「ここに来て嘘つく理由なんか無い。私は最初。皆が必要としている物を準備しておった。そこに高坂がやって来て

『此度は必要ありません。こちらを彼らに持って行って下さい。』

と渡された。」

真田昌輝「えっ!これは内藤様が手配された物では?」

内藤昌豊「するわけ無いであろう。ただでさえ制限が多いいくさの場である。無駄な物は極力排除せねばならぬ。」

真田信綱「しかしどう致します。これですと……。」

内藤昌豊「あとこれも渡しておく。これを見て俺の苦労をわかってくれ。」


 受け取る一同。


山県昌景「何だ。持って来ているでは無いか。最初からこれを渡してくれれば良かったものを。」

内藤昌豊「高坂からは

『そちらは荷物になりますから、持って行かなくて結構であります。』

と言われたのだが、現地で絶対私の間違いと言われるに決まっている故。」

真田信綱「意地で運んだのでありますか?」

内藤昌豊「あぁ。その分、本来必要な物を用意する事が出来なかった。申し訳無い。」

馬場信春「因みに省いたものは……。」


 内藤の話を聞く一同。


馬場信春「山県の判断。正解だったな。」

内藤昌豊「と言いますと?」

山県昌景「さっき其方に指摘された事。反省している。反省しているのであるが、今回に関しては行って正解であった。」

内藤昌豊「うちの戦い方を考えれば、最優先では無いと見ていたのだが?」

馬場信春「あるに越した事は無いであろう。」

内藤昌豊「確かに。」

真田信綱「それで如何致しましょう?」

馬場信春「高坂が言うのであれば、何か策があっての事。内藤。何か聞いているか?」

内藤昌豊「伝言を頼まれてはいる。」

馬場信春「それを聞いてから決めようでは無いか?」


 頷く一同。高坂からの策を内藤昌豊から聞いた結果。


山県昌景「高坂の案に乗ってみるか?」

真田信綱「そうですね。ここまで来たら、高坂様に全乗りしましょう。」

馬場信春「高坂から預かった物。受け取っておく。」

内藤昌豊「では私が持って来た物は?」

山県昌景「持って行くには荷物になってしまう。ここに置いておくと痕跡を残す事になってしまう。故に申し訳ないが、本陣まで持って帰ってくれ。」

内藤昌豊「えっ!?」


 時間を進めて丑三つ時。武田勝頼別動隊が到着した場所。そこは極楽寺。


 少し時間を戻して。


内藤昌豊「高坂の策を申し上げます。」


 更に戻って武田勝頼本陣。


高坂昌信「馬場様に伝えていただきたい事があります。」

内藤昌豊「こんな余分な荷物を押し付けて来るのには理由があるのだろう?逆に無かったら怒るぞ。」

高坂昌信「はい。此度のいくさで我らが勝利を収めるためには織田を倒さなければなりません。」

内藤昌豊「しかし正面からでは難しい。」

高坂昌信「はい。」

内藤昌豊「故に今、酒井を倒しに向かっている馬場山県の働きが重要となって来る?」

高坂昌信「その通りであります。」

内藤昌豊「で。首尾よく馬場と私が合流出来た後の事を伝えたいのだな?」

高坂昌信「はい。」

内藤昌豊「教えてくれ。」

高坂昌信「はい。まず織田軍についてであります。信長のこれまでのいくさ。勝ったもの負けたものそれぞれを調べました所、1つの特徴を掴む事が出来ました。それは……。」


 織田信長が動いた所に他の武将がついて行く。


高坂昌信「であります。今川義元を斃した時もそうでありましたし、浅井長政の裏切りを察知した後もそうでありました。姉川の時もそうでありましたし、高天神の時も然りでありました。信長が進めば他の将も後を追い掛けて行きますし、逃げる時も同様であります。信長が踏み留まれば家臣も踏ん張りますし、いくさを回避する時もその動きに応じます。つまり織田信長を亡き者にする事が出来れば、自動的に織田軍は瓦解の道を歩む事になります。

