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第2話 覚醒者協会

「…………」


 俺は無言で目の前にある、懐かしい一軒の何処にでもありそうな家を見つめていた。

 そして記憶にある琴葉の家の玄関には『入居募集』と言う張り紙が貼ってあった。


 そうか……もう此処には住んでいないのか。


 俺は巨神獣空間の中で数億年も閉じ込められていた。

 そのため此方の世界では果たしてどれだけの時間が経ったのか、全く検討もつかない。

 スマホはあまりの時刻ズレに修正出来なかったのか、電源すらつかなくなった。


「……探してみるか」


 俺は若干の名残惜しさを感じながら、ゆっくりとその場を後にした。








「―――まさか15年も経っていたとはな。通りで所々見たことないわけだ」


 数億年前、EX級巨神獣飲み込まれた砂浜で腰を下ろした俺は、憂鬱と言う感情を全面に出してため息を吐く。

 

 と言うか経った15年で変わりすぎでは?

 どうして公園に入るのにそれ専用のカードみたいなのが必要なんだよ。

 お金は1円すら持っていないからカードは作れないし。


 俺が居なかった15年の内に、様々な変化が起きていた。

 まず、15年前までは俺が出会った巨神獣も含めずに1体しか確認されていなかったEX級が、現時点では世界中に7体確認されているらしい。

 日本に1体、アメリカに2体、ロシアに1体、オーストラリアに1体、イギリスに1体、太平洋の真ん中辺りに1体。

 俺が飲み込まれた巨神獣が見つかっているかは未だ不明だが。

 

 そして年々巨神獣の発生件数は増加しているらしく、所々巨神獣に奪われた土地もあるのだとか。

 そんな巨神獣対策として、公園に結界を張ることになったらしい。

 今ではC級以下の巨神獣であれば公園の結界を壊せないらしく、保護者に人気なんだって。


 まぁ子供の安全を考えると結界が張ってあった方が便利だよな。


 俺は勿論その他にも訊いてみたが―――1番の衝撃は琴葉が何処かのクラン? みたいな所のSS級覚醒者になっていたことだ。

 その話を聞いた時は腰が抜けるかと思ったが、15年も経てばそれくらいまで行っていてもおかしくないかと思い直した。

 初期ステータスが俺とは違って全て「B」とか「A」だったので、才能があったのだろう。

 

 俺がSS級のステータスを手に入れるのに何千年と掛かったが、やはり才能と言うのは末恐ろしい。


 だが……どうやって琴葉に会おうか。

 今は人気者だろうからおいそれと会うことは出来なさそうだし。

 それに今の俺は完全に無一文。

 

「前途多難とはまさにこう言うことだな」


 覚醒者として一応登録しているが、15年も何もしていなければ強制退会されているかもしれない。

 折角強くなったのにな。


 俺がぼーっと海を眺めていると、前方十数キロメートル辺りに体長100メートルあるか無いかの鳥型巨神獣が夕焼けを隠す様に此方を見ていた。

 これでは綺麗な夕陽が見えない。


「邪魔」


 俺は近くにあった拳大の石を座ったまま軽く投擲。


 シュ———パァン!


 まるで花火が上がる様な音と共に、巨神獣の頭が吹き飛ぶ。

 あまりにも呆気なくその巨体はゆっくりと海に落ちていく———前に俺はその巨体を片手で掴む。

 今の俺なら十数キロ程度なら一瞬で移動できるし、鳥型巨神獣は体長に比べて軽く、数トンから十数トンしかないので余裕で持てる。


「B級か。15年経った今ではどうか知らないが」


 だが金に全くならないと言うわけでもないだろう。

 仮に一般人がこの巨神獣を倒すには、核爆弾が1発は必要なんだからな。


 俺は巨神獣を肩に担ぐと、覚醒者協会支部があるであろう町へと向かった。


 

 やはり15年前とは違う所が多い。

 

 俺は街を見てそう感じた。

 街は大きくて半円状の半透明な結界に守られており、その中で繁栄していた。

 

「支部は何処だ?」


 俺は巨神獣を担いだまま辺りに視線を巡らせる。

 正直、この巨神獣がデカ過ぎてバランスが取りにくいので、早いところ換金を済ませたいのだが……。


「これは、難しそうだ」


 俺の周りに群がり、写真や動画を撮っている者達や、ひそひそと何かを話している者達が多数。

 確かに俺も街の入り口付近で巨神獣担いでいる奴が居たら写真を撮っていただろうし、全て俺が悪いので別に撮るなとも言わない。


 逆に撮って拡散してくれるとありがたいまである。

 もしかしたら琴葉が俺の写真を見て気付いてくれるかもしれないからな。

 

 そんな呑気なことを考えていると、人混みを掻き分けて複数人の武器を所持し、何か未来のバトルスーツみたいな物を着ている者達が現れた。

 何人かは一般人が俺に近づかない様にバリケードの役割をしている。


 そんな中、バトルスーツを着た、完全に近接系異能を持っていそうなムキムキの男が近づいて来た。

 

「そこの君! その巨神獣はどうしたんだい?」

「殺した。夕陽を眺めるのに邪魔だった」

「お、おお? こいつはそんな簡単に倒せる奴では……」

「だが頭を吹き飛ばせば死んだぞ?」


 あの空間の中では頭を吹き飛ばした程度では死なない様な奴もいたので、それに比べれば全然狩りやすかった。

 異能を使うまでもなかったし。


「と、取り敢えず、見た感じまだ若い様だし協会支部まで移動しようか。それでいいかい?」

「ああ。丁度コイツを換金したかったからな」


 こうして俺はムキムキ覚醒者に連れられて協会支部に行く宛が出来た。

 

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