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勇者の格上殺し


 そして第4戦。

 リョーVSヴェル。



 それは格上殺し《ジャイアントキリング》同士の対決である。



『さてこの大会ももう準々決勝の第四試合まで来ました。』

『早いですね。』

『まぁ例外だろう。』

 規格外3人が居れば当然なのだが。一番長い死合いがハヤトVSジーグ。これでも30分。

 でもこれが早いと感じるのはまだ先。そしてそれが勇者同士も本気の合戦である事を知るのは同時者のみ。



『まずは西側。バトルロイヤルで突如現れ彗星の如く敵を蹴散らし燃やし尽くした暴虐。《裁き》のリョー。』

 何かいつの間にか裁きの二つ名が付いた。如何でも良いけど。

『次に東側。構成は不遇スキルのみであるのもの数々の強敵を打ち破ってきた最弱。《ジャイアントキリング》ヴェル』


 そのアナウンスと共に俺はフィールドに入る。そして場に静寂が訪れる。

『ええっと、リョーさん?』

「何でしょうか?」

『何で初期装備なんでしょうか?』

「これがヴェルさん相手にするのが一番良いんですよ。纏え」

 その一言に反応した首のチョーカーが装備を出現させる。それは召喚された国で宮廷魔法師が身につけていた戦闘服。腰元には短剣を嵌めたベルトと太腿には魔法式銃と実弾銃を左右にあるホルスターに差しこんでいる。

 それが露わになった瞬間会場がどよめく。

「ジャイアントキリングを相手にするのにはコレが一番良いので。」

『いえ・・・それは魔導師のチェルンが得意とする防具収納と同じなので。』

「へぇ~。取り敢えずこれに驚く程度なら大丈夫ですね。」

 寧ろこの程度の技術俺が別に開発した魔術による圧縮と同程度だ。今回ばかりは薙刀は使わない。

『・・・・それでは両者構えて。5』

『4』

『3』

『2』

『1 バトルスタート』


「衝拳」

 神速で放たれた拳がヴェルの体を吹き飛ばす。

「鬼狩り蹴り」

 着地点を予測して先回りし蹴り上げる。

「メテオラ」

 魔力とマナをわざと爆発さえ周囲を破壊する。そこから一気に攻め立てる。呼吸をさせずただ殴り続ける。拳に闘気を混ぜ放つ一撃は綺麗に胴体に嵌る。

「来い セイント 起動せよ セルア」

 彼のその言葉によりその手にブロードソードが出現する。そして爆発的な勢いのまま俺に迫る。が

「衝拳」

 最短距離で近づいてくるために対処は楽。寧ろ武器が増えた所為で持ち味が殺されている。

「グッ・・・。」

「来い、デスペレード」

 ヴェルが打ち上げられ落ちて来るまでの間で起きた変化。それは彼の対戦相手の腕に黒いバスターソードが妖しく艶やかに輝く。そしてその持ち手には大きな謎の宝石が埋まっている。

「起動せよ セルア」

 その言葉はこの世に絶望を出現させる。


『・・・。』

『おいおいおい。マジかよ・・・。』

『・・・。嘘でしょ?』

 3人が3人とも驚くのは無理はない。何せ彼らが唱えたのは格上殺しの聖剣の聖句。それが聖剣とは真逆の容姿をした強者によって唱えられ発動された。それが何よりも衝撃だった。




「・・・成程。」

 確かにジャイアントキリングの素質があるのは分かる。LCK特化で既にHP1。此処から先はどんな攻撃も即死として扱われる為彼にダメージを与えるのは難しいだろう。

「はぁぁぁ!ソニックリーパー」

「ソードガード」

 動きが格段に良くなってきている。が所詮その程度だ。全てにおいて俺の劣化版。簡単に言うと器用貧乏だ。パーティー戦で光るタイプだが強者殺しの剣がそれを許さない。

 恐ろしいまでに敵対者の動きを再現した剣技は神殺しの際にも用いられた万物摸法。神をも降す武の流れは完璧なる格上殺し。いくら精霊王・勇者・魔王・迷宮主と世界をも揺るがす最大級の能力を持ってしても届かない。人と神にはそのレベルの差がある。一度壊れた亮哉だからこそ辿り着いた極致。

 恐ろしい努力と血と涙の最果てにこそ存在する。それが彼の腕に存在する格上殺しに適応された剣。彼を構成する一つの概念。

「・・・デウス・エクス・マギナ」


『おいおいおい・・・何だよアレは?』

『ダブルサキューラーにソードシールド。更に言えばバーチカルスクエア。全部剣の世界の技ですよね?』

『えぇ。兄さんの特異技の一つ。摸法儀ですね。そして思い起こす憧憬に物が近いほどのめり込む。それが故の黒剣。』



 メテオラを発動待機。次にデスぺレードに魔力を流す。

「チッ!やりたくはないが 我の想う世界」

 ヴェルが何かを唱えた瞬間体が重く感じる。いやマナや魔力の活性そもそもが封じられている。

 気や頸では無理だ。格上殺しは魔力に準ずる何かしらがトリガ―だ。がそれは一般的にだ。

「過密吸引 収」

 木を隠すなら森の中。人を隠すなら過密地域。なら吸引する魔力を隠すなら


 ズン。

 辺り一面の空気が重く感じる。俺には関係ないがそう感じ取る。異次元の感覚が異世界の力を感じ取る。


 魔力制御によって片倉亮哉という一個体が制御出来るマナと魔力が解放される。

 それは神殺し・魔王殺し・龍殺しと精霊王・迷宮主・勇者と魔法・マナ・魔力に対する補正が掛かる称号や能力を持っている。それに彼の万物摸法や万無の境界は神界さえも超越した制御能力の上に成立している。

 ただせば完全に記憶した動きを寸分違わず動かすと亮哉の勘違いからだが。


 魔力の中。彼の制御下に置かれている魔力は例え誰のものであろうとも誰が生成しようとも制御が奪われればそれまで。彼の戦術の一つとして利用される。


【無いなら奪え。奪えないなら利用しろ】


 緻密に計算されていながらも実際は力技。力技の様で毀れた剣の残骸さえも計算の後に入れて行動する頭脳。


「爆ぜろ 燃えよ 灼烈の彼方に 集束し 神をも灰塵に帰せ 円環の摂理に 終焔を」

 6節により紡がれた魔術が

「―――バーニングサン」

 並列詠唱により纏め上げられた魔法が

「神蒼炎」

 神の理術が

 格上殺しの剣に集束する。

炎剣乱舞イクスファイヤソードダンス

 それは火炎の暴虐。

 PVP勝者 リョー。



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