運命と共同体=腐れ縁
兄弟、兄妹、姉妹、姉弟。全部キョウダイ。
俺が先に生まれて、あいつが後に生まれた。
俺がお兄ちゃんで、あいつが妹。
性別も、身長も、力の強さも違う。
笑い方も、泣き方も、怒り方も。
同じ両親から生まれた俺とあいつは、
間違いがだらけの間違い探しの本みたいで、
同じところを探すことの方が大変だった。
右利きの俺と、左利きのあいつ。
好物のおかずは先に食べるあいつ、後に残す俺。
ししゃもの頭を残す俺と、食べるあいつ。
喧嘩だって、同時に謝るミラクルがあるわけでもない。
だけど、こんなんだけどキョウダイらしい。
腹が立つ回数は確実に家族の中で一番だ。
舌打ちの的にした数は、きっとこの世で一番多い。
それでも、それだけじゃなかった。
時より、名前のない激情に飲み込まれることがある。
怪我をしたから、
母さんに怒られたから、
嬉しくて感極まったから、
理由がどうであっても、あいつが泣くのは気分が最高に悪い。
あいつが泣くと、泣いてほしくないと思えた。
笑ってほしいなんて、気持ち悪いことを思ってしまう。
「妹ができるの嬉しい? 」
あの頃、そう聞いてくる母に、俺はわからないと答えた。
それでも俺とあいつはキョウダイらしい。
俺が恋人と別れるように絶てるものではない。
切っても切れない。
唯一無二なんてこっぱずかしいことは言わない。
見えない、でも確かにある何かがどうしても離してくれない。
そんな名前のない何かで、無理やり繋げられている。
嫌だと言っても切れない。
こんな迷惑なものはない。
それでも、あいつと兄妹になることが運命だというのなら
俺は何も言えなくなってしまうから。
今だって目の前でテレビのリモコンを独占するこいつに腹が立つ。
だけど、どうすることもできないんだ。
テレビ画面に向かって笑ってるこいつに舌打ちぐらいしたっていいと思う。
キョウダイなんて面倒だ。
こんな腐れ縁、他にはいらない。
あいつだけで充分だ。
「妹ができるの嬉しい? 」
「うーん、……わからない」
「……そっかー、まだよくわかんないか」
「だけど、大丈夫だよお母さん。俺お兄ちゃんだから、妹を大事にする」
「あら! さすがお兄ちゃんね」
「うん」
実際の妹はもっとおぞましいです。
本当に自分の妹なのか疑いたくなるこの頃。(笑)
代わりを頼みたいものですが、
でもまあ、いないよりは良いと思っている俺みたいで、
本家妹でよしとしましょうかね。