改革者と斬殺天使
「ねえ亮哉君、君が元居た世界で異性に想いを告げる日とかないの?」
「!いやなんでそんな事を?」
目の前に居るの銀髪で紫色の瞳を宿しているアスナ・ヒーリア・エルラリアさんに聞かれた。ちなみにこの方、ものすごくオットリしているように見えるがサーベル使いで現役時代では斬殺天使と恐れられた御方だ。
「いや〜だって君が娘の事を好きって思っているのは分かっているからね」
「な、なんでソレを?」
ジローっと寄せられる瞳。今すぐにでも逃げ出したいが俺のステータスでは逃げきれないし向こうはこの国の第二王妃である。読心術でも持っているのだろうか?
「はぁ。まあ私以外に気がついて居る人はいないから」
ソレは安心して良いのだろうか。いや実親に知られているのだから色々と駄目な気がするが。だからこそ今、ギッチギッチに緊張しているわけでもあるが。
「はあ。まあないわけではないですが」
その日、宗教家にしては悪夢みたいな日だし。日本人は勘違いしていて女性が想いを寄せる男性にチョコレートを渡しているが本家はどっちからでも良いはず。
ようするにバレンタインデーである。あの日は色々と特別だし。そして何人のも聖人が処刑されていたなど暗い日である。縁起が悪いよな。でもコレ以外に知らないしな。
「2/14にバレンタインデーと言う日が」
「えっ!?ソレ、あの子の誕生日よ」
よせーい。縁起が悪い。
えっ、マジ?
「嘘をつく意味がないけど?」
「ですよね」
この人の一家は代々聖光教会に仕える司祭家であるためかあまり嘘をつかない。そしてこの人は絶対に嘘をつかない。
「で、そのバレンタインデーについて教えてくれる」
「良いですけど」
カクカクシカジカマルマル
10分後。
一応全ての事を伝えてみたのだが。
「キミ年齢詐称してない?何かもう少し純粋なお年頃のはずだけど」
「してないというかステータスチェックで知ってますよね」
言いたいことの意味は分かるけど。そこまで酷いか?
ちなみに幼稚園年長の春休みを全て使ってキリスト教関連の本を全て読んだのでクリスマスに訪れるサンタさんについても既に知ってしまってソレ以降のクリスマス前は色々と大変だった。醒めたキラキラした目というある種矛盾した顔を強制されていた。
義親は気付いていたらしく無理をするなと言われている。
「何というか世の中知りすぎる事で悪影響が出るというのを痛感しました」
「私も似たようなものだしね。分からなくもないよ」
意外だ。彼女はどっちかと言うと武断派に感じたからな。
「さて。でそのチョコレートとで娘の誕生日ケーキを作ってくれない?」
「えっ!?」
「頼むよ、改革者」
そんな事がクリスマス明けに合っていて今は2月7日。彼女の誕生日まで一週間を切ろうとしている。
はあ。納得がいかないだけで既に味の方は良いんだけどなあ。甘味に煩いミミアを納得させるソレが欲しいしな。
「って寝てるのかよ」
いつの間にかスヤスヤとソファーで寝ていたミミアにタオルケットを掛けて調理室に篭る。
「そう言えば美波は大丈夫か?」
地球に居る義妹にそう想いを馳せた。