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理想を直視することなかれ
理想には触れることができない。
それゆえに理想である。
理想と現実――――この二つの距離がゼロになることはない。
現実の自分が、常に理想を見続けるからである。
もしも人が理想を手に入れるならば、それを直視してはならない。
秘めたる願望として、自分でも覚えのないうちにそれを成就するべきである。
重要なのは、想像力。
人間の、脳の力。
そして無意識だ。
俺の考えでは、それらが上手く作用することで、理想的存在を得ることができる。
現実を理想へと変革することができる。
だが今のところ、誰もこの話にまともに取り合おうとはしない。
愚かの極みである。
しかし、いつか必ず俺の考えが正しいと証明して見せよう。
俺の理論は、決して間違っていない。
ただ、今のところまだ、鍵となる存在と出会っていないだけなのだ。
(中略)
俺はついに、理想への鍵を見つけた。
そして、あの少女と出会った。
少女は現実世界の生まれではなく、まさに空想世界の産物であった。