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第16話 一騎当千の強者

 敵の総隊長より、伝令がはしる。一端、帰船後に、東方の援軍に向かう事となり、町に溢れかえっていた兵士たちが、一端魔導戦艦に入る。街には、廃墟と死骸しかのこされなかった。


 少年の様な一般兵も、その死骸の1つであった。槍でプレートアーマーが貫かれていた。もっと硬い鎧だったら……。もっと強い武器を与えてあげられたら……。


「テオ……」


『わたくしは、この店の貝が好きであります。何としてでも漁業解禁まで治安を回復させたいのであります』


 彼女の純真な声は、もう聞けない。


 基幹艦はドレッドノート級大きさが他とは一回り違う。砲門は3基9門。他、9隻が先行して出港する。


「砲術師っ!前の9隻に密偵が紛れている。射て」


 総督が命令をくだす。


「しっ!しかし!」


「私の命令が聞けぬのか?」


「はっ!魔晄炉稼働っ!砲撃開始まで3分!」


「配置につけ!」


 砲術師たちが、各砲門に配置する。魔晄炉の火と己の魔術で、魔弾を生み出す。そしてその光は、破壊を招く。


「撃ってーー!」


 ドレッドノート級が火を噴く。近距離のしかも、背後から敵と認識していな船からの攻撃。通常は、マナの被膜を船に張り、防御力を上げている。しかし、今は戦艦とはいえただの船だ。5隻が大破する。


『総督殿!こっ、これはどういうことですかっ!』


 他の船からの緊急通信がはいる。


「これは報いだよ」


『きっ、貴様なにものだっ!』


「何者でもない。僕はただの『墓守』だよ」


『なっ!』


「……沈め」


 2度目の砲撃が火を噴く。3隻が大破するも、残り1隻はマナの被膜の展開に、間に合ったらしい。たった10分で、数千を超える兵士が海の藻屑となった。最後の一隻は、距離を詰めてくる。砲撃戦では勝てない事を、認識している。白兵戦に持ち込むつもりか。


「【アポテオーシス】!」


 神格を解放する。樹に巻き付いた蛇の紋章が、背後に浮かび上がる。そして、それが体に溶け込むように入り込む。圧倒的なマナの流れを感じる。それに伴い、「罪の枝」が紅く発光する。活動限界は限定されている。下手をしたら、枝の毒で命を失う可能性もある。


「しかし、覚悟はとっくにできているっ!【メタトロン】!」


 72帖の黄金の盾が、ドレッドノート級の甲板に出現する。そして甲板にいる兵士に向かって次々に攻撃を仕掛ける。数百名の乗組員を、次々に殺害していく。カイトシールドやバックラー型など形状様々、また【黄金の(シェキナ)】により剣の様な形状のモノもある。切り裂き、叩きつぶす。


「ご苦労でした。総督殿」


 司令室から今まで、【黄金の神経(エロハ)】により、敵兵が紛れているという、幻影を見続けていた彼は、黄金の盾により心臓と左腕を、引き裂かれ絶命する。


 そして、5帖の盾を、魔晄炉へ向かわせる。そこで、充填調節をしている技師たちを、やはり盾で惑わす。魔晄炉の調節を無くし、限界以上の出力を上げさせる。


 そして、白兵戦に持ち込もうと、横付けしてきた最後の一隻をが体当たりを仕掛けてきたタイミングで、魔晄炉が暴走しだす。その暴走による爆発の威力は、沿岸の岩をも蒸発させて、また大破した戦艦から、離脱しようとしている兵士をも、飲み込んだ。


 街一つが、地図から消え。その対価として、敵国の魔導戦艦を退けた。


「ま、まだだ……まだ終わらんよ……」


 想像だにしない激痛が、体中を駆け巡り、膝をつく。「罪の枝」が紅く発光して、血が噴き出す。心臓を抑えて、その場で悶える。意識を失う事は許されない痛み。その痛みが引いたのは、すでに暗くなってからであった。

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