決勝戦 万物の勇者VS銃の勇者
『さてさていよいよソロ部門決勝戦。実況は私小春がそして解説は』
『私たち恋歌の魔道騎士と』
『チェルンでお送りいたします。』
「久しぶりですね・・・片倉亮哉」
「だな、黒岩巧。」
試合前の僅かな時間。この間はフィールドの声が残らないのは両者知っているので本名をぶちかます。
「虚空戦争では精剣士でしたっけ?」
「・・・不本意だがな。」
精霊王の瞳が見つけたか細き精霊・・・として破棄されたはずの世界最高峰のAIアイリを見つけた事によるものだし。そこで二度目の神殺しを体験した訳だしな。
システムにバックアップされていただけだが。
「でしょうね。精霊王」
「銃士何が言いたい?」
「いえ・・・・。漸くのようですね?」
「気付いたか?」
まぁ良くも悪くもアレだけ暴走すれば気付かれるか。
全ての合致。
これが俺の体に起こった現象。そしてようやく・・・数年越しに世界の挟間さえも超えて辿り着いた壁。
「来い、エグゾハント AAO」
「来たれ α Ω」
4つの銃が具現する。
『・・・えっ・・・。』
『何で?』
『今更・・・。』
『嘘でしょ・・・。』
解説席のチェルン以外は皆固まっていた。
当然だ。完全魔法剣士型のリョーが飛び道具を使うのだから。
だが例外も居た。彼のことを此処の中で一番良く知っているのは彼女だろう。・・・・戦闘能力でだが。
『ハハハハッッッ。』
『チェルンさん大丈夫ですか?』
謎の高笑いを始めたチェルンを心配する皆。
『リョーは複雑な戦闘こそ力を発揮する。・・・そして中距離戦が一番力を発揮する。・・・見ている通りに近接戦でも強いけどね。』
そこにはガンカタで今までと全く違う戦闘をこなしているリョーと顔色が悪いクロノ。
「「―――零距離射撃」」
俺たちは互いの体に銃口を突き付け引き金を引く。それにより互いにベクトル操作の魔法を使う。
「「ペネレイト」」
それと同時にもう片方の銃で肉体直撃の弾丸を放つ。再びベクトル操作の魔法を使う。
「衝蹴」
わずかに魔力を多く込めた俺のベクトル魔法の発動速度は早く構築を完了しその刹那の時間に俺は蹴りを入れる。続けざまに発砲。
「貫け、徹功弾」
クロノのその言葉と共に88mm弾が放たれる。至近距離から放たれたその弾丸は避ける事相殺する事は不可能だが
「逆転したれ 運動よ」
反運動の魔術を行使しその弾丸をクロノの方へ。
「嵐求める翻風を 彼方の帰りに 吹き荒れろ」
風の魔術を紡ぎ動きを牽制。そのまま3連続で発砲。
「ヒートランス」
「アイスウォール」
銃口を向け弾丸に込めた魔法を放ってくるクロノ。俺は一瞬だけ存在認識の眼を解放。
着弾予想地点に氷の壁を出現させる。すると氷の壁が爆ぜる。
「―――念動」
まるで予測していたかのようにクロノが撒き散った氷片を俺の方へ飛ばして来る。
―――今。
「―――跳弾」
俺の放つ弾丸が氷片に当たるたびに撥ね球筋が予測しづらくなる。
「神の御手よ 確弾せよ」
二つの言葉に切り分けられた鍵言葉。それは神銃 エグゾハントの能力の一つ。
確実に当たる魔弾。
故に避けることをせずに俺は魔力・闘気・聖気を体内に循環させる。
そして着弾。その魔弾は俺にダメージを与えることなく煙となる。・・・仕舞った。催涙弾か。
「吹き飛べ」
その魔術とともに俺は弾丸の一つに魔法を付与する。そして太腿のホルスターに仕舞う。
そして次々に格闘技を繰り出す。魔力によって覆われた体は弾丸の勢いを殺し闘気によって強化された体は弾丸を跳ね返し聖気によりHPの自動継続回復を発動する。
「行くぜ 神殺し儀改 レイオブイクスティアソード」
ゴゴゴゴッッッ。
周囲に黒い雲が出現する。そして豪雨を呼びリョーに向かい雷が落ちる。その後リョーの周囲が暗くなる。
そして吹き荒れる過剰な魔力・マナ・闘気・聖気・神の理。それら全てが周囲の黒き煙や雲を吹き飛ばす。その中心に居るリョーの手には先程まで使っていた銃はなくブロードソードを両手持ちしており右眼に六亡星が左目には五ツ星が浮んでいる。
限定開眼。
封じていたスキルの一部を解放したリョーはその剣の扱いを思い起こしていた。
格上殺しの・・・・神と言う圧倒的上位種族を殺す為に緻密に計算しつくされた戦術の為に改変した・・・否、生み出された魔術。
魔術とは攻撃系の黒魔。回復・支援係の白魔。原子操作系の錬金術。使い魔を召喚する召喚魔術。そして結界を張る結界魔術、と大まかに5つに分けられる。神殺し儀は黒魔の最終系統の一つ。本来なら準勇者や賢者レベルの魔力を持ってしても発動できない。勿論魔術がグルカルトでは普及していないと言うのもあるが魔法との兼ね合いが難しいし必ず数節に分けた詠唱が必要になるため魔法の下位互換として認識されていた。
