第13話A 溢れ出した情報
目の前には朝と同じ景色である俺の部屋。帰りたい、針のむしろから逃げ出したいと思っていたら俺の部屋に戻っていた。
この世界には俺の安らげる空間はこの部屋しかない。
もう、全部わかった。
俺がなぜここにいるのかも、この世界の仕組みも。
俺が景子にポーションを投げつけた時にもったいないと言っていたのは、投げたのが最上位ポーションだったからだ。
この最上位ポーションはガチャや運営からのプレゼントでのみ手に入れることが出来る。
ちなみにガチャで引こうとするとその確率はなんと0.3%。誰もが欲しがっている激レアポーションを無駄に使ってしまったのだから景子がもったいないと感じるのも無理はない。
なぜ俺がそんなものを持っていたのか。
答えは一つ。
俺が望んだからだ。
俺が望めばこの世界では大低の願いが叶う。
このゲームで最強の存在になったり、パラメータのキャップを外しカンストまでステータスを上げたり、ガチャのレアドロップを自由自在に引き当てたり、それこそ大金持ちや空を飛ぶことだって、姿が見えなくなるような透明人間にだってなれる。
ただ、今一番望んでいる元の世界に帰りたいという願いは叶うことはない。
なんて皮肉だろう。
今朝目が覚めるまでは異世界転生の主人公になってあんなことやこんなことが出来たらなどと考えていたのに実際に願いが叶い何でもできるようになってみると何のことは無い。これまでの生活に戻りたいと考えてしまう、つまらない答えが俺の頭を占めていた。
もう父さんにも、母さんにも会えない。学校で友達に会うこともない。
いつも通いなれた通学路、なかなか変わらない信号も校舎で毎日のように練習したピロティも、もう見ることはできない。
いや、似たようなものを見ることは出来たんだった。ここはオープンオオミヤオンライン。本物の大宮を模した街。本物そっくりに似せているので行こうと思えば行くことが出来る。
それによく考えたらこのゲームに来ている友達になら会えるんだ。もしかすると父さんや母さんにも会えるかもしれない。
いや、会ってどうするんだ……。
俺はただのコピーだぞ。
本物の富谷拓斗のまがい物だ。
それにもうすぐこの世から消されてしまうことが決まっている。
今の俺には分かる。
俺のデータが入ったサーバーが初期化される予定だ。
運営からすればただのバグだから。
ああ、でも会いたいな。
最後に誰でもいいから会いたい。
なんで一人でこの部屋にいるんだろう。
ゲームの中にもかかわらず吐き気がした。
もし俺がこのゲームの仕様を変える権限を持っているのならデバフは消すことが出来るはずだが、何をしても吐き気が収まらなかった。




