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九大文藝部・2023年度新入生号・タイトルコール

百四十字小説群

作者: 秋月渚
掲載日:2024/01/30

この「百四十字小説群」は、以前に文芸部のツイッターに掲載されていたものの中から私の作品をピックアップし、作成時に付けていたタイトルを付与してまとめたものでございます。

また三作品ごとにそれらを繋げるテーマを設定し、そのテーマに合わせた新規の百四十字小説を追加しております。また、テーマはそれぞれ四つの作品の終わりに付け加えております。

それではどうぞ、ごゆるりと。




「ゆきのした」


今年もこの季節がやって来た。しぃんとした「無」ともいうべき音の中で、私は一人思索にふける。いよいよだ、と体が叫ぶのを、まだまだ、と押しとどめる。

まだかまだかと逸る心を押さえつけ、じりじりと時が過ぎるのを待つ。

嗚呼、なんともどかしい。

だが、この時間こそが私を美しくするのだ。



「煌々として」


それはキラキラと光っているの。私が見えないように。瞼を閉じればその裏に焼き付いてしまうぐらい、それは欲張りなの。

でもきっと大丈夫。私がその隣にいることはないけれど、その存在を私は一身に受け止めて感じている。

私を輝かせてくれる、その光に今日も私は焼かれている。

狂えるほど、眩く。



「今年も村の桜が綺麗に咲いたらしい」


「今年も綺麗に咲いてくれたな」

「今年も肥料が良かったんだなァ」

「しかし肥料用のを育てる家も少なくなっちまった。来年はどうしたもんか」

「この辺りも過疎化が進んできちまったからな。どうしても人手が足りないもんだから、しょうがねぇや」

「しかしこの景色は守りたいもんだ」

「んだなぁ」



「これにて、一杯」


杯を傾ける。熱いものが喉を滑り、腹へと落ちていくのを感じる。目の前には、深々と降る雪、池に映る月、そしてひらひらと散る桜。過去の人はこんな景色を見たことがあったのだろうか。あったのかもしれない。

俺はゴーグルを外し、外を見る。氷河期を迎えた世界に、雪はあれど月も花も今や見えない。


テーマ「雪月花」



「これがあれば!」


どうやら俺にも運が巡ってきたらしい!

たまたま崖から落っこちたときにはまずいと思ったが、拾った枯れ枝のようなもの、こいつは魔法の杖だったのか!

俺の願いが何でも叶うってことは俺がここから脱出することもできるってことだよな!

やったぜ、これで俺は間違いなく億万長者になれるっても……。



「どうやら道に迷ったらしい」


困ったことに、どうやら道を間違えてしまったらしい。同行人はやっぱりあの道を左だったのだと言っているが、そこを右に行けと言ったのは彼だ。定期的に電灯が見えるので運転に支障はないが、やけに電灯の色が青いのは気のせいだろうか……。それに電灯はあんなに低いところにあるものだろうか……?



「気になるあの子」


最近夢を見る。夢の中で僕はいつも誰かを追いかけている。走れ走れと急かす心に従い、僕は背中も見えない誰かを追いかける。

夕日が沈むぞ、走れ走れ。あの場所まで、走れ走れ。まだ間に合うぞ、走れ走れ。

目が覚めるといつも汗だくで、心臓がバクバク言っている。よかった、今日も逃げきれた。あれ?



「寝るなら君の隣がいい」


今日も彼女はうなされている。どうも何日にもわたって悪夢を見ているらしい。段々とやつれる彼女の姿が見るに堪えなくて、僕は彼女の隣で眠ることにした。その夜、僕は夢の中で彼女を困らせるソレをぺろりとたいらげた。

おやすみ、と彼女はバクのぬいぐるみに話しかける。

君の隣は、寝心地がいいの。


テーマ「怪奇譚」



「箱の中の……」


俺がここに閉じ込められて、どのくらい経っただろうか。目の前の扉が開く気配はなく、隣に置かれた装置だけがぶぅーーんと低い音を出している。定期的にカチッという音がするが、これはいったい何なのだろう。

カチッ。

六回目の音が鳴った瞬間、目の前の扉がゆっくりと開いて……。

「死んでますね」



「愛情表現は過剰なくらいでちょうどいい」


研究の結果、特定の間隔で高圧電流を流すと人間の姿を粘性のある液体にそのまま写し取ることができると判明した!

しかしこれはここだけの話だが、僕の隣にいる彼女が昨日僕といたはずの時間に他の男と会っていたらしい。彼女の本物の愛はどこにあるのだろう?

そもそも僕の隣の彼女は本物なのか……?



「よーい、どん」


彼が口を開くのを、我々は黙って待っていた。彼はこの場の全てを見ている。既に彼の頭の中には「これから」が緻密に描き出されているのだ。それが口から出力されるのを今か今かと待ち構える我々の姿は、滑稽かもしれぬ。しかし我々は必死だ。ここしかない、その思いをもっている。そして彼の口が……。



「ミニチュア・スター」


もしもこの世界がミニチュアだったら、僕はきっと大スターになれるはずなんだ。だって僕はこんなにブロック遊びが得意なんだから。僕が皆の望むものをなんでも作ってあげるんだ。だからほら、遠慮してないで皆一緒になって遊ぼうよ。あれ、急に空が暗く……。

「もう片付けないと、夕ご飯の時間だ!」


テーマ「思考実験」



「食べすぎには注意したい」


午後五時。夕食には少し早い時間。今日も私はこの席で窓の外を見る。何も頼まないのも申し訳なくていつもケーキセットを頼んじゃう。でも食べているとちょうど……あ。

午後五時半。もう少しで夕食の時間。歩きつつ僕はそっとカフェを見る。ケーキセットを食べている彼女。名前は知らないけど……あ。



「近くて遠くて、触れられない」


渡り廊下を一人で歩いていると自然と聞こえてくる、吹奏楽部の練習の音。何の楽器なのかは知識がないからわからないけれど、綺麗な音色をしているのに心が救われていた。あれ、いつもは一人で演奏しているのに、今日は二重になって聞こえてくる。ああ、そうなのか。君はもう、独りじゃないんだね。



「もう友達には戻れないとしても」


この世界にはセーブもロードもリセットもない。だから「今のなし!」なんて通用しないんだってことぐらい分かってる。でもどうしてもって思っちゃうのは、それだけ私があなたのことをだいすきだって想ってた証拠だと思うんだ。だからごめん、せめてもう一度、リトライだけはさせてくれたら、嬉しいな。



「この恋愛は用量を守ってご使用ください」


恋愛サプリ。恋愛が苦手な子でも簡単に恋愛ができるようになるって噂のサプリ。既にその子もあの子もどの子も利用してるっていうそれを、私は三錠手に取った。どうかあの人と付き合えますように。そんな願いと一緒に飲み干した薬はひどく甘ったるくて、私はすぐに吐き出す。ああ、今回もダメだった。


テーマ「学生恋愛」


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