決着 万物の勇者VS剣の勇者
その戦いが始まって既に2時間。まだ互いのGPは半分すら削っていない。まあラグナロクなんぞ本来は年単位でやるものだから僅か2時間で3割も消えていること自体が珍しいのだが常識知らずにはそんな神々の常識すら非常識になる。互いに死力を尽くすがそんな大きな戦乱が起きていない現代ではどちらかが一方的に成長するなんて今ではありえない。
ただ互いに切り札は使っていない。というか切り札を出すタイミングがない。そのレベルのシビアさなのだ。神をも殺す俺と神へと昇る一也。
そんな互いを認めないという意思のもとに振るわれる暴力が決闘場を支配する。一打一打が弱者を灰塵に帰す最恐の最高峰の殺し合い。これはいくらテンスの神子でも1時間と持たず終わる。半神にギリギリで届かなかった所以である。まあ下手したら従属神くらいなら余波で復活すら許されないだろう。セーフティー機構を外した彼らはシステムが作り出した仮初の法則をグルカルトの法則へと書き換えた。まあ現時点のレベルギャップに達してそのステータスを限界まで酷使できるこの二人にそんな枷は世紀の大泥棒に対して中世の鍵ていどのものだ。ただこの二人の場合、物理で破壊という選択になろうだろう。ブレイクや錬成と言った障害を無くす亮也と歯止め部分をピンポイントで切断する一哉。神の力は例え電脳世界であろうと効果するということが確かめられた。
長い。
俺はふとそう感じた。一般人の感覚からすれば神速なのだろうが長く感じた。クロックアップを持ち入らずにだ。ようは至ってしまったのだろうか。中級神へと。今までの能力と比べて確実に壁をもう一段超えた。
「飛」
僅か一字で唱えたルーンが飛翔魔法を形成する。それに続けて爆で爆裂、震で轟音爆破、矢で多種機械矢と通常より多くの魔力を消費して手数を莫大に増やす。
「メタトロン 憑依」
槍が出現し虚空戦争で培った知識を憑依させる。かの魔境で得たのは二度目の神殺し。その切り札として拾式魂装。今回は全て見せる必要はない。神の杖も必要ない。槍で戦う場合に必要なのは間合い。しかし短槍仕様で具現化したメタトロンと一哉の二本の剣との間合いは同じである。
「パルチザン!」
俺の斬撃を置いていた斬撃で無効化する一哉ただその選択は間違っている。
「還元魔素爆破」
それに感応した全ての斬撃がラーアを襲う。斬撃を利用した爆撃を利用して衝撃を魔力へと魔力を霊力へと変換する。
「変換 薙刀 万物模倣 風の戦巫女 流転の聖女」
桜井愛子の力を全身に迸らせる。風の神と練金神・創造神の寵愛を賜った彼女の力に頼る。桜井家に伝わる認識できない相手を殺す一合の攻撃。
「桜井流槍術」
風を司る神社の秘伝。借りるぞ上級神。
「乱散桜花」
その心臓を貫く。パルチザンが擬似神核を破壊する。GPを削り切るその急所を破壊したメタトロンが消える。具現限界みたいだな。ただ
You Win!!
と視界の片隅で大きく輝いていた。




