万物の勇者VS剣の勇者
そして土曜日。12時50分。AWOの始まりの街の南通り。
そこは今まで何も存在しない場所だったがつい50分前のアップデートで追加されたのは決闘場。俺はそこの控え室に通されていた。
そこには恋歌の魔導騎士と自由騎士に魔術・銃の勇者それから地の妖精女王などがいる。
「・・・多分だが今から起きることはAWOが大きく変わる・・・。アイツが確実にこの世界の法を破るはずだ」
だからこそデスアルテマという障壁を用意したはずだ。あれはグルカルトの防衛システムだ。全てが最大出力ではないとはいえかの短剣で殺せなかったのだ。
「それでもどうかこの世界に留まり続けて欲しい」
-剣の勇者・・・剣神の神意を俺がわかるその時まで。
それだけを言い残して俺はフィールドに向かう。
「久しぶりだな亮哉」
すでに完全装備に身を包んだ一也が居た。
「何が久し振りだ。お前俺だから良いものを普通なら訴訟ものだぞ」
「ふふっお前なら受けるはずだ。何しろ恋歌と自由に何かしらの被害が出ることを嫌うはずだ」
正しい。俺のルールブレイクの目的はあの迷宮の50層を攻略すること。そのためにレイドを組めるように努力している。そしてもう十分なほどにピースは揃った。だからこそより早い攻略が必要だ。すでに全員分の装備は用意したしポーションなどの回復薬も十二分に準備した。そこで彼らに何かが起こったら困るからだ。
「さてそろそろ頃合いだね」
「・・・」
「君がエーテルという概念を創造したように僕も自分自身の信念のためにそれを行う」
「世界改革の魔弾か」
概念を創造するというのは神の領域のことだ。神の如く振る舞うことができるGMは魔弾そのものだろう。
「隠し刄の君が言うと実感があるね・・・始めようか」
ラーアの雰囲気が変化する。斬殺勇者と呼ばれたあの頃のように。
「皆さんGMのラーアです。この度はこの決闘場のオープンイベントにご参加頂きありがたい所存です」
一也がそう喋り出す。
「この決闘場はとある制度の導入のために作られました」
なるほど。
「その制度はランキング。純粋なプレイヤースキルのみで戦う決闘とその順位です」
なるほど。ステータス値を固定し完全にそれを引き出させようとするつもりなのだろう。諸刃の剣だが案としては悪くない。
「そのエキシュビション・マッチとして我々が把握している限りの最強プレイヤー・リョーをこの場に呼びました」
さあ正念場だ。どう出る?
「ところで話は変わりますが皆さん彼をチートとかズルだとか寄生だとかいちゃもんをつけてくるようですが・・・彼を除く上位陣10%以外はどんだけ束になっても敵いませんよ?」
・・・こいつやりやがる。
というかブーイングとか凄いあるけど?事実ですけど。
「魔導女帝に銃聖。混沌の聖女に流転の巫女さらには魔法師そして流星剣。彼らは超一流のプレイヤーですがそれは人間として限界まで極めた能力です」
わ〜おいつの間にか人外扱いされた。・・・精霊ですけど。
「ですがリョーはちょっとした手段で人の出力できる力の限界を超えています」
万物模倣
かの能力は神相手であろうと関係ないチート。それによりありとあらゆる力を引き出せるようになっている。
「まだ分からないようですね・・・無理もないですけど。まあ細かいことは全て感想戦で解説しましょう」
そう言いながら二本の剣を抜き放つ。
それを見て俺はグルカルト式の決闘の開始位置まで下がりデニュニルを取り出す。そして闇からグロウが出現する。
「準備は良いかい?」
「無論だ」
『エキシュビション・マッチ 開始5秒前 4 3 2 1 バトルスタート』
そのアナウンスと同時に俺は右回りに一也は左に飛ぶ。
「--- アクア・ソード」
「霧散しけり」
水の魔力が形成する前に無効化して
「いけ炎龍」
火のマナを流し炎龍を放出する。
アクティベート 精霊王
「--海神剣術 十乃型」
「霊力充填 模倣海神剣術 十乃型」
俺はグロウを一也は聖魔剣ダヴルセブンスを縦に構える。
「「津波割」」
一気に近寄り互いに剣を打ち付ける。同じ出力の技であるがために鍔迫り合いみたいになる。グロウに鍔なんてないけど。
「砲撃用意 撃て」
炎龍が後ろからブレスを放つ。
「チッ -光の障壁」
後ろに刹那の間だが意識を向けた瞬間に魔術を起動する。
「《虚空に叫べ》」
黒魔 エコー・ブロウ その擬似的音響弾がフィールドを揺らす。そしてそのままデニュニルを打ち付ける。
「纏え霊装」
霊力を具現化させて宙に浮かぶ。高次元戦闘スタイルにしつつ一也の出方を伺う。
「この序盤でそれね・・・じゃあこっちも本気出させてもらいますか」
体を一捻りすると10本の光が宙を舞う。
「なら パラ・テンスの神器」
その光がグロウを包む。そして
「英雄模倣 黒の剣士 閃光 愚者 星 戦車 隠者 剣姫 勇者 猛者 剣聖 白銀の聖騎士 水静の魔女」
最後に声に出さずに
テンスの神子
神殺しに神の子供が挑むのは常だろう。