 今回、酒井忠次の奇襲部隊を倒すために馬場様他主力部隊を進ませているのはそのためであります。目的は酒井ではありません。最低でも信長を逃走させるためであります。その信長は今……。」


 織田本隊から離れた極楽山に対陣中。


内藤昌豊「そこを狙えと?」

高坂昌信「はい。今、当地に居るものの中で、彼の地について詳しいのは2人。酒井と同行している奥平貞能と山県昌景であります。」

内藤昌豊「となると酒井とのいくさの時に、まず仕留めなければならないのは奥平?」

高坂昌信「はい。それは絶対であります。もし逃がしてしまったのでありましたら、戻って来るように伝えて下さい。」

内藤昌豊「奥平を仕留める事が出来たら?」

高坂昌信「信長を含む織田、徳川全ての者に気付かれぬよう極楽寺へ進み、信長の陣所を取り囲んで下さい。」

内藤昌豊「わかった。それでさっきから気になっているのだけれども……。」

高坂昌信「ここからは連絡が出来なくなります。疑問点ありましたら何なりと。」

内藤昌豊「お前から渡されたこれ何だけど……。」


 異変に気付いた極楽寺。


「何の騒ぎだ!?」

「周りが囲まれています。」

「武田の奇襲か?」

「いえ。」


 極楽寺を囲む集団が差していた旗に記された家紋は丸の内に三引両。


内藤昌豊「佐久間の旗だよな。これ?」


 織田信長重臣筆頭。佐久間信盛の旗印。


高坂昌信「はい。」

内藤昌豊「何故そのような物を?持って行くべきは酒井と戦うべく進んでいる馬場山県。そして真田の旗指物を持って行くべきでは?」

高坂昌信「これには理由がありまして。」

内藤昌豊「どのような理由だ?持って行く私を納得させる事が出来なければ断るぞ。」

高坂昌信「先程私は信長を仕留めるもしくは逃走させる事が必要と申しました。」

内藤昌豊「聞いておる。」

高坂昌信「しかし信長を逃がす事は最善ではありませんし、次善でもありません。むしろ悪手であります。」

内藤昌豊「次善でも無い?」

高坂昌信「はい。これまでの信長を見ればわかります。

 1つは美濃攻略。長年苦戦を強いられていた信長が目を付けたのが近江の浅井長政。彼に妹を嫁がせる事により、浅井と境を接する西美濃の安藤に稲葉。そして氏家の有力者に圧力を掛け、織田陣営に引き入れる事により稲葉山の斎藤は孤立。美濃攻略に成功しています。

 2つ目は朝倉浅井とのいくさにおいてであります。朝倉と浅井の抵抗の対し信長は

『天下は朝倉義景様の物です。』

と言った屈辱的な文言で以て和睦した信長はその後どうしたでしょうか?美濃尾張に引き籠ったでしょうか?違います。朝倉浅井を滅亡させています。その布石として信長が行った事があります。そうです。彼らが抵抗の拠点とした比叡山の焼討であります。これにより信長は京までの安全な道の確保並びに朝倉の進出拠点を潰す事に成功しています。

 そして最後3つ目が長島であります。幾度となく苦汁を舐めさせられた信長は大船を長島に派遣。海上封鎖する事により、各島々を各個撃破。長島の一向宗は壊滅に追いやられてしまいました。

 これら全ての発案者は織田信長。その人であります。」

内藤昌豊「つまりこのいくさで信長を仕留めない事には、更なる対策を講じて我らに襲い掛かって来る事になる?」

高坂昌信「その通りであります。」

内藤昌豊「そこまではわかった。」

高坂昌信「ありがとうございます。」

内藤昌豊「ただそのために何で佐久間の旗を持って行かなければならないのだ?それを教えてくれ。」

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