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槍の勇者と風の戦巫女 2

あれから一分。

 打ち合いが続くも両者とも決定打を取れていない。そしてそんな状況で動いたのは愛子だ。

 小手を打つと見せかけてそのまま下に一気に振り下ろして脛を狙う。最少の動きで僅かに道筋を変えた薙刀はその一点を正確に払おうとする。

「決まった!!」

 小さく雫がガッツポーズを取るも俺はそうは感じない。何せ勇者の理不尽さを本人で体験しているのだ。それに格上相手の独特の疲労感からかいまいちその一撃は鋭く感じない。

 それを結菜も察したらしく剣道で使われる巻き技を使いほんの刹那の間だが愛子の薙刀の制御を奪う。そして一気に面を狙う。そのタイミングで何故か俺は風を感じる。どっちのだ・・・いや何の風だ?そう考えていると愛子がふと左足を前に出して地面を強く蹴る。そしてそのまま穂先を結菜の右面に狙いを済まし構える。着地と同時にマナの活性を感じる。身体強化だ。その力を行使して攻め出る愛子。だがそれは相手が悪かった。

「胴ォ!!」

 彼女の勇ましい声が響き三人の審判の旗が一斉に上がる。




「二本目」

 桜井さんはマナによる身体強化を使える?いやなら何故任意で使えるの?

 答えは分かっている。亮哉だ。神殺しの際に魔法や魔術に闘気法に聖気術など自分が使える術を最大限効率化させたモノを利用していた。そしてそれに安全マージンを取り汎用化させたのを配布した一つ魔力による身体強化。ならその魔力を拡散させれば良い。


(錬魔)



「錬魔?何で今?」

「錬魔?」

 そう言えば錬魔を使う相手も居ないし恋歌相手には見せるのが早いと思って教えていなかったな。付与魔法や強化魔法には相性が良い。

「魔力を拡散させる物理攻勢の魔闘法。簡単に言うと身体強化の魔法や武器に一時付与したエンチャントを拡散させて無力化する。という手合いのもの」

「でも愛子のはマナにより身体強化でしょ?生命賦活術に似ているなとは思うけど」

「反動も無い事はないし何せ常時マナを放出する事になる身体強化では拡散なんて関係無い」

 簡単に言うとヘリウムガスを常時吸引しながらしゃべるようなモノ。何か違う気がするけどそれ以上の説明が分からない。これは俺が知っている中でも珍しく感覚でしか表現できないのだ。多分マナや魔力を操るからだろう。卓越した制御力の上で何とかなっている程度のモノだ。



「ハァツ!」

「うっ!」

 重い。去年もそう感じていた。というか何で去年は勝てたのだろう。私の中でその疑問が頭を回る。基本的に亮哉さんに教えて貰った棒術で攻撃を逸らして隙を作ろうとするも開かない。

「セイッ!!」

「ッ!!」

 桜井流刀術 枯葉蝶

 ゆらゆらと刃を揺らして葉を枯らす蝶の如く刃を振るう。


 が

「甘いっ」

 全て受け流される。



「結菜・・・まさか視ているのか?」

 今の動きは確実に視ていないと出来ない。というか視てないなら何でそう動かした?って感じる動きだ。

「視ている?」

「ああ俺やさくらはマナや魔力を可視化出来るんだけど・・・・結菜もそれが出来ているのだろう」

「それってAWOでも?」

「もちろん。というか視て無いと魔法を剣の中に封じたり繋げたりは出来ないし」

「それってチート?」

「いやユニーク・・・・不味いな」

 こうも会話している内に結菜は攻め立てる。仕方ない。



(愛子聞こえるか?)


そんな幻聴が聞こえたような気がした。

 それほどまでに疲れているのだろうか?でも私の好きなあの人の前で負けるわけには居ない。

(冷静になれ 俺が教えた身体強化は結菜・・・目の前の「テンスの神子」「槍の勇者」には効かない)

 えっ・・・何それ?動揺するもそれを顔に出さずに突きだされる薙刀を逸らし距離を取る。

(最後に・・・別に薙刀の技だけを使えという縛りは無いはずだ・・・健闘を祈る)

 その一方な通告を受けて私は身体強化を切る。変わりに霊的な視界を鋭くする。


 私は風。戦を司る巫女。




「!」

 何が・・・・身体強化が切られた瞬間に移動速度が極端に上昇した桜井さんの動きはまるで風に祝福されているみたいだった。それは私の振るう薙刀の筋を予測するかのように的確に攻撃を防いでいた。

 そしてその異様なまでに防御に徹するのを見るのは始めてではない。

(亮哉?)

 万物とは打ち合うな。奴だけには奥の手など出し惜しみをするな

 それが私の尋問した敵対集団から聞いた逸話だ。そして亮哉がその技をほんの僅かでも見せたならこの桜井愛子という少女は異能者社会でも上位に食い込んでくる可能性を秘めているだろう。いや確実だ。片倉亮哉と言うバックがある以上その気になれば私たちテンスの神子レベルは余裕。何せ今は亮哉の環境整備で地球の乱れていたレイラインやマナゾーンは回復しつつあるが2度以上は滅びている世界である地球だ。



 今ので5割盗み終わったけど・・・時間がない。切ろう。

薙刀を竹刀のように構える。大きく左側に回し突きを放つ薙刀を柄で叩き落とす。

「面!!」

 3人同時に旗が揚がる風がする。それと同時にブザーが鳴る風も。



「追い付いた!!」

「だな。にしても・・・耐えられるのか?」

 あんな莫大な霊力に?




「延長戦 始めっ!!」


 だが俺の心配も杞憂に終わった。

「突き!!」


 風の巫女の最速の一打が槍の勇者の喉を穿ったのだ。

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