PVP開始
ボン、ボン、ボン。
運動会で聞くあの音が会場内に響き渡る。
『皆さ~んこんにちは』
こんにちは~。そこら中で野郎どもの声が響く。そのアナウンスと共に登場したのは
「バニーガール?」
そう兎耳を生やした少女。どこか不思議な国のアリスに出てきそうだ。
「何だあんちゃん知らないのか?」
俺の独り言を拾ったのはすぐ近くにいた斧を背負ったずんぐりむっくりな男。ドワーフだろうか?
「あぁ知り合いが参加するのを見たくてな久し振りにインしたんだよ。」
「いんやアレはネット地下アイドルの小暮ちゃんって言うだよ。」
ソレ日本語として間違ってないか?
「そっち系はあんまり詳しくないしなぁ。そう言えばそんな話を聞いた覚えがある。でも運営のNPCじゃあ無いんだ。」
「噂だがそれはスーパーアカウントがあるらしいぞ。」
なるほど。中身は人間と言う事か。なら誰でも良いのか?
「本人があんな格好をしているから考えにくいだろうが高レベルプレイヤーで実況をするらしいぞ。」
「助かった。コレで酒でも」
そう言い30万Gの袋を渡す。ソロで討伐してばかりのレべリングのお陰か金が腐るほどある。
「おうありがてぇ。じゃあさよならだ」
手を振りながら去っていく。
さて集中しますか。
『さて予選は玉石混合のバトルロイヤルです。実況は私小春がそして解説は・・・』
『恋歌の魔道騎士 ミィーナと』
『自由騎士 エドウィードと』
おう知り合いばっか。と言うか二人して溜める正確ではないので嫌な気がする。
『魔導士 チェルンに』
お前もか?解説多くない?
『そのパーティーメンバーでお送りいたします。』
『私はソロだけどね。』
全員の息の合った声が響く。チェルンがソロ気質なのは昔からだし。
俺たちバトルロイヤル参加者は転送される。ここで俺は装備を変化させる。皮鎧に薙刀。
フィールドは約100平方㎞で草原・森・廃墟・洞窟・水場などさまざまな物があり俺は平原に飛ばされた。これはラッキーだ。
『プレイヤーの皆さんが転送されました。ではカウントダウンに参りましょう』
俺たちの真上にある飛空挺から映像投射で解説席が見える。何かリムジンに似ている。
『ではご一緒に』
『5 4 3 2 1』
会場が一体としてカウントを告げる。一瞬アイと目があった気がした。俺の右手に存在する得物を見て微笑んだ気がする。無茶を承知で頼んだので彼女に対して最高の結果でここを突破する。
『戦闘開始』
そして戦いの火蓋が切って落とされた。
『さて始まりましたね。』
『そうですね。ここは毎年面白いですからね。アマの方にも光る方は多いですし』
『そうだな。それはそうとうミィーナ、アイツは如何だ?』
『兄さんですか?』
時折流れるアナウンス。そこには早くも俺の事を題に上げた様だ。
『兄さん?ミィーナちゃんはお兄さんがいらしたのですか?』
『義理だけどね。完全記憶能力があるからわりとTCGやガンシューティングじゃあ負けるんですよね。』
今回ミィーナには兄と呼ばせている。肉親が居ないとはいえ幼い頃から頼りにしていた妹だ。今回ばかりは頼らせて貰う。
『えぇ!?ミィーナちゃんが?』
さも驚いた様子の小春。それに対して恋歌の魔道騎士は苦笑を浮かべているが自由騎士もエドウィード以外は驚いている。
当然だ。ミィーナが得意とするのはガンシューティング。勝率は9割5分オーバー。ほぼ負け無しである。それは海外戦も含めている。そんな彼女が負け越すと言っているのだ期待しない方が可笑しいが問題はそこでは無いのが一名。小春だ。
『・・・でもなんでプロとしてデビューして居ないんですか?しかもあの筋はアイさんの物に似ているような・・・。』
そう解説を聞いている全員がそう思うはずだ。前者はともかくその話が本当なら世界一も確実なはずだ。ただ何故か今更此処に出て来た。それが小春の抱える疑問であるがそれは一蹴される。
『何を根拠で?その例外たる私の前で』
チェルンの怒声を感じる。おいおい誰か止めろよ。アイツ俺と同じで身内にはダダ甘だぜ?
『虚空の生還者・・・ただしくは勇者の半身だった人よ。私同様に』
『ちなみにそのリョーさんの薙刀捌きは家で指導したので家の流派のヤツと同じですから似ていますよ。』
おいこら其処二人無駄に人を持ち上げんな!そう考えながらも薙刀を捌く。
「ロックバースト」
後ろから不意打ちで狙ってきた盗賊風の少女目掛けて魔法を発動する。岩の散弾は周囲に巻き散り俺を囲って攻撃を仕掛けて来たプレイヤーに被弾する。魔法の硬直時間を狙って矢が飛んでくるも闘気で延長した刀身で切り捨てる。
 