それは例え世界の挟間を超えて実戦から娯楽に変わっていても。
マジカルソードの運営は魔術のスキルをちゃんと用意していた。型破りな方法で魔術の行使した例外も居たりはするがβ時代から酷評されていた。
魔術を改編しようとするととてつもない魔力・マナを消費するからだ。対して魔法はある程度自由が効く。PVPを前提とした時魔術は便利だが不意打ちが難しい。一節に纏めるセンスがあれば別だがそこは天性のモノに依存するのでそれも難しい。
だが何事であれ例外は存在する。
それがリョー。彼は型破りな方法で魔術を扱えるのだがこの世界での正攻法を攻略しておりそこには彼が習得していない魔術も存在した。
それが白魔『メモリアルコンセル』。
雲が立ち込める中をぎりぎりまでに詰め込み魔力を過剰に注ぎ込むことで本来の5節を2節までに改変し上げた『メモリアルコンセル』によりリョーは呼び出した悪滅の雷により形成されたブロードソードの過去の記憶を読み取っている。
その中には神々が使っていた頃の記憶も存在する。
そして光りの奔流の中リョーはとある事実を知る。が戦闘中であることを思い出しそれを頭の隅に追い込む。
「雷神剣技 邪滅崩迅」
雷の如くの勢いで突きを放つ。二人の距離は20m以上は離れてはいるが俺にとってその距離は無いに等しい。しかも現在は擬似的にとは言え雷神の神格も宿している。それが『メモリアルコンセル』という魔術の効力。
模倣する事で力を引き出す万物摸法とは違い蓄積された経験を引きだす『メモリアルコンセル』。対象的とはいえ根の引き出しは変わっていない為俺は物も数分でモノにしている。そしてそれも万物摸法され完全記憶に定着される。世にも恐ろしいコンボが生まれたものだ。記憶を読み漁り記憶し模倣する。見て盗むという絶対条件の為俺はいろいろな場面で時間を掛けざるを終えなかったがこれにより対象の武器や防具を読み取れば事実上全ての能力が扱えるように成る。・・・自分で言うのもなんだが悪魔の所業だよな。
そこからが劇的だ。
雷神と剣の浜崎勇者である一也に忍びの勇者伊賀崎峻。更に自身と騎士団長。それに魔帝。
ありとあらゆる戦術を見につけている存在の記憶を行動を視て知っているリョーは現在脳を酷使する破目に成っている。が
「疲れを感じて無い?」
グルカルトに居た頃。どうしてもそこの苦労や疲労が拭えないとぼやいていたが数をこなした後に・・・・。いやそれはない。クロノはかつて弓闘を手に入れようとしていた頃の亮哉を追想するもの苦労していた場面しか思い出せない。
一方。リョーは。
コレは完全に入ったな。
ゾーンに入っていた事を確信していた。
『・・・神威夢放』
ぼそりと呟かれたチェルンの声。その言葉は短い付き合いでも驚嘆である事は恋歌の魔道騎士は理解している。というよりも表情がとてもありえないものを見ている目だからだ。
『神威夢放?・・・・それは何ですか?』
とものを恐れない小春が聞く。
『虚空戦争時のクリア条件・・・・ようはGMを倒す事だけど全然思いつかなかったのよ。一度レイド崩壊しているし。』
『えっ・・。』
『私とリョーは非合法な手段で蘇生手段があったし蘇生スキルもあったわよ。』
ちなみに非合法な手段とは支配と迷宮主権限である。あと別枠に蘇生魔術。また回復魔法に神聖魔法・暗黒魔法を極めた果てに蘇生魔法もちゃんと存在する。・・・というか二人がそんな情報を流してきて大慌てしたのがトップの情報屋である。
『その時に禁忌図書館で見つけたんですよ。擬似的な神格を得ることで神さえも殺す最強の力を。とある理由でリョーは神を殺していますからね。』
・・・それが最愛の女性を生き返らすためだとは誰も思いもしないだろう。
『全プレイヤーの中で唯一神殺しですしその神の神格を擬似的とは言え得られるのはリョーだけでしたから。』
『つまり今回もそれを・・・。』
『えぇ。多分そのはず。でもアレは相当疲れるはずなのよ。何せ人から亜神になるのと大差ないから。肉体的にも精神的にも疲労が出るはず。』
『・・・そう言えば兄さん虚空戦争から還って来た時やたらピンピンして居た様な。』
『それは・・・・ちょっと違う気がするわ。』
『興味深い』
と恋歌の魔道騎士二人からツッコミを受けるミィーナ。
『・・・ティアちゃんそれ止めた方が良いわ。何と言うか怖い。』
『むぅ。』
「バレットカーニバル バレットオブフォース リリースオブマジック」
クロノの矢継ぎ早に発動した魔法を全て往なす。
「雷神砲技 テンペストオブバレット」
魔法を込めていない銃を抜きロクに狙いを付けずに放つ。亜音速を超える砲弾は魔術師が無意識のうちに張る防壁をあっさりと突き破る。
「止めだ。ソードスタンプ」
AWOで金亥を討つきっかけとなったアーツを叩き込む。
まずは一つ。